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「君の魔法は地味で映えない」と人気ダンジョン配信パーティを追放された裏方魔導師。実は視聴数No.1の正体、俺の魔法でした  作者: 希羽


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第16話:王女とのコラボ配信、ついでに大臣の悪事がバレる

「ジン様! わたくし、決めましたわ!」


 気絶したゲルマン大臣がドナドナと運ばれていくのを見送った直後、アイリス王女は拳を握りしめて宣言した。

 その瞳は、推しを見つめるオタクの熱量と、王族としての使命感(?)で燃え上がっている。


「大臣の無礼、王家を代表してお詫び申し上げます。その償いと言ってはなんですが……わたくしと『コラボ配信』をしてくださいまし!」

「……どうしてそうなるんです?」


 俺は深く溜息をついた。

 だが、相手は腐っても王女。無下に断ってまた軍隊に来られても面倒だ。

 それに、彼女の目はマジだった。「断ったらここで泣いてやる」という強い意志を感じる。


「はぁ……分かりましたよ。でも、俺はこれから畑仕事の続きをするだけですよ? 地味な絵面になりますけど」

「望むところですわ! 『おっさん様の農作業ASMR』なんて、需要しかありませんもの!」


 需要の偏りがすごいな。

 ということで、まさかのコラボ配信が始まった。

 タイトルは【王女様とダンジョン芋掘ってみた】。

 俺のチャンネルと、(もうバレてるが)王女の裏垢での同時配信だ。


「みなさまごきげんよう! マジカル☆アイリスこと、第二王女アイリスですわ! 今日は『聖地』にお邪魔しております!」


 王女がカメラに向かって優雅にカーテシー(挨拶)をする。

 その背後には、雄大な自然と、寝転がるフェンリルとドラゴン。

 絵面が強すぎる。同接数は開始早々から200万人を超えていた。


「さて、姫様。これを持ってください」

「まあ! これが伝説の……『クワ』ですのね!」


 俺が手渡した無骨な農具を、王女は聖剣か何かのように掲げた。

 ドレスが汚れるのも厭わず、彼女は俺の隣に並ぶ。


「じゃあ行きますよ。グラビティ・プラウ」

「はいっ! えいっ!」


 俺が魔法で土を浮かせ、王女がそこへクワを振り下ろす(ふりをする)。


 ボコッ、ボコッ。


 土の中から、ラグビーボールほどもある巨大な紫色をした『ダンジョン芋』が次々と顔を出す。


「すごいですわ! 大きいですわジン様!」

「ああ、今年は豊作だな。焼き芋にすると美味いぞ」

「焼き芋……」


 じゅるり(淑女らしからぬ音)。


 王女の頬に泥がついているが、本人は気にする様子もなく芋を抱きしめている。

 その屈託のない笑顔に、コメント欄は癒やしの嵐に包まれていた。


『尊い……』

『姫様が泥んこになってるw』

『国宝級の映像だろこれ』

『おっさんの塩対応と姫のハイテンションの対比よ』

『平和だなぁ』


 ――だが。

 その「平和」な配信の裏で、とんでもない「事件」が起きていた。

 俺の配信ドローンは、超高性能だ。

 数キロ先の羽音すら拾う高感度マイクと、自動追尾機能を搭載している。

 そのマイクが、少し離れた場所に停泊している飛空艇からの「話し声」を、ノイズキャンセリング機能でクリアに拾ってしまっていたのだ。


『……離せっ! おい、聞いてるのか!』


 スピーカーから、聞き覚えのある汚い声が漏れた。

 ゲルマン大臣だ。どうやら意識を取り戻したらしい。


「ん? なんか喚いてるな」

「放っておきましょう。芋の方が大事ですわ」


 俺たちは作業を続けたが、ドローンのAIは「重要な会話」と判断したのか、音声レベルを自動で上げてしまった。


『ええい、クソッ! あの魔獣どもめ……! あいつらを捕獲して『帝国』に売り飛ばせば、莫大な軍資金になるはずだったのに!』


 ……ん?

 今、帝国って言ったか?

 帝国といえば、我が王国と敵対関係にある軍事国家だ。


『計画が台無しだ! これじゃあ、横領した予算の穴埋めができん! それに、あの『隷属の鎖』だって、宝物庫から盗み出すのに苦労したんだぞ!』


 ペラペラと喋る喋る。

 どうやら彼は、まだ配信が続いていることも、この場所が高性能マイクの集音範囲内であることも知らないらしい。


『おい、近衛兵! 王女はどうした! あんな小娘、適当に事故死にでも見せかけて――』


 ピタリ。

 アイリス王女の手が止まった。

 視聴者のコメント欄も、一瞬で凍りついた。


『え?』

『今、なんて言った?』

『帝国に売る? 横領?』

『宝物庫から盗んだ?』

『王女を事故死させるつもりだったって……』

『これ、全部配信に乗ってるぞ』

『【速報】大臣、全世界に自白する』


 王女がゆっくりと顔を上げた。

 先ほどまでの「ファンの顔」は消え失せ、そこには冷徹な「王族の顔」があった。


「……ジン様。あの『鎖』を見せていただけますか?」

「ああ、これですね」


 俺は先ほど没収して、ポケットに突っ込んでいた黒い鎖を取り出した。

 王女はそれを手に取り、カメラの前に突き出した。


「国民の皆様、聞こえましたわね? そして見えましたわね? これは王家秘蔵の国宝『支配の鎖』。管理者はゲルマン大臣、その人です」


 王女の声は、氷のように冷たく、そして美しく響いた。


「ゲルマン! 貴様の国家反逆罪、このアイリスの名において断罪します! 近衛兵! その男を直ちに拘束しなさい!」


 王女の怒号が、魔法で増幅されて飛空艇まで届く。

 飛空艇の方から「ひぃっ!?」「ば、バレてる!?」という情けない声が聞こえた。


『うおおおおお姫様カッケー!!』

『即決裁判だ!』

『動かぬ証拠』

『大臣、詰んだな』

『ざまぁwww』

『芋掘り配信を見てたと思ったら、国家転覆未遂の現場だった件』


「ふぅ……」


 王女は一仕事終えた顔で息を吐くと、パッと俺の方を向いて満面の笑みに戻った。


「お騒がせしました、ジン様! 汚い声が入ってしまいましたけど、アーカイブの編集でおじさんの声だけカットしておきますね♡」

「……切り替え早いな」


 遠くで、再び拘束された大臣が飛空艇の独房へ引きずられていくのが見えた。

 今度は二度と出てこられないだろう。


「さあジン様、気を取り直して! 次は焼き芋ですわ!」

「はいはい」


 こうして、大臣の政治生命と社会的地位は、ダンジョン芋の収穫と共に土に埋められたのだった。


 そして、この配信によって「ジン=王女の命の恩人(および国の守護者)」という認識が、国民の間で爆発的に広まることになった。

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