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攻撃力0の【救済者】〜魔物を殺さず『元の姿』に戻してたら、いつの間にか伝説級メンバーのリーダーになっていた件〜  作者: おとしごと


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014話 ギルドのてっぺんとの模擬戦

□014話


 僕たちは今、ギルド地下の闘技場へ向かう階段を下っている。


 同行を許されたのは、秘書さんとミーナとモフ吉のみ。 


 他のメンバーは同行を拒否された。


 何故、同行させられないのかギルマスに尋ねたら


「だって、恥ずかしいんじゃもん」


 とはぐらかされてしまった。


 なんだか変なお爺ちゃんだなぁ、などと思っていたら、


「ギルマスも元冒険者だから、自分の手の内を見せるのを極端に嫌うのよ」


 とミーナがため息交じりの補足。


 僕も手の内をあまり見せたくはないし、チームキリトとしても僕の手の内を極力後悔しない方針としているから、ギルマスの慎重な姿勢は凄く腑に落ちた。


 随分長い階段を下り終えると、目の前にサッカーコート程の広い円盤状の闘技場が現れた。


「えぇ!? 何だか上の階のギルドより広くないですか? 隣の建物の地下部分にも広がっているような……」


 僕の一言は、触れてはいけない禁忌だったようで、ミーナから


「絶対に外で口外しないように」

 

 と注意されてしまった。


「ここって一体何のための施設なのですか?」


「ギルマスに認められた人だけが入れる訓練場ってところかしら。ねぇ、カレン」


「そうね。ミーナとザイン以外の人がここに通されるのを見るのは……初めてかもしれないわ」


 そう返事をくれた二人は向かい合って座り、ミーナがモフ吉を抱っこし、カレンがモフ吉に野菜を食べさせている。


 ギルマスと僕の『手合わせ』にはそれほど興味がないようだ。


「キリト、お主、戦闘の経験は殆どないのであろう?」


「そうですね。この町に来てから生活費を稼ぐためにどうしようもなく……といった感じでして」


「であれば、亡霊騎士を討伐してレベルが急上昇したはずじゃ」


「えぇ、びっくりしました」


「なら、お前さん、最初は身体の成長になれるべきじゃのう。まずは闘技場内を全力で走ってみんか?」


 かるくジョグをして身体を慣らしてから、スイッチを入れて全力で駆け始めて見ると――


「うわぁ!!」


 想定以上に速く走れてしまい、転倒してしまった。


「いてて……。僕の全力走のイメージより、何倍も速い……」


 想定以上に走れてしまい、脚が絡まってしまった構図だ。


「ごく稀に、身体が急成長してしまう者がおるが、急成長直後は頭のイメージと身体の加減がずれてしまい、お主のようになってしまうのじゃ。そうじゃの、ミーナ」


「そういえば、すっかり忘れていたわ。家のドアは壊れるし、コップも割れるし、慣れるまで大変だったのよ」


 ――その後、跳んだり、持ったり、振ったり、投げたり、時間をかけて身体の成長を頭になじませていった。


「だいぶ、身体を動かすコツを掴んだかのぅ。では、軽く手合わせをお願いしたい」


「えぇ、構いませんが、僕は暴力を好みません」


「お主のスタイルで構わんよ」


「分かりました」


 最後のストレッチとして、屈伸をして、腕をぐるぐる回す。そして、大きく深呼吸。


「では、行きますよ」


 ――ビュン、とギルマスの近くに一気に移動。ギルマスにタッチしようとすると、ギルマスの姿が消えた。


 これは――何かの漫画で出てきた残像を残す移動術みたいだ。


<<キリトの右後方5メートル>>


(ありがとう、ナビさん)


 ギルマスの居場所をイメージしながら、旋回し、一気に距離を詰める!!


「おぉ、ついてこれるのか」


「逃がしませんよ!」


 改めてギルマスの身体に手を伸ばす。だが、これも空振り。


「フォッフォッフォッ、なかなか当たらんのう」


(ナビさん、ギルマスに何とか食らいつきたいんだけど、良い手はないかな?)


<<キリトのレベルアップにより、MPダメージの方も成長しています>>


(成長? 一体どうなったの?)


<<MPダメージ範囲が広がり、直接触れなくても良くなります。その他――>>


(なるほど……じゃあ、色々試してみよう。ギルマスの鼻を明かしてやる!!)


 再度、ギルマスとの距離を詰める。


 ふと、ニーナの言葉が頭の中で再生される。


『フェイントを教えるね、キリト。魔獣が出たらね、右に行くと見せかけて左に行って――』


 ここは一つ、試してみようかな。ギルマスの右半身を狙って手を伸ばす振りをして――。


 一気に左側を攻める!


「おぉっ!?」


 ギルマスが困惑の表情を浮かべる。直接は触れなかったが、随分近くを空振り。


<<ギルマス:MP解析不可に対し、MPダメージ3を与えました>> 


 でも、MPダメージを与えられたようだ。にしても、ギルマスのMP解析不可って何だよ。チートじゃないか。


 ギルマスは手で身体をペタペタ触っている。僕はギルマスから距離を取って、ゆっくりと息を整える。


「キリトの拳は当たってはいないはずじゃが、何かが持って行かれた感触があったわい。――おぉっ!? また、持って行かれる!!」


<<ギルマス:MP解析不可に対し、MPダメージ3、MPダメージ3、MPダメージ3>> 


「キリト、お主一体何をしておる?」


「冒険者たる者、一つや二つ、秘密がなければやっていけないって言ってましたよね!」


「面白い奴じゃ」


 ――僕は攻めて、攻めて、攻めまくった。今回のMPダメージの成長で得た三つの効果のうち、二つを駆使して。


<<ギルマス:MP解析不可に対し、MPダメージ3、MPダメージ3、MPダメージ3……>> 

 

「いやぁ、年には勝てんわい。膝が言うことを聞かなくなってしもうた。降参じゃ、キリト」


 ギルマスもゼェハァゼェハァと疲れた様子だ。


 一方の僕はと言うと、背中から地面に倒れ込んでいた。クタクタだ。立ち上がる気力もない。


「はぁ、はぁ、はぁ……疲れたぁ……」


「えっ!? ギルマスが降参? ミーナ、あなたもザインも、まだ一度も降参なんてさせられなかったじゃないですか!!」


「キリト君、何か新しい力に目覚めたみたいね」


 モフ吉を愛でながらこちらを見る美女二人。冷静な解説だ。


 ギルマスがこちらにゆっくりと近づいてくる。そして、正面にチョコンとあぐらを掻いて座った。


 そして、ミーナとカレンに聞こえない小さな声で、


「お主、異世界から来たじゃろう」

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