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降誕祭に思い出したこと

クリぼっちになる結衣ちゃんの回想です。

「降誕祭に思い出したこと」楽しんでいただけたら嬉しいです。

街が鮮やかな光に包まれている。

私は日用品や食用品を買いに出て、帰路につくところだった。


吐く息がわずかに白濁(はくだく)し、ライトアップされた光と重なる。



(もう今年も終わるな…。)



今日は12月19日土曜日。人類滅亡まで103日。

とうとう弥明後日(やのあさって)には100日を切る。

これから母の容体は悪化の一途を辿るだろう。非常に気が重い。



「24日さ、ちょっと会えたらいいなって思うんだけど。」

「クリスマスはみんなとお料理食べようね。」



クリスマス近いからか、周囲からはそんな声が聞こえてくる。

みんな家族や恋人がいるのかなと考える。


私は普通に学校に行って、親の介護しながら過ごすだろうし、いくら頑張ってもサンタなんてものは家に不法侵入してくれやしない。


私はため息をつくと、自宅に向かって歩き出した。




目の前で手を繋いで歩く親子が歩いていく。

仲良さげに冬休みの予定を話しながら笑い合う姿を見て、なんともいえない気持ちになる。


そういえば私にも、あんな時があったっけ。

不意に思い出したのは、何年も前のクリスマス前後の夜だ。





「結衣、そんなに身を乗り出したら危ないよ。」

背後から声をかけられた私は、勢いよく後ろを振り向く。


「だっておかあさん、木がきらきらしてるんだよ。とってもきれいなのー。」


私は母のコートの裾を握りながら歩いていく。


「ねぇおかあさん、サンタさんことしもきてくれるかなぁ?」

「どうだろうねー?結衣は今年いい子にできてたと思う?」


私は今年一年の行いを振り返りながら口を開いた。


「わたし、しゅくだいわすれたりまちがえたりしたし、きゅうしょくのこしたりしたからなー。いい子じゃなかったかも…。」


不安そうに(うつむ)く私に、母が優しく頭を撫でる。


「でも、漢検受かったし作文のコンクールにも出たでしょ?頑張ったじゃん。大丈夫だよ。」


私の顔がぱっと明るくなる。


「じゃあ、サンタさんくる?」


「それはどうかなー」とわざとらしく目を逸らす母。私は「えー?」と母の腕をぶんぶんと振った。





(そんなこともあったなぁ…。)


遠い昔の記憶を思い出し、現状と比較して肩を落とす。

ケーキを買ってくれた母は、もう1人では何もできず、四六時中「誰かが見てる」とぼやいている。

プレゼントをくれた父は、一日中安酒に溺れ、家に帰る回数も少なくなった。



過去のような幻想は、どんなに祈ったってもう叶わない。



いや、こんな悲しい話題を1人で掘り返して何になる。

私は悪い思い出を振り払うように被りをふる。



その時ふと、駅ビルのショーウィンドウに映るお菓子やブランド品が目に映る。


(自分にプレゼントでも買ってやろうかな。)


寂しい発想に見えるだろうが、多少のご褒美がないとやっていられない。

高級なものではなく、安いお菓子程度で構わない。降誕祭(こうたんさい)当日くらい、自分を甘やかしてみたい。



そもそも磐城(いわき)家に高級なものを買うほどのお金はない。

ほとんど働かなくなった父だが、管理が杜撰(ずさん)なおかげでなんとか生活している。

具体的に何をやっているかといえば、母と父の銀行口座を拝借し、生活費に充てるのだ。


幸いにも、両者ともに貯金がある程度あったので、人類滅亡まで飢えることはないだろうが、流石に面倒な作業だ。

普通に生きてくれたらどれだけ楽だったろうな。



私は重い荷物を背負い直すと、自宅へ急いだ。

ちょっとしたご褒美があると思うと、ほんの少しだけ気力が戻ってくる。


残り100日。

生活の質は維持したいと思いながら、私は冬至の立河を歩いていった。




今回、短くて申し訳ないです。氷室八弥です。(読み方:ひむろやや)

降誕祭と言ってますが、ただのクリスマスですね。

私、今年のクリスマスは頑張って貯金して、自分にプレゼントをあげたいと思います。

まぁまだ早い話なんですが、考えるのは楽しいですね。

ご意見・ご感想、お待ちしてますー。

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