表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした  作者: 希羽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/57

第26話:魔界の通販カタログ「デモニゾン」が便利すぎる

「おじ様! これですわ! 魔界最大の通販サイト『デモニゾン』のカタログ!」


 食後のお茶の時間。ローズ(魔王令嬢)がドヤ顔でテーブルに広げたのは、分厚い羊皮紙の束だった。


 『デモニゾン』。ロゴが某密林サイトに似ている気がするが、矢印が尻尾の形になっている。


「通販ねぇ……。魔界のものなんて、どうせ拷問器具とか毒薬とかだろ?」

「偏見ですわ! 魔界は過酷な環境だからこそ、生活を便利にする魔道具が発達していますのよ!」


 ローズがページをめくる。


「例えばこれ! 『全自動洗濯スライム・ヌルリン』! 桶に入れておくだけで、衣類の汚れを分解・消化し、さらに殺菌・漂白までしてくれますわ! 乾燥機能付きです!」

「……なにそれ欲しい」


 俺は身を乗り出した。

 スローライフの天敵、それは家事だ。特に洗濯は面倒くさい。魔法でやれなくもないが、デリケートな素材は傷む。


「次はこちら! 『瞬間冷凍精霊フリーザー・スピリット』! 箱の中に入れるだけで、食材を鮮度そのままに永久保存! アイスも作れます!」

「冷蔵庫か!」

「さらにこれ! 『お掃除スカル・ルンバ』! 床を這い回り、埃を見つけたら食べます!」


 俺の目が輝いた。


「ローズ、これ注文できるか?」

「もちろんですわ! わたくし、『デモニゾン・プライム会員』ですので、お急ぎ便が使えますの!」


 ローズがカタログの注文欄に魔力を流し込む。

 すると――。

 ブォンッ!

 テーブルの上に小さな黒い魔法陣が現れ、そこからポトッ、ポトッと箱が落ちてきた。


「えっ? もう届いた?」

「空間転移による即時配送ですわ」


 ドローン配送もびっくりのスピードだ。

 俺たちは早速、箱を開けた。中からプルプルしたスライムや、冷気を放つ小精霊が出てくる。


「なんて邪悪な気配……!」


 アイリス王女が震え上がった。


「ジン様! 騙されてはいけません! 魔道具なんて使ったら、魂を吸い取られますわよ! 教会も『悪魔の道具を使うな』と教えています!」

「まあまあ姫様。物は試しですよ」


 俺は試しに、泥で汚れた作業着をスライムの入った桶に放り込んだ。

 ジュルルルッ。

 スライムが服を包み込み、高速回転を始める。


 数分後。


 ペッ、と吐き出された作業着は、新品同様に真っ白で、しかもフカフカに乾いていた。アイロンがけまでされている。


「……すごいですわ」

「だろ?」

「わ、わたくしのドレスも! このシミ、落ちなくて困ってましたの! お願いしますわ!」


 アイリス王女、即陥落。

 その後も、俺たちは魔界通販の虜になった。


 部屋を適温に保つ『空調結界石』。

 肩こりをほぐす『切断された手首型(マッサージ・ハンド)』。

 果ては、自動で背中を流してくれる『お風呂用タコ』まで。

 配信の視聴者たちも、このオーパーツに食いついた。


『技術力高すぎだろ魔界』

『人間界より進んでる件』

『プライム会員になりたい』

『「魂を売ってでも欲しい」ってこういうことか』

『スローライフがスマートライフになった』

『おっさん、堕落への道を爆走中』


 こうして、俺のログハウスは一夜にして「全自動スマートホーム」へと進化した。

 快適すぎる。

 もう井戸水汲みも、薪割りもしなくていい。

 俺は空調の効いた部屋で、冷えたジュースを飲みながら、マッサージの手に肩を揉ませた。


「極楽だ……。ありがとうローズ、お前はいい嫁になれるぞ」

「キャッ♡ おじ様に褒められましたわ! お父様に報告しなきゃ!」


 ローズが通信機を取り出し、魔王と長電話を始める。

 平和だ。文明開化の音がする。


 ――だが。

 俺たちは油断していた。


 あまりに大量の「魔界アイテム」を一度に取り寄せたせいで、この一帯の「魔力濃度」が異常な数値に跳ね上がっていることを。


 ――同時刻。遥か彼方、宗教国家『聖教国』の大聖堂。

 「魔探知の水晶」が、不吉な赤色に染まり、けたたましい警報音を鳴らしていた。


「……なんだ、この反応は?」


 純白の法衣に身を包んだ男――異端審問官長が、眉をひそめて水晶を覗き込んだ。


「場所は……東の辺境、廃棄ダンジョンか。かつてないほど強大な『悪魔の気配』を感じる。上級悪魔が大量に召喚されたに違いない」


 彼は勘違いしていた。

 それは悪魔軍団ではなく、ただの洗濯機や冷蔵庫の魔力反応なのだが。


「……放置しておけば、世界は闇に飲まれるだろう」


 男は振り返り、控えていた一人の少女に命じた。


「聖女エレナよ。直ちに出撃せよ。廃棄ダンジョンへ向かい、悪魔と、それに与する愚かな人間どもを『浄化』するのだ」

「はい、審問官様。神の御名において、全て焼き払って参りますわ」


 慈愛のかけらもない冷たい瞳をした聖女が、嗜虐的な笑みを浮かべた。

 魔界通販の乱用が、最も面倒な敵を呼び寄せてしまったようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>『デモニゾン』。ロゴが某密林サイトに似ている気がする 名称はどちらかと言えば、ベルメゾ◯とかクレディセ◯ン寄りな気がする 実際、私は真っ先にベルメを連想したし。 ※一応◯で一文字隠したが、実質隠す気…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ