まとめ♯3.5
第16話
「いずれこの国の王になる」
川から打ち上げられた黄金魚にドラゴンの生命が刻まれた。
その魚を望遠鏡みたいにアップして見てみると、その魚の細胞にドラゴンの命が宿っていた。
青色をしている。目が見えて、動いてる。このドラゴンはまだ赤ちゃんだが、いずれ国を大きく改革する革命王になるのだという。
ドラゴン人間「キングストロークドラゴン」だ。彼は世界を変える大きな使命を持ってこの世に降誕した。
その黄金魚に宿った時に、空には大きな虹が出現したという。
科学者の白地郎は黄金魚を発見し、珍しいので持ち帰ることにした。
手に持った瞬間に、神の声が白地郎の頭に流れ込んできた。
「この魚を8カ月間、守り抜いてください。この魚には世界を変える救世主ドラゴンが宿っています」
はっきりと聞こえた。
空耳ではなかった。
何度も何度も聞こえてくる。
白地郎は科学者だ。
ドラゴンが宿っているか調べることにした。
白地郎「むっ?? なんだこれは?」
ラフマニノフ「ショパン。もう、飽きてきたぞ!」
ショパン「もう?君は飽きるのが高速だな。寝ながら読み聞かせる本はこれが読みたい気分なんだけど」
ラフマニノフ「ショパンの読み方が発声が下手くそなのかもな。私がこの前にやったスピーチみたいに魂をこめ、抑揚のはっきりした読み方でやってみたまえ」
ショパン「わがままだな。読んでやってるだけありがたいと思え!」
ラフマニノフ「そんなこと言うなら、もうラフマカレー作ってやらないぞ!いいのか?それでも」
ショパン「あれは一週間に一度の楽しみなのに?? それすら奪うっていうのか!薄情者が」
ラフマニノフ「えい!ややこしい!もう読み聞かせはしなくていい。言い合いで目が覚めてしまったからな」
ショパン「ねえ、ラフマ。最近、音楽学校のことで相談があるんだけど」
ラフマニノフ「??」
ショパン「僕は生前はピアノのレッスンとかの先生をやるのが楽しかったし、自分でもかなり高レベルの教授だなと自負していたんだけど、なんか教えるのがめんどくさくなってきてしまっているんだよね。この人に教えても、僕は超えられないなって思っちゃう」
ラフマニノフ「ショパンを超えるピアノ音楽作曲家を誕生させるのがお前の野望であり、目標ではなかったのかな?」
ショパン「なんか、今、音楽学校が設立されて半年くらい経つけれど、全然そんな素質のある人は見当たらないというか。教えても無駄だなとか思っちゃうんだよね。ラフマはなんか注目生徒いる?我らの音楽学校で一番優秀な生徒でも、僕はおろか、ラフマすら超えられる人はいないと未来を予感させる生徒しかいないんだけど」
ラフマニノフ「あくまで予感だよ。それに、そんな簡単に私たちを超えられるわけがないだろう。いくら優秀な生徒たちであっても。でも、いつの日か現れるかもしれない。それに、そういう私たちの後継者を育て上げるのが、この仕事の面白さだよ。いきなり、なんでもできる奴が現れたらそれほどつまらないことはない。思い通りにいかないから面白いんだよ」
ショパン「でも、ピアノの演奏の教授職はやっぱりやる気が出ないんだ。雑魚が多すぎるよ」
ラフマニノフ「雑魚を一流に育て上げるまでの試行錯誤が面白いんだよ。お前は分かってないな。それにやる気は行動して、動いて初めて出るんだ。やる気がないからってやる気が出るのを待っていて何も行動しなかったら、いつまでもそのやる気がでないまま、ずっと無行動で終わってしまう。自発的に、やる気が起きないときこそ、とにかくやり始める。行動する。動く。これができればもっとピアノ演奏教授職が面白くなるぞ?私は、吸収が遅い生徒程、教えがいがあって面白いからな。これからのお前の課題だよ。やる気が出るのを待つな。自らやり始め、やる気を出すんだ」
ショパン「その気分のコントロールが思い通りにいかないんだ」
ラフマニノフ「片足がなくなっても、動いてやる!くらいの精神でいけ!」
ショパン「そうだよね。できないじゃない、やるんだ。やるしかないんだ!」
ラフマニノフ「私はお前と音楽学校ができて嬉しいぞ!だから、やる気を出してもらわないと困る。俺はやる気満々なのに、お前が意欲がなかったら、悲しいぞ!」
ショパン「弱気になってしまっているんだ!実は、先日に一件、ガッカリすることがあって」
ラフマニノフ「なんだ?なんの話だ?」
ショパン「僕は地球の霊界の中では、ピアノ史上最強の作曲家として名を馳せているけれど、冥王星にいる宇宙人のナイバルって人が、わずか40歳という人生で600曲のピアノ曲を作曲したらしいんだけど、そのピアノ曲が僕に全然引けを取らなくて⋯。僕と1歳しか違わない生涯で、僕の何倍もピアノ曲の超傑作を生みだしていたんだ。僕はそれを今、全て研究しているところなんだけど、どうみても僕より優れたピアノ作曲家なんだよね。彼は霊界を題材にした交響曲まで見事なオーケストレーションで作っていて、あまりにいい曲で久しぶりに興奮したよ。僕とナイバル。どちらが天才かって言ったら、ナイバルに軍配なんだよね。それで、自信喪失しちゃって。僕の格上がすぐに見つかったんだ。でも、地球じゃないんだ。冥王星で。
だから、あまり関係ないとしても、音楽学校で自分が教えてるのが恥ずかしいくらいなんだ。ナイバルを見てると」
ラフマニノフ「宇宙はそりゃ、広いんだから、お前より格上はたくさんいるさ。今回は同じ近所の星にいたんだよな。でも、お前の英雄ポロネーズやバラード4番とかは唯一無二だ。ナイバルでも作れないよ。断言してもいい。お前にはお前の良さがある。上には上がいるのは当たり前のことだ。それで、自信を失うんじゃなく、その上の存在を研究して、自分の成長と向上のための材料にすればいいんだ。ナイバルはお前よりも音楽家としてのキャリア、経験年数が多いだけかもしれない。格上がいることを喜び、むしろ、ワクワクして、悔しがってみろ。お前にはいい刺激だよ。自分以上のピアノ作曲家がいないと言っていて、少し謙虚さが必要だなと思っていたんだよ。私にもナイバルに会わせてくれ。ナイバルの作曲した全作品を聞いてみたい!」
ショパン「わかった。ってか、もうあるよ。この音楽プレイヤーに全て入っているからデータを転送してあげるから、君の音楽プレイヤーを持ってきて!」
ラフマニノフ「まあ、ショパンにはいい苦薬だったみたいだな。ナイバルのおかげでまた超えたいとワクワクをくれる目標が見つかったんだから、感謝しろよ!ナイバルに」
ショパン「君にはいつも、大事なことを教えられてる気がするよ。ありがとう!」
第17話
ショパンとラフマニノフは2人で共演する公開演奏会のためのスクリーンに描写される映像をパソコンで編集している最中だった。
ラフマニノフ「白い花びらの花の真ん中が地球になっていて、ひとつずつ花びらが離れていき、最終的にその丸い青い地球だけが満天の宇宙空間をバックに残る。そのあとピアノ協奏曲『地球』を演奏開始だ」
ショパン「結構、美しくていいんじゃないかな。これは賛成かな。それより、僕の英雄ポロネーズの映像はどうしようか迷っているんだけど」
ラフマニノフ「自分が作曲したときの動機、どのような思いが込められているかを素直に表現すればいいんじゃないか?」
ショパン「うん、それでもいい。この英雄ポロネーズは僕が病弱で風邪をこじらせてばかりだった頃に、お父さんが看病してくれた時の頼もしさを表現したんだよ。お父さんはその時、僕のヒーローだったから。だから、英雄と名付けられたのは自分でも納得しているんだ。でも、それは曲の源になっているエピソードであって、自分の理想ではない。自分は混乱した世界を平和にした世界の王、男の勇敢さを映像で表現したいって思いがある。事実にもとづいた映像か、自分のし
たいような理想にもとづいた映像か、迷っているんだ」
ラフマニノフ「これは、まさに究極の2択だな。でも、俺は王様のほうが圧倒的にいい。お父さんには悪いが、ショパンのお父さんが個人的に看病した時の映像は共感が少ないと感じる。やはり、ロマンがあるのは世界の王様が世界を平和にし、世界統一する映像の方がワクワクするし、感動するとしか思えないがな。お父さんの子供への愛情より、やはり多くの人が魅了されるのは世界王のほうだ。俺は世界王のほうが
興味あるし、ぜひ、見てみたい!」
ショパン「じゃあ、世界王を演奏中のスクリーンに流すことにするね。映像は実写がいいか、アニメーションがいいか、どっちがいいだろうか?」
ラフマニノフ「俺に聞きすぎじゃないか?自分で決めるべきだと思うが、アニメーションのほうが心にスッと入ってきやすいな。俺たちは実写の世界で生きている。新鮮なのはアニメだな。でも、アニメーションを制作するのは大変だぞ?3か月後の演奏会に間に合わせられるのか?」
ショパン「インターネットでアニメーション制作の依頼の会社を検索してみるよ。僕はマンガとか似顔絵を描くのが生前から得意だったから、どのような雰囲気の王様を登場させるか、これから決定していきたい!」
ラフマニノフ「それより、ショパン。お前の家に槍を用いた警備員を配置していることについてだが、なんとかならないのか?無断で入り込んだ奴を槍で撃退するのはちょっとやりすぎで残酷だぞ?俺も最初、ショパンのところに無断で登場したら、槍で退治されそうになり、カッとなってその鎧を着た槍の部隊とやりあったんだ。槍だけにな」
ショパン「この霊界では思念により、思った場所に一瞬で自由に行けるからね。誰も来てほしくないって思った時に槍部隊を配置しているんだよ。でも、みんな霊体だから、痛みは感じないし、死なないからね。これで、懲りて、無断で入ることはないようになるといいなと思ってね」
ラフマニノフ「無断でというなら、お前が許可したら大丈夫なのか?」
ショパン「許可証を随時、発行して、渡しているからね。ラフマに渡しておくよ」
ラフマニノフ「首にかけるタイプだな。槍部隊に見えるようにしないとな」
ショパン「作曲しているときに、いきなり誰も知らない人がちょこちょこ現れると、集中できないからね。槍部隊は苦肉の策だよ。どうしても嫌なんだ。作曲中に1人になれないのは」
ラフマニノフ「俺は一人じゃないほうがいけどな。海で波に揺られながら、パソコンで作曲してるしな。俺たちってやっぱり対照的だな」
ショパン「生前、サンドの別邸、ノアンの家では僕専用の作曲部屋があって、馬の毛が使われた2重扉が設置されていて、そこで英雄ポロネーズとかを作曲したんだ。集中力がなくなるから作曲中は誰も入ってこないようにみんなしてくれていたよ。あっ、そうそう。コーヒー屋のゲンを雇用したいんだけど、ラフマから言ってくれないかな?家でゲンの入れるコーヒーが飲みたいって」
ラフマニノフ「ゲンは地上でライブやってんじゃないかな?まだ、幽体離脱でしか霊界に来られないから、自由にアクセスできるわけじゃないんだよ。それに、ゲンは雇用されるのは嫌がると思う。自分の店を出しているからな。俺もいずれ、自分のコーヒー店を出そうと思っている」
ショパン「ゲンのライブに見に行こうよ!」
ラフマニノフ「分かった。ゲンの様子を見に行こう!」
2人はゲンに会いに地上世界に降りに行った。
第18話
ラフマニノフ「ショパン!折り入って話があるんだが!」
ショパン「何?重要な決定を下すときにいつも使うこの重要決定専用部屋に僕を呼び出したりして」
ラフマニノフ「実は、俺、ショパンとは距離を置こうと思う」
ショパン「えーーーーー?何で?」
ラフマニノフ「ショパンでいう別れの曲みたいな悲しみを体験したくなったんだ。つまり、1人になりたいということだ。最近、孤独になりたい自分がいる。別れがあるから、いつか再会したときに喜びが倍増するというものだ。今まで、ショパンに頼りまくっていた。ナイバルに弟子入りしようと思う。ナイバルは俺の弟子入りを歓迎してくれた。実は俺、ショパンのピアノ曲以上のピアノ曲を作曲できるようになりたいんだ。ショパンは憧れだった。お前を超えたい!」
ショパン「なんで?ラフマのほうがピアノ協奏曲やオーケストラの使い方が格上だよね?? ピアノ演奏技術でも上だし。会社を持っていてビジネスマンとして大金持ちの大成功者で全然負けてないのに」
ラフマニノフ「実際はお前の方が音楽家として俺より優れてる。優劣をつけるなら、お前の圧勝だ。ショパン国際ピアノコンクールが1927年に開催されて、ダントツ別格天と地の差月とスッポンで正真正銘、世界最高のコンクールであるのに対して、ラフマニノフコンクールはまだできて数年しか経ってないし、規模もショパンコンクールに比べたら鼻くそみたいなもんだ。自分はショパンに負けていると実感したよ。最近、ミヤザワトモヒデにそれを指摘されて、自分の自
信が崩された。自分はショパンより格上なワケがない。それは、ショパンコンクールとラフマニノフコンクールを比べたらわかる。ショパンの圧勝だよ。俺はうぬぼれていたんだ。だから、いつか音楽家のショパンを超えるために、ショパンの格上、音楽の超大天才、冥王星にいるナイバルに弟子入りしようと思う!」
ショパン「なんだか、君に天才だと認められたみたいですっごく嬉しいよ!ラフマ。でも、僕はラフマと別れたくない!一緒にいたいよ!絶対に行かないでくれ!」
ラフマニノフ「いつか、ショパンみたいなピアノ曲が書ける作曲家になって戻ってくるよ!音楽学校の方は、一時期閉校とするかショパンのみでやってくれ」
ショパン「ラフマがいなくちゃやる気なんて起きないよ!嫌だ!嫌だ!絶対に嫌だ!行かせないからな!ラフマがいたから、今までの生活がより楽しくなったのに。それを壊すなんて嫌だあ!」
ラフマニノフ「お前にひとつ、頼みがある!」
ショパン「なんだよ!今、涙で何もできないよ!」
ラフマニノフ「別れの曲を弾いてくれ!俺のために」
ショパン「嘘だろ?本気で?もう決心は固いの?」
ラフマニノフ「俺は絶対にナイバルの元に行く!お前を音楽家として超えるために!」
ショパンはピアノを取り出した。
霊界最高のピアノ「マイダッハ」静かに椅子に座り、放心状態になりながら、ゆっくり別れの曲を弾きだした。
いつもよりゆっくりと大事に、今までのラフマニノフとの思い出をピアノの音色に込めて、魂を込めて、号泣しながらの約4分間の名演奏だった!
特に、一番盛り上げるところでショパンは「ウウウウ」と一番涙を流した。
今まででこんなに感情を込めた演奏はしたことがなかった。ラフマと偶然付き合い始めてから、色褪せた日常に光が差した。
ラフマニノフはまさにショパンの太陽だった。
ラフマニノフも泣いていた。
無表情で静かに涙を流した。
手で目をこすっている。
ショパン「ラフマ。今までありがとう。君との日々は忘れない!」
ラフマニノフ「俺もだ相棒!いろいろありすぎたな!」
2人は熱い抱擁をして、抱き合った!
ラフマニノフ「おーい!ショパン起きろ!」
ショパン「ん?あれ?あっ?なんだ!今のは夢だったの
か!」
ラフマニノフ「なんの夢見てたんだ?これから音楽学校に行って、生徒たちに教えることが山ほどあるというのにのんきな奴だな!」
ショパン「イヤ、実はさ⋯」
ショパンは夢見たことを全て話した!
ラフマニノフ「ありえない夢だな!夢は反対って言うからな!俺がお前から離れるわけがないだろ?以前、あれだけー緒にいようと約束したじゃないか!それに、俺がお前に音楽家として負けているわけないだろ?俺のコンクールはまだてきて数年しか経ってないからショパンコンクールより劣っていても仕方ないさ。いずれ、ショパンコンクールをも超える世界一の大コンクールになるさ!音楽学校をお前ひとりに任せたら大変なことになるから、お前を一人にしないさ!それに、ショパンの魅力的で欠点だらけのピアノ協奏曲を完成させたのは、オーケストレーションに優れたラフマニノフだって言われていたように、俺たちはいつも助け合う運命なんだよ。ショパンはオーケストレーションよりピアノを更に極めろ。まだまだ向上できるさ。ナイバルのように。俺はオーケストレーションを更に極めるからな。俺までがピアノ曲作曲家を極めても面白くないからな」
ショパンは目頭が熱くなり、ラフマに飛びついた。
ショパン「よかった!それでこそラフマだ!いつまでも一緒だよね!確定だよね!」
ラフマニノフ「当たり前だ!」
ショパンは当たり前と思っていたラフマが離れてしまうという恐怖を夢で仮体験した。
それは、ラフマニノフという太陽が当たり前に存在すると思うなという夢からの教えだったのかもしれない!
第19話
ショパン「ここはイチゴジャムで塗装して⋯ここはキウイフルーツを盛り付ける!そして、オレンジマーガリン風味のスポンジ生地で壁をつくる!」
ラフマニノフ「壁はシンプルにチョコレートにしたほうがいいと思うんだが!イチゴチョコでな。リンゴチョコレートソースもトッピング隠し味にしたらどうだ?」
ショパン「それいいね!」
2人の天才音楽家は「お菓子の家づくり選手権大会」に出場している最中だった。
2人でペアになり、「より美味しそうな見た目で、実際に美味しくて、魅力的なお菓子の家」を作るのを競う。
参加者は200人ちょうど。
優勝すると獲得できるのは、霊界で最も権威のあ
ると言われ、限られた人しか招待されない地球圏霊界の最高会議「シナメルド会議」に出席し、これからの霊界の世界をどのように変えていくかの選択権を得られる。
まさにショパンとラフマニノフは音楽家としてだけではなく、霊界での政治の仕事もしたいと考えていた。
霊界の法律を変え、既存の古い音楽体制を新しいものに変えていくためにも、ある程度の政治的地位が必要だと考えたのだ。
ラフマニノフ「しかし、大事なのは審査員に気に入られるものをつくることだ。より美味しそうで魅力的なお菓子の家といっても選ばれる基準があいまいで、審査員の好みしだいだから、審査員の感性を刺激するものじゃないとな。ただ、審査員の情報が少なすぎるので、結局は自分たちのより魅力的と感じたものを作るしかない。自分たちの趣向が、審査員たちとマッチするかは運とも言えるかもな。どのような家を作るのが優勝するために必要だと思う?」
ショパン「僕が考えるに、誰でも考えられるありきたりなものだと絶対に選ばれないと思う。斬新で革新性があり、意外性、面白いアイデア、工夫などがやはり大事だね」
ラフマニノフ「意外性か!独特で味のある感じが必要ということか。では、私たちは音楽家らしくピアノの鍵盤を普通の階段ではなく、洒落た螺旋階段に描くというのはどうだ?」
ショパン「壁に音符をつけた楽譜も書こう。このお菓子の家のテーマは『ある男性の恋人との別れの悲しみからの再会の喜び』にしよう。クッキーを使い、恋人の男性が手を伸ばしながら、行かないでくれって女性を追いかけるシーンを再現し、机に座って別れを悲しむ男性をチョコレートで作り、最後に女性と抱き合う姿の男性をケーキで作る。ってのは?やっぱり、恋する物語が審査員の心を動かすかもって予測したんだけど」
ラフマニノフ「たまにはお前に従うか!考えている時間もないしな。ただ、男性を女性に置き換えよう。男性目線より女性目線の作りのほうがいい。普通だと男性目線から描かれる恋愛が一般的だと俺は考えているから、斬新さを加えたい」
ショパン「飛行機も入れよう。最後にね。恋人との新しい人生の出発の旅立ちを表現するんだ!」
ラフマニノフ「いろいろと工夫して考えるのって面白くて最高だな!」
ショパン「その意気だよ!ラフマ。楽しむのが一番だ!楽しめば自然といいのができるからね」
霊界では思念により、お菓子が出来上がる。実際にお菓子は考えたとおりに実体として現れる。なので、お菓子を手作りする必要がないのだ。すでに用意された限られた材料から、自分の考えうる最高のアイデアを駆使して、お菓子の家を組み立てる。なんと、この大会にはショパンとラフマニノフがライバル視するモーツァルトとベートーベンのペアも参加していた。
モーツァルト「すっかりと君たち2人は板についてきたね。私からのアドバイスだ。作品テーマは『太陽』にするといいよ。ピアノの螺旋階段は作らなくていい。階段なんてあまり目立たないし、魅力もない。注目されないものに凝っても仕方ないだろう」
ショパン「モーツァルト、君は僕たちの話を全て聞いていたのか。人のことを心配する余裕があるなら自分の心配しろ!僕たちは人からのアドバイスは採用しない。あくまで、自分たちの力で優勝したいから」
ベートーベン「相変わらず、ショパンは頑固だ。まあ、好きにすればいいさ。複雑な作りよりもシンプルにしたほうがいいかもしれないしな。表現の数が多いからいいってもんじゃないしな。まあ、3時間の制限時間が与えられているから、焦ることはない!シンプル・ザ・ベスト!」
ラフマニノフ「モーツァルトとベートーベンが作るお菓子の家はスゴイ興味深いな。後で拝見させてもらうからな。期待外れにならないように全力を尽くせよ!」
モーツァルト&ベートーベン「そっちこそ!」
ショパン「全く、僕らに気遣う余裕があるなんて。なんか腹立ったよ。油断してるからあいつらは絶対に優勝はできないと思う。油断してるやつに神様は微笑まない!」
大会結果はショパンの予想を覆して、モーツァルトとベートーベンが優勝した。
ショパン「なんでだーーーーー!審査委員長!なんで?なんで?なんで?モーツァルトたちの家を見たけれど、全然作りこまれてなかったとしか思えないんだが。ただの窓の日差しで日光浴している人を表現しただけじゃん!僕たちの方が魅力的じゃない?」
審査委員長「ヒントは私たち5人の審査委員の服装にあった。みんな、太陽の絵が書かれているものを身に付けていた。『太陽』こそが隠されていた大会テーマだったのだよ」
ショパン「そうだったのか。だから、モーツァルトは太陽をテーマにしろと言ったのか」
ラフマニノフ「じゃあ、ショパンのせいで負けたのかもな!ワハハハハ。まあ、楽しかったからいいではないか。ショパン」
ショパン「ガーーーーン。モーツァルトはそこまで見抜いていたとは。負けた......」
モーツァルト「太陽が隠された大会テーマだと気づいてほしかった理由は、ショパンたちと対等の状態で勝負したかったからだよ。まあ、観察力や洞察力、経験値で差が出るところだね」
ショパン「キー!! 悔しい!!」
第20話
ショパン、ラフマニノフ、アゲハ、ノブ、ジンサの5人は霊界で犬と戯れるのを楽しむためにドッグラン野原に遊びに来ていた。
ノブ「僕は犬のことを心から可愛いと感じています。こんなに愛らしい生き物だとは思いませんでした」
アゲハ「強がらなくていいわよ。ノブ。犬の鳴き声が苦手ってあれほど言ってたくせに」
ノブ「それはみんなには内緒という約束だったはずです」
アゲハ「内緒にしなくていいわよ。正直なほうが愛されるわよ」
ノブ「本当にそうでしょうか。それより、ピアノでシ
ョパンの子犬のワルツを弾きたいですが。犬たちがどんな反応をするのか知りたいんです」
アゲハ「いつも思うけど、ピアノのことばかりね。何十年もピアノばかり執着しちゃって」
ジンサ「おい、アゲハ。ノブはピアノを弾くことが使命なんだよ。許してやれ」
ショパン「ノブさん。目が見えるようになってよかったですね。まあ、霊界にいるときしか見えないでしょうけど。肉体に戻れば、目が見えなくなってしまうのは辛いですね」
ラフマニノフ「ノブのショパンのバラード4番を聞いたが、もっと味わうように弾いた方がよかったな。ノブもまだまだだな」
ノブ「天下のラフマニノフさんにそんなこと言ってもらえるなんて、光栄で、嬉しいです」
ショパン「ラフマ、もっと具体的にどういう演奏をし
たほうがいいか述べたほうがいいよ。僕は、あの一番盛り上がる場所ではアダージョで音の力を最大限にまで引き出して演奏したほうがいいという感想を持ったけれど。前半部分のあのいきなり幻想的な雰囲気になる部分ももっと遅く、音を伸ばした方がいいと思う」
ノブ「アダージョって何でしたっけ?」
ショパン「ゆっくりとって意味ですよ。音楽用語をど忘れするなんて、まだまだ未熟ですね」
ノブ「ショパンさんにまでそんなことを言ってもらえるなんて、とっても光栄で、感激です」
アゲハ「あなた、内心バカにされているのよ?喜ぶより、悔しがりなさいよ。成長しないわよ?」
ラフマニノフはいきなりドッグラン野原にグランドピアノを設置した。
ラフマニノフ「さあ、子犬のワルツを思う存分弾いてくれ。弾きたいなら、弾くべきだ!」
ノブ「ラフマニノフさん。この御恩は一生忘れません」
アゲハ「大袈裟よ」
ノブは静かに歩いて、椅子に手をかけ、クセになっているお辞儀をして、座った。
「タン、タンタンタン」
ノブの子犬のワルツが響いた。顔をフリフリさせながら弾いている。
犬たちが一斉に駆け足で近寄ってきた。ほとんどの犬がノブとピアノの周辺を取り囲みだした。
「ワン!ワン!ワン!ワンワンワン!」
ヨークシャーテリアからマルチーズ、柴犬、チワワ、トイプードルなど多数。様々な犬種だ。20匹はいる。
一匹のトイプードルが鍵盤を触り、子犬のワルツはトイプードルとノブの共演とかした。
まさに真の意味での「子犬のワルツ」だ。
トイプードルが弾くから。
約2分くらいの演奏で、犬たちは大興奮して、ノブは満足した。
犬たちに喜びを与えられたという感覚が、自分の存在価値を高めたのだとノブは体を震わせて感激の涙が静かに流した。
ノブ「こんなに犬たちに喜んでもらえるとは思いませんでした。犬たちも満足しているみたいです。これが、ピアニスト冥利なのかもしれません」
ショパン「僕が作曲したんだから、犬たちは僕にも感謝して、尻尾を振りながら、僕の足にまとわりついて、喜んでくれてもいいのに。僕が作曲したことは皮肉にも分かってないんだよね」
ノブ「ショパンさん。あなたが作曲してくれたおかげで、僕は犬たちに演奏でき、喜びを得ることができました。ありがとうございました」
ショパン「ノブさん。犬の鳴き声が苦手じゃなかったんですか」
ノブ「今は目が見えてるので、怖くないです。目が見えないと、いきなり吠えられてビックリしてしまうことが多々あります」
ジンサ「なあ、サプライズなんだが今日は全員分の弁当を用意したんだ。食べるか?オリジナルのとんかつ弁当だ」
アゲハ「まあ、とんかつは大好物なのよ!早く食べましょうよ!」
ラフマニノフ「俺も何か食べたいと思っていたところなんだ」
ショパン「霊界では犬たちは排せつ物を出さないから助かったよ。霊界は地上の不快なものがほとんどないから嬉しいよね。蚊とか蛾とか害虫が」
ラフマニノフ「せっかくのサンジの弁当がまずくなるだろう。空気読めないのか、ショパン」
ノブ「でも、霊界では排泄することがないのが逆に可哀想な気もします。あの体内から不要物を出す精神的満足感や喜びや快感が僕はうれしいと感じます」
アゲハ「地上には地上の良さがあるのよね。霊界では味わえない幸せがあるのよね」




