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神世界のエスカトロジー  作者: 蒸しエビ
第二章・魔人
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14/21

三欠片目『陰キャ』

 第一章、一欠片目『鬼との遭遇』を改稿しましたので、良ければ読み返して頂けると嬉しいです!!

 陽キャ魔人を倒したノア。新たな仲間、神楽と共に動き出そうとしていた。

 

「よし、ノア!夜になる前に町行くぞ!!」

「ま、町…だと!?」

 

 今まで、蒼龍との旅では意図的に町を避け村にしか寄れず、せいぜいが立派な村止まりだった。

 そして今回、神楽との旅で初めて町に行けることに喜びを噛み締めていた。

 

「ヤマトだと村ばっかだったからな……やっと町にいける!!」

「え゙…」

 

 喉奥から漏れ出た神楽の声は、驚きと困惑が入り混じっていた。

 

「ノア…大和で言う村って何か知ってるか?」

「え?くさのやねつけた家があるばしょ?」

 

「……金銭的に余裕がなくて町に住めないやつらを森におい出して、町や街に被害がないように餌としての役割として生かされてる賤民集落の事だ……」

 

「???」

 

「つまり、一般人が観光気分で行くような場所じゃねぇって事だ」

 

 その説明を完全には理解しきれないながらもノアは一つだけ強く心に決めた事があった。

 

(つぎに蒼龍にあったら、いっぱつ殴ろう)

 

「取り敢えず、暗くなる前に町に向かおう。また魔人にあったら面倒だ」


        ◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「よし!着いたぞノア!!ここが海の町、干焼(ガンシャオ)だ!!」

 

「おぉぉぉ!!!こ、こ、これが町!?すげぇぇぇ!!?」

 

 まるで田舎から出てきたばかりで都会に驚く少年の反応をするノアに、思わずクスクスと笑いそうになる。が、「まるで」ではなく「そのもの」であることに気づき爆笑に変わった。

 

「ノア、腹減ったろ?この町は海の真横なだけあって海鮮が美味いんだ!!その辺の屋台ですら舌巻くぞ!!」

 

「おぉ!! あっ、でも前に蒼龍がヤドにとまったときにカネ?ってのが必要っていってたぞ」

 

(森育ちだからって金を知らないなんて事あるか?……もしかして物々交換だったのか?)


「ノア、お前森だとどうやって過ごしてたんだ?」

 神楽の素朴な疑問に首を傾げながらもぽつぽつと話し始める。

 

「えっと…森でトカゲつまえたり、川でサカナつかまえたり、クサとかきのみ食べてたぞ!!」

 

「え、野営?」

 

 内容があまりにもサバイバル過ぎるため、思わず野営と勘違いする。それ以前に、暮らし方を聞いたのに内容が全て食べることしか無い。

 少し心配になり恐る恐るといった風にノアへと問いかける。

 

「まさかとは思うが…ノア、お前……一人で暮らしてた訳じゃ……無いよな?」

 

「んー?デストと二人でくらしてたぞ!!」

 

(デスト……なんだ…聞き覚えが…。まぁ…いいか。

 取り敢えず一人で暮らしてたわけじゃねぇみてぇだが、だとしたら余計に常識が足りてないのがおかしい?)

 

 額にシワを寄せ熟考していると、ノアから不意に一言。

 

「なんか、おれがすんでた森はシラズモリ?って、いうらしいぞ。蒼龍がいってた!!」

 

「へー、シラズモリ……しらず…不知森(しらずもり)!?

 は?え?あそこ人住めんのか!?神隠しの森だろ!?

 霹靂神家の人間が調査に出て帰ってこなかったっていう大和の禁足地の一つだろ……」

 

(んな場所に住んでたら物々交換以前の問題だろ……商人消えるぞ……。いや…待てよ、確か禁足地に指定されたのは十年程前から……)

 

「神隠しの原因ってノアにあったりするか?」

 

 バッサリと、一切の包みもなく直で言い放った。

 どうやら包めるのは餃子だけのようだ……。

 そして、投げかけられた当の本人はと言うと——

 

「わからん!!」

 

 清々しい程、真っ直ぐに言い放つノアに神楽はただ一言。

 

「そうだよな!!知らねぇよな!!」

 

 ゲラゲラと笑い合う二人は端から見れば、仲間と言うより兄弟のように見える事だろう。

 

「そんじゃ、取り敢えず飯でも食うか。

 ノア、金持ってねぇだろ?俺が払うから、腹いっぱい食っとけ。そんかわり、メニューは俺セレクションな!!」

 

「おぉ!!ありがと神楽!!」


       ◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 


 翌朝、二人は宿屋で朝食をとっていた。

 

「神楽、おれたちどこに向かうんだ?」

 

「そうだな〜、ノア、お前元々ロキシアに行く予定だったよな? 俺も久々に行きてぇし、お前の仲間のソウリュウもいるかもしれねぇから行ってみようぜ」

 

 神楽の思いがけない提案に机を揺らす勢いで前のめりになり、元気よく答える。

 

「行く!!」


       ◆◇◆◇◆◇◆◇◆

  

 支度を整え、再びロキシアへ向かう旅が始まる。

 町を出て早々にノアが問いかける。

 

「神楽、ロキシアまでどんくらいかかるんだ?」

 

「そうだなぁ、ここから休まず直線距離で行けば俺の足で一週間ちょっとだな」

 

「おぉ!じゃあ、すぐだな!!」

 

「いや、今回は遠回りする。理由としては直線距離に鳳炎家があるからだ。アイツらに関わるとろくな事がねぇ……」

 

 実家の話とは思えない神楽のその口ぶりに、ノアは霹靂神家について語る蒼龍の姿を重ねる。

 二人とも、実家や身内に対しあまりいい印象を持っていない事が伝わってくる……。

 

「神楽……。ホウエンケってなんだ?」

 

「そういや、知らないんだったな。護神家って言う、神に仕える名家があってな。神籬(ひもろぎ)と磐座(いわくら)っつう二種類があるんだが、鳳炎家は磐座に属してんだ。」

 

「ゴシンケ?………あっ!蒼龍がまえに言ってたやつか!!」

 

「なんだ、説明してもらった事あんじゃねぇか。」 

(ノアの事だし知らん単語にこんがらがったのか?じゃなきゃ説明が長かったとか?)

 

「たしか、蒼龍はハタタガミケってやつだったな」

 

 その一言に神楽の目の色が変わる。

 

「霹靂神家!?……霹靂神でソウリュウつったら……ッ!霹靂神蒼龍か!?」

 

「神楽、蒼龍のことしってんのか?」

 

「あぁ、昔一度、会ったことがあるが……まさか、あの蒼龍だとは…。霹靂神家現当主、霹靂神龍鬼の一人息子…なんつうか色んな意味でヤバイやつだったな……」

 

(てか…ノアが説明されたのに知らないのって、あいつの『簡潔な説明』が原因なんじゃねぇか?ガキの頃にあった以来だが……変わってねぇみてぇだな)

 

 ノアの知る蒼龍は冷静沈着で博識、結構短気な仲間であり、ヤバいと評されるような人物では無かった。

 だからこそ、神楽の一言にはとても興味が湧いた。

 さっそく質問しようとした…。

 

「神ら——」

 

 その瞬間——

 

「下がれ!!」

 

 漆黒——いや、闇色の矢が足元を穿いた。

 突き刺さった矢は色が落ち——いや、剥がれていき、そして、そのまま影へと変わった。

 

「神楽、これって」

「ハァ゙ァ゙ー、町出て早々かよ……」

「ひへぇ!?」

 

 突然の奇襲に困惑でも警戒でもなく、心底嫌そうにため息をつく神楽に思わず、すっとんきょうな声をあげる。

 

          ▲△▲△▲

 

「ヤシシ!!たかが威嚇射撃にビビってやんのww」

 

 私の名前は隅(ユミ)。下位魔人よ♪

 私は昼間っから暴れる馬鹿な陽キャと違ってこの暗くて冷たい岩陰で私の視界(テリトリー)に入る不審者を撃ち殺してるの♪ 

 今日も今日とて心臓(ハート)を射貫いていくわ♪


          ▲△▲△▲


「ノア、気をつけろよ、陰キャの攻撃だ。」

 

「やっぱ、魔人なのか。どっから撃ってきたんだ?」

 

「大抵は岩陰にいるな。ただなぁ…ここらへん、土螻(トゥロウ)が穴掘りまくってっからなぁ……移動されんだよ」

 

「トゥロウ?」

 

「穴掘って人食う羊だ」

 

 もはや簡潔というより雑な説明だが、ノアにはそれで十分だったようでキョロキョロと穴を探し始めている。

 そして、再び矢が二人目掛けて飛んでくる。それも、先程と違い四方八方から同時に。


          ▲△▲△▲


「ヤシシ、四方八方からの同時攻撃、私が何処にいるか分からないでしょうね」

 

 私の弓には影を纏わせていて、通常よりも軽く引っ張るだけでも影が伸縮して威力、速さ、飛距離を調節できる。だから移動しながら着弾時間が同じになるように撃てば絶対にバレない!! 

 

「アタシの視界に入るのがわるいのよバァカ!!ヤシシシシww」

 

          ▲△▲△▲ 


 そして今、神楽の背後から矢が突きさろうと——

 

「よっと、これだけ明らかに威力が強いな……後ろか」

 

 振り返る事なく矢を掴み止め、そのまま他の方向の矢と比べ僅かに威力が高い事に気づく。

 蒼龍とは違う、圧倒的な場数と経験による冷静さと対応力にノアは目を輝かせる。

 

「よし、取り敢えずあっちの岩陰火達磨にするか」


           ▲△▲△▲

 

「う…嘘でしょ……キャッチされたんだけど……ま、マグレよね!!そうよ、そうに違いないわ!!」

 

 偶然に決まってる…たまたま視界の端に入ったとかじゃない限り、音すら飲み込む影を纏った死角からの矢を掴むなんて出来る筈ない…。

 

「そうよ、もう一発後ろから撃ってやるわ!!ヤシシシ……シ…え?なに、光?……ッ!炎!?」

 

           ▲△▲△▲


「名前聞いてねぇけど、燃え尽きろ!!」

 

 猛々しく拳を燃やし、後の岩陰に向け全力で拳を振るう。

 

『一矢鳳仙花』

 

 瞬間——神楽の拳から炎が離れ、火球となって岩陰に放たれる。まさに燃える魔球そのものであった。

 そして、岩に衝突すると同時に、岩を包むように炎は広がった。


           ▲△▲△▲


「あ、危なかった…危うく燃やされるところだったわ」

 

 なんで私の方向が分かったの?当てずっぽで取り敢えず撃ったら、たまたま私が居たとか?………運が強いやつなのね、きっと!!

 

「今度は上空から降らせてやるわ。ヤシシ、晴れときど弓矢を喰らっちゃえ!!」


           ▲△▲△▲


「やったか神楽!?」

 

「いや、多分逃げられたな。この感じだと直接撃つのは不味いと思って上空から降ってきそうだし岩陰入るか」

 

「おう!!」


           ▲△▲△▲


「ふぅ、コレ結構疲れるのよね…。ヤシシ、でもコレで終わったでしょう♪」

 

 降ってくる矢の方向が同じだとバレちゃうから連射するたびに他の方向に移動しなきゃだからキツイのよね。

 上空から降り注ぐ無数の矢になす術なく倒れるがいいわ。

 

「ん?あれ、あの二人は?………え!?なんで、なんで、岩陰に隠れてんの!?まだ降ってきてないのに………」

 

 私の苦労がこんな虚しい形で水の泡になるなんて……。

 

          ▲△▲△▲


 神楽の予想通り、無数の矢が上空より雨の様に降り注ぐ。普通の矢であれば燃やせるだろうが今回は影を纏っており炎は効かない。

 やはり隠れて待つのが最も正しい選択であった。

 

「神楽すげぇな!!ほんとにふってきたぞ!?」

 

「弓使いは結構ワンパターンだからな。慣れれば大体読めるようになる。それより、さっさとケリ付けねぇと…超遠距離から嫌がらせみたく狙ってくる事になる。あいつら勝てねぇって分かっても、一度噛みついたら離さねぇからな」

 

「どうやって倒すんだ?」

 

「そうだなぁ、手っ取り早いのはここら一帯焼け野原にする事なんだが…ノアがいるからな」

 

「ん?おれ?おれ、火きかないぞ?」 

「そうだよな、効かないよな………は?」

 

 その一言に頷いていた首を勢い良く、ぐりんと横に回転させる。

 

「え、効かないのか?火が?」

 

 コクコクと頷くノアに開いた口が塞がらなくなる。

 

「分かった。ノアを信じて…ここら一帯、燃やすからな!!」

 

「やっちゃえ神楽!!」

 

          ▲△▲△▲


「うぅ…取り敢えずここを離れてましょう……さようなら私のマイホーム…。」

 

 私を追い出した事、絶対後悔させてやるわ。24時間365日、いつでも見張って気を抜いたタイミングで超遠距離から撃ち抜いてやるわ。

 

「もう一発、囮として撃ってその間に全力ダッシュよ!!…って、ん?振りかぶって何を……」

 

          ▲△▲△▲

 

『蜀紅蓮(しょっこうれん)!!』

 

 拳が地面にぶつかった瞬間——炎がまるで水面を叩いたかのように舞い上がり、神楽を包むように大輪の蓮を咲かせた。

 そのまま、炎が波の様に周囲に燃え広がりあっという間に目視可能な範囲の岩陰が火達磨へとなった。

 ただ一つを除いて。

 

          ▲△▲△▲


「あっぶな!!」

 

 私が何処にいるか分からないから全方位を焼いたの!?ギリギリ影で防げたから良かったけどそうじゃなかったら死んでるわよ!?何なのよ…私はただ侵入者を撃ち殺して遊ぶのが好きなだけなのに……なんでやられなきゃいけないのよ!!

 

「絶対許さない!!絶対絶対絶対!!撃ち抜いてや——」

 

『原始星(プロトスター)!!』

 

「ギャァァァ!?!?なになになに、なんなの??」

 

 影を破壊し現れたのは、金の瞳をギラつかせ揺れる炎を拳に纏った——

 

「み〜つけた。よぉ、陰キャ…燃やしに来たぜ」

「ヒェッ……」

 

「じゃあ、さいな——あー、いや…。最近知ったんだが、魔人は名前に誇りがあるんだろ?逝く前に教えてくれよ、因みに俺は鳳炎神楽だ夜・露・死・苦」

 

 どっちが敵か分からなくなる言い方にノアも若干引いている。 

 そして、先程まで強気だった魔人は本人達を目の前に完全に沈黙——いや、小声だがごにょごにょと呟いていた。

 

「あ、え…と……わ、わた、私は……ユ、ユユ、隅」

 

「あ゙?わりぃが、聞き取れねぇからもう少しデカく言ってくれるか?」

 

「あ、え…す、すみま…」

 

「あ゙?なんて?」

 

「あ、い、いや、な、なにも……えっと……その…」

 

 吶る魔人の姿に、ノアはなんだかイジメている様な気分になってきた。傍から見てもイジメ…と言うかカツアゲしている様に見える。握っている筈の神楽の拳が、魔人の襟元を掴み脅している。

 そんな幻覚が見える程には魔人は俯き、しどろもどろとしている。

 

「神楽…正義ってなんだろうな……」

 

「え、なんだ突然。自分達の行いに疑問を抱く主人公みたいな言い方して」

 

「なんだそれ?」

 

「昔読んだ本にそういうのがあった。ところで何してんだお前?」

 

「ヒェッ……あ、えと……」

 (話してる隙に串刺しにしようと思ったのに……)

 

 魔人のだんまりに痺れを切らし、神楽は拳の温度を上げる。赤から橙へと変色していき、上昇する周囲の温度が肌をかさつかせていく。

 

「名前名乗んねぇなら殺すが、いいか?」

 

「ヒッ…まっ、まって…わ、私の、名前は、ユ、隅です」

 

「ユミか、分かった。じゃあ殺すぞ」

 

(なぜ!?え?え?これ助からないの?名前言ったのに!?)

 

「何驚いてんだ?名前言ったら殺さねぇなんて言ってねぇだろ。一方的に殺しに来た奴相手に名前聞いたしお友達、バイバイ。なんてするわけないだろ。なぁ、ノア?」

 

 救いを求める様にノアへと視線を向ける。だが決して目は合わせない。緊張するからだ。

 そして見つめる隅へのノアの返答は——

 

「おう!!向けた刃を引く時はどちらかが死んだときだけだってデストいってたからな」

 

 ノアのトドメの死刑宣告に膝から崩れ落ちる。

 いや——元々、影を壊された時点で膝はついていた。

 泣き崩れる様に掌を地面へと付ける…。

 

「ッ!…………し、死ねぇぇぇ!!」

 

 最後の悪足掻きと、影で串刺しにしようとする。だが、その瞬間——


『沙羅の花(しゃらのき)』


神楽の拳が隅の心臓を貫き、そのまま内側を焼き焦がした。


 儚く散りゆくその姿は、まるで……線香花火の様であった……。

ご覧いただきありがとうございます!

『神世界のエスカトロジー』第二章・第三話、楽しんでいただけたでしょうか?

今回は戦場の背景描写が少なく、分かりづらかったかと思います。

二章は一章よりも広範囲な戦闘になるので、より皆様に伝わるよう努力して参ります!

蒸しエビの成長にご期待ください!!

それでは、また次回。お会いしましょう。シースー!!

追伸:後書きのデータ飛んで萎えました…。

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