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攻撃力0の【救済者】〜魔物を殺さず『元の姿』に戻してたら、いつの間にか伝説級メンバーのリーダーになっていた件〜  作者: おとしごと


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013話 亡霊騎士討伐パーティの帰還

□013話


 黄泉がえりの亡霊騎士との一戦を終え、帰還前に小休憩。


「はい、キリトさん」


 リージュが重みのある皮の水袋を手渡してくれた。僕は慣れない手つきで木製の栓を外し、ゴクゴクと水を喉へと流し込んだ。


「プハァ、生き返りました」


 隣に腰掛けたリージュが、僕の顔を覗き込む。


「本当に黄泉がえりの亡霊騎士を討伐してしまいました。キリトさん、またギルドが大騒ぎさせてしまいそうですね」


「ゲホッゲホッ」


 確かにそうだ。目立つのは好きじゃないんだけど、いつも結果的に目立ってしまう。


 モフ吉に野菜を食べさせていたミーナがそこへ割って入る。


「今回の亡霊騎士討伐の件は、ギルド内ではうまく処理してくれるかもしれないわ」


「うまく処理――ですか?」


「この件は表向きの正式な依頼じゃなかったから。ザインの手柄にするとか、別のギルドの冒険者の手柄にするとかね」


 剣の手入れをしていたチェイス。


「そうなると、報酬やギルドポイントは貰えないってことなのか?」


「報酬やギルドポイントは貰えるわ。冒険者達の間で、誰が討伐したのかって話題で当面持ちきりになると思うけれど、その話題の主が誰になるのかってだけの話よ」


 チェイスが剣をしまい、立ち上がった。


「それなら、ありがたいな。キリトは『英雄蹴り』という二つ名で目立ちすぎているから、少し冷却期間が必要だと思っていた。さて、そろそろナレフに戻るとするか!」


 ■  □  ■  □ 


 一日かけて依頼を完遂して身体はクタクタだ。フラフラとした足取りで北側のゲートにたどり着いた。


 既に町は赤一色で染め上げられ、これから夜の帳が下り始める。


 この時間帯ともなると、北門付近は閑散としたもので、ポツリポツリといる門兵が閉門の支度をしているだけだった。


「チェイス! 戻ったんだな」


「おぅ、悪いが入門の記録だけ頼む」


「分かった。チェイス達は何の依頼で外に出ていたんだったかな?」


「……その、あれだ。戦闘の演習に行ってたんだ」


「そうか、なら知らないだろうから、一つ朗報だ。どうやら、『黄泉がえりの亡霊騎士』が討伐されたらしい。物見櫓の哨兵があの付近の霧が晴れたとかで騒いでいたんだ。間違いない」


「ゲホッゲホッ、オレタチハナンノカンケイモナイヨ……ぼ、亡霊騎士の近くになんて行っていないし。そうか、それは良かったな」


 相変わらず、演技の下手なチェイス。門兵に何か怪しまれていないか心配だったくらい。


「お前達は今朝出発したばかりなんだ。お前達がやっただなんて思っちゃいないよ。大体、過去のパーティは一週間以上討伐を繰り返して、毎度諦めて帰ってきてたじゃないか」


 えぇ!?  普通は一日で帰って来れないのか? そうか。討伐対象は、討伐しても討伐しても復活する『黄泉がえりの亡霊騎士』。そりゃ、倒したと思ってもまた蘇ってしまうわけだから、一日で帰ってくるなんて夢のまた夢か。


「キリト君。ギルド内はすでに『黄泉がえりの亡霊騎士』討伐の話題で持ちきりかもしれないわ」


 僕は大きくため息をついた。


 ■  □  ■  □


 僕たちがギルドに到着すると、ギルド内は大騒ぎだった。このままでは再び変な二つ名を付けられかねない――そんな僕を見つけるなり受付嬢は静かに僕たちを関係者用の出入口に案内した。


「ミーナさん、このままギルマスの部屋へお願いします」


「分かったわ。ありがとうね」


 受付嬢とミーナのやりとりは、上司と部下という感じだ。実際にそうだったんだろうから、当たり前ではあるか。


 チェイスは両手を頭の後ろで組み、


「ギルマスの部屋に案内されるなんて初めてだな」


 などと上機嫌な様子でベックと話していた。


 通路、そして階段を通り、2階の最奥の部屋の正面でミーナは足を止めた。


「ここがギルマスの部屋、みんな、いいかしら?」


 皆頷く。


 トントン――


「ミーナです。入って宜しいでしょうか?」


 程なくして、

 

「良いよ。入っておいで」

 

 と老齢男性の声が聞こえてきた。


 扉を開けると、正面に立派な長机が鎮座。


 その中央に高い背もたれの革張りの椅子があり、そこにちょこんと小柄なお爺ちゃんが座っていた。


 その隣に、眼鏡をかけた如何にも秘書といった感じの女性が立っていた。


「まぁまぁ、まずは腰掛けなさい。お茶をお願いできるかな?」


 軽い感じのお爺ちゃんだ。


 ギルマスは隣の秘書さんを見上げてお願いする。


「かしこまりました」


 お茶を頂きつつ、経緯を説明する。


 但し、僕のMPダメージという情報はここでは漏らさない。それだけはこのパーティで事前に決めていた。


「ほぉー、本当に討伐達成するとは。『英雄蹴り』に賭けて良かったわい」


 秘書さんが眼鏡をクイッとあげる。


「そうですね。長年、解決の糸口さえ見えていませんでしたからね」


 そして、そのままミーナの背後に回る。


「ミーナ、一体、どんな手を使ったのですか?」


 色気のある口調でミーナに質問をする。ミーナは淡々と答える。


「相性が良かったのよ」


「そ……そうなんだ。俺たち……その、相性が『黄泉がえりの亡霊騎士』と、良かったみたいで……」


 チェイスの下手なフォローは、今回は不要だったと思う。却って怪しまれそうだ。


「まぁまぁ、良いんじゃ。冒険者たる者、一つや二つ、秘密がなければやっていけんからな」


 ギルマスはそれ以上の質問は不要だと、暗に告げた。


「さて、このパーティにはミーナがいて、「英雄蹴り」がいて、ただでさえ目立つ」


 その通りだ。ここで『黄泉がえりの亡霊騎士』の討伐実績がつくと更に目立ってしまうだろう。


「今回の件は、ザインとお前達パーティの共闘ということにしてみてはどうかの?」


 それは願ったり叶ったりだ。チェイスと視線が合い、僕は頷く。


「是非お願いします」


「承知した。では最後にギルドランクについて。『黄泉がえりの亡霊騎士』討伐達成により、キリトとニーナを特例でランクDへ2ランクアップ。チェイス、ベック、リージュは1ランクアップでランクBとする」


「あ……ありがとうございます」


 チェイスは拳を強く握り、嬉しさが今にも爆発しそうな勢いだ。


「ギルドカードも更新してきますので、お渡し下さい」


 ギルドカードを手渡しする際、素敵な笑顔の秘書さんと視線が合った。良さそうな人で良かった。


 程なくして、秘書さんから更新されたカードを受け取ったが、怪訝な表情の秘書さんが気になった。


 ……秘書さんに何か怪しまれているのか? 一体どこを怪しまれているのだろう。


 レベル……20? 最初にギルドカードを受け取ったときはレベル5だったはず。一気に15も上がっている。この部分を怪しまれたのだろうか? それとも相変わらずの攻撃力「0」の部分? 攻撃力0は僕の誇りだから、怪しまれるなんて失礼なことあるはずがないか。


 いずれにしても秘書さんに何か怪しまれていると思う。僕は冷や汗が流れるのを必死にこらえた。


「そして、報酬はこちらです」


 秘書さんがテーブルの上に大きな革袋を置いた。そして、もう一つ。野菜をのせられた小さなカゴも置かれていた。


「あの……その野菜は?」


 僕は思わず訪ねてしまった。


「そ……そのウサギちゃんに、食べさせてあげなさいね」


 秘書さんは優しい笑みを浮かべた。うん、大丈夫。普通の優しい秘書さんだ。


「ひとまず話はここで終わりじゃな! さて、キリト。一度、お主の力を測らせて貰いたい。手合わせをお願いできんかのう」

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