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中学3年生、終活はじめました

主人公、終活はじめます。

「中学3年生、終活はじめました」楽しんでいただけると嬉しいです。

学校のチャイムが鳴り、担任が教室に入ってくる。

今日は4月23日木曜日。人類滅亡まで、残り343日だ。

先生が教卓にプリントをおき、日直が号令をする。


「普通に教科書をやってもいいんですけど、それだとちょっとあれなので。今日は違うことをやります。」


そうはじめた先生は、黒板に大きく今日のテーマを書いていった。

ちょっと予想がついていたが、案の定の議題だ。


「はい、みなさん知っている通り、地球は一年後になくなります。まぁこのことはね、みなさん個人で調べてると思うのであんまり掘り下げませんけど、今日はこの残り一年のことを、みんなで考えてみようかなって思ってます。」


黒板に書かれた文字。「残り一年の過ごし方」。

教室の奥の方から、ため息のような声が聞こえる気がした。

前列に座る生徒にプリントが配られ、私も美鈴(みすず)ちゃんからプリントを受け取る。


プリントにはざっくりとした升目(ますめ)が書かれ、その上にはいかにもなことが書かれている。

教室中が「えぇ」「そんなこと言われてもさぁ」と(なげ)いた。


「はい今配ったプリントの目通してくださーい。ここに書いてあるもの、

『地球が滅ぶまでにやり遂げたいこと』『最期にやってみたいこと』『会いたい人・行きたい場所』

これをですね、埋めていってください。今日はこれだけでーす。」


周囲が呆れ顔を浮かべる中で、1人の生徒が手を挙げた。

教卓の目の前に座っている南風原(はえばる)さんだ。


「先生、これやってなんの意味があるんですか?うちらこれやってもどうせ死ぬじゃないっすか。やってもやらなくても同じだと思うんですけど。」


周囲の生徒が「そうだよね」と頷く。

先生は少し唸った後言った。


「そうですよね。先生自体よくわからない。みなさんと同じく、先生も同じ日に死にますから。みなさんがわからないように、私も正直分かりません。」


クラス中がざわめく。

わかんないものやらせんなよと多少思ったが、誰だってそうだろうと思った。

いきなり一年後に死にますと言われて、冷静でいられる人はごく少数だ。

先生はクラスを見回した後にこう続けた。


「でも、こうやって整理しておくと、3月31日が近づいた時に役立つと思ったんですよ。どうせ死ぬけどさ、最期は好きなことしたいじゃないですか。それに、自分の今までの人生をまとめる意味でも、やっといた方がいいかなって。まぁみなさんの人生なんで、やりたくなかったらやらなくてもいいです。やんない人は自習してください。でも他の人に迷惑かけないように。」


「はいはじめてください。」と先生が言った途端、教室は静寂に包まれた。

私は机に置かれたプリントを見つめ当惑した。


あんな綺麗に捲(まく)し立てられても、正直腑に落ちないところがあった。

言ってることは至極真っ当なのかもしれない。でも、この世に生まれてまだ14年しか経ってないのだ。死なんて意識したことない。だから先生の言ってることが直感的に理解できなかった。


「地球が滅ぶまでにやり遂げたいこと」

「最期にやってみたいこと」

「会いたい人・行きたい場所」


地球が滅ぶまでにやり遂げたいことと、最期にやってみたいことって何が違うんだろう。


やり遂げたいことは達成したいことで、やってみたいことは達成しなくても(かじ)ってみたいこと…を指すのだろうか。そしてこれは聞いた方がいいのだろうか。


私は真っ白な紙面を指で撫で、意味もなくペンを回す。

本当に何から考えたらいいんだかわからないのだ。「最期」とか、いざ漢字表記で表されると不自然に感じる。

その時、昔どこかで見た光景を思い出した。あれも「最期」関連だったっけ…?

黙考(もっこう)してる間にチャイムがなってしまったので、これは気が進んだ時に覗くことにした。



「結衣ちゃん、一緒に帰ろー。」


美鈴ちゃんが声をかけてくる。

しかし、今日はちょっと寄り道したいところができたので、「ごめん、今日はちょっと」と断った。

どうせ家に帰っても母の相手をするだけだ。こういうのを現実逃避というのだろうか。


私は通学路を離れ、立河市錦町に走る南口大通りを北上していく。

JR立河駅を通過し、(あけぼの)町に出る。

ペデストリアンデッキを渡っていくと、大型のショッピングセンターが見えてくる。服屋から飲食店まで入っている親しみのある施設で、幼いころはよくここの室内子供向け遊び場ではしゃいだものだ。


私はそのショッピングセンターに入り、エスカレーターで6階まで上がった。

そこには大規模な書店が入っている。店内をうろうろし、「実用」と書いてある棚から目的の本を探す。

そして、少し奥に進んだ本棚にその本は入っていた。


「エンディングノート」。

以前見た時に気になったのだが、主に相続や個人情報、葬儀のことが書かれているが、大体は死期の近い高齢者向けに作られたものだが、今日の道徳でこの本のことを思い出したのだ。


(必要になるのはあと数十年後だと思ってたけど、まさかこんなところで思い出すなんてな。)


正直これが役に立つのかわからない。遺される人などいないのだから、やる意味はないのかもしれない。

ただ、人生をまとめるという点では共通している。

もしかしたら、今日の道徳の授業の問も、終活をしたら答えられるようになるかもしれない。

なんとなくの思いつきだったが、どうせ1年後に死ぬのだ。少しだけやってみたくなった。


私はその本を手に取ると会計へと進んだ。

一つの暇つぶし感覚だ。でも、それと同時に、えもいわれぬ気持ちになっていた。

本来なら、中学生がこの本を手に取るのは異様なのだろう。だが、今は違う。


中学3年生だが、私は終活を始めることにした。







暑くなったり寒くなったりが激しくって、若干体調崩し気味です。氷室八弥です。(読み方:ひむろやや)

今回のお名前、題名と同じですね。

私も本屋さんに終活の本を調べに行った時、店員さんにギョッとされました。真空崩壊の予告がない今の時代、私がこの手の本を手に取ってたら、驚かれるのですね。

そうそう、最近春になったばっかりなのに北海道や東北で熊がよく出ていますね。

皆さんもお気をつけください!

ご意見・ご感想、お待ちしてますー

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