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まとめ♯12


76


ショパンは海に来ていた。ピンク色の水着で楽しそうにはしゃいでいるラフマニノフと一緒にいることを恥ずかしいと思っていたが、自分もピアノの絵がついた水着というかパンツなので、人のことは言えないと思わなくもないが。


ショパン「ねえ、ラフマ。この海にはたくさんの魚が泳いでいるんだよね。美味しいサーモンの刺身が食べたいんだけど、サーモンも泳いでいるかな?」


ラフマニノフ「当たり前だろ?この海は世界のあらゆる魚が生息しているんだからな」


ショパン「実は、この水着は水に触れると音楽が流れだす仕組みになっているんだよ。魚が寄ってきてくれるか今から試してみるよ」


ラフマニノフ「そうか。でも、その心配はないぞ。俺は魚が寄ってくる成分をしみ込ませた水着だから。きっとお前の大好きなサーモンも寄ってくるよ。じゃあ、先にサーモンをより多く捕まえたほうが勝利ってことにしよう。エキスパートピアノ音楽学校の理事長の座をかけて勝負だ!」


ショパン「ちょっと待て!理事長って?そんな大事な勝負をこんなサーモン遊びでするの?」


ラフマニノフ「理事長は校長よりも偉い学校の最高権力者だ。じゃあ、お前が俺よりサーモンを大量に捕まえることができたら、お前を理事長だと認めてやろう!俺より偉いことをな!」


ショパンはやる気に火がついた。


ショパンは誰よりもまずラフマニノフに認めてもらいたかった。


ショパンとラフマニノフは同時に海に入った。


決められた時間は1時間。その間にサーモンを多く捕まえたほうが勝ち!


ショパンは自身の最高傑作「舟歌」というピアノ曲を水着から海へ流して様子を見たが、結局、魚は寄ってこなかった。


一方、ラフマニノフは魚が寄ってくるエキスをしみ込ませた水着のおかげでサーモンを3匹捕まえることに成功した。


ショパンは舟歌をかけると、なんと船がショパンの周りに集まってきた。そこには魚をたくさん積んでいる船もあった。


ショパンは魚を大量に積んでいる船にサーモンがたくさんあることを知り、10匹だけもらった。


超有名な音楽家「ショパン」が、生演奏でピアノ音楽「幻想ポロネーズ」「英雄ポロネーズ」を聞かせることを条件にサーモンを10匹もらったのだ。


ショパンは安堵した。さすがに10匹も獲得すれば、私の勝ちだろうと。


ショパンとラフマニノフは互いに捕まえたサーモンを眺めて、ラフマニノフは悔しそうではなく、なんか嬉しそうな表情をした。


ラフマニノフ「お前のピアノ音楽が流れる水着でサーモンが10匹とはね!完敗だな。理事長はお前で決まりだ」


ショパン「本当にいいの?私が理事長で?言い出しっぺは私だけど、そりゃ、あの偉大なラフマより格上の地位になれることは嬉しいけれど!!!」


ラフマニノフ「男の勝負に勝利したんだから当然だろう!!!」


ショパン「ごめん!ラフマ!実は理事長の賭けは冗談なんだよ。僕はラフマと同じ地位にいたいんだ。それに、僕はズルをした。たまたま船が寄ってきて、それでサーモンを手に入れることができたんだよ」


ラフマニノフ「ショパン。お前のことがさらに好きになったよ。素直だな。だって、俺が船をお前には内緒で手配したんだからな。お前を勝たせたかったからだ」


ショパン「えっ?そうなの?なんで?」


ラフマニノフ「お前が素直にそう話してなければ、内緒にしておこうと思っていたがな。俺はお前を常に追いかけていたいんだよ!」


ショパン「だってラフマだって負けてないじゃん。ピアノ協奏曲の作曲などのオーケストレーション、ピアニストとしての演奏技術、ビジネスで成功している大成功者で超金持ちだし。僕が追いかけたいくらいだよ!」


ラフマニノフ「だが、エキスパートピアノ音楽学校を最初に考案したのはお前だ。お前が最初にこういうピアノ学校をつくりたいと思ったからこそ、エキスパートピアノは実現したんだ。俺は後から乗っかっただけ。理事長にふさわしいのはショパンだ!」


ショパン「でも、建設資金を出してくれたし。なんか申し訳ない気がして……」


ラフマニノフ「俺は副理事長としてお前を支えるよ。それが一番いい」


ショパン「ラフマ……俺たち相棒だろ?バディだろ?格差があることが嫌なんだよ!」


ラフマニノフ「だが、やはりエキスパートピアノの中だけでは、お前が偉いことにしたいんだ!それ以外は俺が偉いことにする。それでどうだ?」


ショパンはなんとか納得してくれたようだ。


ラフマニノフはショパンを音楽家として尊敬しているし、自分よりも偉大だってことは理解している。


あくまでショパンの夢を相棒になって叶えてあげたいのだ。


ラフマニノフは今まで自分のためだけに生きていた。


自分のためだけに生きているとこんなにも虚しいのか。


そう知ってからは、誰かを幸せにしたいということ。


誰かを喜ばせたいということを生きる糧にする生き方に


シフトチェンジしたのだ。


それが一番、自分が幸福感を感じる生き方だからだ。


「利他の精神」


ラフマニノフはそれを常に意識していたいと考えていた。


77


「なんでこんな目に遭うんだ?」


ショパンは焦っていた。


ショパンが設立した「エキスパートピアノ音楽学校」の5年目の開校記念日なのに


生徒が時間になっても誰ひとり来ていないのだ。


どういうことだ?


ショパンは相棒でありパートナーであるラフマニノフに携帯電話から連絡した。


「もしもし、ラフマ!生徒たちが誰も来ていないんだ!生徒たちはどこに行ったのかな?」


「俺もそれについて詳しく調査中だ!」


「ラフマも知っていたの?てか、すでに調査しているの?」


「ああ。お前が学校に到着する前に俺はすでに来ていたんだよ!」


「なんで知らせてくれなかったんだ?」


「ある事情があってな!とにかくショパンは会場ホールにいてくれ。この件は俺が解決するから」


ショパンは誰もいない学校の会場ホールでピアノを弾きだした。暇つぶしだ。


「こんな不安な時は幻想ポロネーズとバラード4番を弾こうかな」


ショパンは自身の不安な感情をぶつけるようにピアノを弾きだした。


ショパンただ一人しかないとても大きな会場ホールで名演奏とも呼べるショパンの最高傑作の作品が響き渡る。


ショパンは1時間、自身の作品を弾きとおした。


幻想ポロネーズ、バラード4番、幻想即興曲、別れの曲、革命のエチュード、舟歌、ピアノソナタ2番3楽章「葬送行進曲」、ピアノ協奏曲1番2楽章「ピアノソロバージョン」、スケルツォ4番、バラード1番、英雄ポロネーズ。


ただ一人、会場でピアノを弾き終えた直後に


会場の扉が勢いよく開いた。


「なんだ??」


ショパンは驚く。


数百人の生徒たちがぞろぞろと入ってきた。


一番先頭にラフマニノフがいる。


「ラフマ!みんな!どういうこと?来てくれてよかったよ!さみしかったし、なにかあったんじゃないかって怖かったんだ!」


「ショパンの名演奏をずっと生中継してみんなで見ていたんだよ。しかも、全世界に生配信されていたのさ」


「どういうことだよ?ラフマ!」


「いやあ、すまんすまん!実はショパンは俺の目の前や聴衆がいる前で弾くピアノ演奏と、誰もいない、一人で弾くピアノ演奏の質が全く違うことに、お前と一緒にいることが多くなってから、気づいたんだ。だから、生徒たちにショパンの唯一無二の名演奏を聞いてもらい、勉強してもらうために、わざと生徒たちがくる時間を遅らせたんだ!お前は誰もいない会場で一人で弾くピアノ演奏が一番の名演奏になるタイプだ」


「そうだったの?でも、もし僕がピアノを弾かなかったらどうするつもりだったの?」


「ショパンがピアノを弾かないなんてありえないから、そんな心配はしなかったさ」


「だから、会場ホールでじっとしていてくれって言ったのか」


「ショパンが誰からも命令されずに、自発的に、自らの感情をピアノ演奏にぶつけたくてするものじゃないと、決して、名演奏にはならないからな!」


「それにしてもさすがだな。幻想ポロネーズやバラード4番などの孤独や喪失感な曲から始まり、最後はバラード1番、英雄ポロネーズ、など、不安が吹き飛んだ喜びを感じさせる作品を弾くとはね。まるで弾いていった作品たちがひとつのテーマを持って、物語を作っているかのようだ」


「僕の演奏、よかった?」


「最高だったぞ!」


ラフマニノフはショパンをべた褒めした。


「先生は特殊ですね。誰もいない場所で一人でいるときに一番の名演奏ができるんですから。誰も聞いてないのに、名演奏という皮肉ですね。でも、今回は僕たちや世界中の人がしっかりとショパンの孤独名演奏を聞きましたから、無駄になってませんからね」


生徒の一人がそうショパンに伝えた。


「ラフマ。ありがとう。僕は誰も聞いてない誰もいない会場で名演奏ができるタイプ。それを無駄にしないようにしてくれたんだね」


「ショパンのこの名演奏を多くの人に聞いてもらいたいということで、前々から、世界中で有料配信するために準備していたんだ。まあ、今回は大成功だったな。よかった。ホッとしているよ」


「さあ、開校記念式典の始まりだ。ラフマにもピアノ演奏してもらうからな!」


「わかってるって!!」78


私は弱気だった。


最近、ピアノが苦手になった人が増えていて、それがあまりにも急に増えすぎていたから私とラフマのピアノ作曲と演奏の「エキスパートピアノ音楽学校」が


「霊界最大最高の音楽学校」になるという夢を果たせないではないかと。


私はとても心配していた。


現にエキスパートピアノでは生徒が半分以上、ピアノの音が急に嫌いになって、退学届を出してしまったからだ。


現在、最盛期は200人ほどいた生徒は、100人くらいになってしまった。


ラフマはおかしいと嘆いていた。


原因が全くわからない。急にピアノが嫌いになったりするか?100人近くが急に。


絶対にありえない。


何か裏があるんではないか。


私は疑ったから、


地球圏霊界最高責任者の「シナメルド様」に相談してみたら、


「ピアノ嫌悪調査委員会」というものを設置してくれることになった。


高名な探偵を10名集め、調査するというものだが、その委員会が設置されてからというもの、


今日で1か月になるが、全くこれといった収穫がない。


どうしたものか。


私はこの摩訶不思議な出来事に頭をかしげるばかりだった。


ラフマとの共演コンサートも中止になった。


まずはピアノ嫌悪事件の解決が最優先だからだ。


なので、いきなりピアノの音が嫌いになり、退学した生徒を全員集めて、


私とラフマで調査することにした。


100人ほど聞き取り調査をした。


「最近、ピアノが嫌いになる前に変わったことをしませんでしたか?ピアノが嫌いになったのは何が原因だと思いますか?ピアノが嫌いになる直前にしたことを教えてください!」


この調査をした結果、


「生命データ更新プログラム」


を受けた直後にピアノが嫌いになり始めていた。


ほぼ全員が。


「生命データ更新に原因が必ずあるに違いない!これを調査委員会に報告するぞ!」


ラフマは強気でそういった。


確かに。


しかし、うかつにこの結論を私たちが手にしたことを知って、それを仕掛けたやつ?がいたら?証拠隠滅とかしそうだよな……


とか疑ってしまって、この結論を公にすることは控えた。


「シナメルド様」にのみ、生命データ更新プログラムが怪しいとと伝え、その更新の手続きの過程を調査してほしいと密かに頼んだ。


「つまり、これはわしの失態ということか?」


「いえ、そういうわけでは……」


シナメルドの怖そうな顔つきで私はひるみながら答える。


「ピアノを急に嫌いになった人の100人全員がこの霊界役所で行う生命更新プログラムを受けた直後に、ピアノを嫌いになっています。ほぼ、確実に、プログラムにより、ピアノ嫌悪事件が起きたのだと推測されます」


「そんなことはない。わしの生命更新プログラムについてはしっかりと管理している。ショパンは誤解をしている!」


「シナメルド様!いくらなんでもプログラムを受けた直後から、全員がピアノを嫌いになっているんです。音を聞くと、気分が悪くなる!このままでは俺たちはピアノで生きていくことができなくなってしまう。どうか、協力して、調査してください!お願いします!」


「しかし、ショパンは生命更新プログラムを受けても、ピアノを嫌いにならなかったじゃないか。ラフマニノフもだ。全員というわけではないみたいじゃないか。生命更新プログラムを受けないと、この霊界に住むことができなくなってしまう。全員が受けなくてはならない。それはわかっているね?たとえ、プログラムに問題があったとしても、受けることを辞めることは許されない!」


シナメルドはなかなか頑固だった。


「保身のためですか?」


ラフマがついにキレて、爆弾発言した。


「生命更新プログラムが原因で、ピアノの音が嫌いになるようなことが起きていたとすれば、自分の身が危ない。霊界最高責任者として顔が立たない。だからこそ、調査を渋るんですね?」


「そういうわけでは……」


シナメルドもとぼけてしまった。


「わしにも訳がわからんのだ。なぜ、プログラムを受けた直後にピアノアレルギーが発病するか。なにか陰謀を感じる。しかし、私の立場では、プログラムが原因でそうなったとすれば、私の失態として、管理不足として、責任を取らされる。それがつらいのだ!」


「誠実を大事にするシナメルド様がなんということだ!」


シナメルドにラフマニノフが嘆く。


「生命更新プログラムを管理し、細工できる立場にある人は誰ですか?まず、プログラムを更新するために使う装置を調べましょう!そこに何かウイルスとか、なにか痕跡があるはず!その証拠を押さえたいのです!」


私はどうしても犯人を許せなかった。


「そうだな。わしとしたことが、自分の保身のために、道を誤っていたような気がする。よし、では、全力で調査に協力しよう!わしの権限をすべて使ってな!」


霊界役所の「生命更新プログラム課」を予告なしに、いきなり訪れた。


私、ラフマニノフ、シナメルドの3人は、


いきなり「更新装置」を調査した。


また、シナメルドの権限で、この更新装置を細工できる立場にある全員を強制的に拘束し、取り調べた。


しかし、結果は……


「くそ!どういうことだ!更新装置も正常だったし、細工できる立場にある者も全く不審なところがない!」


ラフマニノフが憤った。


「完全にお手上げ状態だ。シナメルド様、申し訳ございませんでした!」


私は頭を下げ、謝罪した。


「わしの責任ではなかったのだから、お前たちには悪いが、ホッとしている」


「じゃあ、なんでいきなりたくさんの人がピアノを嫌いになったんだろう!」


謎は深まるばかりだった。


しかし、ひょんなことから事件は解決に向かう。


私とラフマのもとに一枚の投書が送られてきた。


そこには


「ピアノアレルギーをこれ以上、増やしたくなければ、エキスパートピアノを閉校しろ!」


と書かれていた。


最近、エキスパートピアノを強制的に退学された一人の生徒がいた。


「スクレル・バキージュ」


学校内でいじめを行った主犯格だ。


彼は注意してもいじめをやめなかったために、私が退学させたのだ。


彼は字が下手くそで、特徴的な筆跡をしていて、すぐに彼のだと分かった。


私はスクレル・バキージュに会った。


連絡先は在校時から変わってなかった。


「お前か?ピアノアレルギー事件の犯人は?」


「ああ、そうだよ!!!なんでわかった?」


「筆跡が下手な字で特徴的ですぐにお前だとわかったよ!」


「そうだよね。まあ、それはあなたの記憶力とひらめきを試した、わざとしたことだけどね!」


なんとあっさりと白状した。


「どうやってみんなをピアノアレルギーにしたんだ?どういう手段で?」


「簡単だよ!学校にあるひとつのピアノに呪いをかけたんだ。そのピアノを弾くだけで、呪いがかかるんだよ!」


「呪い?どうやったらそんなもの生み出せるんだ?」


「教えてやってもいいけど条件がある。エキスパートピアノを閉校することだ!これ以上、ピアノを嫌いになる未来ある人たちを増やしたくないならね!」


「おい!お前!なぜ、そんなひどいことをするんだ?俺たちがどれだけピアノの発展と貢献に魂をかけているかわかっているくせに!!!」


ラフマが叫んだ!


「どうする?ピアノの呪いをかけた方法を教えてやるから、エキスパートピアノを閉校しな!閉校してくれたら、もう、呪いはかけない。お前らの大好きなピアノという生きがいを奪い取ってやるよ!閉校しないなら、今度は、さらにたくさんの人たちに呪いをかけてやるよ!」


「呪い?本当にそんなものがあるはずがない!私はだまされないよ!」


私はそういって笑顔を見せた。


「なに?」


「本当のことを言ったらどうだ?実はもう調査は済んでいるんだ!」


「なんのことだ?」


「ショパン!どういうことだ?」


ラフマが不思議そうな顔してる。


「スクレル・バキージュ!お前はエキスパートピアノを退学した100人全員をすでに初めから買収していたんだよな!その100人を入学前からな。そして、買収した彼らをエキスパートピアノに入学させて、いきなりピアノの音が嫌いになったからって嘘の理由を故意に作り、退学させた。すべて、お前の演出だったんだ。その理由は、エキスパートピアノの評判を悪くして、潰すためだったんだろ?」


「そうか。わかっていたのか。そうだよ!俺様はピアノが下手だった。才能がなかった。だから、お前ら天才たちが憎いんだよ!だから、そんな天才たちの学校なんて消えてなくなってしまってほしかったんだよ!!!」


「バキージュ!!!」


ラフマが彼を思い切り殴って、スクレル・バキージュは転倒した。


「お前!ただの逆恨みじゃないか!!!最低だな!!!」


ラフマは発狂した。


「ラフマ!落ち着けよ!もう、バキージュの好きなようにはならない!!!」


「なんだと?」


バキージュは動揺の表情を見せた。


「エキスパートピアノは潰れない!100人も買収できたのは、その100人は全員、バキージュの部下だったからだ!だから、音楽的素養のない素人ばかり100人がいきなり入学してきた理由が今、やっとわかったんだよ。エキスパートピアノはピアノを愛する人ならできるかぎり誰でも入学を許している、始まって3か月の学校だからね。でも、それがうまく利用されたんだよ!それに、生命データ更新プログラムをした直前にピアノが嫌いになったように見せかけて、プロブラム自体に原因があるように仕向けたのもわかっている」


「そうか、バレていたのか。そこまでバレていたなら、もうしょうがない!」


「でも、法には触れてないから、逮捕させることはできない!ただの嫌がらせだからね」


「そうか、ではどうするんだ?ショパン?この大バカ者は!」


「これからエキスパートピアノに入学してくる全員が、バキージュの部下じゃないかって調べたり、証明することは至難の業だ。それに、エキスパートピアノの評判はこのままでは落ちまくる一方で、大変なことになる!」


「そうだよ!俺様は法には触れてないよ。ただの嫌がらせだからね。厳重注意くらいで済みそうだ!ハハハ!」


「だから、私は今から、こいつを霊界から強制追放させることにする!」


「なんだと?そんなことできるわけないだろ?これからも嫌がらせしてやるからな!」


「いや、それは無理だ!スクレル・バキージュ!」


いきなりドアから出てきたのは、シナメルド様だった。


「これから君は火星に強制追放し、二度とこの地球圏霊界に足を踏み入れてはならない!」


「何様だお前!そんな法律どこにあるんだ?お前が王様じゃあるまいし!!!」


「私は霊界最高責任者のシナメルドという者だ。法律は私が決める。たった今、私がこの嫌がらせ防止条例を施行する!」


シナメルド様はスクレル・バキージュに新しい法律が書いた紙を見せた。


「シナメルド様。いらしていたんですか?聞いていたんですか?」


ラフマが驚いた様子を見せた。


「当たり前だ!わしはいつまでたってもこの霊界の責任者だからな!お前たちが心配だったのだ」


こうして、スクレル・バキージュとその部下100人たちは火星へと強制追放された。


「ショパン!お前、いつの間にスクレル・バキージュの調査を済ませていたんだ?」


ラフマが私に質問してきた。


「それは秘密だよ!君のご想像にお任せするよ!私だってピアノを守るためならなんだってやるさ!!!」


「頼もしくなったな!ショパン!!!」


こうして、ピアノ嫌悪事件は解決した。79


ショパンとラフマニノフは、とある古城を訪れていた。


地球圏霊界の最高責任者「シナメルド」が、来客食事パーティーで


この二人にピアノを演奏してもらえるように頼んだのだ。さすがにこれだけの大物の頼みを相手に断ることはしなかった。


「今回のギャラは1億ヘブンだから、演奏時間の長さによって、細かく山分けの値段を計算してほうがいいな!」


「ラフマ!細かいね。そういうところ!めんどくさいよ!」


「少しでも頭を使う習慣を身につけろよ!ピアノ曲だけ作曲の天才のショパンよ!」


「だけ?だけとはなんだ!これでもピアノ曲ならだれにも負けないからね!ラフマにだって!」


「俺はピアニストとして霊界でも最優秀だからな。ショパンの最優秀のピアノ曲を最優秀のピアノ演奏家が弾く!それはまさしく俺らバディらしいよな!素晴らしい関係だ!」


古城は湖に囲まれていて、船で行くしかなかった。


今、二人は船の上で会話しているのだった。


「それより、シナメルド様も太っ腹だよな。わざわざ2時間のピアノ演奏で1億もくれるなんて!」


「だから断らなかったんでしょ?今日、ラフマは恋人のバイオレットとデートの約束していたけど、予定を変更したくらいだからね!」


「これから金が要る。俺らの望むピアノ音楽学校設立のためにはな。バイオレットはかなりガッカリしていたが、今日のギャラでペンダントでも買ってやるから、我慢してもらうしかない!」


「……」


ショパンは微妙な表情でラフマニノフを見た。


船を自力で漕ぐこと15分。


古城の玄関へと到着した二人に待ち構えていたのは、たくさんのシナメルドのお客様たちであった。


「シナメルドに言われて、僕らの招待がバレないように、帽子とサングラスとマスクなんてね!」


「ワクワクするよ!客たちの反応が。今日はサプライズのピアノ演奏だからな!」


しかし、予定外のことが起こる。


「ん?あれはバイオレットじゃないか!なんだ、あいつもここに呼ばれていたのか!まずいな!顔を合わせるのが気まずい!」


「むしろ、ラフマがバイオレットを後ろから抱きしめてやればいいじゃん!」


「バカを言うな!正体が周りの客にバレてしまうじゃないか!」


バイオレットに背中を向けながら、シナメルドのいる奥の部屋へと二人はそそくさと移動した。


地球圏霊界の最高責任者「シナメルド」に3回目の対面となった。


「シナメルド様。ラフマニノフです。今日はお招きいただきありがとうございました!2時間のピアノ演奏。曲目は以下のとおりにいたしました。よろしいですか?」


「ラフマニノフよ。今日はお前に謝っておきたいことがある。実は、お前の恋人のバイオレットという若い女性がこの会場に来ているんだ!彼女はお前とデートを1年前から楽しみに待っていたらしい。しかし、お前がいきなりデートの約束を破ったから、ひどく落胆した。その話をショパンから聞いたんだ。だから、今日のピアノ演奏は中止だ。ギャラは払うから、バイオレットとデートに行ってやってくれ!」


「なに、ショパン?どういうこと……」


「ラフマ!ごめん!どうしてもバイオレットに同情心が芽生えたんだ。彼女、ラフマとデートする時のサプライズプレゼントに給料1年分の指輪をローンで買ったらしいんだ!」


「ショパン!それ本当か?俺に仕事より恋人を大事にしろというのか?」


「ラフマ。この際、いいタイミングだから言わせてもらうけれど、仕事も大事だけど、仕事よりも人間関係を大事にするべきだよ!幸せを与えてくれるのは、仕事じゃない、金でもない。人間なんだから!」


「クソ!クソ!クソ!今までなんで俺は気づかなかったんだ!!!!」


ラフマニノフはその場から勢いよくダッシュで立ち去った。


そして、バイオレットの姿を見つけるや否や、彼女の目の前で立ち止まり、帽子、サングラス、マスクを外した。


「バイオレットよ。俺だ!ごめん。デートの誘いを断ったりして!仕事優先の俺は間違っていたよ!」


「ラフマニノフ様???なぜ!なぜここに?」


「俺に愛情のビンタを一発おみまいしてくれ!」


「そんなことできないわ!」


「いいからしろ!」


「ラフマニノフ様……」


「やれー!」


パチン!


バイオレットからラフマニノフに向けて放たれた愛情と憎しみのビンタは会場中に響いた。


「そうよ!そうよ!私より大事な仕事なんてないでしょ!もっと早く気づきなさいよ!」


バイオレットは涙を流して、ラフマニノフに叫んだ。


「今からデートに行こう!仕事はキャンセルしたから!」


「本当に?ありがとう!ラフマニノフ様!!嬉しいわ!」


ラフマニノフはバイオレットを抱きしめると、お姫様抱っこして、船で夜の闇の中へと消えていった。


ショパンはシナメルドに礼を言った。


「シナメルド様。大事なことを相棒のラフマに教えてくれてありがとうございました!」


「ショパンはラフマニノフに誠実でいてほしいんだよな!その考えには共感するよ!」


「ギャラのほうは、私たちは辞退いたします。何もピアノ演奏すらしてないで、ギャラを受け取るのは嫌なんです!」


「ラフマニノフには払うからと言ってしまったから、払わせてくれ!」


「いや、ラフマは仕事しないで報酬を受け取るような不義理は大嫌いです。私たちにとっては大損ですが、自分たちが一番大事にしたいことは、なにより、筋を通し、曲がったことはしないということなのです!ラフマも絶対にギャラは受け取らないと思います!」


「二人とも、かっこいいな!また、なにかあったら私に相談してくれ!」


「喜んで!シナメルド様!」


80


ショパンとラフマニノフがダブル校長を務める「エキスパートピアノ音楽学校」は入学式を迎えていた。


120名の新入生たちが式典会場に集まっていた。


「これより校長先生からの挨拶です」


舞台の袖から勢いよく逆立ちしながら現れたのはラフマニノフだった。


マイクの前に立つと一呼吸おいてものすごい大声で挨拶を始めた。


「新入生の皆様!我がエキスパートピアノにご入学おめでとうございます。私がなぜ逆立ちしながら登場したかというと、皆様方には変わっている、今までにない、斬新さを最大限にこだわってほしいからでございます。逆立ちしながら登場する校長先生なんて斬新すぎると自負しています」


ラフマニノフが独特の挨拶をし終わった。


「つづきまして、もうひとりの校長先生からの挨拶です」


司会がその言葉を発した瞬間に、ピアノの音が会場に流れ始めた。


これはショパンの舟歌だとピアノ好きの新入生たちはほとんどが理解した。


壇上の袖からグランドピアノがエスカレーターのように流れてくる。


そこにはひとりの男が。


どうやらこの男が舟歌を弾いていたようだ。


その男は舟歌を弾き終えると、先ほど、ラフマニノフが挨拶したマイクの前に立った。


「みなさん!私がこのエキスパートピアノのショパンです!ご入学おめでとう。私が舟歌を弾きながら登場したように、『意外性』を何より大事にしてください。それが生命体の何よりの魅力の一つになるでしょう」


「ラフマー!!!」


ショパンはラフマニノフを呼んだ。


そして、二人は声を合わせながら


「私たちのことを超える音楽家を目指してください!憧れるのをやめ、私たちのレベルが当たり前なんだ!と頭の中をブランドチェンジしてください!憧れるのを辞めなければ、私たちを超えることはできません!」


とマイクの前で叫んだ。


二人は固い握手をして袖に退場した。


新入生120名たちはたくさんの拍手を送った。


そのあと、映画館のような巨大なスクリーンが登場し、30分ほどの映像が流れた。


「天才音楽家『ショパン&ラフマニノフ』を凌駕するための学校。それがエキスパートピアノ!」


「ピアノの魅力を知るために、まずはピアノの音色を大好きになること」


「なぜ、ショパンとラフマニノフがバディを組み、ピアノの発展と貢献に尽力するか。それは……」


映像を見終えたあとは、ショパンとラフマニノフと直接、握手できる「握手会」が行われた。


ショパンとラフマニノフに一人につき10秒ほど握手し、会話できる。


壇上にショパンとラフマニノフが横にならび、新入生120名が列をなして、握手していく。


なかにはわざと壇上で転び、ショパンとラフマニノフに手を貸してもらうことで、握手する時間を増やす知能犯もいたが、ショパンたちはそのことを大いに褒めて、嬉しがって称賛した。


そこまでしてまで握手する時間を増やしたい。私たちと触れ合っていたいという積極的で願望が強い。


「みんなもこのわざと転んだ者のように願望を強く持ち、創意工夫していくことだ!」


とショパンとラフマニノフはどんなことも無駄にはならないことを新入生に教えていた。


入学式が終わった後の校長室にて。


「私たちが現れたときにどちらが生徒たちの歓声が大きいかを競うゲームだが、ショパンのほうが3倍、私より生徒たちの声が大きかったな!!!ショパン!俺の負けだ!」


「ラフマ!それは当然だよ!僕のほうが人気も実力も魅力もラフマより優っているからね!」


「ショパン!俺はいつかお前を超えて見せるからな!成功者として!人間的魅力で!」


「ラフマ!楽しみにしているよ!」


「おう!これから必ずショパンを超える!成功の度合いでな!知名度や資産などでもな。音楽の才能でも、あきらめてないからな!ショパンはピアノ曲を生み出す最大最高の天才だ。だが、オーケストレーションとピアノの演奏の実力では俺のほうが上だ。必ずショパンを超える!」


「ピアノ曲以外でラフマは僕より勝っているところがたくさんあるから、負けているとはいえないけどね!」


「ショパンに会えて本当によかったよ」


「ラフマに会えて本当によかった!!」


「今までたくさんのことがあったね」


「なあ、ショパン!! これからも様々な冒険が俺達を待っているよな!!」


「ワクワクするね」


「ショパンと一緒ならどんな困難も余裕で超えていけるさ」


「ラフマこそ、僕から離れるなよ??」


「当たり前だ!! 俺達は宇宙最高のバディだぞ??」


「これからもヨロシク!! ラフマニノフ!!」


「ああ、ヨロシクな!! ショパン!!」




 二人は固い握手をして、互いの絆を確かめた。


 この二人なら乗り越えられない壁はない。


 どんな時も協力し合い、助け合い、思い合い、


 夢を叶えてゆくだろう。




 死という悲しみの果てに何が待ってる?


 ショパンとラフマニノフが霊界であなたを待ってる。



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