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まとめ♯5

36


 ショパンとラフマニノフはフリスビーを持って、桜並木のある公園にヨークシャーテリアのトムを連れて出没した。


ショパン「さあ、トム、このフリスビーを追いかけるんだ。口でくわえて、戻ってこい!」


 ショパンは最初にトムに挑戦したが、トムはショパンを好いていなかった。トムはショパンの言うことを無視して、ラフマニノフにジャレまくっている。


ラフマニノフ「ショパン。手本を見せてやる!さあ、トム。行け!」


 ラフマニノフがフリスビーを投げると、トムは物凄い勢いで追いかけた。


 トムはフリスビーを持って、ラフマニノフの元へ戻ってきた。


ショパン「なんで?僕って嫌われているの?このバカ犬に」


ラフマニノフ「そういう些細な言葉遣いや態度が伝わっているだけじゃない。俺の場合は、餌の匂い付きのフリスビーで、ショパンのはただの何の意味もないプラスチックのフリスビーだ。トムは匂いに敏感だから、それで差ができただけだよ」


「ちょっと!ズルはダメよ。ラフマニノフ!」


 なんとそこにはアゲハとピアニストのノブがいた。


ノブ「ラフマニノフさんとショパンさん。お久しぶりです」


ラフマニノフ「アゲハじゃないか。どうしてここにいるんだ?」


ノブ「僕がどうしてもショパンとラフマニノフに会いたいって懇願したんですよ。だから、連れてきてもらいました。僕のせいです。どうしても嫌だとしても、そんなの関係ありません。僕は2人に会いたいという気持ちは誰にも負けないのです」


ショパン「ノブ君。久しぶり。ピアノの腕前は上達したかな?? 僕が見てあげよう!」


「ドスン」


 ショパンは公園にグランドピアノを魔法のように空中から出現させ、ノブに座らせた。


アゲハ「見せてやりなさい、ノブ」


ノブ「では、ショパンの蝶々のエチュードを弾きたいと思います」


 ショパンの練習曲25-9「蝶々」がノブの手から紡ぎ出されている。途中、トムがピアノに乱入しようとしたら、いきなりノブはピアノに座りながらトムを蹴っ飛ばした。


「キャイン」


 トムは心外な顔して、少しショックを受けているようだった。


 演奏終了。


ラフマニノフ「ノブ、、、ひどいじゃないか。いくら、ピアノに熱中しているからといって、我が愛犬、トムを蹴っ飛ばすなんて!君にはガッカリしたよ。ピアノの腕より、人間性をもっと磨いてくれ!大丈夫か?トム!おーよしよし!」


トム「僕、ノブさんに蹴飛ばされて嬉しかったよ!アゲハさんにいつも蹴られているせいか、蹴られるのが快感になってしまったんだ。ラフマニノフさん!だから、大丈夫!」


ノブ「アゲハさんがトムは蹴飛ばされるのが大好きだって言っていたので、つい良いかなって思ってしまいました。ラフマニノフさんが不快になられたなら、申し訳ございません」


アゲハ「そうよ。ラフマニノフ。あなたの愛犬はオシリを蹴られるとすごく興奮して、喜ぶのよ。でも、ノブはオシリじゃなくて腕を蹴っ飛ばしたから、トムはやせ我慢して、ラフマニノフを安心させようと嘘をついているかもね」


ショパン「トム。ごめんね。僕がピアノをノブ君に弾かせなければ、痛い思いしなくて済んだのに」


アゲハ「ノブ、トムにも同じようにあなたを蹴らせてあげれば?そうすればお互い様でしょ?」


トム「では、僕がノブさんが弾いたのと同じ蝶々のエチュードを弾くので、ノブさんは僕の邪魔をしてください」


ラフマニノフ「そんな設定プレイまでするのか?もうよくないか?この話は」


アゲハ「えっ?トムって蝶々弾けるの?ピアノ弾けるの?なんで?犬でしょ?」


ラフマニノフ「トムにもピアノを教えているからな。愛犬だから当然だろう!」


 トムはいきなり2足歩行で犬が人間になった感じに変身した。ピアノを弾く手もしっかりと出現した。


 トムは蝶々を弾きだした。


 ノブは「ワンワンワンワン」とめちゃくちゃリアルにトムの真似をして、一同は少し引いてしまった。


 トムはノブの乱入が始まると、思いっきりノブの体を蹴り飛ばし、ノブは10メートルくらい吹っ飛んだ!霊界じゃなかったら大けがしているところだろう。


 トムは最後まで蝶々を、ノブより美しく弾いた。


 ノブはあまりのトムの蹴りの威力に呆然としてしまった。


トム「これでアゲハさんの言う通り、おあいこですね。ああ、すっきりした」


ショパン「ちょっと威力強すぎるよね。トムの蹴りは。余程、恨んでいたんだろうな。建前と本音は分からないものかもなあ」


 トムはまた犬の姿に戻り、かわいらしくラフマニノフに甘えだした。


「クウーーーン」


ノブ「犬から蹴られるなんて体験は本当にすっごい貴重だと思います。今日は来てよかったです。でも、たかが犬に人間の僕より美しいピアノ演奏を見せつけられて、悔しくて仕方ないです」


37


 よく晴れた日、ショパンは生前、夢の中で見たある風景の場所が霊界で存在しないか調査していた。


 覚えているのは、普通の土の道路に、横に草や木が生えて、ある場所でひとつの交差点にさしかかる。


 そこには「立ち入り禁止」の看板が立てられてて、その看板の先にはまた同じような道路が続いている。


 そこに古民家がひとつあった。


 その看板の先に行こうとすると、地面に大きなワープホールみたいな穴が開き、そこに吸い込まれて、夢から覚めたのだ。


 人間は睡眠中、霊界を訪れていることがあるから、もしかしたら霊界に本当に存在するかもという期待があったが、今まで200年ほど経つが、まだ実際に本気で探し始めたことはなかった。


 今度こそと思っていた。


 ラフマニノフは不在だった。


 ラフマニノフは音楽学校の校長としての仕事をしていた。


 ショパンは霊界の「人生記録所」に来ていた。


 自身の生命コードを入力すると、自身の今までの前世や物質界での生活の様子など、自分のすべてを細かく、詳しく調べることができるのだ。


 睡眠中の夢の内容まで調べることができるが、その夢の場所も調べられるかもしれないと思ったのだ。


 しかし、いつ見た夢なのかも見当つかない。いつ見た夢なのか、日時を入力しないと調べられない。片っ端から、全ての夢を調べるわけにもいかない。


「ピコーン」


 ラフマニノフから生命時計で連絡が来た。


ラフマニノフ「大丈夫か、ショパン。お前は今、人生記録所に来ているね。俺には分かる。でも、そこではお目当ての場所は探し当てられないだろう。実は、映像から場所を特定してくれる映像による場所特定所があるらしい。今、お前が心配で俺も何かできることがないかって、いろいろと音楽学校の仕事の休憩中も考えていたんだ。今、場所特定所のアドレスを送るから、そこに行ってみろ!」


ショパン「なんでラフマが僕の必要なものを知ってるか分からないけれど、とにかくありがとう。君には本当に助けられているよ!必ずこの恩返しはするから」


ラフマニノフ「今日、夕飯にお前特製のショパンチャーハンを作ってくれ。楽しみに待っているからな」


 ショパンはラフマニノフに紹介してもらった「映像による場所特定所」という胡散臭い名前の場所に向かった。


 東京ドームの10分の1くらいの大きな丸い形の建物で、全体が虹色に光っていた。


 ショパンは受付で、生命ポイントを10万ポイント払い、椅子に座った。そして、大きなヘルメットみたいな装置を付けた。


担当の者「ショパンさん。では、あなたが場所特定したい映像を可能な限り鮮明にリアルに頭の中で思い浮かべてくださいな」


ショパン「はい」


 ショパンは道路というより、あの立ち入り禁止の看板と、その先の古そうな家を思い浮かべた。


 印刷機から、紙が出てきた。場所が書いてある。


ショパン「これでやっとあの不思議な夢の場所まで行ける。本当に実際に霊界で存在していたとは。脳が作り出した無意味な幻覚かなと思ったけどな」


担当の者「もし、その場所に行きたいのなら、こちらの台に移動してください」


ショパン「行くことができるのか。よかった」


担当の者「行ってらっしゃい。ショパンさん」


 空間を移動して、ワープしてたどり着いた場所は、あの夢で見た場所だ。ショパンがずっと気になっていた、幻想的な感覚にさせられる場所。


 生前から気にしていた。


 この場所を想うと、なんともいえないMagicにかかったような魔法のようなファンタジーともいうような感動があった。


 ショパンは立ち入り禁止の看板の前に立った。


ショパン「これを越えようとして、いきなり地面から時空が歪み、穴が現れて、邪魔されたんだよな。今回は大丈夫かな??」


 ショパンは立ち入り禁止の看板をどけずに、またがって、越えた。何も起こらなかった。


 ショパンは安堵した。不思議の国にお邪魔するような迷い猫のようなワクワク感と一種の不安もあった。


 でも、内心、ウキウキが止まらなかった。こういう冒険は好きだった。


 看板の先の家の前に立った。


ショパン「誰かいませんか?こんにちは。フレデリックショパンといいます」


 ショパンは誰も応答しなかったので、扉を開けて、中に入っていった。


 そこにはおばあちゃんがいた。白髪頭の安心感のある感じだ。


 中には古そうな年季の入ったグランドピアノがあった。


ショパン「と、突然入ってしまってすいません。実は」


おばあちゃん「何も言わなくてもあなたがここに来ることは全てわかっていましたよ」


ショパン「えっ?どういうことですか?私はあなたを知らないのに。どこかで会いましたっけ??」


おばあちゃん「このピアノで何か弾いてください」


ショパン「おばあちゃん。その前に答えてください。なぜ、ここに僕が来ることを前もって分かっていたんです」


おばあちゃん「ここはあなたが生まれた場所だからです」


ショパン「えっ、僕が生まれた場所??」


おばあちゃん「あなたという生命そのものがこのピアノから生まれたのです」


ショパン「このピアノから僕が生まれた?? どういうことです??」


おばあちゃん「あなたが何よりピアノにこだわり、ピアノを愛しているのは、あなたがこのピアノから生まれたためです。あなたはピアノそのものだったんですよ。ピアノが意思を持ち、やがてそのピアノがただ弾くための道具として存在するだけじゃなくて、ピアノ曲を作りたいという、作曲して活躍したいという強い想いを持ち、それがあなたという存在を誕生させたのです」


ショパン「信じられません。ただの妄想ではないですか」


おばあちゃん「あなたは戻ってきたのです。このピアノにまた再会するために。さあ、何か弾いてください。あなたの一番大好きな曲を」


 ショパンは「相棒」というピアノ曲を弾いた。ショパンがラフマニノフに感化されて、作曲された20分程度の大曲である。


おばあちゃん「今まで、どうでした?? いろいろあったかと思います。辛いことも苦しいことも。もし、あなたが自分の存在を一時的に消したいならば、このピアノに戻ることができます。意識も何も無くなるので、存在していることが苦しいと感じることがなくなります。あなたが生前、この場所を睡眠中の夢で訪れたのは、すごく苦しかったロシア軍によるワルシャワ蜂起で、絶望したあなたは死にたいと強く想ったのです。なので、このピアノに会い、存在ごとまたピアノに戻り、意識を無くし、苦しみから逃れたいという想いがあなたをあの時、ここに連れてきたのです。しかし、立ち入り禁止の看板をくぐろうとして、あなたは地面に穴が開き、失敗した。もし、穴が開かなかったら、失敗しなかったら、あなたは睡眠中に亡くなっていたのです。何か邪魔が入りました。それは、私でも説明ができません。誰かによる仕業でしょう」


ショパン「話が難しくなってきて、混乱してます。とにかく、私はもうピアノに戻りたくないです。今、ラフマニノフという相棒がいて、私がピアノに戻ったら、絶対に泣くと思います。彼の涙を、悲しむ姿を想うと、どうしてもピアノには戻れない。僕はずっと存在することを、このまま生きていいきたいのです」


おばあちゃん「ラフマニノフさんですね。きっと。何か方法を考えて、ショパンを止めたのでしょう。ラフマニノフさんが霊界から何かしたのかもしれませんね。ラフマニノフさんはショパンさんが気になっていたらしいですから。ずっと昔から」


ショパン「ずっと昔から?? どういうことですか。それよりも今日、ラフマニノフにチャーハンを作ってやる約束なんです。だから、ピアノに戻ることはできません。どんなに苦しいことがあっても生きていきます」


おばあちゃん「でも、どうしても辛くなったら、またこの場所に来なさい。いつでも無に戻れる。意識を一時、失い、存在している苦しみを取り除くことができるという事実は、あなたを安心させることでしょう」


ショパン「それにしても、このピアノが僕、自身だったなんて、ピアノから僕が生まれたなんて、あまりに感慨深いです」


おばあちゃん「私はこのピアノの守り神です。この場所で待っています。定期的に、来てください。私はあなたをずっと見ています。私はあなたの親ですから」


ショパン「えっ??」


おばあちゃん「私はこのピアノの製造者です」


ショパン「じゃあ、あなたがいなかったら、僕はいない??」


 ショパンは本物の自分の生みの親に会うことができた。


38


 霊界の著名人限定の交流パーティーに来ていたフレデリックショパンは数ある有名人の中でも、別格で人気な音楽家だった。


「ショパンさーん、ショパンさんですよね?? 握手してください!」


「ピアノを弾いてください。ショパンさんの生演奏をぜひ、聞いてみたいんです」


 たくさんの人から注目されて、ショパンは困り顔どころか、自分が必要とされているという喜びから、嬉しくて仕方なくて、そういう頼みには嫌な顔一つせずに、対応していた。


 ショパンは自身のポロネーズ第6番「英雄」変イ長調を演奏していると、横から口を出してくる人物が一人いた。


 その名は、セルゲイ・ラフマニノフ。 


 ラフマニノフはショパンのピアノ演奏を聴きながら、様々な指摘を横からしてきた。ショパンはラフマニノフのその遠慮しない態度に激怒した。


ショパン「ちょっと!! ラフマニノフだな。君は空気というものが読めないのか?? 演奏中は指摘はやめてくれよ!聞いてくれている人が感動できなくなるだろう?」


ラフマニノフ「ショパン。お前の音色は力強さが足りない。ピアノ演奏では私の方が上だな。英雄ポロネーズのような勇敢な曲には、元気よくハキハキと演奏した方がいい。お前の演奏は静かすぎる」


ショパン「では、君も私の英雄ポロネーズを弾いてみろ!どっちがみんなに好かれるか、対決しよう」


 ラフマニノフは大柄な体で、ショパンとは全く逆の演奏をした。音が元気よくて、目立つ、ピアノで表現できる最大限の大きな音だが、繊細さも含んだ完璧なポロネーズを演奏した。


 それを見ていた観客たちは、一斉に黄色い声を上げた。


「ラフマニノフさんってこんなに上手にピアノが弾けたんですね?? ショパンの演奏より、全然迫力があって、心が躍りました。こんなに魂が震える、魅力のある演奏は生まれて初めてです」


「ショパンより良い!!こんなに魅力的にショパンを弾ける人は今まで会ったことがないです」


 みんなショパンよりラフマニノフの方が演奏の達人だという趣旨の発言をし、ショパンは赤面して、悔しがった。


「ショパンさん。あなたはラフマニノフさんにピアノ演奏を教えてもらったほうがいいです。ショパンに足らない全ての要素をラフマニノフさんは兼ね備えています」


 ある客がいう。


ショパン「冗談じゃない。ラフマニノフより繊細な演奏が僕の魅力なんだから!僕のオリジナリティーが失ってしまうかもしれないじゃないか。確かにラフマの演奏は凄い上手だけど……」


ラフマニノフ「ショパン。一回、騙されたと思って、オレと組んでみないか?ショパンのピアノ協奏曲はオーケストレーションの役割が縮小されているように思う。オーケストレーションの使い方も教えてやる。もちろん、ピアノの演奏もお前に足らない要素を見抜き、指導してやる」


ショパン「なんで、上から目線なんだよ?偉そうにするな!」


 2人が言い合いになっていると、霊界のトップ「シナメルド」の秘書が来て、直接、ショパンとラフマニノフに契約書と任命状を見せた。


シナメルドの秘書「これはこれはちょうどいい。ショパン。ラフマニノフ。あなた方2人に、霊界の最高設営責任者のシナメルド様から、任命状が届いております。私はシナメルド様の秘書であるマルクと申します」


ショパン「えっ?どういうこと?シナメルド様から?どんな内容なの?」


マルク「霊界の政治家としてシナメルド様の元で活動してほしい。力を貸してほしい」


とのことです。


ラフマニノフ「しかし、我々は音楽家だぞ?政治の素人だぞ?役に立つのか?」


マルク「とにかくこの任命状を見てください」


ラフマニノフ「なるほど。音楽家として、音楽学校の設立の許可をもらいたくば、政治家になってほしいということか。確かに、ショパンとオレは自分たちの音楽学校を持ちたいと思っているからな」


ショパン「僕はピアノの演奏と作曲の専門音楽学校を作りたいと思っているんだけど、そのためには政治家としての仕事をしないと、許可がもらえないってことか」


ラフマニノフ「ショパン。オレと組もう!!!正式に!!!神様のいたずらか、俺たち2人が音楽家代表として霊界トップのシナメルドから選ばれたんだよ!!!俺もピアノ専門の学校が作りたかったんだ!お前とオレは同じ夢に向かって進む同志なんだよ」


ショパン「でも」


ラフマニノフ「お前がいくら嫌だって言っても、オレはお前とバディになるからな!!!」


ショパン「バディって何?」


ラフマニノフ「相棒ってことだよ!!!」


 こうして、2人は霊界で音楽の活動と、政治家としての活動を両方やっていくことになる。


39


 ショパンとラフマニノフはシナメルドの屋敷に呼ばれていた。


シナメルド「私の政治家としての職務の手助けをしてほしい」


ショパン「といいますと?」


シナメルド「私は重度のうつ病を患っていたのだが、ショパンとラフマニノフの演奏を生で聞いたときにそのうつ病が一時的に回復したのだ。それからは、毎日、君たちの演奏を聴いている。生での演奏じゃないとダメなんだ。盗聴機をこれから仕掛けることを許可してほしい。君たちがピアノの演奏をする時だけ、盗聴器のスイッチを入れてほしい。これは頼みだ。生の君たちの演奏じゃないと、うつの気分の落ち込みが回復しないのだ。同じ音源の演奏はやがて慣れてしまい、何の効果も無くなってしまう。もし、頼みを聞いてくれるならば、君たちのエキスパートピアノという学校の経営許可証を無期限で発行しよう。更に、政治にも介入してもらう。君たちにこの地球圏霊界の運命を握らせたいと思う。もちろん、君たちは政治には詳しくないだろうが、音楽家としての名声をうまく利用すればいい効果が期待できると思うんだ」


ラフマニノフ「悪いですが、お断りですね!」


ショパン「こら、ラフマ。もっと口の利き方に気をつけなよ。この方は霊界の最高責任者なんだから」


ラフマニノフ「私たちは音楽家だ。ショパンを超えるピアノ音楽作曲家と私を超えるピアノ協奏曲の作曲家を輩出するために音楽学校は設立した。そして、今は、その志事に集中したい。二足のわらじは履けない。シナメルドさん。音楽学校の経営はいつも通りの方法で更新する。無期限の経営許可証が無くても、毎年の手続きを行えば済むことだ。私たちは政治に興味がない。あるのは音楽だ。政治は政治家に任せるつもりだ。頼むから集中させてくれ!」


ショパン「でも、シナメルド様はうつ病になり、困っているから、生の演奏をする時だけ接続される盗聴機は許可してあげたいな。シナメルドさんと仲良くなっておけば、太いパイプができるよ。何かあった時に助けてくれるかもしれないよ」


ラフマニノフ「霊界のトップだからこそ、盗聴器なんていうものは許可できない。生の演奏を聞きたければ、毎週行われている私たちのコンサートに来ればいい。盗聴機を許可したら、それができない人たちが可哀想だ。しっかりコンサートに足を運ぶ人たちに失礼だろ?私たちはシナメルド様に会いに来てもらいたい。毎週ね。そうすれば持病のうつ病も消し飛び、毎週、回復するだろ?それじゃダメなのか?」


シナメルド「さすが、ラフマニノフだ。ショパンよ。彼を見習いたまえ。実は試していたんだよ。私の変な提案をどのように断り、新しく自分の意見を言えるか、再提案するかをね。ラフマニノフの考えはもっともだ。筋が通り、誠実だ。しかも、よく考えているね。私が君たちのコンサートに毎週、来れば、それだけでニュースになり、音楽学校の宣伝にもなり、より、君たちの夢が叶う確率が高くなる。また、毎週、私と会えることで、何かしら私たちとの距離が縮まり、仲が良くなり、何か大きな可能性が広がるかもしれない」


ショパン「ラフマ。君、すごいね。そこまで考えていたなんて。僕はまだまだ未熟だな」


ラフマニノフ「霊界のトップだけあり、あなたこそ誠実だ。やろうと思えば、私たちに音楽学校をご自身の権力で圧力をかけて、潰すことも簡単なはず。でも、それをしないんだからな」


シナメルド「私が最も重要としている永遠の人生観は、誠実であることだ。誠実であることに特別こだわっている。人間として腐らないように。心だけは美しくありたいんだ。どんな状況においても、自分でどのように解釈し、意味づけし、捉え、思い、行動するか。生き方だけは気高き、誇れるようなものでいたい。私は霊界では最大の権力を持っている。ラフマニノフが言った通り、君たちを潰そうと思えば、3日でできる。君たちを霊界から住めなくすることもできる。でも、そんなことして私には得がない。損しかないんだ。君たちの夢を心から応援したい。政治の仕事を手伝ってほしいというより、君たちが音楽学校をできるだけ有名にし、学校の数を増やし、ショパンとラフマニノフを超える音楽家を育て上げることは、私の願いでもある。夢があるんだよ。君たちの目指す未来には。だから、私のトップとしての権力を、力をできるだけ使い、その夢を全力でサポートする。追い風になるようにね」


ラフマニノフ「願ってもない話だが、なぜ、そこまで私たちに協力してくれるんだ?不思議でしかない」


ショパン「それはシナメルド様が私たちの音楽や演奏を気に入ったからですよね?好きになってくれたから、応援してくださるんですよね?」


シナメルド「応援ではない。協力したくなったのだ。一緒に夢を叶えていこう。ちなみに私にショパンとラフマニノフの音楽を教えてくれたのは、ゲンというコーヒー職人だ。君たちの親友って言っていた。だから、ゲンに感謝している。久しぶりにワクワクしているんだ。やはり、目標や夢はあったほうがいいな。目指すべきものを明確に持った方が、毎日が楽しくなる」


ラフマニノフ「ゲンが?あいつに感謝しないとな。シナメルド様と友達になれたんだからな」


ショパン「最近、ゲンは何しているかと思ったら、僕たちの力になってくれていたんだね。ありがとう。ゲン」


40


ラフマニノフ『じゃあな、ショパン!元気でな』


ショパン『そんな!何故行ってしまうんだ!行くな!行かないでくれ!頼む!』


ラフマニノフ『いつか別れは来るんだよ。お前との日々は永遠に忘れないよ。ありがとな』


ショパン『何かの間違いだろ?冗談だって言ってくれ!』


ラフマニノフ『楽しかったな!色々あったな。今まで』


ショパン『僕とラフマと永遠のパートナーになるって約束したじゃんか!』


ラフマニノフ『別れがあるから、人はより有り難さが分かるんだ。少し、ショパンから離れることにするよ。お前がいることが当たり前になりすぎた。ショパンがいることは計り知れない幸福であるのに、それすら飽きて、慣れてきてしまったんだ。だから、しばし、放浪の旅に出かけたい。これは一時的な別れかもしれないし、二度と帰ってこないかもしれない』


ショパン『僕はラフマだけが生きがいなんだ。せめて、ビデオ通話だけでもできないのか?』


ラフマニノフ『お互いに、一度離れてみて、何を得るか試してみよう』


ショパン『本当にそんなことのためだけに僕と離れるの?』


ラフマニノフ『俺が離れたら音楽学校はどうなるんだ?』


ショパン『戻ってくるんでしょ?』


ラフマニノフ『いや、10年は戻らない』


ショパン『絶対に!絶対に行かせない!絶対に!!!ラフマが僕の全てと言っても過言じゃないんだ!君がいなくなれば音楽学校は閉校する!』


ラフマニノフ『俺の心はいつもお前のそばにいる!』


 ラフマニノフは行ってしまった。


 ショパンは引き止められなかった。


っていう夢をショパンは頻繁に見る。寝ているときにだ。


 ショパンは夢から飛び起きて、ラフマニノフに会い、熱く抱きしめる。


『もし、ラフマが本当に去ってしまったら?』


って考えて、今、ラフマが自分の相棒でありいつも一緒にいれる喜びを再度、噛み締め、味わうために。


 そのような見たい夢を自由に選んで見れるマシーンをショパンは密かに買ったことは、ラフマには内緒にしてある。



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