まとめ♯8.5
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ラフマニノフ、ショパン、パオロは宇宙の神「ミヤザワトモヒデ」の神殿に来ていた。
ミヤワザトモヒデ「お前たちか。何の用だ??」
パオロ「なぜ、バイオレットを不幸にするんだ??バイオレットはラフマニノフと一緒にいることを望んでいるのに!バイオレットはどこだ?バイオレットを自由にしてくれ!頼む!!」
パオロはプライドを捨てて、土下座した。
相手は宇宙の神。
逆らったらどうなるか分からない。
ラフマニノフ「トモヒデ様。バイオレットを返してくれ」
ショパン「頼むよ!僕からのお願いだ!!!」
ミヤザワトモヒデ「バイオレット、こっちにおいで」
バイオレットが現れた!!!
バイオレット「ラフマニノフ先生!!!お兄さん!!!」
ミヤザワトモヒデ「音楽学校エキスパートピアノは閉鎖することになる。バイオレットを返してほしいならな!!!!ハハハハハ!お前にその覚悟はあるか?ラフマニノフ!!!」
ショパン「そんなのあんまりです!!!私たちが何か悪いことを⋯罪でも犯したでしょうか?私たちの唯一の生きがいを奪おうとするなんて酷すぎます。どうか、考え直していただけないでしょうか?」
パオロ「あなたのような偉い方がなぜ、こんなことするのか、全くわかりません!」
ミヤザワトモヒデ「ラフマニノフよ。バイオレットとエキスパートピアノならどちらが大事だ?正直に答えよ!!!」
ラフマニノフ「それは......」
ミヤザワトモヒデ「正直に答えなければ、バイオレットはやれんな」
ラフマニノフ「そ、そ、それは、、エキスパートピアノだ。正直、ショパンとエキスパートピアノを造りあげ、俺たちの夢を実現させることのほうが、バイオレットといるより大事だ。すまん。バイオレット。だが、お前だって大事だ!!!だが、ショパンとお前、どちらが大事といわれたら、ショパンの方が大事だ!!!だから、俺はバイオレットと失恋を引き換えに、音楽学校の存続を選んだんだ!!!ゴメン!!!!!!」
バイオレット「正直に言ってくれてうれしいわ!!!!実は私はラフマニノフ先生よりミヤザワトモヒデ様のほうが好きになったのよ!あなたより力があるから。宇宙の神だしね。ミヤザワトモヒデ様と結婚式したいと心から思っていたの。ラフマニノフ先生より、ミヤザワトモヒデ様のほうが大事よ!!!だから、私たちはお互い、本当に一番大事な相手というわけではなかったみたいね。ただ、ミヤザワトモヒデ様に捕まったふりして、ラフマニノフ先生がどうするか試したかったの。正直、来てくれて嬉しかったわ。あなたはショパンと音楽学校が一番大事なのよね。私はどんなに頑張ってもラフマニノフ先生の一番にはなれない。一番になれないなら、一緒にいたくないと思ったのよ!!!!あなたはショパンがいるじゃない!!!それで十分でしょ?」
パオロ「バイオレット?」
バイオレット「私はミヤザワトモヒデ様を選んだの!!!玉の輿よ!!!彼はラフマニノフ先生とは比べ物にならないくらい偉大なのよ」
ラフマニノフ「それがお前の本音なのか?」
バイオレット「そうよ⋯⋯」
ラフマニノフはいきなり涙を流し始めた。
ラフマニノフ「そうか、わかった。お前と一緒にいた日々は何にも代えられない奇跡だった。永遠に忘れないからな!!!一緒になりたかったよ!でも、俺にはショパンとエキスパートピアノがある。それらを手放すことはできない。この涙はお前への愛の証だ!!!」
バイオレット「あなたがショパンより私を一番に選んでくれたならね。一緒になっていたかもしれないわ。でも、それは叶わぬ夢なのよ。お互い、もう、夢の中にいるのはやめましょう私は宇宙の神を選んだんだから!!!」
ラフマニノフ「両方、選べたらどんなによかったか。でも、それは許されないみたいだな」
ラフマニノフは静かに泣いた!!!
3人は静かにミヤザワトモヒデの神殿を去った。
バイオレット「これでいいのよね?? トモヒデ様。本当にこれで。ショパンとラフマニノフにしっかり協力してくれるのよね??エキスパートピアノを潰したりしないわよね?」
ミヤザワトモヒデ「ああ。バイオレット。お前が私と一緒にいるかぎり、エキスパートピアノは安泰だ。しかも、ショパンとラフマニノフの後ろ盾になってやるから安心しろ。ハハハハハハハ」
ミヤザワトモビデはバイオレットをラフマニノフから横取りした。
自分がバイオレットに惚れ抜いてしまったのだ。
一方的な愛は時に人を暴走させる。
宇宙の神も例外ではないのだ。
バイオレットはショパンとラフマニノフのために、ミヤザワトモヒデと過ごす道を選んだ。
本当はバイオレットはラフマニノフを一番に愛していた。
しかし、それをミヤザワトモヒデに言えば、確実にラフマニノフを潰しにかかる。
ラフマニノフの安全のためには仕方なかったのだ。
でもよかった。
ラフマニノフが「バイオレット」を一番大事だと言わなくて。
言っていたら、もっとバイオレットは悩んだはずだ。
ミヤザワトモヒデの力があれば、ラフマニノフも生きやすくなる。
もっと、幸せになると思う。
すべてはラフマニノフたちの幸せのために!!!
苦渋の決断だった。
バイオレットは今にもラフマニノフの胸に飛び込みたかった。
ラフマニノフに抱きしめられたかった。
でも、耐えた。
ショパン「ラフマ、、、なんで??なんでバイオレットがー番大事だと言わなかったんだ??君は僕とエキスパートピアノを一番大事だといった。バイオレットよりも。それは、本心か?」
ラフマニノフ「本心だ!!!ショパンと離れる方が辛いよ。バイオレット以上にな。俺は正直に生きると決めたんだ!!!キレイゴトは無しだ。でも、バイオレットが心を変え、俺より好きな人を見つけたらしく、よかったよ。ミヤザワトモヒデのほうを選んだんだな。あいつは。もし、まだ、俺に惚れていたら、俺はどうするか分からなかった。悩んだはずだ」
パオロ「バカヤロー!!!!」
パオロはラフマニノフを思いきり殴った。。
ラフマニノフ「何すんだ!!」
パオロ「バイオレットは今でもお前を本気で愛してんだって、、なんで気づかねえんだ!!!!」
ショパン「パオロ、、ラフマニノフに罪はないよ!!」
パオロ「なんで、、バイオレットを一番だって言わなかったんだ!!」
パオロは涙を流して崩れ落ちた!!
ラフマニノフはバイオレットと違い、本音をさらけ出した。
それがラフマニノフなのだ。
バイオレットは心の中で、ラフマニノフを想いながら、これからも生きていくだろう。
ラフマニノフの一番になりたいと思いながら、叶わない現実は残酷だった。
以前のバイオレットなら「これからラフマニノフ先生の一番になる。必ず、心変わりさせる!!!真剣に接すれば、一番になれるかもしれない!!」と希望を持ったはずだ。
だが、ミヤザワトモヒデに惚れられ、どうしようもなくなった。
彼は強引だった。攻撃的だった。
ラフマニノフ先生が危ない。
ラフマニノフ先生の安全のためには、ミヤザワトモヒデのそばにいるしかない。
そう思ってのことだった。
バイオレットにとっては、ラフマニノフが一番。
ラフマニノフにとっては、ショパンとエキスパートピアノ音楽学校が一番。
ラフマニノフとバイオレットは、お互い一番同士にはなれなかった。
恋とは喜びもあれば悲しみもある。
ラフマニノフはバイオレットを忘れるかのように、さらに、ショパンとエキスパートピアノに力を注ぐことを胸に誓った。
ラフマニノフ「俺たちは儚い短い夢の中にいたんだ.......」
57
海のレストラン「デリシャン」で、ジンサは今日も接客中だった。
ショパンとラフマニノフも来店していた。
ショパン「ラフマにチャーハン対決で負けてから、少しは反省して、料理うまくなったか?? ジンサ?」
ジンサ「あの悔しさから、オレは料理研究にかける時間を2倍に増やし、精進してきたさ」
ラフマニノフ「2倍に増やせたってことは、、今まで料理に全力じゃなかったってことだ!! まだまだ甘いな!!」
ジンサ「なんだと!!」
ラフマニノフ「じゃあ、お前の作った一番の自信作料理を出してくれ。一番お気に入りといえる極上の一品をな」
ジンサ「だったらこれだ!!!」
ジンサはあらかじめ、ショパンとラフマニノフが来店してくるのにあたって、2人に食わせようと用意していたあるラーメンを出した。
ジンサ「チーズたっぷりガーリックラーメンだ!!!」
ラフマニノフ「どれどれ、では食べてみよう!!」
ラフマニノフとショパンはジンサの出したラーメンを啜った。
ラフマニノフ「む?これは?」
ジンサ「うめえだろ?? 俺が今まで作ってきた料理の中でも最高峰の美味しさだと自負してるぜ」
ショパン「にんにくがしつこいな。肉体ペンダントしていたら、吐いてしまうレベルだよ??」
ジンサ「ここは肉体が必要ない霊界だから、そんなの関係ねえだろ?霊界だからこそな。これだけしつこい病みつきになるラーメンは他にないだろ?」
ラフマニノフ「悪いが俺の完敗だ!!」
ジンサ「そうか、やっとオレを認めてくれるのか??」
ラフマニノフ「お前の料理の不器用さには完敗だという意味だ!」
ジンサ「なんだと?? テメー!さすがに冗談だろ?美味
しいはずだ!このラーメンはオレが3か月かけて、研究に研究を重ね、試行錯誤して作った自慢の一品なんだよ!いい加減認めろよ!負けず嫌いが!!!」
ラフマニノフ「心無いこというが、、美味しくないぞ?ほかの客たちに食わせてみろ!」
ジンサ「食わせたぜ。みんなうまいって食ってくれたぜ。こんなにおいしいのは生まれてはじめてだって褒めてくれたやつだって何人もいたんだ!お前は嘘をついている!」
ラフマニノフ「それは、お世辞だろ。不機嫌になるお前が怖いから社交辞令で流したのさ」
ショパン「ジンサ君は舌が狂ってきてしまっているようだ。最近、客が減ってきていないかい?」
ジンサ「確かに今までの3分の1にまで減ったな。でも、それはここの近くにできた『ラフコーヒー』のせいだろ。あそこはコーヒーがすごく評判らしいんだ。俺は客を取られたと思い、悔しくて、行ったことはないぜ」
ラフマニノフ「あそこは俺の店だ」
ジンサ「ラフマニノフの店だったのか?お前の店が、オレの『デリシャン』の客を奪っていたのか」
ショパン「以前、宇宙船で食べたハンバーグもひどい味だったよ。みんな美味しいって嘘ついていたんだ!!!ゴメン、でも、正直に話さないといけないとは思っていたんだ!!!ジンサは味覚がおかしいと思う!!!きっと、ラフマに負けた時のをきっかけに、料理研究しすぎて、裏目に出てしまったのかもしれない!!!」
ジンサ「嘘だ!!俺の舌がおかしいわけない!!」
ラフマニノフ「料理は心より味が命だ」
ジンサ「なんだそれは!!」
ジンサはショックのあまり、店を早退してしまった。
ショパン「ねえ、ラフマ。これでいいんだよね?ジンサの料理はさらに進化していた。とてもうまくなっていた!!!でも、まずいと嘘をついた!!!ジンサを更に進化させ、料理の腕を上げてもらうために、わざと試行錯誤させるように仕向ける作戦。これでいいんだよね?」
ラフマニノフ「そうだ。ジンサは霊界一のコックになってもらわないとな。まだまだ道は遠い。まだまだ満足させてはダメだからな。嘘をついて、あいつがさらに料理の腕を上げさせようとするのはすべてジンサのためだ!!!」
ショパン「次回はどれだけ進化するのか楽しみだね。あの、前回のチャーハンで細工しなければ、今回のジンサに出された『チーズたっぷりガーリックラーメン』のように美味く進化しなかったと思うとね」
ラフマニノフ「いつの日か、極限まで美味くなったときに、心から褒めてやりたいな!あいつを!!!そして、ジンサの料理を我がエキスパートピアノ音楽学校の食堂に出したいと思っている」
58
ショパンとラフマニノフは、
「ピアノ運送・設置・生演奏〜ショパンとラフマニノフがいたします」の仕事もしていた。
その名の通り、天下の大音楽家の2人が、ピアノを購入してくれた客へ、ピアノを運び、設置までして、生演奏までしてくれるという夢のようなサービスなのだ。
ショパンとラフマニノフはピアノの開発にも力を入れてきた。
新しいピアノの開発。
そして、「ショパン&ラフマニノフ」という名のピアノが出来上がった。
それを買ってくれた人には、2人が前述したサービスをするというものだ。
今日も予約があり、2人は音楽学校エキスパートピアノの仕事が終わってから、この「ピアノ運送・設置・演奏」の仕事をしていた。
ショパン「今日のお客様は子供だそうだよ。僕らが来たら、泣いて喜ぶんじゃないかな」
ラフマニノフ「俺らに会った時のお客様の反応が毎回、楽しみだよな。前回のお客様は、俺に抱きついてきたからな。俺は本当にモテるよな。女や男からも!!!!!!!!!!」
今回のお客様の住所に着いた。
そこは、質素な平屋の家だった。
ショパン「こんにちはー。ショパン&ラフマニノフのものですが。ピアノを届けに参りました!!」
返事がない。
ラフマニノフ「入りますよ!失礼します!!!」
すると、いきなり逆立ちしながら、ピンクの服とジーパンを着た眼鏡女が迫ってきた!
「よっ!!!ラフマニノフ!ショパン!久しぶりだな!!!」
ショパン「角田アキコ?お前だったのか?ピアノを買ったのは!!!」
角田アキコ「あたいもピアノの魅力にすっかりと取りつかれたのさ!さあ、早く中に運んでくれや」
ラフマニノフ「相変わらず、不気味な女だな。逆立ちした男勝りの眼鏡女よ!」
角田アキコはある部屋のドアを開けた。
角田アキコ「おーい、お待ちかねのショパンとラフマニノフのお出ましだぞ。みんな直ちに集合!!」
角田アキコの一声で、20人くらいの子供たちが集まってきた。
ショパン「こんなに子供たちを集めて、何がしたいんだ??」
角田アキコ「人のために!何かしてやりたいと思ったんだよ!!!ショパンとラフマニノフに会いたいという奴らを見つけて、その願いを叶えてやることにしたんだよ!!!あたいは地上世界で2代目世界の王もしているからな。民のために。霊界も例外じゃないんだよ!幽体離脱を覚えてからは、霊界も行き来できるようになったけど、貧しい民のために生きたいんだ!!」
ラフマニノフ「お前、良いとこあるじゃないか!!!ショパン。とりあえず、ピアノを運ぶぞ!!!」
ピアノを角田アキコの指示した場所に設置した。
日光が窓から差しこみ、ピアノに当たるように。
角田アキコ「600万生命ポイントだったな。ローンで悪いな。一括で払いたかったが、そんな金は無い!」
ショパン「角田アキコさん。クレジットカードを貸してください!」
角田アキコ「毎月、8万生命ポイントまでなら払える。それで何とかしてくれ!!!あたいは、最も弱い者のために生きたいんだ!こいつらは、ピアノが買えない貧しい民たちなんだ!だから、あたいがピアノを買ってあげたかったんだ!!」
ショパンとラフマニノフは何やら二人で話し合いをした。
ラフマニノフ「金はいらない。今回だけは特別だ!!」
角田アキコ「なぜ?さすがに無料でもらうわけにはいかねえよ!払うよ!払わせてくれ!」
ショパン「角田アキコさんのカードに1000万生命ポイントを入れました。これは、私たちからのあなたへの報酬です!受け取ってください!」
角田アキコ「どういうことだ?あ?なんでそうなる?」
ラフマニノフ「お前の人のために行動するという志に感動したからだ。俺たちが一番大事にしたいことは、まさにお前がやっていることなんだ!ありがとう。アキコ。お前はいい奴だな!!!」
ショパン「あなたの気持ちに心動かされました。民のために!!!とは、、いい言葉ですね」
角田アキコ「お前ら、泣かせてくれるじゃねえか!!!!ちっくしょう!!! うわああああああああ!!」
角田アキコは気持ち悪い泣き方をして喜んだ。。
子供たちがショパンとラフマニノフをさっきからずっと興味深く観察していた。
角田アキコ「みんな。ショパンとラフマニノフだぞ!抱き着いてやれ!みんな!!!あの偉大な2人が来てくれたんだぞ!」
子供たち「本物〜?」
ラフマニノフ「ああ、本物だ!!!」
ショパン「本物さ!!!」
子供たち「わああああああ!!」
ある猫のような尻尾を生やした一人の金髪のロングヘアーの少女がピアノに座った。
ショパン「君は猫の化身か何かかい??」
「私は角田エリス。。ネコカフェで誕生したの!! あるシンガーソングライターによってね」
ショパン「何か弾いてみたまえ」
角田エリスは髪の毛をゴムで縛り、ピアノを弾き始めた。
ショパン「なんだ!! これは!! ラフマ!! 来て!! 凄い子がいるよ!!」
「角田アキコピアノ部屋」
と名付けられた場所で、いつの日か思いもがけない天才が登場することになる。
ショパンとラフマニノフが待ちに待った本物の天才が。
ショパンもラフマニノフも角田アキコもそれはまだ知る由もなかった!!!
59
ショパンはピアニストのノブために「ノブコンサート」を主催者として開催した。
ノブに幽体離脱を教えたアゲハも来ていた。
ノブ「最高の音楽家であるショパンに招待してもらい、私はもう喜びで発狂しそうです」
アゲハ「さっきまで発狂していたじゃない。体を大きく動かして、飛び跳ねていたじゃない」
ショパン「ノブさん。地上世界で僕たちの作品を演奏してくれて、どうもありがとう」
ラフマニノフ「演奏はまだまだ未熟だが、演奏する喜びを誰よりも顔に表して、ピアノを楽しんでいる!それは、評価するぞ!」
コンサートではノブの写真入りポスターが貼りだされた。
今回の主役はノブだった。
ショパンはノブにご褒美を与えたのである。
いつも、ピアノを愛し、演奏してくれている。
こんなにピアノが好きな人は珍しい。
ショパンはノブがピアノのみを生きる糧としていることを気に入っていた。
ノブは最初に「英雄ポロネーズ」を弾いた。
ノブにとって思い入れがある曲だ。
ピアノを始めるきっかけになった曲。
それの感謝の思いを演奏にぶつけた。
ノブは涙を流しながら演奏している。
目の前にショパンがいる。
あの偉大なショパンが自分の演奏を聞いてくれている。
その事実に、打ちひしがれ、全身が感動で震えた。
ショパン「ノブ君は本当に私の英雄ポロネーズが好きだな。ここまで好きなのか。彼にとって英雄ポロネーズが一番なんだな。私が霊界でたくさんポロネーズを作曲したから、それをいずれ、君に聞かせてやり、弾かせてやろう。演奏の仕方も作曲の仕方も教えてやりたい」
ラフマニノフ「ノブはすごいな。ショパンへの憧れの強さは半端じゃない。ショパンを超える天才になるかもしれないな!」
アゲハ「そんなことあり得ないわ。ピアノ曲の作曲に関しては、ショパンの足元にも及ばないからね。以前、ノブの作曲したピアノ曲を聞いてみたけれど、ショパンみたいな独創性のかけらもなかったわ。残念だけど、ショパンは一生超えられないと思うわ。ノブ本人はショパンを超えるピアノ曲が作曲できましたって豪語していたけどね」
ノブは次にショパンの「ピアノ協奏曲」を弾いた。
ノブはこの曲を弾くときも涙、涙、涙だった。
ショパン「僕が生前、20歳の時に作曲した、オーケストレーションの役割が縮小されている作品だね。我ながら、反省するよ。もっと、ラフマみたいにピアノ協奏曲も優れた傑作を書きたいな」
ラフマニノフ「もう、呪いは解けた。これからはたくさんオーケストレーションを上達して、オレと同じどころか、それ以上のピアノ協奏曲を生み出し、俺に相応しいライバルでいてくれ。今まで、ショパンがオーケストレーションが苦手だったのは、呪いのせいなのだから。自分を責めるなよ。オレを超えてくれ!そして、超えたら、オレがまた抜き返す!そうやって一緒に成長していこう!」
アゲハ「あんたたち、仲良すぎて、やばいわね。見てるこっちが恥ずかしくなってくるわ」
そうするうちに、ピアノ協奏曲1番を弾き終わったノブは、立ちあがり、マイクを持った。
ノブ「次の演奏曲は、死や虚無感、孤独、寂しさ、悲しみ、苦しみ、悲劇などを表現したかのような、死を連想させる曲です。僕は、この曲の虜になってしまいました。悲しい時に、この曲を弾くと、すごくメロディーに共感して、僕は泣いてしまうのです。こんな負の感情の全てを10分ちょっとでこれだけ表現し詰め込めるショパンは破格の大天才だと思います!ショパン!こんな素敵な曲をありがとう!」
ノブは後ろでラフマニノフと一緒に座っているショパンに振り返り、丁寧に頭を下げ、また椅子に座り、ピアノを弾き始めた。
「バラード4番」
ピアノ曲の最高峰である。
ノブはバラード4番の演奏中に泣き出した。
今度は号泣だ。
アゲハ「何よ、ノブ。泣きすぎにも程があるんじゃない?さっきから泣いてばかりね!」
ノブの弾いている場所の上の部分には大画面のスクリーンがあり、そこには演奏のたびに映像が映し出される。
英雄ポロネーズの時には、ある勇者が世界平和を実現させ、世界王になってゆく映像を。
ピアノ協奏曲1番の時には、ノブの今までの地上世界での人生の一部始終の映像を。
バラード4番の時には、あることが原因で亡くなった人への回想の映像を。
バラード4番を弾いているときは、今までしていたように顔をフリフリさせなかった。
今度はいつもと違く、顔が崩れて、ノブにとって人生で一番の号泣となった。
アゲハ「なによ。顔をフリフリさせて弾かないノブなんて初めて見たわ。珍しいわね」
それは、号泣して、演奏がミスらないように、必死に鍵盤を意識したせいで、顔をフリフリ揺らして演奏するクセがその時だけ隠れたのだ。
その次、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲2番」を演奏した。
ラフマニノフは自分の曲が演奏されるとは聞かされていなくて、困惑した。
ラフマニノフ「どういうことだ?今日はオールショパンプログラムのはずだが……なぜ、俺の曲を?」
ショパン「なぜだろうね」
ラフマニノフの2番を弾いているときは、スクリーンはショパンとラフマニノフの2人の仲良しの日常の映像しか流れなかった。
約30分間、ずっとショパンとラフマニノフしか登場しなかった。
2人が握手している場面や、海や空で日光浴しながら、作曲している場面や、イチゴジャムをショパンから取り上げているラフマニノフなどだ。
演奏が終わり、今日のショパンがプロデュースしたノブによる演奏会は終了した。
ノブ「ショパンさん!! こんな素晴らしい日がやってくるとは夢にも思いませんでした。ありがとうございました!!念願だったショパンさんとの連弾、革命のエチュードも演奏できて、ヤバい嬉しくて仕方ないです」
ショパン「それはよかった。君は本当に楽しそうにピアノを弾く。見ていて笑顔になれるくらい心からピアノを愛してくれていることが伝わります。喜んでくれて、何よりです」
ラフマニノフ「なぜ、今日は俺のコンチェルトも弾いたんだ?? ショパンオンリー演奏会じゃなかったのか??」
ノブ「ショパンさんにはラフマの代表曲のピアノ協奏曲も必ず弾いてあげてほしい。僕だけの曲じゃなくてね。僕とラフマは一心同体で、最高のバディだから、僕だけの曲しか演奏しなかったら、ラフマが悲しむからって言ってくれました」
アゲハ「そうだったの?? 本当にショパンとラフマニノフは仲良しね。あなたたち、ちょっと友情が行き過ぎじゃない?? 見ていて、ゾクゾクするわ」
ラフマニノフ「ショパン!ありがとう!お前の真心が嬉しい!!」
ショパン「当たり前だろ!ラフマ!!!君を悲しませることは絶対にさせない!」
ノブ「2人が今まで見たことがないくらい仲が良いのが、本当に僕も嬉しいです。見ていて、号泣するくらい」
アゲハ「もう、号泣はいいわ」
60
ショパンとラフマニノフはある自殺を決行した人の元へ来ていた。
その自殺した人は夢を見ていた。
夢の中にショパンとラフマニノフが現れたのだ。
ショパン「こんにちは」
「誰ですか??」
ラフマニノフ「彼は本物のショパンだし、俺は本物のラフマニノフだ。音楽家のショパンとラフマニノフだ!!知ってるか??」
「知ってます。あなた方の大ファンですから。でも、私は死んだはずです」
ショパン「何があったんですか??」
「辛かったんです。あまりにも。毎日退屈で、好きなことも見つからなくて、暇で、つまらなくて。毎日苦痛だったんです。だから……」
ショパン「悔しくないのですか??みんな人生という舞台を戦っているのに、自分は戦わずに、逃げて、自殺して、戦いから降りて、カッコ悪くて、気分悪くならないんですか??」
ラフマニノフ「みんなが人生を一生懸命生きているのに、自分だけ自殺して戦いから降りる。それは、悔しいとは思わないのか??」
「もう楽になりたかったんだよ。他人が生きてるとか関係ない。そんなことは眼中にはない。ただ、目の前の苦痛から逃れるためには、死ぬしかないと思ったんです。しかも、死後の世界なんて信じてなかったから、あるわけないから、死んだら、後悔すらしないと思い、死んでもいいと思いました。生きていたくないんです」
ショパン「死後の世界は存在するよ。それは今、私たちがこうして死後の世界からやってきて、君に会っていることで証明されたでしょう。死後も意識は存続するんです。自殺した人は、みんな後悔します。死後の世界があるなんて思わなかったから自殺してしまったと。今思えば、今も、戦っている生きている人たちを見ると、悔しいと。あなたは悔しくないんですか?みんなが戦っているのに。あなたは戦わないで、自
殺という手段で辛いことから逃げた。マラソンでいう途中リタイアは悔しいはずです。最期まで生き抜くというゴールした人をこれから嫌でも見ることになるでしょう。その時に、最期まで生き抜くということをしてみたかった。人生というマラソンをゴールして、喜びたかったという後悔に変わるときが来ます」
「やめてくれ!! 苦痛すぎたんです!!最後まで生き抜
く??気が狂います。生まれたくなかった。もう自殺は成功したし、これからは死後の世界で楽に暮らしたい」
ラフマニノフ「いや、あなたはまだ死んでないよ。自殺に失敗して、今、意識不明で、夢を見ている状態なんだよ。そして、私たちが会いに来た」
ショパン「ピアニストになる夢があるんだってね。でも、あきらめて、希望を失っていた。でも、最期まで生き抜こうよ。これから、君は人生というマラソンを最期まで走り切って、ゴールすることを目標にするんだ。私たちはピアノの音楽学校を死後の世界である霊界で経営している。君が来るのを楽しみにしている。でも、最期まで生き抜かないと、その学校には入れないよ。君が最期まで生き抜けば、最高級のピアノを私たちからプレゼントしてあげることを約束する。と
にかく、これから生きろ。最期まで。私たちと約束してくれ」
「自殺は成功しなかった??」
「ウワァーーーーー」
男は発狂した。
「またあの苦痛な日々に戻るなんて嫌だー。どうせ私が死んでも誰も困らないし。無意味だ。生きるなんて」
ショパン「最期まで生き抜いた人は、歓喜して霊界入りできる。でも、自殺した人は、後悔しながら霊界入りする。気分が悪いんだ。戦いを放棄して、みんなが一生懸命生きているのに、自分は何もせずに途中リタイアしたから、とても苦しむ。やっぱり、最期まで生き抜きたかったと思うものだ」
ラフマニノフ「戦っている姿、人生を頑張って一生懸命生きている姿は美しいし、感動的なんだよ。死は人生を一生懸命に生き抜いた人のご褒美だから。死は『お疲れ様。よく戦った』いう祝福の時なんだよ」
「あなた方はなぜ、私に会いに来たんです?? ショパンとラフマニノフが自殺未遂した私に会いに来るなんて変な話です」
ラフマニノフ「君を死なせないためさ。君が昔から憧れていたショパンとラフマニノフが、自殺せずに最期まで生き抜いて歓喜の霊界入りしてくれと頼んでいるんだから。意識が戻って、地上世界に戻ったら、最期まで生き抜いてくれ。最期まで生き抜いてくれたら、俺たちの経営する音楽学校に必ず入学させてやる!! だから、最期まで天寿を全うしてくれ」
ショパン「君には選択してもらいたい。人生最大の二択だ」
1つ目「自殺未遂したが意識を取り戻し、地上世界に戻り、最期まで生き抜くか」
2つ目「自殺を成功させ、地上世界で意識を戻らずに、死後の世界に今からそのまま行くか」
だ。
ラフマニノフ「このまま死後の世界に進みたいなら、それも可能だ。しかし、俺たちの音楽学校には入れない。俺たちが許可しないからな。俺たちと会うこともできないだろう」
ショパン「逆に今から地上世界に戻り、不可抗力で死ぬまで、最後の最期まで生を全うした場合は、死後の世界に来たら、僕達と好きなだけピアノを学べる。どっちを選ぶ??」
「そんな...…」
「絶対に地上世界にはもう戻りたくない。死後の世界にこのまま行きたい。もう、あんな辛い場所は死んでも嫌だ」
ショパン「あと10分以内に決めないと、君は本当に死んじゃうよ。そしたら、死後の世界には行けるけど、僕らとは永遠にお別れだ」
ラフマニノフ「実は死後の世界では、自殺した人は100年間の間、牢獄に入れられ、何もできず、じっとしていなくてはならないという罰があるんだ。言ってなかったな。禁固刑だ。自殺者は確実に地獄行きだ」
「そんな!! 現世で苦しみ抜いて自殺したのに、その後の霊界でも苦しむというのか??神様はなんでそんなシステムを作ったんだ?? 非情すぎる。意地悪すぎる!!」
ショパン「あと2分で本当に自殺成功しちゃう」
「あああああ、、分かった!!分かりました!!地上世
界に戻ります!!最後まで生き抜いて、またショパンとラフマニノフに再会します!」
ショパン「じゃあね。待っているよ。君が死んで霊界入りしたら、僕に会いに来てね。一緒にピアノを弾こう!」
ラフマニノフ「それでは、さようなら。また逢う日まで。忘れないでくれ。俺達との約束を。また死にたくなったら俺達のことを思い出してくれ。俺達はいつもお前のそばにいるから。たまに地上世界にお前の生活している姿を見に行くからな」
こうして、自殺した人は、また、現世に戻っていった。
そして、人生を最期まで生き抜くことを決意したのである。
「一人でも自殺した後悔により苦しむ人を救うために」
ショパンとラフマニノフは自殺した者は罰があると嘘をついた。
最期まで生き抜いて、歓喜の霊界入りを果たしてほしいという思いやりからだ。
最期まで生を全うした者はたくさんのご褒美が霊界の役所から与えられる。
すべては本人のため。
地上世界を生きている間は戦争だが、どうか耐え抜いてほしい。




