まとめ♯6
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ある日当たりのよい一室。
大きな扉みたいな窓からは直射日光が照りつけ、ねずみ色の床を真っ白に光り輝かせている。
ショパンとラフマニノフはこの部屋を二人のプライベート部屋へと定めていた。
音楽学校のダブル校長を務め、最近は霊界の政治の仕事にも手を出すかもしれないというワクワク感で二人はいっぱいだった。
ショパンは寝そべりながら、ラフマニノフの膝に頭を乗せ、あおむけになり横たわっている。ラフマニノフが後ろから優しく包み込むように、ショパンに耳かきをしていた。
ショパン「あっ、そこそこ。もう少し深く。赤くなっているはずだから、その皮膚の壁をこするようにしてくれ」
ラフマニノフ「なんだ。細かいな。注文するな!こっちはめんどくさいなか、やっているんだぞ?黙って俺に任せろ!」
ショパン「それにしても、この道具は本当によくできているよね。良質な耳かき棒を探してくれて、買ってきてくれてありがとう。ラフマ」
ラフマニノフ「ピンク色にしてよかったよ。ショパンによくお似合いだ!」
ショパン「そうかな?ラフマは海に行った時もピンクの水着を着て、周囲を驚かせたよね。僕も死ぬほどビックリしたよ!」
ラフマニノフ「でも、霊界って不思議なところだよな。物質界で過ごす地上人の奴らの世界と全く異なった構造で、できているのに、この肉体欲望ペンダントをつけているだけで、地上の肉体を持つ奴らと、同じような感覚を味わうことができるなんてな」
ショパン「基本、霊界では排泄や食事も必要ないし、性欲もない。肉体ではなく霊体だからだ。肉体ならではの欲望がないんだ。でも、肉体ペンダントにより、それらを味わえる。霊体のままなら、常に居心地の良い温度しか感じない。でも、それではつまらないし、飽きがくるから肉体を持っているときの寒さとか暑さとか、懐かしくて感じたくなるからこそ、肉体ペンダントが流行しているんだよね」
ラフマニノフ「さすがに本物の地上世界の肉体を持った奴らみたいには感じないが、ある程度は疑似体験ができる。春の暖かさ、夏の暑さ、秋の涼しさ、冬の寒さも味わいたいときに味わえる。このペンダントがあればな。だから、これを開発した俺の会社には感謝してもらわないとな」
ショパン「すごいよね。ラフマは音楽家だけでなく『アイデアインフィニティー』の創業者兼最高経営責任者兼会長だもんね。音楽家として凄いだけでなくて、ラフマはビジネスの天才でもあるから、影響力や社会的成功ではラフマの圧勝だね。悔しいよ!」
ラフマニノフ「ワハハハハ。悔しかったら、ショパンも何か商品開発して、会社を設立してみろ。ショパンにはいつまでもライバルでいてほしいんだよ!」
ショパン「じゃあ、新しいピアノを作るっていうのは?ピアノを更に進化させるんだ。僕が生前、愛用していたプレイエルのピアノから、スタインウェイのピアノになっていったように、それ以上の、ピアノの革新に貢献したいなって。ダメかな?」
ラフマニノフ「他人にどうかなって聞いているようじゃ、一生実現できないだろうな。お前がどうしてもやりたい、成し遂げたいっていう想いこそ、最も重要だ。何かを達成するうえで、一番大事なのは願望の強さだって、お前の読んでた成功哲学のナポレオン・ヒルの本にも書いてあっただろう?」
ショパン「もう、耳かきはいいや。でも、僕は今、とても幸せなんだ!幸福感がすごいよ。偉大なラフマとこうして一緒に癒しの時間を共にできてね。こういう二人の時間が何よりの喜びだよ」
ちょうど、その時、ショパンとラフマニノフを窓からの太陽の光が包み込んだ。暖かい心地よい美しい光に包まれ、二人は最高に至福の瞬間を迎えた。
ショパン「あれ?なんだ?このピアノ曲?いきなり流れてきた。なんか、すごい感動する!斬新な発想の曲だね!」
ラフマニノフ「実は俺たちが窓からの太陽の光に包まれた瞬間にこのピアノ曲が自然に流れるように設定しておいたんだよ。俺の新曲だ。お前に聞かせたかった!! いいか。お前は唯一無二のピアノ作曲家だ。ピアノの神だ。俺を超すなんて考えずに、ショパンにしか歩めない道を歩んでいけばいいんだ!俺ができないことをショパンはやっている。ショパンができないことを俺がやっている。お互い、できないことをカバーしあって、最高のバディを目指そうな」
ショパン「ありがとう。ラフマ。このピアノ曲、でも、3小節目のシラシラの連続がちょっとしつこいから、もっと工夫したほうがいいかな」
ラフマニノフ「ショパン。多分、俺は一生ショパンのピアノ曲を超えられないだろう。でも、いいんだ。ショパンを超えてしまうことは望んでない。俺は、俺のオリジナリティーがある。ショパンは史上最強のピアノ作曲家だからこそ、価値があるんだ。今、ほろよい気分でいうが、お前を尊敬している」
ラフマニノフは窓を開けた。
春の新鮮な空気が部屋に入ってきて、黄緑色のカーテンをやさしく揺らした。
ラフマニノフ「上を見ろ。あの青空のように、どこまでもショパンはピアノ曲を作曲する天才として向上していくだろう。俺がビジネスを成功できたのは、ショパンに音楽家として負けているからこそ、その悔しい気持ち、負けたくないという気持ちがあったからだ。だから、この肉体ペンダントの開発のきっかけ、原因はショパンだ。お前なんだ。影の開発者といっていい。ショパンがいなければ、俺はこんなに成功していない。ショパンには数えきれないくらい救われている。これからもよろしくな」
ショパン「ありがとう。ラフマ。偉大なる人間である君に認められて、僕は死ぬほどうれしい」
ショパンは涙を流し始めた。
2人は立ち上がり、お互いに見つめあい、握手した。
2人を包み込む太陽の光と、ラフマニノフの作曲したピアノ曲「祝福」が、文字通り、2人の偉大な音楽家を祝福していた。
42
ショパン「グッ⋯ウアアアアアア」
ユウジロウ「カット!ショパン。なんだ。その声は。その表情は!全然なってない。笑いながら崖から落ちるなんておかしいだろ!もう一度やってくれ!」
ショパン「うわああああああああ」
ユウジロウ「ショパン。お前は才能がないからやめちまえ」
ショパン「こら!! いくら、監督だからって、偉大な音楽家である私になんていう言い草だ!論外だ!」
ユウジロウ「ラフマニノフはしっかりと演技してくれる。ショパンとは大違いだ!ショパンがこんなに大根役者だとは思わなかった。生前は名俳優になるとまで言われていたので、期待したが、ラフマニノフのほうが全然優れているじゃないか!ショパン!!」
ショパン「なぜだ?ベートーベンもしっかりと演技できている。こんなに役者の演技が難しいとは。昔の私はどこいったんだ?」
ラフマニノフ「ショパン!ユウジロウがガッカリしているぞ?ユウジロウよ、ショパンには演技の訓練をもっとさせてから出演させましょう。それまでは、私たちのシーンの撮影をしましょう」
モーツァルト「前回、映画のテーマ音楽オーディションで最下位だったが、演技だったらかなり自信あるよ」
ベートーベン「我は崖から転落し、川に沈むショパンを助ける役だな。モーツァルトと二人でな」
ユウジロウ「テツヤが見本を見せるから。やってみろ。こんな感じだってわかるはずだ!テツヤ!!頼む」
テツヤ「了解!ボス」
テツヤは生前、役者としてユウジロウが設立したユウジロウプロモーションで大活躍した名俳優だ。テツヤは表情一つ一つも完璧に高度な演技を見せた。
ベートーベンとモーツァルトはその通りに演技しようとしたが、モーツァルトはうまくいかなかった。
ユウジロウ「こら、モーツァルト。なぜ、お前は川で泳ぐときにバタフライなんだ?もっといい泳ぎ方があるだろう?クロールとかだろ?バタフライなんて聞いたことも見たこともなくて不自然だ!ショパンの次に大根役者だな!」
モーツァルト「ガーン!!!」
モーツァルトは鼻水たらしながら、呆然としていた。
ユウジロウ「テツヤ、大根役者のショパンとモーツァルトを演技訓練してやってくれ!頼む!しっかりと教えてやってくれ!」
テツヤ「OK!ボス」
と言いながら、ショパン、モーツァルト、テツヤの3人は銭湯で風呂につかっていた。
ショパン「ちょっと!テツヤさん!演技訓練サボって平気なんですか?ユウジロウ監督に怒られるんじゃ?」
モーツァルト「でも、ここの風呂!最高だな!いろいろなお湯の種類があって、温度も自由に設定できるし。ライオンの口から湯が出てるなんて洒落ている」
テツヤ「大丈夫。アゲハにユウジロウを説得するように頼んでおいたから!ユウジロウは従来のやり方でやろうとしている。ショパンの崖から落ちるときに笑顔になる演技が私には笑えて逆によかったんだ!ユウジロウに私から話すよりは、ズカズカ遠慮なく言えるアゲハに任せたほうがいいと思ったんだ」
ショパン「説得ってどういう意味ですか?」
モーツァルト「もしかして、風呂に入った理由を言い訳することですか?」
テツヤ「今までにない映画を作りたいとユウジロウさんはおっしゃった。ならば、お前たちの演技を素直に取り入れた方が絶対に面白い。変に演技トレーニングをして、魅力的な個性を失ったら今までにない映画にはならない。ユウジロウさんも間違えることがあるんだよな!」
3人は風呂で温まりながら、様々な会話をしていた。
テツヤ「ここの風呂の壁は、このタッチディスプレイから、自由に絵を選べるんだ!これなんかどうだ?」
風呂の大きな壁には「ブタ」の絵が映し出された。
ショパン「全然、銭湯って感じじゃないから違和感しかない!」
モーツァルト「つまり、前例のないものを選び、その違和感を大事にしろと言いたいんですね?」
テツヤ「そうだ!違和感を楽しむ!ユウジロウさんも、アゲハの説得には屈すると思うぞ?アゲハは遠慮がないからな!ユウジロウさんに唯一、逆らえる人かもしれない!その変わった性格をユウジロウさんも気に入って、映画のヒロインをアゲハにやらせようと思ったんだ。元はといえば、この『天才音楽家たちの女王』は、ユウジロウさんがアゲハを主役に添えたいという願いからスタートした企画だからな!」
ラフマニノフとベートーベンは撮影を順調に進めていた。
ユウジロウ「『天才音楽家たちの女王』という映画は、有名音楽家、ラフマニノフ、ショパン、モーツァルト、ベートーベンの4人が一人のキャビンアテンダントの女性を取り合うという変わった映画だ。完成したら、かなり売れると期待している!」
撮影所にアゲハが入ってきた。
アゲハ「ユウジロウ!! ちょっと!!」
ユウジロウ「なんだ?呼び捨てか?俺は監督だぜ?」
アゲハ「変わった映画にするんだったら、ショパンとモーツァルトを演技訓練させちゃダメよ!あの演技のおかしさが、変わりようが、魅力なのに!!!早く訓練を中止させなさい!」
ユウジロウ「俺に逆らう気か?」
アゲハ「逆らうに決まってんじゃない!バカじゃないの?今までにない映画を目指すって言っていたくせに、今までと同じ演技を役者にさせるってどういうことなの?あんた馬鹿じゃない?」
ユウジロウ「ハハハ!アゲハ!この俺にそこまで言うか!相変わらず、面白いな!お前は!そうか!確かにそうだな!むしろ、ショパンとモーツァルトの演技の仕方は逆に革新的とも取れるな!大事なことに気づかせてくれてサンキューな!」
アゲハ「早く2人を呼んであげなさい!」
ユウジロウ「ああ!そうするよ!」
こうして、ショパンとモーツァルトとテツヤが戻ってきた!
ショパン「うああああああああああ」
ラフマニノフ「ショパーーーーン!」
ショパンは敵の槍による連続攻撃を避けようとして、崖から落ち、味方のラフマニノフはショパンの名を心の中で叫んで、身を案じた。
もう、既に日は落ち、暗くなったので、崖から落ちたショパンを立ちすくんで見守るしかなかった。
敵に紛れ込んでいたショパンの味方であるラフマニノフは、敵の情報を探るためにわざと、敵の懐に入り込んでいたのだ。
川に落ちたショパンは、バタフライとクロールをするモーツァルトとベートーベンに助けられ、保護された。
やがて、アゲハが4人の中から1人だけ、結婚する相手を選ぶ場面で、アゲハは選べずに、失踪してしまう。
4人はやがて、アゲハが世界の王へとなる運命であることを予言の書から知り、4人はアゲハの直属の部下となり、アゲハを守りながら、アゲハは世界の王へとなっていく。
という映画は果たして霊界で大ヒットしたのだろうか……
43
霊界で摩詞不思議な場所がある。
青色や緑色のヒマワリフラワーたちが体を左右にユラユラ揺らしながら踊る姿が目撃されている。
ショパンはその不思議なヒマワリフラワーたちの生みの親である。
ヒマワリフラワーたちが体を揺らし、クネクネ動くその姿は神秘的で、観光客には人気である。
ショパンはビジネスで成功を収めているラフマニノフに負けたくないからと、自分も様々な事業を展開していくことにした。
その第一弾が、そのヒマワリフラワーパークだ。
観光客は青や緑の動くヒマワリを見て、その不気味さを楽しむためにやってくる。
横にユラユラ体を動かすヒマワリたちは、一本の狭い道路の奥に生えている。
ここの最大のポイントは、遠く10メートル離れた場所からしか観察できないように柵が設置してあるという点だ。
至近距離から見ると、不気味さ、奇妙さが失われてしまうからだ。近くで観察し、全てを理解してしまえば、神秘的なヒマワリの意義がなくなってしまう。
1969年に科学が発達し、人類は月に行ったが、月に何があるのか、という謎、神秘は失われてしまった。
神秘さを永久に保つために、ショパンは工夫していたのだ。
ラフマニノフには内緒で、このヒマワリフラワーパークを運営していた。
ショパンはかなりこだわって、この『神秘的なヒマワリたち』を作り上げた。
ラフマニノフはそんなヒマワリフラワーパークに一人の客として、やってきた。
ショパンも一緒だ。
ショパンは自分がヒマワリフラワーパークの創設者ということは、ラフマニノフには秘密にしてある。
ラフマニノフ『あれが最近、話題の動くヒマワリか。不気味だ』
ショパン『ねえ、ラフマ。これらを地上世界の人たちの睡眠夢にも登場させられるように、手続きできたらいいよね。この不気味さ、神秘的さを地上人の夢の中にも表現したらいいと思わない??』
ラフマニノフ『しかし、睡眠夢に登場させるには、厳しい審査があるんじゃなかったか?』
ショパン『睡眠夢霊界表現審査だよね』
ラフマニノフ『じゃあ、一緒に手続きに今から行こう。お前がこのヒマワリフラワーパークの関係者だからな』
ショパン『なんで?バレてたの?』
ラフマニノフ『俺に隠し事が通用するわけないだろ?お前のことは全てお見通しだ。伊達に何年も相棒じゃないぞ?この発信機で、お前の居場所がすぐに分かる。ヒマワリフラワーパークの事務所やヒマワリ周辺にいつもいたら、お前がここの関係者だって予測できた。しかも、ヒマワリ以外の様々な花たちに演奏を聞かすためのピアノが置いてあれば、ショパンがここを作ったかもと予感したし、そのピアノがショパンが一番気に入っているナモールプレだから、ショパンが関係者かなって予想したんだが、どうやら正しかったようだな』
ショパン『君の推理はなかなかだね。そうさ。僕はここの創設者兼オーナーだ。ラフマに負けたくないんだ。社会的成功や金でね。これはラフマに負けたくないっていう悔しい気持ちから出来上がったんだ。だから、このヒマワリフラワーパークが有名になればなるほど、ラフマもある意味、ここの生みの親みたいなものだから、喜んでほしい。ラフマと僕で、たくさんの人に影響を与えたい。僕はもっと人気になり、売れてからラフマにこのヒマワリフラワーパークの責任者は僕だって明かそうとしたけれど、バレちゃったみたいだね』
ラフマニノフ『お互い、肩を組んで、共に進んでいけるのは、素直に嬉しいな。それより、睡眠夢霊界表現審査に応募しにいくぞ!』
ショパン『分かった!』
44
ショパンとラフマニノフはアゲハ、ノブ、角田アキコ、しんすけ、みさえ、ひろし、ジンサ、ネマル、メシを宇宙船「チョコレート」に招待して、宇宙の果てへと冒険に出かけた。
アゲハ「また宇宙の果て旅行に行けるとはね。角田アキコの歌をみんな聞くことになるけど、覚悟はいい?」
角田アキコ「そうだ!あたいの地球愛って歌をみんなに聞かせてやるぜ!」
ジンサ「それよりもまずは、腹ごしらえだ。ディナーを用意するぜ。おい、ショパン。俺があらかじめ伝えておいた食材は用意したんだろうな?」
ショパン「ああ、厨房の無限冷蔵庫にすべて入っているよ。勝手に使ってくれ!」
ラフマニノフ「ジンサのシーフードチャーハンが食べたいな!懐かしいな。海のレストランで俺が考案したレシピより人気がなかったやつだな!」
ジンサ「いや、シーフードチャーハンなんか比べ物にならない美味しい絶品ハンバーグを作ってやるよ!」
しんすけ「オレ、ラフマニノフさんにピアノ習ってしばらく経つから、かなりピアノ上達したよ」
みさえ「みんな!角田アキコの歌よりも、しんちゃんのピアノ演奏を聞いてあげてくれる!」
ひろし「ショパンの蝶々のエチュードです!」
ネマル「そうだそうだ!角田アキコの歌には興味ねえよ!そっちの少年のピアノ演奏の方が遥かに興味あるな!」
メシ「ジンサのディナーは何分くらいでできるんだ?」
ジンサ「30分あれば、生きていることを感謝するくらいの絶品なハンバーグが用意できるぜ!まあ、もう少し辛抱してくれ。今から作り始める!」
ショパン「しんすけ!私の蝶々のエチュードを練習していたのか?」
ラフマニノフ「そうだ!しんすけはショパンの蝶々のエチュードに夢中だ!俺が教えたんだ!」
ショパン「ラフマ!ありがとう!」
しんすけと角田アキコの蝶々のエチュードと地球愛の同時演奏により、うるさいくらいの宇宙船のホールで、みんなはパーティーしていた。
ノブ「しんすけ君が蝶々のエチュードを弾いたら、僕が今度はバラード5番を弾いてもいいですか?」
アゲハ「私が以前、ショパンのバラードは4曲しかないと豪語したあんたに、霊界で作曲したショパンのバラード5番があるんだって教えたのよね。そして、幽体離脱を覚えて、ショパンに会い、ショパンのエキスパートピアノの音楽学校の生徒になったのよね。まあ、幽体離脱しているときだけしか霊界には来れない私たちだけど、20分を超える大曲だから、かなり習得するまで苦労したのよね!ショパンの作品の中でも、バラード4番に引けを取るどころか、感動度では上回る最高のバラードが5番よね!」
ノブ「アゲハさん。勘違いしないでください!バラード5番は習得していません。まだまだ、練習不足で僕の理想の演奏レベルには到達していません。満足できる演奏ではないですが、せっかくショパンとラフマニノフという最高のピアノの天才がいるので、なにか演奏のアドバイスをもらえないかと思いまして!」
アゲハ「その様子だと、永遠に満足しなさそうよね。ノブはピアノ演奏を更に極めたいのよね!私からしたら、かなり弾きこなせていると思うけどね!」
ノブ「それは、アゲハさんがピアノの素人だからです」
アゲハ「あら、悪かったわね!ほら、しんすけが蝶々のエチュードを弾き終わったわよ!どう?しんすけの演奏は!」
ノブ「5歳の子供にしては、十分すぎるくらい演奏技術が高度です。僕はしんすけ君に未恐ろしい才能を感じます」
ショパン「うん。天才だ!5歳でこれならそう断言してもいい。何もアドバイスはしないほうがいいのかもしれない。しんすけには。アドバイスすれば、個性を失うかもしれない。すでに5歳で今まで聞いたことのない個性が光り輝いている!僕は驚いた!」
ラフマニノフ「俺の教え方が最上級だからだろう。伊達に、霊界音楽家先生ランキングで3年連続1位を取ってないからな!俺は!」
ノブ「僕のバラード5番を聞いてください!みなさん!」
ノブは全力を出し切ったショパンのバラード5番を弾いた!
ラフマニノフ「ノブ、君は5歳のしんすけからいろいろと学べ!しんすけが持っているものがお前が足らないものだ。つまり、深さだ!深度だ!一番感動するような箇所で、スラスラさりげなく弾くのではなくて、深い崖に飛びこむようなドラマチックでなおかつ、大胆で静かな演奏をしたまえ!」
ノブ「たった5歳のしんすけ君から大人の僕が学ぶのですか?僕は悔しくてたまりません!」
みさえ「聞いた?あなた!しんちゃん!天才ピアニストとして有名な、あのノブさんがしんちゃんから学べって言われたのよ?しんちゃんは超天才なのよ!親として鼻が高いわ!」
ひろし「しんすけは将来、ピアノ演奏を極め、作曲も極めてくれたら、ショパンをも凌駕する天才作曲家になるかもしれないな!期待してるぞ!しんすけ!」
しんすけ「ありがたいです」
角田アキコ「おい、こっちにも注目してくれないのか?空気読めよ!あたいだけ仲間外れかよ!」
ネマル「おい、アキコ!お前は確かに昔よりはうるさく歌わなくなった。でも、作曲した歌はセンスゼロで誰も聞きたくないってことだ!」
メシ「あっ、ジンサ!! できたのか?ディナーが!腹ペコペコなんだよ!待ってたぞ!」
ジンサ「おう!みんな待たせたな!ディナーができたぞ!食堂の机に人数分、用意した。ソースは3種類。デミグラスソース、ケチャップウスターソース、俺特製ハンバーグソースだ。最初に味見してから、お好みなのを使ってくれ!」
メシは一番早く、駆け足で食堂に行った。朝から何も食べてないらしかった。
それに、サッカーの試合をしたばかりだった。
ショパン「皆さん!ジンサが用意してくれたディナーを堪能しながらカラオケ大会をやりましょう!カラオケの点数が高かった順に、ジンサのスペシャルスイーツ、レアチーズタルトを提供します!」
ラフマニノフ「このカラオケ大会はみんな全員を歌わせる。強制参加だからな!」
角田アキコ「よっしゃー!あたいもみんなに歌を聴いてもらえる機会が来た!!!」
ラフマニノフ「ただし、角田アキコは自作曲以外を歌ってくれ!お前の曲は誰も聞きたがらないんだ!」
角田アキコ「この際、なんでもいいよ!別にあたいの歌を好きなファンは、いるんだからな!いくらお前たちが嫌いでもな!250万人を動員したあたいの世界ツアーコンサートがそれを証明している!」
ノブ「実は、僕、角田アキコさんのうるさい激しいファンキーな曲調の歌が好きで、コンサートに行ったんですよ!だから、喜んでください!」
アゲハ「あら、ノブ。いいとこあるじゃない!仲間外れにされたアキコを慈しむなんて!」
ノブ「2代目世界の王になった角田アキコさんと仲良くなれば、何かと有利です!」
アゲハ「あら、3代目世界の王の私だけじゃなくて、2代目も自分のパイプにしようとしてるなんて腹黒いわね。まあ、いいわ。そんな欲深いあんたも面白くて好きよ!」
ノブ「アゲハさんに好きと言われても困ります!僕はすでに好きな人がこのメンバーの中にいるんですから!」
アゲハ「嘘?誰?いや、聞かないでおくわ。なんか恐ろしくて!」
ノブ「人妻です」
アゲハ「この中で人妻って言ったら、ひとりしかいないじゃない!これ以上、言わないで!」
ショパン「では、ディナーを始めましょう!カラオケ大会。最初に歌う人は、アゲハ!」
アゲハ「待ってましたー!! 一番乗り最高!!」
こうして、ジンサの絶品ハンバーグディナーをみんな堪能し、宇宙の果て旅行は大成功したとさ。
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霊界最大の音楽都市「オガサイ」はショパンとラフマニノフの音楽学校「エキスパートピアノ」があるだけじゃなく、霊界で最も音楽が盛んな都市である。
この「オガサイ」には、ショパンたちの「エキスパートピアノ」だけでなく、たくさんの音楽学校や音楽教室が点在している。その数、千個以上にも及ぶ。
「オガサイ」では、毎年、
「オガサイ音楽学校コンテストランキング」
というものが発表されており、このコンテストランキングで頂点を取れば、それは、「オガサイ」で頂点ということであり、つまり、霊界で最も偉大な音楽学校ということが証明されるのである。
ショパンとラフマニノフには大いなる野望がある。
「オガサイ音楽学校コンテストランキングで1位になり、エキスパートピアノを霊界で最も偉大で人気な音楽学校にすること」
「ショパンを超えるピアノ音楽作曲家をエキスパートピアノから輩出すること」
「ラフマニノフを超えるピアノ演奏家、ピアノ協奏曲作曲家をエキスパートピアノから輩出すること」
である。この目標のために日々、全力で突き進んでいる。
その「オガサイ音楽学校コンテストランキング」の表彰式が行われた。
霊界のテレビ番組で生中継される高視聴率が稼げる表彰式は、たくさんの音楽学校の生徒や音楽ファンが視聴するので、注目度が高い。
結果
1位「フルビットミュージック」〜モーツァルト&ベートーベン
2位「トリプルプラス演奏&作曲音楽学校」〜バッハ&チャイコフスキー
3位「エキスパートピアノ」〜ショパン&ラフマニノフ
ショパンとラフマニノフのエキスパートピアノは3位で銅メダルだった。
1位から3位まで表彰があり、表彰台に上がることになる。
ショパン「ああ、3位か。前回は9位だったけど、まだ設立してあまり経ってないから上出来かな!」
ラフマニノフ「モーツァルトとベートーベンのフルビットミュージックは設立14年目でやっと1位になったからな。このままいけば、5年以内に1位を取れるかもしれない!」
モーツァルト「こらこら、ラフマニノフ君。私の学校は知名度と人気度の評価項目で1位だ。私たちの学校はエリートしか選ばないんだ!入学試験で才能のない奴はふるいにかけ、落とすからな。君たちみたいに生徒数だけ多くて評価されて、3位になっても自慢になるのかな?」
ショパン「何言ってるんだ?僕たちはできるだけ多くの人にピアノの魅力を伝えるのが使命だ!少数精鋭なんて自慢にならない!僕たちはピアノ専門学校だからな。オーケストラを教えてないから不利で、ランキングでは君たちに負けやすいだけだ。僕たちがオーケストレーションにまで手を出したら、きっと君たちといい勝負すると思うよ!でも、それは望んでない!僕たちはピアノの大天才を育て上げたいんだ!」
ベートーベン「そうか。モーツァルトと私はオーケストレーションを主に力を入れている。ピアノのことは君たちに任せようではないか。ただ、このオガサイ音楽学校コンテストランキングではピアノに特化していた場合、たぶん、私たちを一生超えられないかもしれないが、いいのか?」
ラフマニノフ「そりゃ、1位は取りたいさ。それは、私たちの悲願だ。目標だ。でも、それはこのエキスパートピアノからショパンを超えるピアノ音楽作曲家と、私を超えるピアノ協奏曲作曲家が誕生すれば、貢献度で1位になり、もっと有名になり、ワンチャンスあるかもしれない。私たちは、ピアノで戦い、君たちはオーケストレーションで戦う。同じ土俵に立ってないからフェアな勝負にはならないだろう。このランキングでは。しかし、私たちはいつまでもピアノにこだわっていたい。ピアノで勝負していたいのだ。ピアノに対する情熱は誰にも負けたくない!1位を目指していたんだ!ピアノだけで1位を取りたいんだ。それくらい圧倒的なピアノの学校にしたい!」
モーツァルト「でも、感謝しているよ。私はピアノの魅力にも気づかせる学校が必要だと、君たちが現れる前から思っていた。しかし、オーケストレーションを専門にすることが増え、ピアノの学校は後回しになっていたんだ!だから、君たちがその役目を買ってくれている。ありがとう」
ベートーベン「でも、1位って気持ちがいいな!最高の気分だよ!」
ショパン「僕もいつか、その金メダルを首にかけたい!ピアノで1位を!不可能かもしれない。自信はない。でも、夢見ていたい。いつまでも叶わないかもしれないけど、もしかしたらって可能性が僕たちをワクワクさせる。1位を取ってしまったら、そのワクワクは味わえないから、今のうちに1位じゃない悔しさや目指すべきもの、金メダルを夢見る幸せを感じていたい!」
ラフマニノフ「ショパン。お前。大丈夫だ!万が一、1位を取れなくても、ピアノを広めることに貢献してきた喜びはいつまでも消えることがない。いつまでも味わえる。私たちは永遠にピアノ職人だ!」
モーツァルト「僕たちの昔を思い出すな!僕たちがフルビットミュージックを設立当初はショパンみたいに1位を夢見て、興奮して、ワクワクしていたな。でも、1位を取ってからは、それが当たり前になり、1位を何度とっても、それ以来、感動しなくなった。喜びが薄れてしまった。だから、まるで、遥か昔の僕らを見ているようで、微笑ましいよ!」
ベートーベン「あの頃は、よくケンカしたな!でも、まさか、モーツァルトの予言が当たるとはな!」
ショパン「予言って?」
ベートーベン「モーツァルトも本当は最初はピアノの音楽学校を作りたいと言っていたんだ。でも、ピアノ学校はショパンが霊界に来たら必ず設立するだろうって予感がして、モーツァルトはショパンの苦手なオーケストレーションの学校を作ろうって、弱点を補ってあげようと思ったらしい。ショパンが苦手なものはモーツァルトが。モーツァルトが得意とも言えないものはショパンが。というようにな。だから、どちらも必要だから、比べられないんだ!本当は1位を取ったのは嬉しいが、どちらも同じくらい大きな価値がある。順位なんて本当はつけたくないんだ!しかし、表彰をしたほうが、その表彰台に上がりたい、評価されたいという承認欲求や目標ができて、音楽産業がもっと盛んに動くと思い、この表彰式は開催されているんだ!人は評価されたいという、1位を取りたいと目指し、その欲求が向上の引き金になるからな!」
ショパン「そうだったんだ!モーツァルト、案外、いい奴なんだね。勘違いしていたかも!」
ラフマニノフ「今から5年以内を目標に、1位を取れるように動いていくよ!目標があるって楽しいな!野望はやはり、最高だな!毎日をワクワクと胸の高まりを感じさせてくれるからな!」
ショパン「モーツァルト、ベートーベン。待っていてね!僕らはピアノだけで君たちを超えてみせる!至難な業だからこそ、難しいことだからこそ、やりがいがあって、達成しがいがあって、燃えてくる!」
モーツァルト&ベートーベン「待ってるぞ!」




