第9話 和光富士見バイパス~環状七号線 ⑤
ミサキ・キリシマの手記
わたしの読者さんへ。
2126年の東京を一周して戻ってきて、わたしは今ホテルの一室でこれを書いている。
未来の読者であるアナタがこの時期の記事を読んだことがあるのならご存じのように今の東京を非常に不安定。
世田谷の武装勢力は大量の武器弾薬を有して拡大を続けた。
それは100年前のISISイスラミックステートやかつてガザ地区に存在したハマスのように行政を恐怖で掌握しながら拡大している印象がある。
もはや手を付けられない一大勢力として台頭してきている。
賢明な読者であるアナタは軍隊は何をしているのかと不思議に思うかもしれません。
しかし歴史に詳しくなるとこの疑問にも答えることができる。
立川政府は軍隊を保有していない。
これは自衛隊クーデター軍が日本連邦を設立したことが深く関わっていて、東京には拒絶反応のような軍隊アレルギーがある。ほんとに。
違う。そういうことを書きたいわけじゃない。
ともかく、政情不安になったため空港が一時閉鎖された。
ハワイの本社からくるはずだった上司(お偉いさんたちへの取材だけして、泥臭い方はわたしが担当)が入国できなくなった。ざまみろ!
ついでにリゾートエリアのオープンセレモニーが延期になった。
前任者が亡くなったことがわかり、追加の人員派遣も難しいため、とにかくリゾートエリアの取材全般を任されることになった。
などなど、だいぶ環境が変わった。
もっとわかりやすく書くとカジノやスパなど豪遊体験の接待パス(企業宣伝用)を使えるようになった。
つまり質の高い旅行雑誌の記事を書けるように一回体験できる。ということだ。
アナタがお気づきのようにこれらは後発組の上司が満喫する予定の特権の数々になる。ざまみろ!!
こう書くと浮かれてるように見えるかもしれない。
対岸の火事とはいえ、目と鼻の先でロケットやトラックが爆発してるのに吞気に豪遊を楽しめると思いでしょうか?
正直に言ってまったく楽しめない。
ここ数日は夜に爆発音で目覚めて、それから窓の外を数分から数十分眺めてから寝る日々。
実は寝不足です。
ストレスからか昔の夢を、悪夢をよく見るようになった。
その前に2126年のアメリカという国がどのぐらいクソなのかを書かないといけない。
たぶん読者さんは歴史の教科書か何かでアメリカという国を知っているかもしれないけど、現在進行形の生の声をここに書き連ねる。それが悪夢の原因だから。
アメリカの政治はどんどん変わっていった。
何が変わったかというと100年前あたりから二大政党のアホな方が選挙改革を推し進めた。
それが発端となってアメリカは変容したと言われている。
改革することになったのはクレイジーな方の政党が暴走したからだけど。
ともかく民主党(二大政党のアホな方)はポストトランプ期の空白期間に徐々にしかし確実にRCV方式を採用していった。
RCV(Ranked Choice Voting)とは優先順位付き投票制度のことになる。もしかしたら未来にはなくなってるかもしれないので説明を。
〇 クレイジーな共和党(40%)
② アホな民主党 (35%)
〇 無名の人 (0%)
① バカな中立政党 (5%)
③ マヌケなな地元政党(1%)
わかりやすく書くと上の5人の候補がいた場合、民主党は5%差で負ける。
だけどバカな中立政党やマヌケな中立政党へ投票した人が民主党を第二候補にしていると、41%になって逆転勝利になる。
説明終わり。
要するに負け組の死票が全部民主党に集まるように制度化したのがRCVになる。
この制度によって100年前から大統領選挙から地方選挙までほとんどの選挙で民主党が常に優勢になるようになった。
なにせ共和党はRCVに対して支持者たちに「共和党に①を書いてそれ以外は記入しないように!」なんて言ったのだ。
つまり共和党票がすべて死に票になるので民主党しか勝たなくなる。
ね、クレイジーでしょ?
ただし、この民主党黄金の時代は一瞬で崩壊した。
だからわたし達はアホな民主党と呼んでいる。
ポストトランプ期に一時期衰退した共和党は方針を大転換して中道寄りになったのだ。
これまでのクレイジーな言動はおとなしくなり、岩盤支持層であるMAGA派が好むアメリカ人のための政策を前面に押し出した。
これは上の記入を変えてしまった。
② 良い感じの共和党 (40%)
〇 アホな民主党 (35%)
〇 無名の人 (0%)
① バカな中立政党 (5%)
③ マヌケなな地元政党(1%)
おわかりいただけただろうか?
第二候補がアホな民主党から良い感じの共和党に移ったのだ。
つまり接戦地区を中心にほとんどの選挙で共和党が勝利し始めた。そして常勝するようになった。
共和党一強時代が到来してしまったのだ。
ね、アホでしょ?
USA!USA!はいご一緒にUSA!!
読者さんがこれを読むころには民主党というのは忘れ去られているだろう。
それぐらい2126年の時点で力がなく、二大政党制というより二大連立制に近くなっていた。
ここで「なんで連立?」と思うかもしれない。
これもRCVの罠になる。
つまりRCV方式を採用すると第二候補に自政党を書いてもらいたいため、どうしても中道寄りに政策を転換することになる。
共和党は民主党ぽく、民主党は共和党ぽく。
だから多くの政策で超党派による垣根を超えた動きが活発になっていった。
アメリカで二大連立のような状態は長く続いたが、日本が鎖国したあたりから急激に機能不全になっていった。
そもそもどの政党も第二候補に自政党を選んでもらうように動くため政策に変化がなく似たり寄ったりになる。
世界規模で重大な変化続いているのにアメリカの政治は急速に硬直化していった、と言われている。
だからわたしが生まれた頃には深刻な分断と対立が表に出るちょっと前。という状態だった。
それが非市民労働者の政治運動によって一気に噴出したのだ。




