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戦う考古学者と卵の世界  作者: いくさや
第二章 エスクリスク聖殿
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47 筆記試験

 47


 翌日は予定通りに最終確認。

 朝の内に見学可能な辺りをランニングして、昼食を終えてから座学の復習。


 リィナとマルスは別行動だ。

 一緒に行動しても良かったけど、一応は対戦相手。

『慣れ合うのは趣味じゃない(相手がいたらカルロもやりづらいだろう?)』とツンデレしたリィナに、マルスが付き合っている。


 夜には合流して、前日同様に支給されたお湯とタオルで汗を拭き取った。

 平民用の寮にはお風呂もシャワーもない。

 学生用の正式な寮や、貴族寮ならあるそうだけど、我慢するしかない。


 半裸になって三人で輪になって背中を拭いたりしたけど、マルスがなんだか妙に動揺していて、気持ち悪かった。

 いや、友達に対する感想じゃないけど、あの巨体が照れてくねくねするのは不気味としか言いようがないんだよ。

 リィナなんかは堂々としていていた。隣のマルスと比べて色白で線が細いから、なんだから無性に心配になってしまう。




 そんな二日目が終わり、三日目――試験当日。

 職員に案内されて向かった先は巨大な講堂だった。

 ドーム状の建物で、大学の大講堂の座席をぐるりと一周させて繋げていると言えば伝わるだろうか。

 中央の演台を全方位から見下ろせるようになっている。


 席には番号札が置かれていて、座席が指定されていた。

 当然、俺の隣にはリィナとマルスが並ぶ。


「カルロ。準備はいいな? 後で万全じゃなかったなどとは言わせないぞ?(忘れ物はないな? 足りない物があったら貸すぞ?)」

「そっちこそ」

「熱いわねえ、二人とも」


 バチバチと火花を散らせる俺たちに、悠然と微笑むマルス。

 ここだけ周囲とはちょっと種類の違う緊張感が漂っている。


 そうしている間に受験生がどんどん席についていき、やがて用意された席が埋まる。

 ざっと見たところ五百人以上はいるだろうか。

 ここは平民用の会場らしいので、貴族の受験生も含めると受験生は千人を超えているんじゃないかな。


 演台に職員が上り、魔導具らしい拡声器で話し始めた。


「では、これより入学試験の説明を始めます」


 まずは全学科共通の一般試験。

 この結果は午後には発表されて、一般科は合否が確定する。

 遺跡学科と魔導学科はよっぽど酷い成績でなければ、それぞれの二次試験に挑戦らしい。


 その他にも細かい注意点が説明されて、試験用紙が配られていき、一斉にスタート。


 前世の受験のように科目別に分けられていない、まさに総合的なテストだ。

 文法や計算から歴史や地理などの問題だけど、儂の知識にノルト神父からの知識を合わせれば簡単に解ける。

 特に躓く事もなく最後まで記入して、最後に見直しを終えても時間が余った。


 職員に手を上げて終了を宣言すれば、退出許可が出る。

 既に何人かが席を離れていた。


「「終わりました」」


 声が重なった。

 隣からだ。

 思わず視線を送れば、リィナと目が合う。

 互いに驚いて、ニッと笑い合った。


「よろしい。退席しなさい。他の受験生の邪魔をしないように」

「はい」

「承知しました」


 職員に解答用紙を回収してもらい、荷物をまとめて席を立つ。

 マルスはもう少しかかるようだ。

 俺たちの視線を感じ取ったのか、手を止めないまま小さく肩を竦めている。

 気にするな、という事かな。


 二人で講堂を出て、待機していた職員に次の予定を教えてもらった。

 近くの食堂で食事の後に結果が張り出されるらしい。それまで自由時間。

 適当に講堂から離れたところで向き合う。


「やるじゃないか」

「リィナもね」


 遺跡学科を志望する人間はどちらかというと学力よりも、竜卵の能力を重要視する傾向にある。

 あくまでどちらに重きを置くかであって、遺跡の発掘に知識はいらないというわけじゃないけど、多くが一般科や魔導学科に遅れを取るらしい。

 その中で、俺とリィナは全体から見てもかなり早かった。


 マルスの言った通り、かなりできるらしい。

 リィナはビシッと音がしそうな勢いで俺の鼻先を指差してくる。


「二次試験でも気を抜かない事だ。勝つのは僕だろうが、最後に悪あがきでもするといい(しっかり準備運動しておけよ)」

「そうするよ。リィナはマルスを待つの?」

「ああ」

「じゃあ、お昼にでも合流しようか。オレは先に行って席を取っとく」

「そうか。感謝する」


 慣れ合わないとか言っても邪険にしないんだからなあ。

 ツンデレなのに付き合いがいい。

 やっぱりここはしっかり勝負に勝って、リィナをツンデレから素直クールにして、学習院デビューさせてやらなくては。




「負けた……」


 まさか、負けるとは。

 平常心を装っているけど、内心ではわりと悔しい。

 見上げた掲示板には上位から順番に受験番号と名前が並んでいる。


 その頂上。

 満点のリィナに、ほぼ満点の俺の名前があった。

 点差はわずかに二点。おそらく、一問分の差だろう。


「ふん」


 俺から少し離れてリィナは鼻を鳴らしている。

 クールを装っているけど、ほんのり口元が緩んでいた。

 悔しいけど、負けは負けだ。素直に称賛しようじゃないか。


「初戦はリィナの勝ちだね」

「まあな」


 無愛想にそっぽを向いているけど、ヴィオラのおかげで雰囲気に敏感な俺には喜んでいるのがわかる。

 そうだな。ヴィオラが犬なら、こっちはうさぎさんだ。短いしっぽをふりふり揺らして、ジャンプしまくっているぞ。


「君も思ったよりはやるようだ(カルロもすごいじゃないか)」

「ありがとう」

「二人とも本当にすごいわねえ」

「マルスも五十位じゃん」

「悪くはないでしょうけど、二人と比べるとね?」

「大事なのは実力を発揮できるかどうかだ。つまらない考え方をするな(マルスも頑張ったな。あまり卑下はするなよ)」

「そうね。ありがとう」


 千人近い受験生の中で五十位というのは立派な数字だろう。

 リィナの言う通り、卑下する事なんて何もない。


「あいつらがリィナとカルロか。それに、あの、その、すごいのがマルスらしいぞ」

「ああ。遺跡学科の奴らが一位から三位まで持っていくなんてな」

「っていうか、マルスって魔導学科になってるぞ? 何かの間違いじゃないか?」


 互いに名前を呼び合ったせいか、周囲から微妙に注目を集めてしまっているな。

 いや、マルスのせいのような気もするけどね。

 人ごみの中だとマルスだけ、頭ひとつぐらい抜けているから本当に目立つよなあ。しかも、アフロだし。


 結果が知れ渡る事になると、次に一般科の方で足きりラインが発表されて、歓声と悲鳴が辺りに響き渡る。

 合格者は事務棟に案内されていき、不合格者は肩を落として退場していった。

 中には遺跡学科や魔導学科の生徒でも足きりをくらっている者もいる。


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