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まとめ♯4.2

 26  




 音楽学校「エキスパートピアノ」で教授たちに推薦された一人の女性がいた。


 その女性の名は「バイオレット」。


 ショパンとラフマニノフのどちらかを選んでくださいと言われたときにバイオレットは迷わずラフマニノフを選んだ。


 その時の態度の勢いはとても殺気立っていて、教授たちは驚愕した。


 ラフマニノフは弟子選抜試験を実施した。


 バイオレットのために。


 バイオレットはラフマニノフに至近距離で会えて、話ができるのが歓喜の瞬間だった。


ラフマニノフ「バイオレットだな。では、弾いてみろ!」


バイオレット「はい!」


 バイオレットの演奏は圧巻だった。ラフマニノフはただただ、頭をコクコクしてうなずいていた。


 ラフマニノフは口を結んだり、顔の表情が幾度となく変化した。


 バイオレットは演奏が終わると、ラフマニノフに急接近して、ラフマニノフの顔を両手で挟み、なんと、大胆にもキスをした。


ラフマニノフ「何するんだ!お前正気か?」


バイオレット「大好きです!ラフマニノフ先生」


ラフマニノフ「残念だったな!私はすで心に決めた人がいる!お前の願いは叶わない!早く服を着ろ。そんなので弟子にしてもらおうとするな!お前の演奏はとにかく今まで見てきたこの学校の生徒の中でも3本の指に入る。弟子にはしてやるが、これからも誘惑するなら、指導はできないぞ?」


バイオレット「いや、本気なんです!本気でラフマニノフ先生のことが好きなんです!あなたしかいないんです!こんなに胸が熱くなるのはあなただけなの!」


 すると、いきなりピアノから不協和音が流れた。


 バイオレットの後ろにはショパンがいつの間にかいた。


ショパン「バイオレットさん。この学校でラフマニフを誘惑するのはダメだと入学式で言ったはずですよ。あまりしつこいと、退学も考えてもらいますからね!」


バイオレット「そんな⋯では、ラフマニノフ先生が心に決めた人って一体誰なんですか?まさか、ショパンとか言いませんよね?」


ラフマニノフ「それはどうだかな」


バイオレット「ラフマニノフ先生、しっかり答えてください!!!」


 ラフマニノフは困ってしまった。


 ショパンに対する相棒愛と異性に対する恋は種類が違うのだ。


ショパン「ラフマは私の恋人だ!絶対に渡さない!あなたが本気でラフマを手に入れようとするならば私はこの学校の校長としてあなたを退学処分にさせる!」


 バイオレットも困ってしまった。


 ラフマニノフをあきらめきれない。


 でも、この学校を辞めてしまえば、これからの生きる原動力であるショパンとラフマニノフを超えるピアニストと作曲家になるという夢を失う。



バイオレット「では、ラフマニノフ先生に手を出さなければいいのですね。一緒にいるだけなら問題ないですね?」


ショパン「本当に一緒にいるだけならね」


ラフマニノフ「俺ってそんなにモテるのか??」


バイオレット「ラフマニノフさんと一緒にいたいんです。何かしら力になりたい!」


ショパン「ラフマが君に力を貸すんだよ。逆だよ!」


バイオレット「ショパンなんか相手にならないくらいの魅力的な人間になって、ラフマニノフ先生から愛される人になります!」


ショパン「私を舐めすぎだな。自惚れるのも程々にしたまえ!」


ラフマニノフ「とにかく、明日の朝7時ちょうどだな。この部屋にまた来てくれ!バイオレット。君は正式な弟子だ。私をものにしたいという欲望は分かったが、それはそれとして君の演奏は確かに何か魅力があり、私に教わる資格は十分あると思う!」


バイオレット「ありがとうございます!それではまた来ます!」


 バイオレットはそそくさと顔面を赤くしながら、満足そうに退出した。


ショパン「ラフマ。君があまりにモテるから、僕がラフマを好きになっているように見せかけて、君に寄ってくる恋人目的の人たちを遠ざけてるつもりだが⋯バイオレットは美人だし、君は正直、どう思っているんだ?バイオレットのことを」


ラフマニノフ「お前がいなかったら、今頃、バイオレットと混ざり合っていたかもしれないな。俺は本当は誘惑に弱いからな。これからも、歯止めを効かせる俺のブレーキになってくれ!」


ショパン「君に寄ってくる女が本当に多すぎるね。学校設立してもう9人目だ!君も大変だな」










 27




 ショパンとラフマニノフがダブル校長をしている音楽学校「エキスパートピアノ」にひとつの手紙が届いた。


 それは霊界で最も人気なテレビ局「ホワイトブラック」がらのものだった。


「音楽学校の宣伝を霊界全体で弊社が無償で協力する代わりに、サーカス団を作って、テレビに出演してもらえないでしょうか?サーカスにショパンとラフマニノフが出演し、私たちのテレビで生放送すれば、きっと高視聴率は間違いないでしょう!音楽学校の知名度も今以上に更に爆上がりすることが期待できます」


 ショパンは実は自身のブログで「サーカスに出演したい。バック転や側宙が得意なんだ!」ということをサラっと書いたことがあり、それを見た霊界最高のテレビ局「ホワイトブラック」の局長がショパンのアクロバティックなバック転などはきっと話題になると考えた。


 繊細で神経質なショパンがそんな演技するのは斬新で意外性があり、きっとみんなにウケると思ったのだ。



ショパン「⋯ってことなんだけど、ラフマはどうする?サーカスにぜひ出てくれるかい?絶対に出てほしい!私は斬新な姿を見せたい。音楽家がサーカスなんて斬新だろ?それが重要なのだ!霊界のテレビに新たな旋風を巻き起こしたい!」


ラフマニノフ「それいいな!お前の意欲は賞賛に値するよ!これから練習していこう!」


 こうして、サーカスが開催された。


「ショパンとラフマニノフのサーカス」




という題名で行われた。


 エキストラが20人ほどいて、大きな舞台で始まった。


 ショパンがいきなり連続バック転しながら、テレビに姿を現した。


 ラフマニノフも同時に入ってきた。お互い、バック転をしながら。


 ショパンはわざとバック転している最中に転倒した。


 そして、頭を強く打った。



 それを見たラフマニノフがそそくさとショパンに駆け寄った。


ラフマニノフ「ショパン!大丈丈夫か?頭強く打ったろ?おい、しっかりしろ!」


ショパン「もうダメな⋯わけないだろう!相棒!!!ここは霊界だ!どんなに危険なことしても体はへっちゃらさ!」


ラフマニノフ「地上時代の癖が抜けねえんだよなーーー!」


 ミュージカル風に音楽が流れながら、演技が開始された。



 ライオンがいきなり中央から魔法のように出現し、ダンスしはじめた。


 犬と猿もいきなり出現した。


 空にはハトが円を描くように飛んでいる。


ショパン「いくら犬と猿が仲が悪くても、霊界に来ればそんなの関係なーーーいのさ!ライオンよ!ダンスしたまえ!ほら、犬と猿も仲良く手をつないでダンスしたまえ!」


ラフマニノフ「私たちは霊界に住んでいるから何でも自由さー。好きなことをしたいようにできるのさー!ショパン!今日は何する?」


ショパン「今日はみんなでサーカスだ!でも、ピアノがないぞ!ピアノがなくては私ではなくなる!」


ラフマニノフ「ピアノならあそこだ!」


ショパン「なんと、遥か天井近くに取り付けてあったとは。では、私たちの歌を。私がピアノ。ラフマニノフがボーカルで!」


 空中をブルンブルン回転しながら、ピアノに座ったショパンはピアノを弾いた。


 それに合わせて、ラフマニノフが歌を歌いだした。



 「霊界歓喜の歌」




 ベートーベンの第九の歓喜の歌のように、霊界でショパンとラフマニノフが作曲した新たな歓喜の歌だ。


 エキストラたちもラフマニノフの歌唱に続いて、歌いだした。


ラフマニノフ&エキストラ「私たちは、苦しみばかりの物質界から解放された自由な鳥なんだ。あの時にできなかった全てを今こそ、実現しよう!!」


 30分くらいのサーカス。


 ハトがショパンに10匹以上集まって、ピアノを演奏しづらくした。


ショパン「ああ、ハトめ。私にピアノ演奏をさせないなら、君たちが代わりにしたまえ!」


 ショパンは空中を大きく回転しながら、ラフマニノフの立っている場所まで行った。


 ハトは人間の姿にいきなり変身し、ラフマニノフの元に行ったショパンの代わりに演奏を始めた!


 人間の姿をしたハトは鳥人間みたいな姿をしていた。


 5本指の手がしっかりあるが、翼もある。


 ショパンは回転しながらラフマニノフに近づいたので、まじめに歌っているラフマニノフに接触して、ラフマニノフが今度は転倒した。


ショパン「ラフマニノフ、大丈夫?」


ラフマニノフ「当たり前さーーー。この世界では⋯もう分かっているよなーーー」


 一番の大サビでショパンとラフマニノフの2人は仲良く並んで、大きな声で歌った。


 テレビにはショパンとラフマニノフが一番目立つように映っている。


 当たり前だ。


 この2人が主役だからだ。


ショパン&ラフマニノフ「今、この最高の瞬間を、最高の気分で味わおう!ショパンとラフマニノフ。私たちからの贈り物だから。ただ、見ている人たちを喜ばせたいだけ!さあ、みんなで歓喜しよう。存在している喜びよ!神からもらったこの生命を。不安になり、孤独になるときは私たちのことを思い出して!私たちはずっと君たちの心のそばにいるから!僕たちから無限大の愛を!これからもこの世界をみんなで楽しく作っていこうねーーーーー!」


 サーカス終演後にショパンとラフマニノフの雑談タイムがあった。


司会「どうでしたか?今回のサーカスは?何か手応えは??」


ショパン「私のバック転や側宙はとても斬新だったと思います!私は生前、病弱でしたから、今は違うんだ!進化しているんだってことをみんなに見せたかった。今までにない新しいことをするということをこれからもこだわりたいです」


ラフマニノフ「私からもいいですか?いや、体操選手にでもなったかのような錯覚を感じました。ショパンがバック転にこだわるんです。変わってますよね!」


司会「いや、とても新鮮なサーカスでした。今までこのような形のサーカスはなかったんじゃない?」


ショパン「今までにない新鮮さだからこそ、やる価値があるんです。私たちは音楽学校をやってます。エキスパートピアノという学校なんですが、ぜひ、私たちの今日の活動で、音楽に興味を持つ人が増えてくれればと思います」


ラフマニノフ「ショパンを超えるピアノ作曲家を、私を超えるピアノ演奏家を、目指してください。私たちはその志ある人の背中を押していきますから」


司会「今日はありがとうございました」



 ライオンの着ぐるみを脱いで、、楽屋にいたゲン。


 そう、、サーカスに登場したライオンはゲンだったのだ。


ゲン「いつか、、このラフマへの協力が、、報われますように!! きっと神様は見ているよね!! はあ、、ラフマの相棒になりたいよ!!」



 ゲンは心の中でそう叫びつづけている。



 果たして、、ゲンの悲願は叶うか。






 28




 ショパンとラフマニノフは世界の海で目光谷していた。


 毎週1回は海に行き、霊界の太陽を楽しむ趣味を持っているのだ。


ショパン「ねえ、ラフマ。いつも思うんだけど、ピンク色の水着ってなんか恥ずくない?しかもパンツにでっかいハートークの絵柄がすごくて、みんな注目しているし、笑っているよ?」


ラフマニノフ「そうだ。これはわざとこのように目立つ色をつけてみんなの気を引くためにやっていることだ。霊界の魚たちはピンクが好きなんだ。それは、全ての色を魚がどんな反応するかを自分なりに実験して判明したことだ。ピンクが一番魚たちを引き寄せるってわかったんだ。あくまで霊界ではな。魚たちができるだけいっぱい俺についてきてくれると、楽しいからな。魚たちと共に泳ぐなんてロマンがあるだろ?大量の魚たちとな。俺は魚が大好きなんだよ」


ショパン「えっ、実験までしたんだ?それは意外だな。結構、ラフマって相変わらず面白いな」


ラフマニノフ「それに比べてショパンのは黒ばかりだな。黒は一番人気がないんだ。魚たちにとってはな」


ショパン「それは好都合だ。魚が近寄ってくると、なんか落ち着かないから」


 2人は浮き輪に乗り、海の真ん中で浮かんでいた。


 ショパンのピアノ曲をかけながら。


 話をしていると、いきなり大きなクジラが二人を海の真下から突進して、2人は海に落ちた。


クジラ「わあ、ごめん。まあ、ラフマ。今日も海で作曲かい?」


ショパン「やあ、クジラくん。ラフマにまた会いに来たんだね?でも、そろそろ下から突撃するあいさつは飽きたからやめてくれ。ひねりがないよ。もっと、我々をビックリさせるようなものじゃないとね」


ラフマニノフ「よし、ショパン。いつものアレやるぞ」


ショパン「オッケー!」


クジラ「早く乗りな!」


 クジラは2人を乗せ、水中へと潜り込んだ。



 たくさんの魚たちがラフマたちを追って、海中でクジラによる水中散歩がはじまった。


ショパン「うわあ、いつやってもクジラに乗るってロマンがあるよね。魚はあまり好きじゃないが、クジラは別かな。ここに焼き鳥屋があるから寄ってくれ!」


ラフマニノフ「ショパンの奢りでいこうか。クジラにも奢ってやれよ」


ショパン「もちろん奢るよ。ここの焼き鳥屋はカシラが美味しいんだ。塩を振って、加熱するシンプルな感じが。塩って本当に最高の調味料だよね。レバーもつくねも頂こう。ワクワクしてきたな」


クジラ「ここにいる魚たち全員に奢るんだよね?じゃなくちゃ寄らないよ!」


ショパン「ラフマ。僕、金欠だから貸しといてくれないか?」


ラフマニノフ「以前、大浴場で俺がお前のピアノ協奏曲1番2楽章ロマンスラルゲットを弾いたときに渡したギャラはもう使ったのか?」


ショパン「マイダッハのグランドピアノの最新バージョンが出たんだよ。だから、それを買ったからね。頼むよ!」


クジラ「魚たちはざっと1万匹くらい集まってきてるから、億はいくけど大丈夫?」


ラフマニノフ「ちょっと待ってくれ?俺に集まってきている全ての魚に俺が奢るのか?」


クジラ「金持ちなんだろ?」


ラフマニノフ「じゃあ、奢るが、ひとつ条件がある。俺たちショパンとラフマニノフが経営している音楽学校エキスパートピアノを魚たちに宣伝してほしい。1万匹が海にいる人たちに宣伝してくれるなら奢ろう。俺にもメリットがないとそんな大金は出せん!」


魚たち「どんな風に宣伝すればいいの?」


ラフマニノフ「1匹につき、3人に宣伝してほしい。すると、3万人が最低でも俺たちの音楽学校を知ることになる。スマホで、口頭で、チラシで、インターネットで、ブログで、なんでもいい。クジラは1万匹の魚たちが全てしっかり宣伝したかを管理してほしい。そして、俺に報告してくれ!」


クジラ「そんなのやってられるかーい!!!」


 クジラはものすごい勢いでみんなを置いて海の彼方へ去っていった。



ラフマニノフ「まあ、冗談だ!実はここの焼き鳥屋は無料で食えるんだよ!材料費がかからないからな。霊界では。ただ、お金を手間代で気持ちで払えばいい。金額は自分たちで決める方式なんだよ!」


焼き鳥屋「やあ、魚1万匹を食わせるとしたら、いくら払ってくれるんだい?ラフマ!」


ラフマニノフ「10億でどうだい?」


焼き鳥屋「嘘だろ?そんなに払ってくれるのかい?なら、いいだろう!」


ショパン「ラフマ。いくらなんでも出しすぎだよ!考え直せ!」


焼き鳥屋「冗談冗談。そんなにはいくらなんでももらえない。10万でいいよ。君たち2人は常連さんだからね。これからもよろしくね。お金よりも大事なものがあるんだよ。君たちが週1で顔を見せてくれることが何よりの生きがいなんだからな。君たちが来るのが楽しみで仕方ないんだ。いつものようにピアノでも弾きながら、焼き鳥が用意できるのを待っていてくれないか?」


魚たち「俺たち、なんて幸せ者なんだー!やったー!」


ショパン「焼き鳥屋さんはとにかく孤独が悩みなんですよね。なら、私たちが音楽学校でこの店を愛用してるって宣伝してあげますよ。そしたら、この店は私たちの知名度により有名になり、客が増えて、一人になることはもうないと思います。忙しくなるでしょうがね」


焼き鳥屋「ありがとう。ショパンちゃん。ラフマニノフさん。わしは生きててよかったよ!!!」










 29



 ショパンとラフマニノフは音楽学校の他にALSという難病の患者の睡眠中の夢に出てあげるという仕事を持っている。


 世界中にいるALSを発症した人の希望となるように。報酬は一人につき、出会うたびに100万生命ポイント。


 今日はムトウという日本人のALSの人に会いに行った。


 ムトウは人工呼吸器で延命治療した。


 すでに寝たきりになり完全介護の状態である。


 ムトウは夢でショパンとラフマニノフに会った。



ムトウ「不思議だ。こんなに意識が鮮明になっている夢を見るのは。普通は夢を見ているときはそれが夢だと気づけないものだが。あなた方が有名な音楽家のショパンとラフマニノフだなんて。本物なんですか?」


ショパン「僕たちは本物ですよ。ムトウさんに会いに来たんです。あなたはALSになって社会を明るくするアイデアを形にできなかった。夢をALSに奪われた。さぞ、苦しかったでしょう。なので、地球上でほぼ知らぬものなどいない私たち超有名な音楽家が会いに来て、少しでも慰めになってくれたらなと思いまして」


ムトウ「夢だとしても信じられません。ラフマニノフもショパンも知っていますが。何故、僕に会いに来るんですか?なにか理由でもないと」


ラフマニノフ「君たちALSの人たちに会いに行く仕事をしているんだ。報酬はしっかりお金でもらっているよ。死後の世界として、霊界に私たちは住んでいる。死んだあとは人間は霊界という場所で生きることになるんだ。ムトウさんは地上世界、物質界で今、生きている。ALSになった全ての人に会いに行くのが俺らの仕事だ。たまたま今回はムトウさんの番だっただけだ」


ショパン「ムトウさん。なにか、お願いはありますか?せっかく会えたんです。なにかしてあげたい」


ムトウ「ふと、物心ついたときから感じていた疑問なんですが、なぜ、死後の世界である霊界があるのなら、こんな物質界というか今、自分が住んでいる世界で苦しまなくてはならないのですか?この自分が住んでいる世界は、苦しみだらけです。早く死にたいと思っている人も多い。何故、神様はこんな苦しい世界を作り、人間を送り込むようなことをするんですか?」



ラフマニノフ「君の納得のいく答えになるかどうかは分からないが、俺から一つ言えることとすれば、人間が感じた精神的苦痛、肉体的苦痛、痛みなどは全て数値化されて生命データという場所で記録されている。それが、死後に行く世界でお金に代わるんだ。俺たちの住んでいるこの霊界でもお金はあるんだ。それがあれば様々なことができるし、楽しめるし、有利になる。無駄なことにはなってないんだよ。苦しんだら苦しんだだけ、しっかりと報われるようになっている。

また、お金だけじゃない。ショパン。続きはお前から話してくれ」


ショパン「ムトウさんが今住んでいるその世界でも、苦しんだ分だけ、必ず良いことがある。それは神が作った自然の法則なんだよ。神はどん底を経験した分だけ、それ相応のご褒美を必ず用意してくれているんだよ。苦しみが多かった分、必ず喜びや幸せは後から押し寄せてくる。ALSとして苦しんだ分だけ、不自由を感じた分だけ、死後、肉体から解放され、ALSから解放され、全てから自由になったときの喜びは計り知れない。お金ももちろん、苦しんだ分だけ、貯金さ

れていて霊界で使えるようになる。それに一番大事なことは、人間は物質界に自ら望んで生まれてくるのです。霊界では全てが自由だ。何でもほぼ思い通りだ。だからこそ、不自由が恋しくなる。苦しいことがありがたく感じて、苦痛を求めるようになるんだ。霊界での生活でもいずれ飽きが来る。だから、物質界で新しい刺激を味わおうと、転生してくる」 


ムトウ「この世界にいるのは自分の意思だったんですね。自分で生まれてきて、転生してきたんですね。なんか、少し、苦しんでいる分、必ず報われるんだって。元気が出ました。会えてよかったです。同じALSの人に会ってくれて、僕らに希望を与えてくれている。嬉しいです。ありがとう」


ショパン「ムトウさんに一つだけ約束してほしいことがあります。夢で私たちに会ったことをたくさんの人に話してください。広めてください。今、話したことも全て。そうして、地上世界でもALSの人がショパンとラフマニノフにいつか会えるかもしれない。と、希望を持ち、楽しみにして生きるのが少し面白くなるかもしれません。そのために⋯⋯この私たちの仕事が地上で広まり、噂になってくれることを期待し

ているのです」


ムトウ「でも、僕はもう声を失っていて、話すことができません。その願いは叶いません。ただ、目で文字を入力する機械があるので、できるかもわかりません。挑戦してみます」


ラフマニノフ「まあ、地上で噂にならなくても、ムトウさん本人が俺たちに出会ったことを、どんな苦しみも無駄にならず、報われることを知って、明るく前向きな気持ちで生きていってくれれば私たちは本望だ」



ショパン「ムトウさん。そろそろ行きますね。希望を持ってください。無駄なことなんて何一つないんですからね!!!苦しんだだけ素晴らしい世界へと行けるのが、絶対的霊界法則ですよ!」


ムトウ「感謝します。本当感謝します」



ショパン「ムトウさんがこれだけ体が動かない極限状態の中、、限界まで人間としての可能性を追求して、、発揮していく姿に、、体が動く私は何やってんだ!! もっとできる、、動けると、、力をもらえます。。ムトウさん。。ありがとう」


ラフマニノフ「霊界に来れば、、体を自由に動き回れるからな。。楽しみに希望を持ってこれから過ごしてほしい」




 ムトウさんは泣いた。


 こんな喜びは人生でもそうないだろう。


 ショパンとラフマニノフはまた一人の人間に希望と元気を与えた。








 30



 「ショパンのオーケストレーション上達進化コンサート」



というのがひそかに開催された。


 ショパンはオーケストレーションが苦手であるという常識をそろそろ打ち破り、みんなにオーケストレーションで認められたいという願望があった。



 なので、自ら企画したのだ。



 ショパンは大々的にこのコンサートの宣伝活動をしてきた。



霊界の各地で記事の広告も掲載し、テレビ局もたくさん放送するために、全てテレビで流してくれと自らテレビ局に足を運んで、お願いまでした。


 生前はそのような自身の宣伝活動をあまりしなかったショパンだが、霊界では変化したのだ。


記者たち「ショパンさん。これからコンサートが始まります。みんなの期待はかなり高いと推測されます。緊張とかありますか?」


ショパン「緊張よりもワクワク感が強いです。これから私がより天才だということが証明されますからね。オーケストレーションはとにかく苦手でありましたが、才能が無かったのではなく、努力をしなかっただけだったんだってね。楽しみにしていてください」


ラフマニノフ「ショパン、自らハードルを上げるようなこと言わないほうがいいぞ?万がーって時にどうする?」


ショパン「とにかく、もうオーケストレーションは極めたとまで言うつもりはないが、かなりの水準まで達した。ラフマより上手い思う」


ラフマニノフ「楽しみだな!!!俺を超えるのか!!」


 こうして、ショパンのコンサートは霊界で最も権威と歴史のあるコンサートホール「バラゼヤン」で行われた。


 オーケストラの人たちが席に全員座り、指揮者の人も台に立ち、ショパンもゆっくりと歩いて登場した。


「パチパチパチパチ」


 大拍手する観客たち。歓声を上げるものもたくさんいた。


 コンサートでは以前、ショパンとラフマニノフがイチゴジャムを食べたときに使った小さな円形の机と同じものがたくさん用意された。


 そこで、ジンサ考案の食事をバイキング形式でショパンの演奏を聞きながら食べるというものだ。


 観客の数はざっと1000人程。


 みんなショパンの根根強いファンばかりだ。


 チケットの倍率は極めて高く、ショパンへのみんなの期待が表れているといえる。



 演奏が始まった。


 ラフマニノフは一番後ろの席で、優しく我が子を見るような眼差しで見学していた。

 

 一番後ろにしたのは、ショパンがラフマニノフを意識して、緊張しないためだ。


 ショパンが一番後ろで見守っていてほしいと懇願したのだ。


 観客たちはほぼ静かに見守っていた。


 約1時間30分の演奏は順調に終了した。



 アンコールとして、ショパンは贅沢にもラフマニノフのピアノ協奏曲3番を全楽章演奏した。


 ただ、ラフマニノフを演奏する前に、ショパンは自身が作曲し、演奏したピアノ協奏曲「夏」に関して、やけに終わった時の拍手が少ないなと思ったが。


 このピアノ協奏曲「夏」は1時間30分の大作であり、ショパン史上最高に手をかけた傑作という自負があった。


 5楽章から構成されている。


1楽章「セミの鳴き声」

2楽章「夏祭り」

3楽章「ひまわり」

4楽章「海水浴」

5楽章「花火」


 ショパンはテレビの生出演にすぐにコンサート終了後に向かった。


 テレビで専門家たちとコンサートの感想や意見を言い合い、討論するというものだ。


 これは霊界中で放送されることになっている。


 それはベートーベンとモーツァルトの2人が専門家のコメテーターとして呼ばれていた。


ショパン「それではよろしくお願いします。どうでした??ぶっちゃけ、今回の私のオーケストラの使い方は。ピアノ協奏曲は。一応、全力を出したつもりですが」


モーツァルト「厳しいこと言います。全く上達していないどころか、ひどくなっているようだ。オーケストラと言えないレベルだ。下手なんてもんじゃない!!」  


ベートーベン「そうだな。同感だ!ショパン。お前はやはり、ピアノしかうまくない。ピアノしか取り柄が無い。弱点克服はあきらめなさい。霊界に来て、200年音楽をやってきたのに全然管楽器の使い方がなってない」


ショパン「そんなバカな!!!私としてはラフマニノフよりも優れているように思えたが」


モーツァルト「ラフマニノフより?笑わせてくれるな!世間知らずだよ。出直してきなさい!」


ショパン「観客のみんなにインタビューを聞きたい。どんな感想だったのか」


記者「用意しております!!!」


観客1「あれだけ大々的に宣伝しておいて、全くの期待外れでした。あれだけ期待外れにさせるのはショパンしかできないと思います。ある意味、本当に天才だなと!」


観客2「ショパンの夏ってピアノ協奏曲はオーケストラが目立っていなかったです。詐欺ですよ。コンサート名でオーケストレーション上達進化って、恥ずかしいですね」


観客3「ピアノしか作曲できないんだって、ショパンの魅力なのかもしれませんね。本当にひどかったです。予想を遥かに下回る出来に泣きたいです」


観客4「メロディー、旋律の美しさは申し分ない。ただ、それだけだ。メロディーがいいだけだ」


ショパン「うわあああああああああ!!!!」


 ショパンはいきなり消え去り、家に閉じこもってしまった。


 ショパンは自分にはオーケストレーションの才能がないのだと認めたくなかった。


ベートーベン「ああ、せっかく私たちと意見交換し合っているのに、ふてくされて退場してしまった。どうしようもない男だな!!!」


モーツァルト「マイナスな批判をされただけで逃げてしまうとは。相当、ショパンの今回のコンサートの思い入れは強かったみたいですね。」


 ショパンは一人、泣いていた。


「ううう。うううううう」


 ものすごい表情で悔しがった。


 ラフマニノフがいきなり姿を現した。


ショパン「ラフマ。今は一人にさせてくれないか?悔しくて、残念で死にそうなんだ!自分に絶望したよ。自分が憎い」


ラフマニノフ「ショパン。コーヒーを淹れたから飲め!」


ショパン「いらないよ。いつものやつだろ?」


ラフマニノフ「今までにない俺オリジナルの最高のもんだ」


ショパン「ん!!!うまい!!!うますぎる!!!!!ラフマでもこんなコーヒー作れるんだ!!!」


ラフマニノフ「お前が悔しくて泣いてしまっているときに慰めになる癒されるコーヒーを開発していたんだよ!!実はお前のコンサートでやった曲の楽譜を10日前に、見てしまってな。これはダメだ。酷評は間違いないと分かったから、なんとかショパンが酷評され、落ち込んだ時のためにと思って、この元気になるおまじないが入ったコーヒーを用意しようと必死になっていたんだ」


ショパン「ラフマ⋯君は最初からこうなることがわかっていたんだね。ウウウウウ。僕にはオーケストレーションの才能はもうないから、あきらめたほうがいいのだろうか。今回の出来事は本当にショックだ」


 ショパンは顔を真っ赤にして涙を流しながら、ラフマに聞いた。


ラフマニノフ「でも、この元気になるコーヒーは俺のコーヒ一屋で一番人気になったぞ!!!今までで一番美味しいって言ってくれた人が多かったんだ。そして、ダントツで売れている。霊界最大のコーヒー屋になれるかもしれないな。俺のコーヒー屋は。お前のおかげで」


 ラフマニノフ流の励まし方だった。


ショパン「それ、本当なの?僕がきっかけで作ったコーヒーがダントツで売れているの?なんか元気出てきたよ!励まされたよ!ありがとう!でも、事実なの?作り話じゃなくて?」


ラフマニノフ「ショパンの作曲したピアノ協奏曲『夏』はこれから俺が一緒に作り直してやる。お前にオーケストラについて指導しながらな。そうすれば、この曲は俺たちの共作になる。力を共に合わせて作った大事な曲になる。だから、お前の行動は無駄になってないし、逆に俺たちの絆を深めてくれるんだよ」


ショパン「うううう。ラフマ。本当にありがとう」


 ラフマニノフはショパンの肩に手を乗せ、やさしく支えながら励ました。


ラフマニノフ「目標がまたひとつできてよかったじゃないか。ショパン。もし、オーケストレーションが俺よりも優れてしまったら、俺の存在価値が薄くなる。俺は、お前のオーケストレーションが苦手なところを穴埋めする役目があるのかもしれないな。だから、ショパンはずっとオーケストレーションが苦手なままでいてほしいのが正直なところだよ。苦手だから、俺たち、うまくいくと考えてくれたらな。それに何よりオーケストレーションが苦手なショパンが好きだ。何もかも完璧な奴より欠点が何かしらあったほうが可愛く思えるんだ。魅力的だ。人間は不完全だからこそ魅力的で愛されるんだよ」


ショパン「ラフマ、僕を励ましてくれているんだね。君は本当に最高の人間性を持っているね!」


ラフマニノフ「オーケストレーション上達という目標を達成するまでの道のりが一番面白いんだ。何もかも極めてしまったら、次にあるのは退屈でつまらないという喪失感なのかもしれないな。目標は達成するまでが面白いんだよ。明日からこのピアノ協奏曲『夏』を改訂していこう。俺たちでもっとすごいものにしていこう。でも、なんか俺が後からショパンと協力して作り直して俺たちの友情の証みたいな存在になるって考えると、本当に嬉しいよな。お前も喜べよ。お前のこ

のピアノ協奏曲は一切無駄になってない!」



ショパン「ありがとう!!!」





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