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エターナル  作者: かさは
植物少女編
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第四十八話 本音

「トワ……君。」

ユキはトワを見た瞬間、目を丸くして固まった。



「…………。」

サキはその空気をすぐに察知して口を閉じる。



「ど、どうしたの?何か……あったの?」

動揺を隠そうと何も知らない体で問いかけるが、隠しきれていなかった。



「少し、話したいことがあってな。」

しかし反対にトワはひどく冷静だった。サキはその言葉を聞いて腰を上げて別の方向へと歩きだす。



「あ………。」

引き留めようと手を前に出すがサキが思いの外早く気づいたらいなかった。



「……………。」

二人の空気には気まずさが蔓延る。



「……その。」

先に口を開いたのはトワだった。



「うん。」

まだ目を合わせられない。



「…ごめん。」

トワは覚悟を決めて頭を下げる。



「え?」

その光景に開いた口が塞がらない。



「ユキは俺のことを案じてくれたのに…俺はそれを無碍にした。それはユキの気持ちを踏みにじる行為だ。」

頭を下げたまま言う。



「だから……本当にごめん。」



「…………。」

ユキの表情が曇った。



「そんなのって……そんなのってないよ……!」

堪えていた涙が一筋、頬を下る。



「私が……どれだけ心配したと!」

トワは動かない。



「トワ君には傷ついてほしくなかった!死んでほしくなかった!なのに!」

ユキの顔は段々と怒りと悲しみがないまぜになっていく。



「あの時、私がどんな気持ちだったのか分かってるの!?帰ってきたと思ったら血だらけのトワ君がいて!」



「…………。」

トワは一度ゆっくり瞬きをした。



「死んじゃうかもしれないって!二度とトワ君の顔を見れないかもって!」

そこまで言ってはぁはぁと肩で息をする。



「もう……あんなトワ君、見たくないよ……。」

その声はひどく小さかったが、込められた気持ちは計り知れないほど大きかった。



「……ユキ。」

トワはゆっくりと頭を上げる。



「なに。」

僅かに警戒した。



「俺は……これから先も危険に身を投じる。」

ユキの目を見て断言した。



「……え?」

ユキの涙袋に再び涙が溜まっていく。



「でも、これだけは約束できる。」

トワの目には覚悟が浮かんだ。



「俺は……死なない。あんな怪我を二度としない。」



「そんなの……嘘に決まって……。」

しかしトワの目には一寸の迷いもなく、揺らぎもしなかった。



「信じられないなら、俺を殴ってくれて構わない。」



「…………!」

ユキは拳を強く握った。肩が震え、拳がゆっくりと持ち上がる。それを見てトワは静かに目を閉じる。

そして、ユキが振りかぶった。



「………?」

しかし痛みや衝撃は来ず、来たのは頬に添えられた優しい温かさだった。それに違和感を覚え、目を開ける。



「………そう…なんだ。変わらないんだね、トワ君は。」

諦めたように微笑みながら涙を流すユキ。



「責めないのか?」

ユキの行動に疑問が残り、訊く。



「責められるわけないじゃん。」

その笑みを絶やさない。



「なんで……。」



「だって、あまりにも必死だから……。」

それでも確かに手は震えていた。



「………。」

トワはその震えを感じていた。理解してなお目をそらさなかった。



「でもさ、私……怖いんだよ。トワ君がそういう顔してても、どうしても拭えない………。」

ユキはゆっくりと頬に添えたを離し、ぶら下げる。



「それでも……トワ君がそういうなら、私も……少しは信じたい。」

それは願いでもあり、祈りでもあった。



「……あぁ、俺は逃げない。絶対に……ユキ、君を泣かせない。」

トワの目には決意が深まった。



「そっか………。」

ふっと、少しだけ頬を緩め、トワの目を見つめる。



「なら……行っておいでよ。」



「……行ってきます。」

トワもユキの目を見つめ返した。そうして二人は互いに目を合わせて頷き、校舎の方へと歩きだした。



「だからあの時あんな顔を……。」

それを物陰からサキが聞いていた。サキは近くの壁に背中を預け、盗み聞きしていたようだ。



「…………戻らなくちゃ、ですよね。」

少し日が傾いており、茜色が青空に溶け込んでいる。

サキも、トワとユキにバレないように校舎の中へと足を動かした。





「お、帰ってきたの………か?」

傘都は花とイチャイチャしていたら、後ろから二つの足音が鳴っていることに気がついた。多分トワとユキの二人だろうと見当がつき、振り返る。



「……………。」

花はその様子の傘都が気になり、トワたちの方へと顔を向けた。



「……………。」

二人とも思っていることは同じだ。



―((じゅ……熟年夫婦!?))

トワとユキの空気感はまさにそれだった。



「わ……私達でもそんな感じになれないのに……!」

羨ましそうな目を二人に向けた。



「いや気にする所多分そこじゃない。」

傘都はツッコんだ。



「そこ以外にどこがあるの!?」

花は傘都に詰め寄った。



「もっとあるだろ!こう……雰囲気とか!」

手をふんわりと動かし、何とか伝えようとする。



「お前らは一体何を話してんだよ………。」

その声が聞こえてきたのかトワが呆れながら話しかけてきた。



「?」

トワの後ろでユキが顔をのぞかせた。何のことか理解してないようだ。



「い……いや?気にすんなよ、なぁ?」

傘都はチラッと花へ目配せする。



「そ、そうだよ!気にしないで!」

焦るようにニコニコと手を振った。



「お、おう。そうか……。」

特段問い詰める気もないので怪しいと思いながらも聞かないことにした。



「……その様子じゃあ、仲直りできたんだな。」

ふと気づいたのか僅かに頬を緩めた傘都。



「ん?トワ君……傘都君に何か言われたの?」

その言葉が引っかかったのか、ユキはトワへと向いた。



「まぁ……発破かけて貰ったんだ。」

気まずそうに目をわずかに逸らした。



「そっか……ありがとう。傘都君。」

両腕を背中に回し、柔らかい笑みを浮かべる。



「いいってことよ。それも親友の仕事のうちだしな。」

ニヤリと微笑み返して腕を組む。



「おいおい、なんか俺が悪者みたいに……。」

その瞬間ユキが言葉を発した。



「悪者だからね。」

ジトッとした目で半ば呆れ気味にはぁとため息をつく。



「は……はい。すいませんでした。」

トワはただひたすら頭を下げることしかできない。



「……尻に敷かれてんな。」

ポツリと傘都がこぼす。



「だね。」

花もうんうんと頷いた。しかし、当然この場所には太郎にマシロに治もいるわけで。



「あ、太郎君。」

やっと周りを見て気づいたのかユキが太郎を見つけた。



「ユキちゃん……その様子だと、仲直りも……。」

ホッとしたように安堵した太郎。あれを見ていた当事者としては気が気ではなかっただろう。



「うん、さっき傘都君にも言われたけど、もう大丈夫だよ。あの時はその……ごめんね?変なとこ見せて。」

苦笑いするユキ。後ろめたいようだ。



「気にしないで。まぁ、仕方ないから。」

太郎はトワを見た。



「うぐっ………。」

気まずいのか視線を外す。



「トワ君はこれを気にちゃんと反省したほうがいいよ?」

畳み掛けるように太郎は言葉を重ねた。



「わ、分かってるって!ちゃんと反省してるから……。」

途端にもじもじと指をいじるトワ。



「あれってなんですか?」

それを遠目から見ていたマシロと治。



「さぁ、私に言われても。」

治はそう言って肩をすくめ、ぼーとその光景を見る。

未だ修復やらメンタルケアで忙しくあるが、あの戦いの名残を感じさせないほど、この場所だけは平和そのものだった。


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