残り一ヶ月の余生、元気にしてます。
小学校の同級生に会いに行きます。
「残り一ヶ月の余生、元気にしてます。」楽しんでいただけたら嬉しいです。
北風の吹く曇天の中、住宅街の中に私の足音だけが響いていた。
今日は3月6日。人類滅亡まで残り26日。
とうとう命日まで一ヶ月をきった。
(えーっと、どっちだったかな?)
私はかつて通っていた小学校の校門前に立っていた。
手には弥生ちゃんから届いた手紙を持っている。
一応ここの手紙に裏に住所が書いてあるのだが…。
(これ、どうやってたどり着くんだよ…)
小学校の帰り。よく弥生ちゃんの住むマンションに遊びに行った。
学校から対して距離はなかった気がするが、いまいち記憶が曖昧だ。
地図アプリに住所を入力したら行けると聞いたことがあるが、実践もしたことないしよく分からない。
だからといって、タクシーを使うわけにもいかないだろう。
私は当時の記憶を頭から引っ張り出す。
学校の門から出る時、弥生ちゃんの家に遊びに行こうって話になって、
私の家は校門から直進だけど、その時弥生ちゃんは…どっちに曲がったっけ?
私は校門前で体を四方に順々で向けていく。
校門から見て東に向いた時、
目の前に大きなマンションが見えた。
「あれが私の家なんだよ。」
そんなこと言ってたっけ?
私はとりあえずそのマンションに向かって歩いた。
マンションにつき、入り口に入る。
中には大量の郵便受けと部屋番号が並んでいた。
私はその中から「霜越」を見つけだそうと翻弄する。
珍しい苗字が幸いして、すぐにその表示は見つかった。
304号室。
ここが霜越弥生の家だと私は確信した。
部屋番号を押したあとに呼び出しボタンをおす。
インターホンの中から「はい、どなたですか?」という中年女性の声が聞こえてきた。
「ご無沙汰しています。錦小学校と塾で弥生さんとご一緒させていただきました、磐城結衣と申します。
霜越弥生さんがいらっしゃいましたらお会いしたいのですが…。」
そこまで言ったところで、女性の声が1オクターブ上がった。
「えっ、やだ結衣ちゃん?まぁ~わざわざ来てくれたの〜?
待ってね、今開けまぁす〜。」
音声が切れるのと同時に、向かいの自動ドアが開いた。
私はその中に入り、階段を3階まで上がっていく。
廊下の中なか304号室を見つける。
私は鼓動が早まるのを感じながらチャイムを押した。
すぐに玄関扉が開く。
そこには、髪をお団子にまとめ、以前より背が少しだけ高くなった弥生ちゃんが立っていた。
「…結衣ちゃんだよね?」
「うん。久しぶり。」
「まぁ上がって。お茶でも淹れるよ。」
「いいよ、すぐ終わるから平気。」
今日は悠真の家の時のように腰を据えて長話をする気はない。
私はトートバッグから一冊のノートを取り出す。
自室から見つかった交換日記だ、(もちろん埃は払ってある。)
弥生ちゃんは驚いたように目を丸くした。
「これって…?」
「回してた交換日記。今更いらないと思うんだけど持ってきた。
これ、弥生ちゃんのでしょ?」
弥生ちゃんは無言で交換日記を受け取る。
表紙をじっと見た弥生ちゃんは、「ありがとう」と呟くように言った。
「あと、ごめん。あの時受験しなくて。
弥生ちゃんの言ったように、
経済的とかいう言い訳で、勉強追いつかなかった自分を誤魔化したかったんだと思う。」
2人の間にしばらくの沈黙が流れる。
最初に口を開いたのは弥生ちゃんだった。
「こっちこそごめん。卒業して思ったんだけど、私も言い方きつかったなって。
ただあの時は、一緒に受験して、同じ中学行くのを楽しみにしてたから、
急にああなってイライラして…。」
お互い顔を見せ合い、小さく微笑んだ。
「もっと早く言いに来られたらよかった。あと一ヶ月なんかになっちゃって、ごめんね。」
「ううん、私もずっと頭の中にあったから、最後に言いに来てくれてありがとう。」
私はその後マンションをあとにした。
渡した交換日記のページに、
3月生まれの弥生ちゃんへ誕生日祝の言葉を残したのは、2人だけの内緒である。
今日少しお寝坊でした。氷室八弥です。(読み方:ひむろやや)
今回もまた二千文字足らずの短いお話です。
最後に仲直りできてよかったなーって思います。喧嘩してもお互いが謝れるのは、本当にいいですよね。
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