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あなたに逢いたくて〜こぼれ落ちた運命を再び拾うまで〜  作者: 雪野 結莉
最終章 こぼれ落ちた運命は

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 それからは、失われた時間を取り戻すかのように、本来ジーナだった頃に受けるはずだった淑女教育や、社交界への参加で忙しい毎日を送って行く。


 デビュタントをするつもりはなかったので、最低限のマナーしか学ばなかったけれど、伯爵令嬢、伯爵夫人になるのならば話が変わってくる。


 けれど、毎日が楽しい!

 困難な状況も、厳しい先生も、たくさんの宿題だって、がんばれば何とでもなる!


 生きていることがこんなに楽しいなんて、前世では気付かなかった。




 にこにこと、デイヴィス侯爵家のガゼボの長椅子に座って紅茶をいただいていると、テーブルを挟んだ向かい側の長椅子に座っていたルーク様が疲れた顔でわたしを覗き込んだ。


「最近ニーナは楽しそうだな」

「はい! これが、毎日充実してるってことなんですかねー」


 そして、もう一口紅茶を飲んだ。


 今日は、ミラー家の両親と共に、デイヴィス侯爵家に婚姻の挨拶をしに来たのだ。

 爵位が下の我が家からご訪問させていただき、今後のことをいろいろと話し合った。


 わたしは元平民の養女だから、デイヴィス侯爵家からは反対されるかなと思っていたんだけど、そんなことはなく、とても歓迎していただいた。


 ほぼ20年ぶりくらいに見るルーク様のご両親は、笑顔の絶えない素敵な方たちになっていた。

 ルーク様いわく、前デイヴィス侯爵様(あ、ルーク様のお祖父様ね)が早逝なさって若くして爵位を継いだお父様と、政略結婚でこちらも訳がわからずにいきなり嫁いできたお母様は、勝手も子育ても分からず、ルーク様の幼少期はあんな感じだったらしい。


 それが、侯爵の生活にも慣れて、弟のアロン様が天真爛漫にお育ちになり、いろいろなものが見えてきて、今の穏やかなお二人になったとか。


 ジーナが死んで塞ぎ込んでいたルーク様を一生懸命支えたのは、お父様とお母様、アロン様だったとルーク様が言っていた。

 もちろん、我がミラー家だって支えていたらしいけどね!


 だから、穏やかに打ち合わせも終わり、ミラー家の面々は先に帰ってしまったけれど、ルーク様の希望でわたしはデイヴィス家に残って、今は2人でデイヴィス家の庭でお茶をしている。


 いやあ、侯爵家のお庭はとっても綺麗だなあ~。

 そよ風の隙間を縫って、蝶々が花から花へと渡り行くのを見るのは、とてもゆったりとした気持ちになるのねぇ。


 充実した日々を送っていて、忙しさの中に楽しさも見つけているわたしと違って、ルーク様はげんなりとしているけれど。


「オレはこのところ、王宮に詰めっきりでジュリアン代表にいろいろと政治のことを仕込まれているから少し疲れたよ。今日の休みだって、婚約者と実家の挨拶だからと、やっと休みをもらったくらいだからな」


 ルーク様は詳しくは言ってくださらないけれど、お兄様から聞いた話によると、ジュリアン代表は、ルーク様を将来の首相にするべく、ムチを振るっているらしい。

 それがまた、ルーク様は何でもできる人だから、まんまとジュリアン代表の思惑通り、国政の中枢部で動けるように知識を吸収しているらしいのだ。


 わたしもお兄様からは次代の首相の妻となれば国のファーストレディになると言われ、ファーストレディとしての振る舞いを覚えなければならず、日々精進しておりまする……。


 それでも、王家に嫌がらせをされながら討伐の訓練をしているよりは、ルーク様は生き生きとした表情で王宮へと仕事に行くので、それもまたいいのかなと思う。


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