017話 新しい装備
□017話
「おぉ、良く見たら『月姫ミーナ』『大賢者の卵リージュ』もいるじゃないですか!! 一体何なんだい、このパーティは……ここいらじゃ最強パーティなんじゃないですか?」
店主さんの二つ名収集力は伊達じゃないようだ。次々と二つ名が出てくる。
「えぇ、『大賢者の卵リージュ』だなんて。私にそんな二つ名がついているんですか?」
「冒険者達の間じゃ『賢者の卵リージュ』有名らしいですよ。賢者としてよりも、美人過ぎる冒険者として有名なんですが、あれ聞いてます?」
「大賢者~♪ 大賢者~♪ ウフフ」
リージュは自分の世界に入り込んでしまっていた。
「ねぇねぇ、アタシは? アタシはー??」
「嬢ちゃんは、知らねぇな」
「えぇっ!? そ、そんなぁ……」
あぁ、ニーナの周辺に『ガーン』という文字が見える。きっと気のせいではないな。相当ショックを受けているに違いない。
まぁいい、装備を探そう。
「って、キリト、慰めてよー」
気にせず装備品を探す。
「キリト君、まずは防具からよね」
「そうです。カッコイイ鎧を探さないと、キリトさん」
「だぁーかぁーらぁ-」
店内を隈なく見て回る。重厚な鎧、チェイスのような軽装タイプの鎧、魔法使い用のローブ、武闘家用の武闘着など、さまざまなものが並んでいた。
僕のスタイルは相手に近づくことが基本戦術。鎧のタイプは重くて動きが鈍くなる。ローブは接近戦に向かないだろうし、武闘着は鋼の肉体を持っているからこそ成立する装備だと思う。
一つ一つ自分が装備したときをイメージしつつ、選んでいくと――。
黒いオーラを纏った薄手の外套が目についた。
「これこれ!! このヒラヒラした感じが、キリトのスタイルにピッタリなはずだよ!!」
ニーナが興奮気味に訴える。だが、店主さんは微妙な反応。
「おぉっと、キリトさん。それはやめときましょう。呪われますよ」
「えぇー、キリトが呪われたら私が悪いみたいになっちゃうじゃん」
「あのぉ、何でそんな物騒な物を普通に陳列しているんですか?」
「いつまでも置いておくわけに行かないので売りさばきたかったんです。でもキリトさんには売るのはちょっと気が引けます」
「でも、ちょっと気になるんですよね。手に取っても良いですか?」
「持つだけ、持つだけにして下さいよ。着用したら呪われますから」
<<キリト、この外套ですが、呪われています>>
(そうらしいね。僕のMPダメージで呪いを解けると良いんだけど)
<<できます>>
(そうだよね。そんな都合良く出来るはずないよね)
「店主さん、ありがとうございました」
「いえいえ、興味もって貰えただけでも、こいつ喜んでいるはずですよ」
<<できます>>
(分かったよ。ありがとう。無理言ってごめんね)
<<だぁかぁらぁ、できます!!>>
(……えぇ!? 今なんて?)
<<呪いを解けます!!!!!!>>
(えぇ!? 呪いを解けちゃうの?)
<<キリト……ぶっ飛ばしますよぉぉ!!!!>>
(す……すみませぇぇぇぇん)
僕は改めて『黒いオーラを纏った薄手の外套』を手に持たせて貰った。
(ナビさん、あのぉ、この外套について何か分かりますか?)
<<残影の外套です。残影が残ると言うと過剰ですが、素早さにバフがかかります>>
(呪いを解くのは簡単ですか?)
<<キリト、もう怒っていないから丁寧語はやめて下さい。解呪しました>>
ずーんと身体が重くなる。解呪に何らかのエネルギーが消費されたようだ。
「これは!! 呪いが解けました!! キリトさん、一体何をなさったんですか?」
「えぇっと、言葉では表現できないのですが、上手くいったみたいで良かったです」
「こりゃあ一大事だ!! 解呪師キリ――」
「変な二つ名を広めるのはやめて下さいね」
「おぉっと、失敬失敬。分かりましたよ、キリトさん」
解呪に成功した外套を試着させて貰う。外套の周囲を紫色のオーラが纏っているように見える。
<<解呪により新たな効果が追加。装着者の意思で残影を残せるようです>>
(こう、かなぁ)
目の前に向かい合うニーナの後ろに残影を残しつつ、全力移動――。ニーナの背中をタッチ。
「ひゃぁ!? キリトー!!」
「キリト君が二人になったように見えた。リージュ、あなたの目にはどう映った?」
「ミーナさんと同じです。この外套、レア級……いえ、ひょっとしたらレジェンド級なんじゃないでしょうか?」
「いやぁ驚いた。もともとレア級の装備品ってのが売りで、何とか売り飛ばそうとしてたんですが、オイラの鑑定眼を持ってしても、そいつはレジェンド級で違いないです」
三人娘はポカンとしている。
「レジェンド級って、珍しいんですか?」
「レア級だって、この町に何点あるかってレベルですよ。レジェンド級なんて、この地域にこの外套一つ、あるいはもう一点見つかれば上出来ってくらいには珍しいです」
「これ、価格はいくらになりますか? 相当高いですよね」
「お代の話ですね。じゃあ、お買い上げ頂きますよ」
黒い丸縁サングラスがキラリと光る。
「あぁ、ちょっと待って!!」
「そいつは曰く付きのレア級装備。定価は10枚の予定でござんした」
店主さんは僕の制止を振り切って説明を始めてしまった。うぅ、してやられた。
「そして二つ名を複数持っている御方にはお値引きをさせて頂いてぇおりやす」
「二つ名二つで3割引、二つ名三つで4割引、二つ名四つで5割引」
「そして更に、ソウルブラザー特価ってことで、7割引させて頂き、占めて金貨三枚を頂戴致しやす」
焦ったぁ、最初の金額ギリギリだった。『黄泉がえりの亡霊騎士』の報酬は金貨60枚。この先はパーティとしての運営費も徴収するそうだが、今回は手始めと言うことで一人あたりの取り分は金貨10枚だったのだ。
色々割引が入って、金貨3枚なら、申し分ない。3枚を手渡す。
「他にも何か入り用でしたら、いかがですかい?」
「あとは、靴を見繕いたいのですが……」
「靴は、大して特別な物はないですが――」
そうして、僕は『残影の外套』を羽織り、足下は店主さんの特別割引で再び特価になった、丈夫な革製のブーツを履いている。
ミーナもこの店では割引が受けられるため、実は一振りの細剣を購入した。『月光銀』と呼ばれる白銀に輝く希少な金属でできた細身の刀身はレア級の一品で、生涯切れ味が落ちないそうだ。
「この剣は、私の手に吸い付くようにフィットしているわ。身体の重心もブレないし、安心して命を預けられるわね」
猫耳をなびかせ、『月光銀』の細剣を振るうミーナのその姿は、まさに『月姫ミーナ』にふさわしい。
続いて僕たちは別のお店も巡る。
「見て見て!! この『軽風の軽装鎧』、すごく軽いの!! アタシとキリトで戦場を駆け回れば、相手は混乱すること間違いなしね!! 上級クラスはいつか買いたかったけど、嬉しい」
「私はこれ、双頭の杖。使いこなすのに訓練が必要ですが、この杖を使い、2種の魔法を使いこなす魔法使いを見たことがあります。私はこれで回復と支援の両立を必ず習得します」
こうして一日掛けて装備を調えた僕たちは、この日以降、様々な依頼に挑戦していくこととなる。




