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「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした  作者: 希羽


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第8話:ダンジョン深層の古竜、肩こりが酷かったので治してあげた

 ズズズズズ……ッ。


 重低音と共に現れたのは、闇夜のような漆黒の鱗を持つ巨大なドラゴンだった。


 全長は優に50メートルを超えているだろうか。


 その巨体が動くたびに、ダンジョンの壁が軋み、天井からパラパラと岩屑が落ちてくる。


 『エンシェント・ドラゴン(古竜)』。


 神話の時代から生きるとされる、最強の幻想種。そのブレスは国を一つ地図から消滅させる威力を持つという。


「グルルルルォォォォ……ッ!!」


 ドラゴンが咆哮を上げた。

 大気が震え、俺の服がバタバタと暴れる。

 シロ(フェンリル)が俺の前に飛び出し、毛を逆立てて威嚇の姿勢を取った。


『終わった』

『ラスボス降臨』

『逃げておっさん! 流石にこれは無理だ!』

『シロちゃんでも勝てるかどうか……』

『放送終了のお知らせ』


 コメント欄は阿鼻叫喚の嵐だ。

 だが、俺は冷静にドラゴンの様子を観察していた。


「……ん?」


 俺は眉をひそめた。

 確かに凄まじい殺気だが、その動きには精彩がない。

 首を不自然に傾け、足を引きずるように歩いている。そして時折、苦痛に耐えるように顔を歪めている。


「シロ、待て」


 俺はシロを手で制し、杖も構えずにドラゴンへと歩み寄った。


『は?』

『自殺志願か?』

『おっさん何してんの!?』


 俺は大声でドラゴンに話しかけた。


「おい、アンタ。首、回らないんだろ?」


 ピタリ。

 ドラゴンの動きが止まった。

 金色の爬虫類の瞳が、豆粒のような俺を見下ろす。


「グルァ?」

「見てりゃ分かるよ。その巨体だ、重力が負担になってるんだろ。特に首から背中にかけて、筋肉がガチガチに固まってる」


 巨大生物の宿命だ。

 地上で生きる限り、自重は常に体を蝕む。ましてや数千年も生きていれば、体中ガタが来ていて当然だ。

 俺は職業病(荷物持ち)の血が騒ぐのを感じた。重荷を背負う辛さは、俺が一番よく知っている。


「楽にしてやるよ。ちょっとじっとしてな」


 俺はドラゴンの足元まで行くと、スッと両手を掲げた。


「アンチ・グラビティ」


 フワッ……。

 魔法を発動させた瞬間、ドラゴンの巨体が数センチだけ宙に浮いた。

 数百トンの質量をゼロにする。俺にしかできない芸当だ。


「グッ……?」


 ドラゴンの表情が変わった。

 常に全身を押し潰していた重圧が消え、驚きの声を漏らす。


「まだだぞ。ここからが本番だ」


 俺は続けて、ドラゴンの凝り固まった筋肉の結節点(ツボ)に狙いを定めた。


「グラビティ・プレス」


 ピンポイントで重力を掛け、筋肉の深層を揉みほぐす。

 普通のマッサージ師ならドラゴンの鱗に指が折れるところだが、重力魔法なら防御力など関係ない。内側から直接圧せる。


 グググッ、ゴリッ、ゴリゴリッ。

 岩盤が砕けるような豪快な音が響く。


「グルゥゥゥン……♡」


 ドラゴンが、聞いたこともないような甘い声を漏らした。

 目はトロンとし、あのだらしなく開いた口からは涎が垂れている。


「おーおー、凝ってるなここ。数千年の疲れが溜まってるぞ」

「フ、フゴォォォ……ッ(そこ、そこだ人間……ッ)」


 俺はさらに背骨に沿って重力の波を送る。

 ボキボキボキッ!!

 背骨が矯正される音が洞窟に響き渡った。


「よし、仕上げだ。リリース!」


 俺が指を鳴らすと、魔法が解除され、ドラゴンが地面に着地した。

 だが、その身のこなしは先ほどとは別物だった。

 ドラゴンは首をグルンと回し、翼を大きく広げ、まるで羽が生えたように(翼はあるが)軽やかにステップを踏んだ。


「グォォォォッ!!(軽い! 我の体が羽毛のようだ!!)」


 歓喜の咆哮。

 ドラゴンは俺の方を見ると、その巨体を寄せてきて……。

 ゴロン。

 腹を見せて寝転がり、喉をゴロゴロと鳴らし始めた。


「もっとやれってか? 現金な奴だな」


 俺は苦笑しながら、その温かい腹を撫でてやった。

 シロも「なんだ、敵じゃないのか」と警戒を解き、ドラゴンの尻尾にじゃれついている。


『……』

『ポカーン( ゜д゜)』

『これ、俺たち何を見せられてるの?』

『【朗報】伝説の古竜、整体で堕ちる』

『ゴッドハンド(物理)』

『ドラゴンが猫になったwww』

『癒やし動画認定しました』


 コメント欄は困惑から称賛へ、そして「癒やされた」という謎の感動へと変わっていた。


「まあ、シロの友達ができたと思えばいいか。お前、色が黒いから『クロ』な」


「グルッ!(承知!)」


 こうして、俺のパーティ(?)に、Sランクのフェンリルに続き、災害指定SSランクのエンシェント・ドラゴンが加わった。

 ……まあ、俺にとってはただの「デカい犬」と「デカい猫」なんだが。


「おーいクロ、口からちょっと火出してくれ。BBQの火力が足りないんだ」

「ボッ」


 ドラゴンのブレスで焼く肉は、遠赤外線効果で絶品だった。

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