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「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした  作者: 希羽


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第57話:魔王との対決コラボ。世界が滅びかける

 「歌ってみた」配信から数日後。

 『マジカル・フタバ』のチャンネル(元・ジンのチャンネル)は、登録者数が国家の人口を超えるほどの巨大メディアに成長していた。

 そして今日。

 予告なしのゲリラ配信が始まった。


「みんなー! こんにちは! きょうは『お庭でピクニック』だよ!」


 画面には、のどかな聖域の芝生の上で、手作りサンドイッチを広げるフタバの姿があった。

 カメラマンは弟子(兼・荷物持ち)のレオンハルトだ。


『癒やし枠きた!』

『平和でいいなぁ』

『背景にドラゴンが寝てるの草』


 穏やかなランチタイム配信。

 ……になるはずだった。


 ズズズズズ……ッ!


 突如、聖域の空が割れた。

 黒い雷が走り、禍々しい紫色の瘴気が溢れ出す。

 ピクニックシートが突風でめくれ上がり、サンドイッチが宙を舞った。


「きゃっ!? サンドイッチが!」

「な、何事ですか師匠!?」


 レオンハルトがカメラを空に向ける。

 そこには、漆黒のマントをなびかせ、空中に浮遊する「巨悪」の姿があった。


「フハハハハハ!! 興じているな、人間どもよ!」


 地獄の底から響くような重低音。

 ねじれた角、燃えるような瞳。

 魔界の支配者、魔王ヴェルザードその人だ。


『えっ?』

『誰このおっさん』

『演出すごくね?』

『空が割れてるCGどうやってんの?』


 視聴者は新たなゲストだと思って盛り上がる。

 だが、現場の空気は違った。


「じいじ?」


 フタバが首を傾げる。

 魔王は「ビクッ」と反応したが、すぐにコホンと咳払いをして、悪役の演技ロールプレイに戻った。


「甘いぞフタバ! 今日のワシは『じいじ』ではない! 世界を恐怖に陥れる『大魔王』である!」


 魔王はバサァッ! とマントを広げた。

 その背後には、彼が魔界から持参した「遊び道具(国宝級の魔剣や禁断の魔導書)」が浮遊している。


「さあ来い、魔法少女よ! ワシを倒さねば、この聖域を……いや、世界をペチャンコにしてくれるわ!」

「……え?」


 フタバの表情が変わった。

 大好きなおじいちゃんが、世界を壊すと言っている。

 それはつまり――。


「じいじ……ほんとの『わるもの』になっちゃったの?」


 フタバの瞳に、悲しみと、そして強い決意の光が宿る。


「……わかった。フタバ、とめる!」


 彼女は懐からステッキ(魔改造クワ)を取り出した。


「マジカル・農耕・パワー! メイクアァァァップ!!」


 カッッッッッ!!!!!


 変身の閃光が炸裂した。

 その余波だけで、魔王が連れてきた護衛のガーゴイルたちが消し飛んだ。


「おおっ! 良い気迫だ! それでこそワシの孫!」


 魔王は嬉しそうに笑い、手加減した闇魔法を放った。


「くらえ! 暗黒の波動(ダーク・ウェイブ)!」

「させないよ! マジカル・バリア!」


 ドゴォォォォォン!!


 光と闇が衝突し、聖域の上空に巨大なキノコ雲が発生した。

 衝撃波が地面を抉り、レオンハルトが吹き飛ぶ。


「ぐわぁぁぁッ!? か、カメラが……!」


 レオンハルトは必死に体勢を立て直し、カメラを死守する。

 画面には、天変地異レベルの魔法合戦が映し出されていた。


『すげぇぇぇぇ!』

『映画化決定だろこれ』

『おじいちゃん役の人、演技うますぎない?』

『迫力がリアルすぎて画面越しに震えるんだが』


 視聴者は大興奮だ。

 しかし、各国の王宮や監視機関では、警報が鳴り響いていた。


「魔力反応測定不能! これは映像ではありません! 現実です!」

「あそこにいるのは本物の魔王ヴェルザードだ! なぜ聖域に!?」

「世界が終わるぞ!?」


 戦いはヒートアップしていた。


「やるなフタバ! では、これはどうだ! 隕石召喚(メテオ・フォール)!」


 魔王が空を指差すと、大気圏外から燃え盛る巨大隕石が落下してきた。

 本気だ。

 孫との遊びに夢中になりすぎて、周りが見えていない。


「お父様! やりすぎですわ!」


 ローズが悲鳴を上げるが、声が届かない。


「いんせき……? そんなの、打ち返すもん!」


 フタバは空を見上げ、クワをバットのように構えた。


「必殺! マジカル・農耕・ホームラン・フルバースト!!」


 ブォンッ!!!!!

 フタバがスイングした瞬間、空間そのものがねじ切れた。

 発生した重力波が隕石を直撃し、粉々に砕いた破片を魔王へ向けて反射させた。


「ぬおおおっ!? わ、ワシの隕石が!?」


 ズダダダダダダッ!!


 魔王は慌てて防御結界を張るが、隕石の破片(流星群)の雨あられを受け、あわや撃墜されそうになる。


「強い……! これほどとは……!」


 魔王は冷や汗をかいた。

 ごっこ遊びのつもりが、ガチで殺されかけている。

 だが、魔王としてのプライドと、孫へのサービス精神が引くことを許さなかった。


「ええい! ならばワシも本気を出そう! 世界よ、震えるがいい!」


 魔王が両手を広げ、最大級の魔力を練り上げた。

 空が割れ、異次元から『終焉の黒龍(エネルギー体)』が顔を出す。


「いくよじいじ! フタバもぜんりょく!」


 フタバもまた、全身から神気と魔力を限界まで放出した。

 背中の光と闇の翼が巨大化し、聖域全体を覆い尽くす。


「ファイナル・マジカル・スパーク!!」

「極大消滅波!!」


 二つの世界を滅ぼす力が、今まさにぶつかろうとしていた。

 衝突すれば、聖域はおろか大陸の半分が消し飛ぶ。

 レオンハルトが絶叫した。


「もうダメだぁぁぁッ!!!! 死ぬぅぅぅッ!!!!」


 その時。


 「……いい加減にしろ、お前ら」


 地を這うような低い声が響いた。

 次の瞬間。


 ズンッ!!!!!!


 世界中の重力が、一点に集中したかのような圧力が場を支配した。

 フタバの光も、魔王の闇も、空の黒龍も。

 すべてが強制的に地面へと叩きつけられた。


「ぎゃふんっ!?」

「ぬおっ!?」


 フタバと魔王が、同時に地面にめり込んだ。

 そこに立っていたのは、いつものエプロン姿で、片手にフライ返しを持った俺――ジンだった。


「……はぁ。うるさいと思ったら、何やってんだ」


 俺は呆れた目で二人を見下ろした。


「フタバ、家で暴れるなと言っただろ」

「あう……ごめんなさい……」

「魔王、アンタもだ。孫の遊び相手になってくれるのはいいが、隕石を落とすな。畑が荒れる」

「す、すまん……つい楽しくなって……」


 世界最強の二人が、エプロン姿の男に正座させられ、説教を受けている。

 そのシュールな光景が、全世界に配信された。


『え?』

『終わった?』

『パパ最強説』

『魔王と魔法少女を同時に鎮圧する一般農家』

『オチが家庭的すぎるwww』


「ほら、おやつの時間だ。今日はホットケーキだぞ」


 俺が言うと、フタバと魔王はパァァァッと顔を輝かせた。


「わーい! ホットケーキ!」

「おお! ジン殿のケーキか! いただく!」


 二人は仲良く手を繋ぎ、リビングへと走っていった。

 さっきまでの世界の危機が嘘のような平和な光景。

 俺はカメラに向かって、肩をすくめて見せた。


「……というわけで、今日の配信はここまでだ。騒がしくて悪かったな」


 プツン。

 配信が終了した。


 その日の夜。

 俺はリビングで、魔王から「出演料」として置いていかれた山のような金塊と魔道具を前に、頭を抱えていた。


「……また物が増えた」


 そして、ふとタブレットの管理画面を見て、目を疑った。


 【チャンネル登録者数:85億人】


「は?」


 世界人口(人間)は約20億人のはずだ。

 どう計算してもおかしい。

 内訳を見てみると……。


 人間:20億

 魔族:15億

 精霊・妖精:30億

 アンデッド(成仏済み含む):10億

 神界の神々:10億


「……人外のほうが多くないか?」


 どうやら、俺のチャンネルは、種族と次元を超えた「全知性体の共通コンテンツ」になってしまったらしい。


「まあ、いいか」


 俺はそっとタブレットを閉じた。

 有名になりすぎるのも考えものだが、フタバが楽しそうで、美味い飯が食えるなら、それもまたスローライフの一部と言えるかもしれない。


 こうして、世界を巻き込んだ「マジカル・フタバ」の配信騒動は、伝説の記録を打ち立てて幕を閉じた。


 聖域は今日も、騒がしくも平和な夜を迎えるのだった。

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