↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2126:日本連邦へようこそ!  作者: 日本連邦観光公司
40/46

第9話 和光富士見バイパス~環状七号線 ②

 東京24区に入るとすぐに道路が人であふれかえっていた。

 彼らは大声を出して道を練り歩きいていた。

 群衆は北千住でみた政治パフォーマンスのようにスローガンが書かれた旗や横断幕を持ちながら声高に主張を繰り返す。

 主張する内容は場所によって少しずつ違っていた。

 それでもおおむね3つだった。


『自由! 平和! 人権!』


 もっとすごくなると『連邦に死を! 日本死ね! 差別反対日本人死ね!』とかだった。

 群衆はその数の多さから気が大きくなって過激になっていってるのが肌で感じ取れた。

 どんどん人が集まってくる。

 車は立ち往生してしまった。

 レイラは窓を開けてデモに参加している人に質問した。


「何があったの? これはなんのデモ!?」

「ラジオを聞いてないのか。日本連邦が声明を出したんだッ!」

「声明ですって!?」


 慌ててラジオを回してニュース系ラジオ局に合わせる。


『ガガ……ジジ……繰り返します。つい先ほど日本連邦から近日中に重大な発表があると声明がありました。内容に関して不明でありますが、専門家によりますと東京の武力併合を含めた軍事行動の可能性が高いと言われています。またこれまでと異なり鎖国政策の転換ともとれる行動が確認できており、日本連邦の長距離輸送機がスイスにある国連本部に向かっていると思われます。半世紀ぶりに大使を派遣したのではないかという話に――ここで緊急速報です。東京の反戦団体フリーダムジャパンが全住民に外へ出て抵抗の市民運動を呼びかけています。現在、皇居を中心に人々が外に出て反連邦運動のデモ行進となっています。――たった今アメリカの大統領が”日本連邦は早期に国際社会に復帰しなければ破滅するだろう”という脅しともとれる声明をSNS上にあげて――ブツン』


 レイラがラジオのスイッチを切った。


「……はぁ、マジかぁ」

「しょうがないからデモが終わるまで待とうか」

「いえ前の大規模デモは三日は続いて、下手したら大暴動に発展するかもしれない。今日中に帰らないと女二人なんて襲ってくださいって言ってるようなものよ」

 レイラの深刻そうな顔から今が危険な状態だと察する。

 女二人、深夜に車中泊。

 警察機構は自民族優先。

 いま考えてもゾッとする状況だった。

「それでどうするの?」

「仕方ないからちょっと戻って環七通って大田区に入るよ。梅田区まで行けば安心」

「環七? えっと首都高みたいなもの?」

 レイラは古い地図を広げて現在位置と向かう先を指でなぞる。

「さっきまで通ってたのは和光富士見バイパスっていう川越から東京24区まで荒川沿いを通る主要道路。これから大田区まで向かうのに通るのは環状七号線。旧皇居を中心に円形に作られた道路よ。内側に環六、五って感じであるの。逆にさらに外側に環八がある。それでこれからちょっと戻って環七経由で大田区を目指すんだけど、その途中に問題があるの」

「問題? いまでも十分問題よ。なにがあるの?」

「世田谷区。あそこは地盤沈下によるインフラ崩壊のせいで犯罪シンジゲートの拠点になっているわ。いまじゃセタガヤ共和国とか自称し始めてバカみたいでしょ。ほんとに頭いっちゃってるヤバい奴らだから普段は関わらないようにしてるんだけど」

「前にも親切な人が関わるなって言ってた。ねえそんなヤバそうなところ行くの?」

「しょうがないね。それに、シンジゲートのテリトリーに近いってだけで環七が通れないわけじゃない。夜になる前に通り抜けられればいい」

 渋々だが少し危険な道を通ることを了承した。

 他の案と言えば川越に戻ってストライキとデモが収束するまで待つぐらいしかない。

 リゾートエリアの取材日に別の場所で立ち往生。それは会社からクビを宣言されるとすぐわかる。


 仕方がなく、来た道を少し戻ってから環状七号線に入り、反時計回りに大田区を目指した。

 環七を走る途中、物流大型トラックの車列が対向車線を走っていった。

 トラックは改造されていて、上に土嚢と機関銃による武装が施されていた。

 フロントガラスなどには鉄の網で覆われている。

 他にもむき出しのタイヤの部分も同じく鋼鉄のゲージと網で覆われていた。

 銃撃戦を想定しているような車両だった。

 ただ、その車列が異常だったのはいくつかの車両が燃えながら走っていたからだ。

 火炎瓶を投げつけられたようだった。

 そんな物々しい雰囲気の車列が通り過ぎていった。

 あまりのありえない光景にわたしは開いた口が塞がらなかった。

 レイラの表情が曇る。

「やばいかもしれない」

「いまの車が、たしかに燃えてたね」

「そうだけどそうじゃない。あれは有志連合の車両よ」

「有志連合ってなに?」

「東京にある各コミュニティーがそれぞれ自治をしている範囲の治安を維持してると各テリトリーの隙間にグレーゾーンとなる特に治安が悪いところができるの。少し前は渋谷なんかがそうだった。それでそういうのを一掃するために各区の警察や自警団それから民間警備会社から有志の人員を集めて結成したのが東京24区自警有志連合。。みんな有志連合って言ってる」

「それがいまの車列ということね」

「そう。それが一番治安の悪い南部から安定してる北へ移動するってまずありえない。その場合考えられるのが――」

「ああ、わかった。これから向かうところがヤバいのね。オーケー」

「そゆこと」


 レイラはもちろん最悪その可能性があるという話で確定ではない、とフォローしてくれた。

 ただ、予想は的中してしまった。

 世田谷区の端を通る環状七号線。

 黒煙がいたるところで上がっている。

 先ほどまで銃撃戦があったかのようにハチの巣になった車がいくつも放置されていた。

 有志連合が負けて撤退した後だった。

 そもそも士気がとても低いので守ろうと言う意思がなかったのだろう。

 途中にバリケードとかそういうものはなかった。

 慎重に進んでいたらレイラが車を止めた。

 その視線の先に一人、イスに座っていたからだ。


 それは死体だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。