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西の魔女商店ー大地の紋ー  作者: 月瀬ハルヒ
第二章 帰らない手紙 ―Via―
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第5話 消えた住所

西の魔女商店から自宅に戻った奈緒(なお)は、部屋のパソコンの電源を入れると、古い地図や住所表記の変遷をどこで調べられるのかを検索した。

検索で上がってきたのは、国土地理院の「地図・空中写真閲覧サービス」という名前だった。

奈緒はその名称をクリックすると、表示されたページをゆっくりと読んでいく。

旧版地図を年代ごとに確認できるらしい。

古いものは明治期からあり、現在までの地図の刊行履歴も確認できるという。

その文章を見た奈緒は、鞄に入れたままにしていた封筒の束を取り出すと、宛先の住所を見た。

けれど、手紙に書かれているのは現在の住所ではない。

旧住所のままでは、今の地図上でその場所を特定するのは難しそうだった。


「ここにある住所じゃ、すぐには調べられないか……」


奈緒はそう呟くと、パソコンの画面へと視線を戻した。

ふと何かを思いついたのか、国土地理院のページにブックマークを付けると、検索画面へ戻る。


「……もしかしたら、自治体でも同じような資料があるかもしれない」


そう思い、住所のある地域の地方自治体の変遷資料を検索する。


「あった……!」


検索画面から開いたページには、県内の市町村の変遷が確認できるとある。

スクロールした画面には、明治時代の市制・町村制から現在までの市町村の変遷が一覧化されていた。

奈緒は検索欄に、封筒にある住所の町名を入力してみる。

けれど、検索結果は――


該当する住所はありません。


「……やっぱり、この住所じゃ出ない」


確か前に自分が調べた時は、この住所の町が市へと合併されたとあった。

それならば、いつ頃この町が合併したのかを調べれば、何か出てくるかもしれない。

そう思い、次は町名を検索した。

検索結果の表示には、住所に書かれた町が市に合併された日付が表示された。

表示された合併の日付をクリックすると、旧町が現在の市のどの地域に当たるのかが記されていた。


「……ここまでは分かる」


奈緒は封筒の住所と画面を交互に見る。

町の名前は現在の地名へ置き換えることができた。

けれど、その先にある番地が一致しない。

現在の地図へ入力しても、該当する場所は表示されなかった。


「番地も変わってるのかな……」


再び検索欄へ戻り、今度は旧町名に「古地図」「住宅地図」「郷土資料」という言葉を加えて検索する。

いくつかの検索結果を辿ったところで、奈緒の手が止まった。


市立図書館――郷土資料。


そこには、合併前の町の住宅地図や町史が所蔵されているらしい。


「……ここなら、わかるかもしれない」


奈緒は市立図書館のホームページを開き、住所と地図を確認した。



西の魔女商店へ行った日から二日後の土曜日、奈緒は市立図書館に向かう。

地元の公立図書館であれば、ずいぶん昔になるが学生時代に利用したことはある。けれど、市立図書館に来るのは初めてだった。

図書館の入り口を抜けた奈緒は、まっすぐ受付にいる司書のもとへ向かった。


「あの、調べたいものがあるのですが」

「はい。どういったことをお調べになりますか?」


奈緒の言葉に司書がにこやかに答えた。

奈緒は鞄に入っていた手帳を取り出すと、先日調べた住所を見せる。


「この住所について調べたくて。あ、もとはこちらの住所なんですが平成の合併で住所の詳細が分からなくなってしまって」


そう言いながら母親の書いた手紙の宛先も見せる。

暫く文字を追っていた司書の視線が奈緒へと向いた。


「こちらは県外の住所ですね。当館では県内のものであれば閲覧可能なんですが……」


その言葉に、奈緒が知らずにため息をついた。

ここまできて、振出しに戻ってしまった。

そう思い、奈緒の視線が手帳へと落ちると同時に司書の「でも、」という声が耳に届く。


「あちらの蔵書検索用パソコンの画面には当館の検索と国立国会図書館サーチというのがあります。国立国会図書館サーチであれば、全国の都道府県立図書館や政令指定都市図書館の他、大学や専門図書館など、データ連携している全国の図書館の所蔵資料を探すことかできますよ。ご案内しますね」


司書の言葉に奈緒は慌てて顔を上げると、先に歩き始めた司書の後を追った。

受付からそう離れていない一角、半個室となったブースの1つをすすめられ、奈緒は画面の前の椅子に座った。

画面には当館蔵書検索というバナーと、国立国会図書館サーチというバナーがある。

奈緒は備え付けのマウスに手を伸ばすと、国立国会図書館サーチの方をクリックすると、検索欄に母の書いた住所の合併する前の住所の一部を入力するとそのあとに住宅地図と入れ、検索ボタンを押した。

場面が切り替わり、検索結果に住宅地図、町史の文字が並んだ。

奈緒は住宅地図の資料名をメモ帳へ書き写した。


手紙が書かれ始めた時期。

そして、住所が現在のものへ変わった時期。

その間にある年代の住宅地図が必要だった。


「でも、住宅地図は年代が合うものじゃないと意味ないし……」


そう言いながら画面を戻し、検索結果一覧を見る。


町史。


ここには合併した年月日や当時の町名、その後の町名変更などあるかもしれない。

そう思い、資料名をすべて確認していく。

メモした資料にはすべて「入手可能性 利用可」とある。


「利用可、ってことは、借りられるのかな……。さっきの司書さんにこの資料、取り寄せできるか図書館に相談してみよう」


そう言うとパソコンの検索画面を閉じ、先ほどの司書のいる受付へと足を向けた。


「お探しのものは見つかれましたか?」


奈緒がブースから出てきたのを確認したのか、司書が笑顔で問いかける。


「はい。先ほど調べていた資料なんですが、こちらは取り寄せできますか?」


そう言いながら、奈緒はメモした資料を司書に見せた。


「こちらお預かりしてもよいですか?確認してきますね」


メモを受け取った司書は、受付の奥にある扉を開けると中に入っていく。

司書が戻るまでの時間、奈緒はどうか取り寄せができますように、と祈るように扉を見つめ続けた。







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