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奇跡と悲嘆と

「ふぁ〜〜」


 実に清々しい朝。いつも通りの日常が少し輝いて見える…そう!私は魔法が使えることがわかったから!


 るんるんでベッドから起きてリビングへと向かう


「おっはようございまーーす!!」


「おはよう。早くご飯食べちゃいなさい」


「はーい!」


「なにかいいことあったの?」



 浮かれているのが伝わったのだろう。いつもとあまりにも違う私の行動に言葉が飛んでくる。



「それがねぇ…あ!あぁ…いや…なんでもない……」




 昨日の男性の言葉を思い出してすぅっと青ざめていく


 ――故に俺等【魔法使い】が保護する。明日、迎えに来るからとりあえず、必要な荷物をまとめておけ。他人には不用心に話すなよ。母親にもだ。


 「保護」って言ってた…?「迎えに来る」?つまり…ここを離れる…?


嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ


 せっかく…せっかく…ここで…私は…家族をっ……作ってっ……………家族を?また?


 無意識に髪をクシャリと握り、目の前がぼやけてくる。


「ごめん……ちょっと食欲ないや」


「えぇっちょっと!?」


 アンナさんの制止も聞かず、急いで席を立って外へと急ぐ。そこに昨日の人がいないかと期待しながら。



  バタン、と勢いよく玄関の扉を閉め、朝の冷たい空気の中に飛び出した。

 家の周り、牧場の周りを現実逃避するようにくまなく探す。


 何処かにいるんじゃないか、何かの誤解なんじゃないか、話をすれば「保護」されないんじゃないか、



 考えを巡らせているとふつふつと怒りが湧いてくる


「なんで私が保護されないといけないの…!?魔法がもし使えたとしても私が保護されるかどうかは私が決めるべきことでしょう!!」


「そうするわけにはいかない」


 昨日あの人と出会ったあたりまで差し掛かったとき、後ろから声が飛んできた。 

 急に声をかけられたものだから驚いて声の主を探るように振り返れば、やはり昨日の男だった。


「昨日の………なんで私は保護されるんですか!?別にいいじゃないですか!それにあなたのことも知らないのに!」


「まぁそれはそうだな……悪いがここでは話すことができない」


「さらわれるかもしれないのに黙ってノコノコついてこいって言うことですか!?私はずっとここで暮らすんです!」


 これ以上聞く耳は持たないとばかりに言い放ち、男の横をすり抜けて立ち去ろうとしたその時、重いため息とともに、背後から冷徹な声で呼び止められた。


「待て、このままだとお前らもろとも死ぬぞ」


「 ぇ……?今、なんて?」


 思わず足を止め、恐る恐る聞き返す。 

 振り返るとすぐ近くにいた男が、眉間にぐっと深い皺を寄せているのが見えた。その瞳には一切の冗談の色がない。


 男が あまり使いたくないのだが、そう呟いたのと同時に何やら紙を取り出すと、それは青白い炎に包まれていった。

 次の瞬間、私達の周りを覆うように、半透明で薄い水色の半円型のドームが出現する。


「これは……昨日と同じ…?」


「認識阻害のpova-luを使った。周りは俺達のことは見えないし、聞こえない。 さぁ、説明してほしいんだな?望み通り説明してやろう」


  男がゆっくりと、深く被っていた黒いフードを下ろした。


 あらわになった男の容姿は、短く整えられたグレーの髪に、まるで氷のようなスカイブルーの瞳。

 なんとも異世界らしく、悔しいほどに整った顔立ちだった。


「……なんで私が保護されないといけないんですか…?」


「俺達もなんのためかは知らないが、この国の王家の人間がお前、ひいてはteva-luを狙っている。」


「質問なのですが……teva-luってなんですか?昨日も同じようなことを言っていましたよね?」


 男は周囲を覆う水色のドームを指差しながら、淡々と説明を続ける。


「つまり……こういうのを張れたりとか、この前見せたが、水を一見すると無から生み出せるような能力を持った人のことだ」


「なるほど…?」


 男はため息混じりに、淡々と現実を突きつけてくる。



「絶対わかってないだろ。 とにかく、王家がお前というteva-luの存在を知ったら、手段を選ばず手に入れようと躍起になる。このままここにいれば、家族も巻き添えで殺されるぞ。」


「え……」


「だから保護し、関わる全ての人の記憶を消して、ここには最初から誰もいなかったという状況にする。それが最善だ。」


「でも私……ここにいた——」


 遮るように男が冷たく言葉を被せる。


「——お前は自分の我が儘で家族を見殺しにするのか?」


 鋭い言葉を突きつけられ、絶望に顔を歪めながらふるふると横に首を振ることしかできなかった。


「それならさっさと荷物を持ってこい。早ければ早いほど良い」


「はい……」


 家族を殺されるなんて言われたら従うしかない。足を引きずるように家へと荷物を取りに行った。

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