表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2126:日本連邦へようこそ!  作者: 日本連邦観光公司
13/24

第4話 千住④

「これおいしい!」

「でしょ~」


 わたしとリアムはそんな屋台で綿菓子を2つ買った。

 仲よく食べながら両親を探す。

 確かさっき見た地図によるとコンサート会場付近に運営本部があった。

 そこに迷子センターがあるはずだ。


 屋台街はふしぎな雰囲気だった。

 ふしぎというよりちょっと違和感があった。

 お祭りの屋台。

 綿菓子。

 チョコバナナ。

 りんご飴。

 金魚すくい(金魚のおもちゃ)。

 絶対に当たらない射的。

 焼きそばなどB級グルメ屋台。

 ラーメンの屋台。

 そば、うどんの屋台。

 すしの屋台。江戸時代かッ!

 焼き鳥の匂いはすこし惹かれる。

 松坂牛と書かれた謎のステーキ肉。

 日本連邦が鎖国しているのだから松坂牛はありえない。

 それ以前に看板の文字が「松土反午」と書かれている。

 牛じゃなくて(ウマ)

 もはや間違い探しレベルである。

 ほかにはサーカスとかで見るホットドッグスポット!

 アメリカかッ!

 屋台を知らない人が適当な画像データを使ってAIに作らせたような些細だが、気になる違和感がどこまでも続いていた。

 間違っていると指摘する人がいない。

 そういうことなんだろう。


 屋台が今度はフリーマーケットになった。

 偽ブランドの山が二束三文で売られている。

 中には出品物に仏壇仏具だったものや、場違いな高級腕時計なんかもあった。

 盗品が売られているのだろうか?

 とにかく旅行客が持っていそうな小物の品揃えがよくて、いろいろ勘ぐってしまう。

 その片隅に本屋が新書を売っていた。


『財政破綻とグローバルサウス融資連合―国際都市・東京復活の歩み―』『なぜ連邦は鎖国した?』『排除の論理~独裁者たちのデスゲーム~』『ソビエト連邦、北朝鮮、日本連邦、情報統制の先にある暗い未来』、『第二次世界紛争の敗北者はだれ?』『核融合発電を反対するこれだけの理由』『国営臓器機関、モラル無き生命科学の暴走』『自由を求める子供たち《ディストピア予想写真集》』『破滅系資本主義、日本ファーストの成れ果て』


 ざっと見た感じ思想の強めな本が並んでいる印象だ。

 どれも手に取って読みたいとは思わない。

 店主はヒマつぶしにラジオを聞いていて売れ行きもよくなさそうだ。


『中年男性の声――忘れてはいけないのが今から40年前、日本連邦が鎖国して震災復興に本腰を入れた東京の経済に大打撃を与えたことです。しかも鎖国する際に東京で復興支援していた日本人が帰路についてしまい、そこから復興がぜんぜん進まなくなってしまいました。とても悲しく、つらい日々は今も忘れられません。リーさんはどうでしたか? というお手紙ですね。はい、私が小学生の頃の話ですね。当時は電気も水道もなく、支援物資を得るための行列を家族全員で並んでいましたね。それも一世帯の受け取り量が決まっていたので家族全員で赤の他人のふりをしてとにかく多く得ようとしてましたね。まあ当時並んでいた人は全員やっていて、受け取ったその日に闇市に売りに行ってましたよ。当時は上級官僚ですら闇市で食料を買わないと生きていけないぐらいでしたからね。もう自分たちも必死でしたよ。その時に楽しみだったのがラジオから流れる曲でしたね。

 若い女性の声――そんなリーさんも懐かしく感じる選曲。ラジオネーム・令和ちゃんのリクエスト昔懐かしの令和曲選から1曲――』


「ねえ、ねえ。おねえちゃん聞いてる?」

「あ、うん。なあに?」

 ちょっとラジオの内容を聞き入ってた。

「川に出ちゃったよ」

「え?」

 目の前に穏やかな川が流れている。

 荒川。

 向こう岸は日本連邦だ。

 両岸が対照的なのはこちら側にはテント村、ホームレスの集落が形成されている。

 日本連邦側にはずらっと壁ができている。

 デジカメの倍率を上げて画面を見る。

 幅1メートル高さ6メートルほどのコンクリートの壁を何枚も何枚も並べるイスラエル方式の壁だ。

 壁の上にはフェンスがネズミ返しのようにやや前方に斜めに伸びている。

 そのフェンスに鉄条網が張り巡らせてあった。

 等間隔に10メートルほどの小さなタワーがあって、頂上には機関銃のような銃器が設置してある。

 全自動なのか荒川を行き来する荷船に反応して銃口が常に動いていた。

 壁には色褪せたラクガキがあった。

 たぶん自動化される前は向こう岸まで渡って書くことができたのだろう。

 新しいのが無いということはもう渡れないことを如実に物語っている。

 世界と隔てる拒絶の壁。

 まるで刑務所のようだ。

 そして、この光景をを見れるということは――。

 わたしは――。

「おねえちゃんもしかして方向音痴?」

「だよねー。わたしもちょっとそんな気がしてたんだ」

「もう、川に出たってことはあっちに橋があって、その向こうがコンサート会場だよ」

「あ、はい」


 さて方向音痴のお姉ちゃんと迷子の少年。

 川沿いの道を少し歩くと千住新橋が見えてきた。

 千住新橋は荒川を挟んで東京と日本連邦をつなぐ数少ない橋の一つになる。

 支援物資を満載にしたトラックがこの橋を通ってきていたという。

 今は封鎖されている。

 その橋の前でイベントをやってるのか人々が集まっていた。

 だが近づくとその喧騒と熱気からイベントではないことに気が付く。

 検問所前にはタイヤの無い壊れた車や廃タイヤを巻きつけたコンクリがバリケードのように置かれていた。

 バリケードの外側をデモ隊の人々が手に手を握り人間の鎖となっている。

 そして声を大にして一斉に叫ぶ。


「独裁者に死を! 人殺し集団に死を!」

「平和、自由、人権、女性!」

「原発反対! 遺伝子汚染を許すな!」


 わたしは気づいた。

 これは平和イベントではない。

 反連邦の政治団体が主催する政治イベントだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ