表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした  作者: 希羽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/57

第25話:魔界の食材「ヘル・ラディッシュ」が美味すぎた

「……これ、本当に食べ物ですの?」


 アイリス王女が、引きつった顔で鍋の中を指差した。

 大鍋の中では、ドロリとした紫色のスープがグツグツと沸騰し、そこから瘴気のような湯気が立ち上っている。

 そして何より問題なのは、具材だ。


「ギャァァァァァ……ッ!」


 魔王から送られてきた『地獄大根(ヘル・ラディッシュ)』。

 人面のような模様があり、煮込まれるたびに断末魔のような悲鳴を上げている。


「失礼ね! これは魔界の最高級食材よ!」


 ローズ(魔王令嬢)が腰に手を当てて反論する。


「この悲鳴こそが鮮度の証! そしてこの『魔豚(デーモン・ポーク)』の脂身の黒さ! お父様が厳選してくれた極上のサシが入ってますわ!」


 確かに、魔豚の肉は漆黒だ。どう見ても腐っているか、呪われているようにしか見えない。

 だが、俺の食材鑑定(主夫の勘)は告げていた。


 こいつは、化ける。


「まあ待て。見た目で判断するのは素人だぞ」


 俺は鍋の前に立った。

 普通に煮込めば、この大根は硬くて臭い。肉も筋張っているだろう。

 だが、俺には重力魔法がある。


「仕上げだ。重力圧力鍋グラビティ・プレッシャー


 ズンッ!


 俺は鍋の中だけに100倍の重力をかけた。

 超高圧。

 悲鳴を上げていた大根の細胞を一瞬で崩壊させ、スープの旨味を強制的に吸い込まされる。

 筋張った魔豚のコラーゲンがゼラチン質へと融解し、とろとろに変化する。


 シュゥゥゥゥ……。

 圧力を解除すると、先ほどまでの毒々しさは消え失せ、鍋の中は黄金色に輝く極上の角煮大根へと変貌していた。


「えっ……? 色が……変わった?」

「いい匂い……ですわ……」


 二人の喉がゴクリと鳴る。

 シロ(フェンリル)とクロ(古竜)は、既にヨダレの海を作って待機していた。


「さあ、食うぞ。冷めないうちにな」


 俺が皿に盛り付けると、箸で触れただけで肉がほろりと崩れた。

 まずはローズが一口。


「んっ……!?」


 ローズの赤い瞳が見開かれた。


「嘘……! これ、魔界で食べていたものとは別物ですわ! あの硬い地獄大根が、舌の上で雪のように溶ける……! それにこのお肉、噛まなくても飲めますわ!」


 次に、恐る恐る口をつけたアイリス王女。


「……んんん~っ!!」


 カシャン。

 王女の手からスプーンが落ちた。


「な、なんですのこれ!? 見た目はあんなに最悪だったのに! 口に入れた瞬間、暴力的な旨味が爆発しましたわ! 濃厚なのにしつこくない、悪魔的な美味しさです!」


 二人は夢中で匙を動かし始めた。

 お代わり。お代わり。またお代わり。


 「どっちが正妻か」なんて争いはどこへやら、今はただ「どっちが多く食べられるか」の争いだ。


「シロ、クロも食えよ」

「ワフッ!(うめぇ!)」

「グルァ(魔界の生物も悪くないな)」


 二匹もバクバクと食べている。

 俺も一口食べてみたが、確かにこれは絶品だ。重力調理との相性が良すぎる。

 魔王の親バカも、たまには役に立つな。

 ふと見ると、満腹になったローズとアイリスが、縁側で並んでお腹をさすっていた。


「ふぅ……負けましたわ。魔界の食材、認めざるを得ません」

「ふふん、でしょう? でも、これをここまで美味しくしたのはおじ様ですわ」

「ええ。……ジン様の料理、毎日食べたいですわね」

「そうですわね……」


 二人が顔を見合わせ、ふわりと微笑み合った。

 美味しいものは世界を救う。

 配信のコメント欄も、その平和な光景に涙していた。


『これが世界平和か』

『飯テロからの友情エンド』

『地獄大根の悲鳴は忘れてあげよう』

『おっさんの胃袋掌握術がエグい』

『魔王もこれ見てニッコリだろ』


 こうして、魔王令嬢の襲来という危機は、鍋を囲むことで(とりあえず)平和的に解決した。


 だが、魔界の便利さは食材だけではなかった。


「おじ様! 食後のデザートの前に、これを見てくださいまし! 魔界の最新通販カタログ『デモニゾン』ですわ!」


 ローズが取り出した分厚い本。

 そこには、俺のスローライフをさらに加速させる、とんでもない魔道具たちが載っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ