第3話 ソフィアDファンはポンコツ爆弾人間
オレリアリオンは避難区域で入隊希望者の募集を呼び掛けている。彼女は大きな声で迫力があり、いかにも頼りになる上司って感じだ。
だが隣にいる女性、私と同い年くらいか、それとも年下くらいの女性は違った。入ってまだ日が浅いんだな、と思ってしまう程に気弱そうな彼女は、モジモジしながら、必死に仲間になってくれそうな人を探しつつ、オレリアの顔色を窺っている。
だが、そんな彼女の弱腰な姿勢なんかより気になることがある。それは、日本のアニメでしか見たことのないアホ毛があるのだ。まるでロウソクの上の芯みたいだ。最初見た時はポニーテールなのかなって思っていたが、どうやら違うようだ。オレリアがいなくなったら聞きたい、どうやってセットしているのか。
「あ、誰も仲間になってくれませんね」
「まあ、無駄に入れても肉壁にしかならん」
「ええ、この人手不足の時に、人選ぶんですか!?」
「当たり前だ、兵士1人作るのにいくらかかると思ってんだ」
「でも、筋肉モリモリマッチョウーマンなんていませんよ」
「プロテインが手に入らない時に、そんな奴いないさ」
「じゃあ、スポーツ選手を探しにいくとか……」
「そんなんよりも、目を見るんだ、そいつの魂をな」
「は、はぁ……」
なんて頭の悪い会話をしているのだろう。
軍人とは脳みそまで筋肉で支配されているのだろうか。
「ん? 何だ、やっぱり気になるのか?」
「げ、見つかった……」
オレリアが木の陰に隠れていた私を見つけてしまった。私の事情なんて全く気にしない足音を出しながら、王子様みたいに私の前までやって来た。コバンザメみたいに弱気なアホ毛女も一緒だ。
「いや、無駄な事をしているんだなって」
「無駄って酷いぞ君、君が入れば無駄じゃ無くなる」
「な、なんで私なんですか……」
「私の勘だ、ただ力があるとか、勉強できるとか、そんな事よりも大事な、やりきる力を感じたんだ。そして人柄とかも悪くなさそうだ。人が仕事を辞める原因の一番の理由は、人間関係だからね。まあ今現在、殉職ってのが流行っているが」
「わ、笑えないんですけど……」
オレリアは自分で言って、自分で笑っている。
私とアホ毛女は笑えなかった。
「私はこの人の、その、髪が気になったんです」
「髪? ああ、この導火線みたいな髪の事か」
オレリアがアホ毛女のアホ毛をつんつんといじる。
「や、やめてください、どうなっても知りませんよ」
「ははは、急に爆発されても困るな」
「ば、ばくはつ!?」
「ああ、彼女、ソフィアDファンは話題のザブ、つまり能力者なんだ。彼女は体を爆発させることが出来るんだ。トレードマークのアホ毛は、能力に目覚めてからそのヘアースタイルになったらしい。一度丸坊主にしてみたいんだが、ソフィアは嫌がるんだよ」
「当たり前です!」
ソフィアは上官のオレリアに向かってキレた。
2人の関係を見るに仲は悪くないようだ。
「けど、能力者って重宝されるんじゃ……」
「う、そ、それはですね……」
ソフィアは急に地面を見て弱腰女に戻ってしまう。
「それは、彼女が落ちこぼれだったからだ」
「お、落ちこぼれって、そんな言い方……」
「まあ、事実じゃないか、ソフィアは自分の出した爆風に吹き飛ばされるんだ。勿論、熱を持っているから周りの兵の銃とか、爆薬に引火する可能性がある。能力もまだ使いこなせていないから、ダメージを受けると自動的に発動することもあるんだ。反射的に手を出してしまうみたいな感じだ」
「つまり、邪魔って事ですね」
「ちょっと、アナタまで失礼な事言わないで! 何よ、勝手に戦場に連れて行ったくせに、君がいると危ない、能力も存在も爆弾ってどういう事よ、うわぁぁぁぁあん」
ソフィアは泣いてしまった。
「す、すまない、ごめんよ!」
「だ、大丈夫なんですか?」
「確かに今は不安定だが、絶対にソフィアはフランスの英雄になる。なんせ爆発の能力だぞ、破壊力は申し分ない、ザブだから怪我の治りが早いのは勿論、熱に対する耐性もあるんだ。それに彼女はやる時はやってくれる。私は優秀な兵士だと知っているよ」
オレリアは赤子をあやす様にソフィアによしよしする。
「まあ、こんな偉そうにしている私も失敗とか沢山してね。けど、失敗とか苦い思いをした者は絶対に強くなる。ずっと1番だった奴は、ちょっとしたことで最下位になった瞬間、死んでしまうからね」
「私、自分で言うのもなんですけど、大きな失敗とかしたことないんですが」
「まあ、君の年齢ならこれからだもんね、私が君を評価しているのはそこじゃないんだ。一番大切なモノ、諦めない心かな」
「じゃあ、違いますね、私愛国心ってモノないですし、逃げれるならすぐにでも逃げ出したいし」
「……アベルのクソ野郎がどんどん領土を拡大している。もし、ここにゼノがやって来たら、目の前に来たら、君は死を覚悟するのかい?」
「そんな状況になったら誰だって抗いますよ」
「そうだね、あと君に言いたいことがある。大きな失敗をした事が無いんじゃなくて、大きな挑戦をしてこなかったの間違いじゃないのかい?」
オレリアはちょっと馬鹿にしたように言って来た。
私は久しぶりに心の底から他人に対してムカついた。




