最期の午餐
最後のお給食です。
「最期の午餐」楽しんでいただけたら嬉しいです。
4時間目終礼のチャイムが校内に鳴り響く。
今日は3月11日木曜日。人類滅亡まで残り21日だ。
「よっしゃあ!給食ぅ!」
後ろに座る宇佐見さんが甲高い声を上げる。
三学期から彼女は学校をサボっていたが、今日はなぜか学校に来ている。
その理由は…
「宇佐美さん、聞いてなかったけどもしかして今日学校に来たのって、給食目当てだったり…」
「するする。人生最後の給食味わいにきた。」
そう、立河市立錦中学校は今日が最後の給食日だ。
なんと驚くことに、私たちは弥明後日で中学校を卒業してましまう。
給食当番の人が席を立ち、一階へと降りていく。
トラックで届いた給食を取りに行くのだ。
その間に私たちは椅子や机を動かし、食事のスタイルへと変えていく。
数分後、給食当番数名が大きな箱を抱えて教室に入ってくる。
中にはお弁当のような給食が入っており、一人一人がそれをとりにいくのだ。
小学校の時のように、配膳当番がいるわけではない。
「にしてもさ、今更ながらおかずが冷たいってあれだよね。」
苦笑いしながら給食を見つめるのは美鈴ちゃんだ。
「給食冷たいのは慣れたでしょ。もう三年立つんだもん。」
私は自分の給食を手に取り、別途でついてきた牛乳とデザートも机に置く。
宇佐美さんは自分の机に給食を置くと、明るい声で言った。
「まぁまぁ、そう暗くならないで。最後の給食なんだから楽しみましょー?」
まぁそうだねと席に着く。
給食の机の並べ方は決まっているのだが、最近は空席が増えた影響で誰も守っていない。
私は美鈴ちゃん、宇佐見さん、菊岡さん(美鈴ちゃんの斜め前)さんと机をくっつける。
美鈴ちゃんの前に阿部さんもいるのだが、ここ数日で蒸発したので仕方ないだろう。
日直の合図とともに、「いただきまぁす」という声が教室に響く。
私は少しづつ給食に手をつけていく。
寂しさが少しづつ湧いてきた気がした。
「いやぁ、寂しいな。」
「そうだよね。もう食べられないもんね。美味しかったよね。」
「いや…栄養バランスとれた食事って自分じゃ作れないから。」
「そっちかい!」
宇佐見さんがノリツッコミしてくる。
私にとっては本当に笑い事じゃない。家だとほとんど自炊なので、こういう食事は大変なのだ。
「あーもう卒業かぁ。あっという間だったね。」
「まだ卒業式してないけどね?」
卒業式は15日に予定されている。
みんなの保護者は来るのだろうな…と、冷たい妄想をした。
私の両親は、卒業式がいつかも知らないだろう。
最近母は妄想が激しく、会話不成立である。
今日だってなんだかおかしなことをぶつぶつ言っていた始末だ。
「あと21日でしょ?あー面倒だなぁ親の世話。」
私は机にもたれるように脱力する。
宇佐見さんが眉根を寄せる。
「そんなに大変なの?親御さんのお世話。」
「大変だよ。前までは寝てくれたんだけど、最近はカウントダウンのせいかずっと起きてるの。
ほとんど何も食べてくれないし…。
…やっぱり拘束具とか買っておかないと、学校行く時やばいかな?」
「拘束具はやばすぎでしょ。」
宇佐見さんは軽々しく言ってのけるが、こちらは本気だ。
初見でも、常人でないことが一目瞭然な母が、家の外に出て大暴れを始めるんじゃないかと連想してしまう。
夏休みの廃人が懐かしい…。
私は咀嚼しながら、家が荒らされていないかどうか考えていた。
最後の給食でこんなこと考えてる方がおかしい気もするけど…。
「にしても寂しいなぁ最後の給食だなんてー。」
美鈴ちゃんが名残惜しそうにお弁当箱を見つめる。
「そうだね。冷たかったけど、美味しかったー!」
と宇佐見さんも両手をばんざいの形にする。
確かにおかずは冷えていたが、不味くはなかった。
私は最後の一口を箸でつまむと、口にはこび歯ですり潰していく。
数回噛み、嚥下していく。
私はデザートを噛みながら言った。
「寂しいなぁ。なくなっちゃうんなんて。もう終わっちゃうんだね。」
そうだねと口々にみんな言う。
つい最近始まったと思っていた中学3年生の終わりが、もう目前までやって来ている。
私たちは手を合わせ、最後の給食に「ごちそうさまでした」と挨拶をした。
なんだか物悲しいが、終わってしまうものは仕方ない。
卒業まで残り数日、中学生と人生を満喫しなくては。
私はそう思いながら、食べ終わったお弁当箱を片付けた。
私の出身中学と給食のスタイルが違ったので、書きながら疑心暗鬼になりました。氷室八弥です。(読み方:ひむろやや)
学校最後の給食でさえも寂しいのに、人生最後の給食はもっと寂しいですよね。
私も最後の給食を思い出しました。
皆さんの好きな給食はなんでしたか?私はわかめご飯が好きでした。
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