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「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした  作者: 希羽


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第7話:ギルド本部からの緊急連絡、そして俺はそれを「着信拒否」した

 王都、冒険者ギルド本部。


 その最上階にある作戦指令室は、かつてないほどの緊張と怒号に包まれていた。


「おい、解析班! 映像の真贋判定はまだかッ!」

「完了しました! 魔法痕跡、環境音、フェンリルの挙動……すべて『加工なし』です! これは正真正銘、現地のリアルタイム映像です!」

「馬鹿な……Sランク指定の『銀嶺のフェンリル』だぞ? 国家騎士団が一個師団で挑んで壊滅した災厄だぞ? それが、なんであんな……」


 ギルドマスターである初老の男、ベルンハルトは、モニターに映し出された映像を見て絶句した。

 そこには、一人の男がフェンリルの腹を枕にして、気持ちよさそうに昼寝をしている姿があったからだ。


「この男は何者だ!? 登録データを出せ!」

「は、はい! 名前はジン。年齢32歳。職業は……Eランクの『荷物持ち(ポーター)』です」

「Eランクぅ!?」


 ベルンハルトの声が裏返る。

 Eランクといえば、薬草採取やドブさらいをする駆け出しレベルだ。それがSランクモンスターをペットにしているなど、冗談にも程がある。


「所属パーティは!?」

「ええと……二日前まで『シャイニング・ブレイバーズ』に所属していましたが、解雇されています。理由は『戦力外通告』とのことです」

「あの大馬鹿者どもがァァァァッ!!」


 ベルンハルトは机を拳で叩き割った。

 勇者ライオネルのパーティといえば、最近「放送事故」で話題の連中だ。まさか、彼らが捨てたのが「国家戦略級の戦力」だったとは。


「今すぐこのジンという男に連絡を取れ! Sランク……いや、特務SSランクへの昇格を打診しろ! なんとしてでも連れ戻すんだ! 他国に引き抜かれたら国際問題になるぞ!」


 職員たちが慌てて通信魔道具を操作する。

 王都の混乱など知る由もなく、モニターの中の男――ジンは、むくりと起き上がったところだった。


 ◇◇◇


「ふわぁ……よく寝た」


 俺はシロ(フェンリル)の極上の毛並みに顔をうずめながら目を覚ました。

 最高だ。高級羽毛布団なんて目じゃない。

 シロも俺が起きたのに気づき、ぺろりと俺の頬を舐める。


「よしよし。さて、そろそろ夕飯の支度でも……ん?」


 懐に入れていたギルドカードが、ブブブブッと激しく振動し始めた。

 着信ランプが赤く点滅している。しかも、表示されている発信元コードは『ギルド本部・緊急回線』。


「なんだこれ? 緊急?」


 俺は首をかしげた。

 ギルドからの連絡なんて、ろくなことがない。「税金の未納」か「講習会の呼び出し」か、あるいは……。


(……まさか、ライオネルの奴、俺がダンジョンを不法占拠してるって通報したのか?)


 ありえる。あの陰湿な勇者ならやりかねない。

 「廃棄ダンジョン」とはいえ、正式な手続き完了前に住み着いていることに文句を言ってくるつもりだろう。


 俺は渋々、通話ボタンを押した。


「……はい、もしもし」

『つ、繋がった! ジン様ですか!? こちら冒険者ギルド本部、マスターのベルンハルトだ!』


 スピーカーから、割れんばかりの大声が響いた。

 うわ、ギルマス直々かよ。これは間違いなく「怒られるやつ」だ。


「はあ、ジンですけど。あの、ここ廃棄ダンジョンですよね? 権利書も持ってますし、退去命令とか言われても困るんですが」

『退去? いや違う! そんなことはどうでもいい! ジン様、貴方に今すぐ王都へ帰還していただきたい!』

「は?」

『貴方の配信を確認した! フェンリルを従属させるその手腕、そして未知の魔法技術! ギルドは貴方を『SSランク冒険者』として認定する用意がある! 報酬は言い値でいい! 屋敷も用意する! だから今すぐ――』


 俺は眉間のシワを深くした。


(……新手の詐欺か?)


 SSランク? 言い値?

 3日前まで「地味で映えない」と言われてクビになった荷物持ちに、そんな話が来るわけがない。

 これはあれだ。最近流行りの「闇ギルド」による勧誘か、あるいは俺を王都におびき寄せて、ライオネルの不始末の責任を押し付ける気だな?


「あのー、すいませんけど」

『な、なんだ!? 要望があれば何でも聞くぞ!』

「俺、もう引退したんで。そういうの興味ないです」

『は? い、引退!?』

「ええ。今は田舎でスローライフ満喫中なんで。王都のいざこざとか、数字とかノルマとか、もううんざりなんですよ。SSランクとか言われても、どうせ『魔王倒してこい』とか言うんでしょ? 絶対嫌です」


『ま、待ってくれ! 話を聞いてくれ! これは国家の――』


「じゃ、忙しいんで。二度とかけてこないでください」


 ピッ。

 俺は通話を切り、ついでに【着信拒否設定】をONにした。

 ふう、危ない危ない。甘い言葉で釣って、激務を押し付けるブラック企業の常套手段だ。俺はもう騙されないぞ。


『え、切った?』

『今のギルマスからの電話?』

『「興味ないです」で切るとかwww』

『SSランク打診をガチャ切りする人類、初めて見た』

『おっさんカッケーーー!』

『ギルド本部がフられたwww』


 配信を見ていた視聴者たちは、そのやり取りに大爆笑していたが、俺はまたしてもコメント欄を見ていなかった。


「さて、変な電話で水差されたけど……気を取り直して探索に行くか」


 俺は立ち上がり、ダンジョンの最深部へと続く道を見つめた。

 そこから、ドシン、ドシン……と、昨日のイノシシ以上の、とてつもない地響きが近づいてきているのを感じながら。


「シロ、出番だぞ。なんかデカいのが来たみたいだ」

「ワンッ!」


 それは、このダンジョンの主。

 伝説の古竜、『エンシェント・ドラゴン』のお出ましだった。

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