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2126:日本連邦へようこそ!  作者: 日本連邦観光公司
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第4話 千住①

 東京の北8キロほど先に千住という地域がある。

 そこを目指した。


「山手線はね。北側しか運行していないんだ」

「たしか南側は陥没が多いんでしたっけ?」

「そうなんだよ。もともとは東海大地震(=旧南海トラフ巨大地震)の影響で関東、それも地下事業が活発だった東京南部の各地で陥没が発生してしまったんだ。つまり東京側の震災はその実は人災なんだよ。けどしょうがなかったんだ。東京は国際都市として世界中から移民を呼び込んで無理をしてでも発展しなきゃいけなかったんだ」

「どうしてですか?」

「連邦だよ。日本連邦が東京なしで破竹の勢いで経済成長していったんだ。そもそも喧嘩別れしたのも東京を擁する旧日本国側が”政府の補助金なしで立ち行かない地方自治体に経済発展などありえない。おとなしく政府の方針に従え”と言う感じのことを言っちゃったんだよ」

「それはカチンときますね」

「そうなんだよ。それで連邦側は旧日本国との一切の経済連携を拒否して独自の経済政策をはじめちゃったんだ。慌てて旧日本国も東京の経済優先。当時は関東一帯が旧日本国だったからね。物流の増加のために東京と横浜の間に地下鉄や地下高速道路の建設ラッシュになったんだ。ニューヨークではとにかく連邦と旧日本でどっちに投資するかとかどっちが勝つかとか、要するにかけの対象になってたんだ。僕も散々儲けさせてもらったよ」

「あはは……さすがです」

 ニューヨーカー。

 投資の話になると目つきが変わる。

 ジェシーが助け舟を出す。

「もう仕事の話はいいでしょう。外の景色を楽しみましょう」

 マイクは鉄道の旅の醍醐味を逃すところだと言って視線を外に向けた。

 わたしもつられて外を見る。


 神田、秋葉原、御徒町、外の風景は東京とあまり変わらない。

 高層ビルがなくなり代わりに背の低い住宅や雑居ビルがどこまでも続く感じだ。

 かつて駅を中心に栄えていたらしい。今は衰退している。

 例えば秋葉原。

 電気街として有名になり、新しいテクノロジーが出現するたびに様相を変えながら発展していった。

 震災後は略奪が横行して、電力不足による家電需要の低下が追い打ちをかけた。

 今はコスプレ風俗街がメインで、コスプレのコンテンツから当時の面影がうっすらわかるぐらいになっている。


 都市の建物がどんどん過ぎ去っていくが、 統一感のある建物がずっと続くものだから何とも変わり映えの無い風景だ。

 この建物を知っている。

 ゴシック様式とかバロック様式とか、あるいはイギリスのレンガ様式のように見ただけで特徴がわかる建築様式がある。

 そういう系統で表現するなら「ガザ様式」の建物になる。


 ガザ様式。

 ガザとはパレスチナのガザ地区のことになる。

 第一次世界紛争が終結すると、今度はガレキと廃墟からの復興プロジェクトがはじまった。

 求められたのは低コスト大量供給の住めればそれでいいという廉価な家だった。

 材料はがれきと海水。そして特殊な添加剤だ。

 粉末状にして混ぜ合わせてつくった即席の生コンクリートを3Dプリンター出力装置を使って積層するのだ。

 本来はウクライナ復興のために開発されたはずが、ウクライナが世界最大のドローン輸出国になり、ドローン対策の建築に莫大な補助金を出せるようになった。

 そのためプリント式建築メーカーが目を付けたのが”ガザ”だった。

 3Dプリンター建築様式は復興プロジェクトのために大規模に活用したガザ地区の名と共に広まったためガザ様式と呼ばれるようになった。

 これは同時にガザ様式とは災害多発地域や紛争地帯の建物、テロリストの家あるいは貧困建築というレッテルにもなった。



「ああいう建物って何階建てまでできるのかしら?」

「最高で15階まではいけるらしいよ。ただ日本は震災後の法改正で3階建てまでに制限してるから無理だけどね」

「ふつうは2階建てまでですね。3Dプリンター建築は鉄筋が入ってないので、後付けで鉄筋入れたり外枠だけプリントして生コンを別途注入したりしないと高層化しづらいんです」

「あら詳しいのね」

「まあ近所に結構あるんで」


 まるで実家に帰ってきたみたい。


 ハワイの日本人コミュニティもだいたいガザ様式の住居だ。

 日本連邦が鎖国した日、東京から脱出した一般人に資産と言える資産はなかった。

 だから新参者たちは3Dプリンターで家を建てるしかなかった。

 わたしの家もおじいちゃんが仮住まいとして3Dプリンター建築で家を建てた。

 それから40年、なんだかんだ改築しながら住み続けていた。

 だから一部にガザ様式、つまり3Dプリンターの積層痕がついた壁が残っている。

 パパはそれがイヤで休日によくDIYをしていた。

 わたしはよくパパの後ろで手伝いをした。


 だから3Dプリンター建築を見かけると幼い日を思い出す。すこしセンチになった。


 山手線から常磐線に乗り換えて南千住まで来た。

『南千住~南千住~』

 車内アナウンスが目的地の到着を告げる。


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