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攻撃力0の【救済者】〜魔物を殺さず『元の姿』に戻してたら、いつの間にか伝説級メンバーのリーダーになっていた件〜  作者: おとしごと


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022話 外套の収納能力の分析

□022話


「えっと、野菜……。野菜ってどうやって取り出すんだ?」


 不安げにこちらをみる少年の視線に、より一層慌ててしまう。


 そこへ、ナビさんの助け船。


<<外套の影の部分に手を近づけて、何かを取り出したいとイメージして下さい>>


 ナビさんの指示通りにすると、頭の中に野菜のイメージが浮かび上がってきた。


(ナビさん、野菜のイメージが見えた気がするよ)


<<では、その野菜を取り出すことをイメージしながら掴んでみて下さい>>


(おぉ、ゴツゴツとした感触や重さを感じたぞ。そのまま引き抜けば良いのか?)


 外套から手を出してみると、手には先程僕が必死に拾い集めた野菜。


 少年は一安心したのか、満面の笑みを浮かべ飛びついてきた。


「お兄ちゃんありがとう!!」


 リージュは少年の頭を撫でる。


「美味しそうな岩ジャガイモ。ちゃんと出てきて良かったね」


 無事に出てきて良かった。まずはこの点で一安心。


 残りの岩ジャガイモ、紅にんじんを少年に手渡し、少年と解散となった。


「それにしても、キリトさん!! その外套、レジェンド級と言うだけあって、とんでもない代物ですね」


「いやぁ、ははは……」


 あまり目立ちたくないんだけど、今回も町中で騒動を起こしてしまった。


「じゃあ、帰りましょうか」


「そうですね、キリトさん」



 ■  □  ■  □



 僕はチームキリトのアジトに戻り、チームの皆に事の経緯を説明していた。


「……と言うわけで、この『残影の外套』にマジックバッグと同じような『収納』機能があることが分かりました」


 途中からゲラゲラと大笑いしていたチェイス。


「キリト!! お前って奴は、いつも話題に事欠かない奴だな」


 その様子を見て、ミーナが場を鎮めようとする。


「チェイス! これはすごい事よ。荷物を半分に分けておけばパーティ分断の際の生存率が跳ね上がるわ」


 ミーナのその一言に、周囲は一気に静まりかえる。


「それでキリト君。収納量がどのくらいなのか、分かりそう?」


「まだ、検証していません。通常、どうやって検証するんでしょうか?」


 僕の質問にはベックが回答をくれた。


「確認項目は5つ。収納できるものの大きさ、収納量、収納したものが腐るのか腐らないのか、収納したものの重量が道具に影響するのかどうか、最後に誰でも使えるのかどうか、この5つでいいと思う。俺達も始めてマジックバッグを使うときに、このことを確認した」


 続いて、リージュが補足する。


「私たちのこのマジックバッグは、バッグの口元より大きいものは収納できません。収納量は私たち3人分パーティの頃で、3日から4日分と言うところでした。この中では食べ物は腐りません。収納量が増えると、バッグ自体は少しずつ重くなっていきます。そして、誰でも使えます」


「じゃあ、キリト。みんなで検証を始めるが、用意は良いか?」


 チェイスだけではない、パーティメンバー全員の興味が注がれている。大変だが、検証に付き合うしかないだろう……。買い出しから帰ってきたばかりでクタクタなのに。


「はい、分かりました」



 ■  □  ■  □



 庭に出て、検証作業が始まった。


 目の前にはミーナがいて、その傍らに助手チェイス、記録係ベックが並ぶ。


「入り口より小さいものが入るのは当たり前よ。だから、それより大きいものが収納できるかどうか確認しましょう」


「前回は外套の内側で抱えていた岩ジャガイモを一気に収納できました」


「分かったわ。外套のサイズが上限ね」


「それよりも大きいものね……」


「荷車なんてどうだ? 確か、まだ残っていたと思う」


 チェイスが荷車をひいてきた。馬でひくというよりは人の手で引っ張る程度の小ぶりなものだが、外套よりは明らかに大きい。


 外套で荷車の一部を覆い、収納をイメージすると、瞬く間に消えてしまった。


「おぉい! こいつは凄いなキリト!」


「さすがはレジェンド級の一品ね」


「収納できたのには驚きましたけど、取り出すイメージが沸きません」


 傍らで様子を見ていたニーナが手を上げる。


「はいはい!! 手をかざして出ろって念じれば出てくるんじゃない?」


「こんな感じかな。出でよ荷車」


 すると、目の前に荷車が現れた。


「「「おぉーーー!!」」」


「ひょっとして、そもそも外套で覆う必要も無かったりして」


 冗談のつもりだったが、手で触れて収納をイメージするとシュッと消えてしまった。


「えっと、手で触れる必要も無かったりして……」


 こちらも冗談のつもりだったが、収納したいものに意識を集中して収納をイメージするとシュッと消えてしまった。


 ――しばらくの間、誰もが言葉を失っていた。


「キリト悪い!! 一旦俺にも収納させてくれ!!」「アタシも!! アタシも!!」


 好奇心を抑えきれなくなったチェイスとニーナが交互に挑戦したが、結論としては二人とも使えなかった。


 チェイスは肩をがっくりと落として、落胆した様子。


 ニーナも「ズルいよ-!! アタシもやりたかったのに」と小言を呟いている。


 ミーナが僕の耳元に顔を近づけ


「分かっていると思うけれど、ものを盗んだり、悪いことに使っちゃダメだからね」


「ミーナさん!! 僕はそんなことしませんよ」


 ミーナは僕の頭を優しく撫でて、


「キリト君のこと信じているけど、年長者として、一応ね」


 と言った。


「では、収納量と重量の検証に移りましょう。チェイスとニーナが遊んでいる間に、ベックとリージュに木箱を持ってきて貰ったわ」


 目の前には大量の木箱が積まれていた。ベックが持ってきた木箱は中身もみっちり詰め込まれているとのこと。リージュが持ってきた木箱は中身が空のようだ。

 

 僕の感覚で木箱のサイズは約50cm×約50cm×約50cm。それが30箱程度あった。


 それらの木箱に意識を集中させて『収納』する。すると。全て一瞬の間に収納されてしまった。


「これだけ収納できるなら、一ヶ月分の食料と水を持ち運びできそうね」


 その後、調理器具やらテントやら、多くの冒険者が諦める道具をあれもこれもと収納するが、限界にならなかった。


「収納量に限界無し。キリト君、外套は重くなってないかしら?」


「変わりないように思いますね」


「重量も無視してくれるのね。規格が――」


 何か言いかけたミーナがそこで止めた。


「最後に食べ物が腐るかどうか確認しましょう。砂時計を用意したわ。砂の量がこの目印に達したら、砂時計を収納して。明日の朝、砂時計を出して確認する。この方法で砂の量が変わっていなかったら、時間が流れていないということだから、食べ物の保存が可能なはずよ」


 そして翌日、皆の視線が集まる中、取り出した砂時計。収納した際の目印の位置から動作を開始した。――つまり。


「「「規格外だぁーー」」」


 皆のため息が溢れた。


「……信じられないわ。本当に時間まで止まっているなんて」


 リージュは砂時計に顔を近づけ、独りごちる。


「これだけ運べるなら、あの誰も生還できなかったという……」


 ミーナが遠くの山脈を見つめ、言葉を濁す。


「ミーナ! まずはダンジョン攻略だ。リージュ、前回の買い出しではかなり物資を限定していたが、もっと持っていけるぞ! もう一度必要物資の洗い出しを頼む!」


 再びチーム全体が賑やかに動き出す様子を見て、僕はこのメンバーと仲間になれたことへの誇りを感じた。


 目立たずに過ごしていこうとしていた僕の思いとは裏腹に、このパーティー、そして僕の知名度が加速度的に広まっていくのはこのダンジョン攻略がきっかけになるとは、この時はまだ気づいていなかった。



 

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