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第三話 『天使の手料理は破壊力が高すぎる』

その日の夕方。


 相沢恒一は、落ち着かない気持ちのまま部屋の掃除をしていた。


「なんで俺の部屋で女子高生が料理することになってるんだ……」


 しかも一人ではない。


 隣人の完璧美少女・白雪美月。

 そして家出中の少女・雨宮しずく。


 状況だけ切り取れば完全に人生の勝ち組みたいだが、現実は胃が痛いだけだった。


 ピンポーン。


 インターホンが鳴る。


 ドアを開けると、美月が買い物袋を持って立っていた。


「こんばんは」


「本当に来た……」


「来ると言いましたよね?」


 当然のように部屋へ入っていく美月。


 その後ろから、しずくがひょこっと顔を出した。


「おかえりなさい」


「お前の家じゃないからな?」


 しずくはくすっと笑う。


 その光景を見た美月は、少しだけ目を細めた。


「仲良くなるの早いですね」


「いや、そういうわけじゃ――」


「恒一さん、包丁どこですか?」


「人の話聞いてた?」


 だが、美月はすでにキッチンへ向かっていた。


 数十分後。


 部屋には、信じられないほどいい匂いが広がっていた。


「……すご」


 しずくが目を丸くする。


 テーブルに並べられていたのは、ハンバーグ、サラダ、スープという完璧な夕食だった。


 一人暮らしの恒一には到底作れないレベルだ。


「いただきます」


 三人で手を合わせる。


 恒一はハンバーグを一口食べ――固まった。


「……うまっ」


「でしょうね」


 美月は少し得意そうに微笑む。


 その笑顔は、学校で見せる“完璧美少女”のものではなく、年相応の柔らかなものだった。


 しずくも夢中で食べている。


「こんなの久しぶりです」


 その言葉に、美月の動きが少し止まった。


「……普段、ちゃんと食べてなかったんですか?」


 しずくは少しだけ視線を落とす。


「まぁ、色々あって」


 空気が静かになる。


 だが、しずくはすぐに笑った。


「でも、今日は当たりです」


 その笑顔を見て。


 恒一と美月は、なぜか少し安心していた。


 食後。


 美月はふと窓の外を見る。


「今度、三人でどこか行きませんか?」


「どこに?」


「駅前で夏祭りがあるんです」


 しずくの目が少し輝く。


「お祭り……」


「たまには息抜きも必要ですよ」


 そう言う美月の横顔は、どこか楽しそうだった。


 恒一はため息をつきながら笑う。


「……騒がしくなりそうだな」


 けれど、その騒がしさを。


 少しだけ心地いいと思い始めていた。

最後までお読みいただきありがとうございました!


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次回は「三人で行く初めての夏祭り」です。

今日の21時に更新しますので、お楽しみに!

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