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2126:日本連邦へようこそ!  作者: 日本連邦観光公司
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第4話 千住③

 足立区北千住。

 南千住が荒川区に対して足立区になる。

 行政が別なのには歴史的なふか~い理由があるようで、特にない。

 かつて千住が宿場町だったころはひとまとまりとして扱っていた。

 明治以降の市町村の再編のときに南北で分離することが決まった。

 理由の一つとして南北で産業構造が違いすぎたのがある。

 南は物流の拠点。

 北は――遊郭になる。歓楽街だ。

 そこから北千住は日本の発展に合わせて街の様相は変わっていった。

 北千住の運命を決定づけたのが水害対策として始まった荒川河川工事になる。

 荒川。荒れる川。The Rough River.

 歴史上何度も大水害を起こしていて、時の権力者たちが治水に難儀していた。

 近代に入り蒸気の力を最大限使って人工的に作り出したのが荒川になる。

 そのため北千住を衛星地図で見ると隅田川と荒川に挟まれた半分島のような独特な立地になった。

 地質や地形に興味のある旅行客になってこれほど面白い所はない。

 なにせ自然のままに蛇行する隅田川のすぐ隣を近代科学の力でまっすぐ掘り進んだ大河が流れている。

 それはつまり足立区は荒川の両岸を管轄することになる。

 逆に荒川区は隅田川という小さな川(河川工事後以前は荒川と言われていた)で区切られて、荒川と接していない荒川区となったのだ。


 この独特の地形が悲劇を生んだ。


「北千住は何もないのね」

「そうなんですよ。ちょっと検索してみたら、何でも日本連邦が鎖国する際に荒川を自然境界線、つまり国境にしたみたいなんです。それでこの北千住は連邦側になった足立区の一部だったため空白地帯になっちゃったみたいですね」

「あら~けれどそれでなんで建物が無くなっちゃったのかしら?」

「支援物資さ。ここは日本連邦から災害支援物資が届いたため人が大勢集まってスラム街みたいになってたんだよ」

「そうみたいですね。それで冬を超えるための人道支援の固形燃料が北千住一帯に行き届いたときに火災があったみたいです」

 北千住大火災。

 難民キャンプのボヤはみるみる広がって大火災になった。

 わかっているだけで死者行方不明者1000人以上。

 浮浪者や不法入国者が多かったため、その正確なところは不明。

 北千住の半分ほどが焼け野原となった。

 それから30年あまり、今は荒川区に再編されていた。


 わたしとマイケル夫妻は震災なんとかコンサートのイベント会場に向かった。

 ゆっくりと、のんびりと、写真を撮りながら、おしゃべりをしながら。

 北千住の駅を出るとすぐにイベント会場のスタッフが道案内をしていた。

 話を聞くとイベント会場は火災後にいったん更地にした場所で、そこでチャリティーコンサートを定期的に催しているという。

 このイベントで得た収益はすべて復興基金に充てられるという話だ。




「わっ!」

「あたっ!」


 前を見ないで駆けていた子供が後ろからぶつかってきた。

 男の子は痛いというように鼻をさする。

 5~6歳ぐらいかな?

 金髪の髪とユニオンジャックのワッペンをしている。

 たぶんイギリス人かな?


「キミ、前を見ないと危ないじゃない。両親は?」

「え!? う~ん。あれ~~?」


 男の子は周りをキョロキョロしてから、不安げにこちらを見て、口をパクパクさせてからやっとの思いで言葉を出した。


「ボクのパパとママはどこ~?」

「あら、迷子かしら?」

「名前はなんて言うの?」

「リアム……」


 わたしたちは周囲に声かけしたり、マイケル夫妻が白い布を巻いた杖をぶんぶん振ったりして両親を探したが見つからなかった。


「この規模のイベント会場なら迷子センターがあるはずだからそこまでこの子を連れて行った方がいいね」

「そうですね。わたしが連れていきます」

「私たちは歳だからね。ちょっとその辺で休んでいくわ」

「はい。わかりました」

 2人はゆっくりと机とイスのある方に歩いて行った。

 わたしはリアムと一緒にイベント会場を見て回ることにした。

 心細く、不安なこの子と手をつなぎ、両親を探した。


『北千住平和復興祈願イベント会場 地図』

 会場の地図が描かれた看板があった。

 描かれているのが正しければかなり規模の大きい。

 地図の中央に道路が通っていて、道路の北側に「検問所(千住新橋)」と書いてある。

 この大通りの東側に北千住駅といろいろなイベント会場が書かれている。

 そして反対側の西側に平和コンサート会場と書かれていた。


「おねえちゃん見てみて、お祭りだ!」

「わ、これ屋台街だよ。人が多いわけだ」

「ね、ね。ちょっと遊んでいい!」

「う~ん。まあご両親がいるかもしれないし、見て回りながら探そうか」

 ここでぐずって泣かれても困る。

 それにこの子も寂しさや不安を誤魔化したいのだと思った。

 なんでそう思ったのだろう?

 思い出した。

 昔、まだハワイの日本人コミュニティに活気があった頃。

 年に一度、日本のお祭りを開催していた。

 まだ小さかったわたしは一人はしゃいで祭りの会場で迷子になった。

 近所のお姉さんがわたしを見つけて手をつないで両親を探してくれた。

 そういえばその時に一つ条件を守れば屋台で何でも買っていいと言ってくれたのを思い出した。

「リアム君。じゃあこの屋台でほしいのを一つだけお姉ちゃんが買ってあげる」

「ほんと!」

「ただし、片手で持てるモノだけね」

「え~なんで~」

「だってもう片方の手はお姉ちゃんの手でふさがってるんだから、片手で持てるモノだけだよ」

 リアムはちょっと恥ずかしそうになって、うん、と頷いた。

 まるで昔のわたしを見るようだった。


 屋台の商品をキラキラした目で見ながら奥へ奥へと行く。

 たぶん迷子センターがある方へと。


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