表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした  作者: 希羽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/57

第56話:コラボ配信で「歌ってみた」をやったら、世界中のアンデッドが成仏した

 物理的な投げ銭(財宝)の山を庭の隅に片付けた後。

 聖域のリビングで、フタバが配信端末を見ながら目を輝かせていた。


「パパ! これやりたい!」


 指差した画面には、王都で人気のアイドル歌手が歌って踊る映像が流れていた。


「アイドルか? まあ、フタバなら可愛いからなれるだろうけど」

「うん! フタバ、お歌うたう! みんなに元気とどけるの!」


 その純粋な動機に、俺は頷いた。

 破壊活動(特撮ごっこ)や、お料理(マンドラゴラ解体)もいいが、たまにはこういう平和な企画も悪くないだろう。


「よし。じゃあ次は『歌ってみた』配信だな」


 俺が許可を出すと、ローズとルミナが勢いよく立ち上がった。


「伴奏ならお任せくださいまし! 魔王家では幼少期より英才教育を受けておりますの。ピアノ、バイオリン、パイプオルガン……何でも弾けますわ!」

「コーラスは私がやります! 天界聖歌隊の指揮者は伊達じゃありませんよ! 神のハモりを見せてあげます!」


 豪華すぎるバックバンドが結成された。

 場所は、エルフたちが「音響効果抜群ですぞ!」と即席で建てた、森の音楽堂(野外ステージ)。


 準備は万端だ。


 配信開始。

 タイトルは 【初ライブ】マジカル・フタバの『歌ってみた』! ゲストあり☆。


『待機!』

『今日は歌枠か!』

『投げ銭の代わりにペンライト振るぞー!』


 同接数は安定の数百万。

 画面には、フリフリのドレスを着たフタバと、グランドピアノ(魔界製)の前に座るローズ、そしてマイクを持ったルミナが映し出されている。


「みんなー! こんばんは! きょうは、フタバが作った『お野菜のうた』をうたうよ!」


『オリジナル曲!?』

『タイトルが渋いwww』

『期待しかない』


 ローズが鍵盤に指を置く。


「では、行きますわよ。……ミュージック、スタート」


 ポロロン……♪

 流れてきたのは、童謡とは思えないほど重厚で、かつ繊細な旋律だった。魔界のピアニストの本気だ。


「♪ピーマン~ にんじん~ ダンジョンいも~」


 フタバが歌い出した。

 音程はしっかりしている。透き通るような、鈴を転がすような愛らしい歌声だ。

 だが、問題はその成分だった。

 フタバの歌声には、畑で培った「生命力」と、生まれ持った「規格外の魔力」がたっぷりと乗っていたのだ。


「♪たべると~ げんきが~ わいてくる~」


 そして、サビ。

 ルミナがコーラスを入れた。


「(♪アーーーー、アァーーーーーッ♪)」


 神の声。

 絶対浄化アブソリュート・ピュリファイの特性を持つ女神のハミングが、フタバの魔力と共鳴し、化学反応を起こした。


 カッッッ!!!!!


 配信用の水晶玉が、眩い光を放った。

 ただの映像ではない。

 歌声に乗った「浄化の波動」が、魔力波として世界中の受信端末から物理的に溢れ出したのだ。


 ――その時、世界各地で「奇跡」が起きていた。


 【場所:北の旧古戦場】

 そこは、数千年前の戦争で死んだ兵士たちが彷徨う、大陸有数の心霊スポットだった。

 たまたま近くで冒険者が配信を見ていた、その時。


「♪好き嫌いしたら~ ダメなんだぞ~」


 端末から流れる歌声を聴いた瞬間、ドロドロに腐っていたゾンビや、恨み言を呟いていたスケルトンたちの動きが止まった。


「……あぁ……なんて温かい光だ……」

「ママ……野菜、食べるよ……」


 アンデッドたちの目から涙(のような光)が溢れ、彼らの体が光の粒子となって崩れていく。


「あばよ! 俺たち、成仏するぜ!」

「ありがとうマジカル・フタバ! 来世は農家になるよ!」


 シュゴオオオオオッ!!

 数万体の亡霊たちが、一斉に天へと昇っていった。

 後に残されたのは、浄化されてピカピカになった古びた武具だけだった。



 【場所:呪いの道具屋】

 「へっへっへ、この『呪われた血吸いの剣』、誰に売りつけてやろうか……」


 闇商人が商品を磨きながら配信を見ていた。


 「♪栄養満点~ 美味しいな~」


 歌声が店内に響いた瞬間。

 禍々しいオーラを放っていた魔剣や、呪いの人形たちが、ガタガタと震え出した。


『ギャアアアアッ! 浄化されるゥゥゥ!』

『邪念が! 俺の邪念が消えていくッ!』


 ポンッ! ポンッ!

 呪いのアイテムたちが次々と爆発(浄化)し、神聖なオーラを放つ『聖剣』や『お守り人形』に変質していく。


「ええっ!? 在庫が全部『聖遺物』になっちまった!?」


 商人は腰を抜かしたが、その聖遺物には後に法外な値がついたという。



 【場所:聖教国・療養所】


 かつてフタバに敗れ、さらにルミナに拒絶されて寝込んでいた前教皇グレゴリウス。

 彼はベッドの上で、虚ろな目で配信を見ていた。


「……神よ……あなたはなぜ、あんな場所に……」


 腰痛と心の傷に苦しむ老人。

 だが、フタバとルミナのハーモニーが、彼の鼓膜を揺らした時。


 ボワッ!

 教皇の腰が光った。


「……っ!? 熱い! いや、痛くない!?」


 グレゴリウスは跳ね起きた。

 長年彼を苦しめていたヘルニアが、リウマチが、そして心の澱みが、歌声によって洗い流されていく。


「おお……おおぉぉ……!! 体が軽い! 羽が生えたようだ!」


 教皇はベッドの上でブレイクダンスを踊り始めた。


「これこそが真の癒やし! やはりあの方こそが、新時代の聖女だったのだ! ビバ! マジカル・フタバ!」


 教皇は即座にペンライト(祭壇のロウソク)を振り回し、熱狂的な古参ファンへと転向した。



 そんな世界規模の騒動など露知らず。

 聖域では、フタバが最後のフレーズを歌い上げていた。


「♪みんなでたべよう~ おやさ~い~! ……ジャンッ!」


 ローズが最後の和音を力強く弾き、ルミナが高らかにハミングを響かせる。


 完璧なフィナーレだ。


『…………』


 コメント欄が静止した。

 そして数秒後、サーバーがダウンする勢いで文字が流れた。


『泣いた』

『浄化された』

『肩こりが治ったんだが?』

『じいちゃんの幽霊が「いい歌だった」って言って消えたぞ』

『世界規模の除霊活動』

『これもう国教だろ』

『投げ銭させろォォォッ!!』


 俺はカメラの外で、空を見上げた。

 聖域の上空には、成仏していく霊魂たちが作り出した、美しいオーロラがかかっていた。


「……すごいな。歌一つで世界平和か」


 俺が感心していると、歌い終わったフタバが駆け寄ってきた。


「パパ! どうだった? じょうず?」

「ああ、最高だったぞ。世界中の霊も喜んでた」

「ほんと? えへへ!」


 フタバは満足げに笑い、ルミナとローズとハイタッチをした。

 こうして、フタバの「歌ってみた」配信は、世界中のアンデッドを壊滅させ、医療費を大幅に削減するという伝説を残して終了した。

 だが、この配信を見ていた人物の中に、一人だけ「穏やかでない感情」を抱いた者がいた。

 魔界の玉座で、ペンライトを振っていた魔王ヴェルザードだ。


「……ぐぬぬ。ローズとフタバちゃんが楽しそうに……。ワシも! ワシも混ぜろォォォッ!!」


 疎外感に耐えられなくなった魔王が、ついに立ち上がる。

 次回の配信、史上最大の「親子喧嘩(ごっこ遊び)」が勃発する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ