私の二重人格生活の始まり。
私はフローレンスに体を乗っ取られた。それに、今は私の体の中にフローレンスがいる。
私とフローレンス。一つの体に2人の人格。この状態は二重人格っていうものなの?
それに「理由があって」って、そんな事はフローレンスの勝手だ!
言わば、私は彼女の巻き添えになったのではないのか。フローレンスは何故、異世界の私を選んだんだ?
ここのことろをしっかり聞かなくっちゃ!
『琴子さん。少し、お座りになられたら如何?わたくし、立っていると疲れますわ。それに、向こうから誰かが来られるようですわよ。』
「疲れるって誰がよ?この体は今は私の物。あんたに指図は受けない。」
『琴子さんったら素直じゃないのですね。ほらほら、向こうから誰か来られますわ。』
「エッ!誰か来る?」
私は彼女に言われて前を見たらドミトルさんがこっちに歩いている。
ドミトルさんは私を見つけて早足でこっちに歩いているみたいだ。
私は勿論、ドレスの裾をつまんでお辞儀。
「ドミトル様。」
「フローレンス様ではありませんか。何故、此処に?」
「散策ですわ。ドミトル様こそ何故、この庭園に?」
「まぁ、散策です。どうですか、私と一緒に歩きませんか?」
「宜しいのですか?」
「勿論。」
意外な人に出会っての散策。私とドミトルさんは東屋に行かず、東屋の周りを歩いた。
その時、フローレンスが『まぁ~!ドミトル様じゃございませんの。わたくしも、ご挨拶をしなくてはなりませんわね。琴子さん。』
(ややこしくなるから、あなたは挨拶なんかしなくていい!)
『なんて、酷いお言葉なんでしょう。』
(何、言っているの?我慢しなさい!)
それに、ドミトルさんとの挨拶はさっきしたわよ。今は私とドミトルさんが散歩してるのよ。
今更、「こんにちは」っておかしいじゃないの。
「フローレンス様。何かお困りな事は御座いませんか?何でも仰って下さい。」
困っている事?...そうだ!ドミトルさんは前后の事を知っているかも。
前后の亡霊のことを聞けばいいんだ。
「あの、ドミトル様。お聞きしたい事が御座います。今、後宮で前后様の亡霊が出ると言う噂があるのですが本当にこの東庭園で前后様の亡霊がお出になるのでしょうか?」
「前后様の亡霊ですか?クククク・・・そのような噂があるのですか。...そうですね。その噂はラグジュル陛下に直接、お聞きになられたら如何ですか?」
「ラグジュル陛下にですか。」
『...!ラグ?琴子さん。今、ドミトル様はラグジュル陛下と仰いましたわね。』
(そうよ。ラグジュル陛下...フローレンス。今、私に話しかけないでよ。)
「フローレンス様?どうかされましたか?」
「い、いいえ。ラグジュル陛下は...(ちょっと!フローレンス!何するの!)」
『ラグ...何所にいるのか聞いていただけます!琴子さん、早くお聞き下さいませ!琴子さん!』
(分かったわよ!聞くから、私の頭の中で大きな声を出さないでよ!)
「ドミトル様。ラグジュル陛下は、今どこにおられますの?」
「陛下は東屋におられます。今から東屋へ行かれたら如何ですか?」
「今、わたくしが面会しても宜しいでしょうか?」
「勿論。フローレンス様が行かれたら、陛下はお喜びになられます。」
『琴子さん!早く東屋に行って下さいませ。早く!早く!琴子さん。琴子さん!』
(分かったわよ!行きゃ良いのね。)
「ドミトル様。わたくし、行ってみます。」
本当に、大変だわ!なんで、私がフローレンスの言うことを聞かなきゃならないのよ。
この子の言う事を聞かなかったら、頭の中で「琴子さん。琴子さん。」って繰り返し言ってるし。
私を何だと思ってるの!私はあなたの人形じゃないわよ!
でも、仕方がないのよね。この体は元々、フローレンスの物なんだから本人さんがこの体に返ってきたんだもの。この子の言う事を聞かないと私の頭の中で「琴子さん」ってしつこく叫ばれるのはごめんだわ。
気のせいか、私の足取りは軽い。きっと、フローレンスの気持ちがそうさせている。
反対に、私の気持ちは足取りは重い。
そして、東屋に行ってみるとラグジュル陛下は東屋の玄関の扉を開けっ放しで部屋から窓を見ていた。
(なんか、体がおかしい...エッ!...ちょっと、あんた!)
『琴子さん、少しの時間で宜しいの。体を返していただきますね。』
(ウソでしょう~!...)
「ラグ...わたくしですわ!フローレンスです。」
「やあ。フロス。どうしたんだ?フロスもこの庭園にいたのか。」
「... ...ラグ。会いたかった!お元気で御座いましたか?わたくし、わたくし、あれから...」
(ちょっと!...キャア~!陛下に抱きつかないでよ!...何なの?)
「フロス?...記憶...記憶が戻ったのか?」
「え?...ええ。記憶...そ、そうですわ。もう、すっかり記憶が戻りました。」
「そうか。良かった。本当に、驚いたぞ。何年ぶりかでフロスに出会った時にフロスは俺のことを知らないと言ったからな。だけど、本当に良かった。」
「ラグ。」
(フローレンスさん。フロスちゃん!どうなってるの?ちょっと、私と代わって!)
『少し、琴子さんは黙って下さいませ!久しぶりにラグに会ったんですもの。わたくし、嬉しいのですわ。』
(私も、ラグ陛下に聞きたい事があるんだから!)
『もう!琴子さん。折角、ラグと会えたのですよ。少しくらい良いじゃありませんか!』
(ダ~メ!あなたはここまでよ!引っ込んで!)
『アッ!もう~琴子さん、何をなさいますの!』
「...フロス?大丈夫か?」
「え、ええ。ホホホホ・・・・ラグ、お聞きしたいのですが。今、この後宮で前お后様の亡霊が出ると噂されているのですが本当の事なのでしょうか?」
「前后の亡霊?...ああ、アレか。亡霊話しはウソ。」
「...ウソなのですか。でも、何故ウソが後宮に出回っているのでしょうか?」
「フロスだけには教えてやろう。亡霊話しが出回れば、東庭園に来る者はいないだろ。俺はこの庭園が好きだからな。それに、もし誰かがこの庭園にでも来たなら俺の事が分かってしまう。それに、前后、俺の母上はこの後宮では亡くなっていない。だが、誰にも言うな。」
「... ...そのような理由でしたの。誰にも言いませんわ。」
「そうだ。そうでもしなければフロスとこうして会えないし。話しもできない。」
「... ...」
私はラグ陛下の理由を聞いて、馬鹿らしくなった。単にラグ陛下の居場所のためだったなんて...
確かに、前后の亡霊話しを流しておけば皆、近づかないのは尤もな話し。
それにしても、ラグ陛下のお母さんってこの後宮で亡くなっていないんだ。じゃあ、何所で亡くなったの?...まぁ、いいや。詳しくはフローレンスに聞けば良い事だし。
(フローレンス。部屋に戻るわよ!私の聞きたかった事は分かったし。行くよ!)
『エッ~~!酷いですわ!もう少し、ラグとお話しをさせて下さいませ!)
(ダ~メ!)
「ラグ。わたくし、用を思い出しましてのでこれで失礼させて頂きます。」
「アッ!フロス...もう、部屋に戻るのか?もう少し良いではないか。」
「いえ、わたくしの家庭教師や侍女が待っておりますから。これで失礼させて頂きます!では、ごきげんよう。」
『とょっと!琴子さん。ラグに失礼じゃありませんか!』
(いいのよ!私は疲れたの!戻るわよ!)
『わたくしは、まだラグと話していたいのです。琴子さん、聞いています?琴子さん。』
(...聞いているわよ!兎に角、アンのことも心配だし部屋に戻るよ!私も、あなたとラグ陛下の関係も聞きたいし。)
私はもう1人の私と部屋に戻るために東庭園の出入り口まで歩いて来た。
それにしても、噂の后の亡霊のことを確かめようと東庭園に来たけど、本当に驚いた。それに、ここでフローレンスに出会うなんて思いも寄らなかったし后の亡霊もウソだと分かった。
だけど、皆...皆、勝手な事ばかりして!私は無性に腹が立ってきた。
『琴子さん。そんなにイライラされますと美しくなれないですわよ!』
(うるさい!いちいち話しかけないで!)
アッ!... アン...あの子に、なんて言い訳をすれば納得するんだ?




