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2126:日本連邦へようこそ!  作者: 日本連邦観光公司
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第6話 立川③

 それは突然のことだった。


 わたしは黒服の男に、「国会議員があなたと昼食を共にしたいと言っています。ぜひご同行願います?」と言われた。

 外国人記者の腕章を付けているので、たぶんそれで身元が分かったのだろう。

 立川の国会議員と会えるチャンス。

 わたしはすぐに了承した。

 軍事境界線は観光客向けの施設が多くあった。

 カフェにバーガーショップ、レストラン街。

 軍事境界線をモチーフにしたモニュメント。

 団結の旗。

 歴史を学べる施設、博物館(展示してあるのは穴だらけの装甲車など武力衝突の名残)、などなど。

 わたしは男たちに連れられ観光施設の一角のカフェに入った。

 スタパだ。

 アメリカのスターパックスはこんなところにまで進出していた。


「オラ! ハジメマシーテ。コンバンワデース!」

「こ、こんにちは」

 そりゃ、西東京なら日本語で話せると思った。思っていた。

 ただし流暢だとは誰も言っていなかった。

 男の名前はエル・サンチョ氏。

 中南米メキシコにルーツを持つ立川政府の国会議員になる。

「キョウキモ……オヒゲモヨロシクテ~~」

「あ、英語で大丈夫ですよ」

「本当ですかぁ? 実は日本語がまだまだなんでぇすよ。ほんとはスペイン語の方が得意なんですが、この国ではまだまだマイナーな部類なんですよねぇ」

「そうなのですか? 南米系のスペイン語話者もけっこう東京にいると伺っています」

「ええ、もちろんもちろん。東西の東京の中間地帯、杉並区から世田谷区は南米の出身者が多いですねぇ。東京から来る際に見たと思いますが、あの水田地帯と風車を作ったのは何を隠そうわたしの両親たちなんでぇす」

「それは誇らしいですね」


 中央線から見えた田園風景。

 話を聞くとまず事の発端は中南米諸国へのエネルギー投資、そしてその前にアメリカの反移民政策があった。

 アメリカの移民対策として当初は難民を出す独裁政権に軍事的外交的圧力をかけることで目標を達成しようとした。

 しかしそもそも独裁政権以前に現地の経済破綻やエネルギー問題があった。

 そこで当時の政権は移民難民をアメリカ国内で働かせる代わりに現地で大量の再生可能エネルギー事業を推進して仕事を提供することで地元にとどまらせることにした。

 未開の地を切り開いて農地を、メガソーラーを、風力発電を、という具合に開発地で働かせたのだ。

 だがそういった開発が一区切りするとまたしても仕事不足からの移民や出稼ぎ労働者が出始めた。

 当時、西東京はそんな中南米労働者を大量に迎え入れた。

 彼らにコンクリートを解体させて、農地を作らせたのだ。

 南米の労働者たちはよく働き、街を解体して水田と風力発電へと変えていった。

 エル・サンチョはそんな移民労働者の2世になる。


「この国をよくしようと一生懸命に働いていました。両親は私の誇りでぇす」


 彼はハッキリと言い切った。

 それからエル・サンチョはことあるごとに父親の働きぶりを誇り、母親の慈愛の精神を尊び、11人兄弟の長男から末っ子までの近況をベラベラとしゃべり続けて、最後にグランマの懐かしの料理の思い出を語ってから、つい先日に長女が開業した(エル・サンチョが出資した)立川のメキシコ料理店にグランマのレシピ料理がメニューに並んで、メキシコ系住民が大勢訪れる大盛況になった、と話して聞かせてくれた。

 オーケー。

 後でメキシコ料理を食べに行こう。

 グルメリサーチも旅行雑誌には必要だ。


「なるほ貴重なお話を聞かせてもらいありがとうございます。それで今日はなぜわたしに会おうと思ったのですか?」

「よく聞いてくれまぁした! あなたのこと少し調べて興味湧きまぁした。あなた日系アメリカ人。そしてチャイニーズのお友達。実は私も彼らとお友達。ともに国をよくしようとよく議論しまぁす」


 つまりこういうことだ。

 渋谷の情報屋ハオイーシェンという共通の友人を介してわたしが立川に来たことを事前に察知した。

 報道腕章というデカい目印があるから見つけるのは容易いのだろう。

 わたしは無意識に腕章をさすっていた。


「それでですね。わたしはあなたにお願いありまぁす。東京の旅行先として東部と比べて西部はぜんぜんなのでぇす。もしかしたら軍事境界線と水田しかないと思われていまぁす。ですからあなたに行ってきてもらいたいのでぇす」

「どこへでしょうか?」

「ここから少し北の所沢でぇす。あとはさらに北の川越でぇす。どちらもかつての小旅行先ですね」

「そういうことですか。わかりました。今日にでも見に行きましょう」

 梅田区の新リゾートエリアのオープンセレモニーまでまだ日数的にも余裕がある。

 西東京をもう少し見て回ってもいいと思った。

「ケビエン! それなら私の方で川越のホテルを予約しておきましょう」

「ありがとうございます」

「あなたとても話の分かるいい人でぇす。聞いてた通りですね。昔聞いた働き者の日本人でぇす。あなたはグアパ。あなたはトラハバドゥーラ!」

「えっと……ありがとうございます?」


 エル・サンチョ議員と別れて、わたしは少しだけ軍事境界線周りを見て回った。

 それから写真も撮った。

 資料の収集も済んだのでわたしは展望タワーへと向かった。

 マイケル夫妻と合流した。


「あら、それじゃあ今度は川越に行くの?」

「はい。これから行ってこようかと思います」

「所沢に行くのなら西武南北線だね。あの展望デッキから見えたメガソーラーを近くで見れるはずだ。南北線とメガソーラーといういい構図の写真が撮れるだろうね」

「なるほど、それはいいですね」

「私たちのことは気にしなくていいわ。今日は立川のホテルに泊まるつもりだから」

「わかりました」


 2人とは立川で別れた。

 昼にメキシコ料理店を覗いたが、行列ができるほど繁盛していたので諦めた。

 代わりにバーガーショップで食事を済ませた。

 さすが世界展開の店。

 ハワイと味が変わらない。

 

 軽く食事を済ませて、わたしは西武南北線に乗り込んだのだった。

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