表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした  作者: 希羽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/57

第18話:エルフの建築士たちが「弟子入り」してくる

 翌朝。


 「天空の温泉宿」での一夜を過ごしたアイリス王女は、肌がツヤツヤになって降りてきた。


「おはようございます、ジン様! 最高の朝ですわ! 空の上で迎える日の出、一生の思い出になりました!」

「そりゃどうも。よく眠れましたか?」

「はい! 岩盤が微動だにしないので、まるで揺り籠のようでしたわ!」


 王女は朝からハイテンションだ。

 俺は焚き火で焼いたパンと、ダンジョン芋のポタージュを朝食として差し出した。


「さて、姫様。朝飯食ったら帰ってくださいよ。国で待ってる人がいるでしょう」

「むぅ……帰りたくありませんけど、昨日の配信で『明日帰ります』と言ってしまいましたからね……」


 王女が渋々帰還の準備を始めた、その時だった。


 ザッ、ザッ、ザッ、ザッ。


 森の奥から、整然とした足音が近づいてきた。

 一人や二人ではない。数十人規模の集団だ。


「グルルル……(また人間か?)」

「ワフッ(今度は食べていい?)」


 クロとシロが警戒して身を起こす。

 俺も箸を止めて、ドローンの映像を確認した。

 昨日のような鎧を着た兵士ではない。

 森に溶け込むような緑色の狩衣をまとい、背中には弓ではなく、なぜかノコギリや金槌などの「大工道具」を背負った集団。

 そして何より特徴的なのは、その長く尖った耳。


「エルフ?」


 森の賢者にして、芸術を愛する誇り高き種族。

 人間嫌いで知られる彼らが、なぜこんな廃棄ダンジョンに?


「ジン様、あれは『緑風の工務店』……いえ、『森のエルフ族』ですわ! 世界最高の建築技術を持つ彼らが、攻めてきたのでしょうか!?」


 王女が慌てる。

 エルフたちが広場に入ってきた。

 先頭に立つのは、長い白髭を蓄えた厳格そうな老エルフだ。

 彼らは俺たち――いや、正確には俺の背後にある「浮遊する温泉宿」を見上げると、一斉に足を止めた。


「……おお」

「……なんと」

「……重力制御による構造力学の無視……いや、超越か?」

「あの曲線美を見ろ。削り出しの跡がない。一体どうやって……」


 ブツブツと何かを呟いている。目が怖い。

 老エルフが、震える足で俺の方へ歩み寄ってきた。


「人間よ。……いや、大棟梁(おおとうりょう)殿よ」

「誰が大棟梁だ」


 老エルフは、充血した目で俺に詰め寄った。


「あの空に浮かぶ離れ家……あれを作ったのは貴殿か?」

「まあ、俺ですけど。何か問題でも? 建築許可とか要りましたっけここ」

「問題などない!!」


 カッ! と老エルフが目を見開いた。


「我らは昨夜、遠くからあの建物が『生えてくる』のを見た! 足場も組まず、継ぎ目もなく、あのような巨大建築を一瞬で! 我らエルフが数百年かけて到達する建築の極意を、貴殿は息をするように成し遂げた!」


 老エルフは、その場に膝をついた。

 それに続いて、後ろにいた数十人のエルフたちも一斉に土下座した。

 壮観な光景だ。先日の勇者たちの「強制土下座」とは違い、こちらは完全に自発的な崇拝のポーズだ。


「頼む! 我らを弟子にしてくれ!!」

「「「弟子にしてください!!!」」」


 森にこだまする大合唱。

 俺はポカーンとした。


「いや、弟子って言われても。俺、大工じゃないし」

「謙遜は不要! あの『浮遊工法』、そして岩盤を一瞬で加工する『重力彫刻』! あれこそ我らが追い求めた神の領域! 学ぶまではここを一歩も動かんぞ!」

「迷惑すぎるだろ」


 俺が拒否しても、エルフたちは動かない。

 むしろ、「師匠の許可が出るまで、我々の腕を見てもらおう!」と言い出し、勝手に動き始めた。


 カンカンカン! トントン!


 エルフたちが持参した道具で、周囲の木材を加工し始める。

 その手際は魔法のように鮮やかだった。


「おい、そこの木材! 乾燥が甘いぞ!」

「基礎魔法陣を展開! 水平を取れ!」

「師匠が見ているぞ! 恥ずかしい仕事をするな!」


 見る見るうちに、ダンジョンの入り口付近に、芸術的で美しいログハウスが建っていく。

 釘一本使わない「木組み」の技法。隙間風一つ通さない精密さ。


「……すげえな」


 俺は素直に感心した。

 俺の重力魔法は大雑把な土木工事には向いているが、こういう繊細な「住居」を作るのは専門外だ。

 正直、今の俺の住処(洞窟)より遥かに快適そうだ。


「どうだ師匠! これなら弟子入りの手付金として認めてもらえるか!」


 老エルフが鼻息荒く完成した家を指差す。

 俺は少し考えた。

 こいつらを追い返すのは簡単だ(重力で飛ばせばいい)。

 だが、これからここを拠点にするなら、まともな「家」や「倉庫」は欲しい。

 それに、王女の相手や、今後来るかもしれない来客の対応を全部俺がやるのは面倒だ。


「……はぁ。分かったよ」


 俺はため息交じりに言った。


「弟子にするかは保留だ。でも、ここに住むのは許可する。その代わり、俺の住む家と、畑の柵を作ってくれ。あとシロの犬小屋も」

「おお! 交渉成立だ!」

「聞いたかお前たち! 師匠の家、神殿を作るぞ! 我らの技術の全てを注ぎ込むのだ!」


 ウオオオオオッ!!


 エルフたちが雄叫びを上げて作業に戻る。

 その熱気を見て、配信中のアイリス王女が呟いた。


「ジン様……ここ、もう『国』ではありませんの?」


 コメント欄も同意の嵐だった。


『エルフまで住み着いた』

『技術力の無駄遣い』

『この村、建築レベルがカンストしてる』

『フェンリルがいて、ドラゴンがいて、エルフがいる。もしかしてここが約束の地、アヴァロンか?』

『犬小屋(国宝級)』


 こうして、俺の静かなスローライフ(予定)の場は、世界最高峰の技術者集団「エルフ工務店」の参入によって、急速に発展し始めることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ