みんなが見た夢はなんだった?
叶わない将来の夢の話です。もう冬です。
「みんなが見た夢はなんだった?」楽しんでいただけたら嬉しいです。
まだ空が暗い時間。
変な夢を見て目が覚めた。
私は体を起こすと時計を確認する。
(4時か…。早すぎるな。)
せめて5時ならよかったのにとため息をつくと、私は再びベットに寝っ転がる。
あの夢はなんだったのだろうか。
なぜ今更、あんなものが出て来たのだろうか。
起床から時間が経つほど、夢の中での記憶が曖昧になっていく。
(寝られるかわかんないけど、目だけでも瞑っておくか。)
そう思って私は瞳を閉じた。
朝日がカーテンから差し込み、小鳥の声がしてきた。
11月20日。人類滅亡まで残り132日の1日の始まりだ。
少しは眠れたのだろうか。時計に目を移すと、時刻は6時を過ぎたころだ。
私はそのまま体を起こすと、すぐさま制服に着替える。
昨日用意した鞄を持ち、目を擦りながら自室を出た。
そこからはいつもこなしている朝のルーディーンだ。
簡単な朝食を作りながら、母用の食事を用意する。父のは知らない。
自分も朝食を摂りながら母にご飯を流し込み、着替えさせ、シーツを取り換え、適当に髪を引っ詰める。
(あぁー面倒くせぇ…。)
心の中で悪態をつきながら淡々と介護をしていく。
本当に廃人って大変だ。精神科病棟の医療従事者に心から尊敬する。
教室に入ると、暖かい空気が広がっていた。
見ると教室の端にヒーターが置いてあり、数人の生徒が集っている。
(そっか、もうそんな季節だもんな。)
半袖だったセーラー服は長袖に変わり、すっかり紺を基調とした制服が揃う。
私は自分の机に荷物を置くと、ヒーターの前にしゃがみ込む美鈴ちゃんの隣に座った。
「おはよう結衣ちゃん。寒いねぇ。」
「おはよ。そっかな。私はそんなに寒くないんだけど…。」
見ると美鈴ちゃんはカーディガンを羽織っていた。最近は地球温暖化のせいか、11月でも寒くない。
夏はもうやってこないが、このまま来年、再来年へと続いていたら、暑がりの人は耐えられないだろう。
そういえば、と私は美鈴ちゃんに声をかける。
「今日変な夢見てさ、4時くらいに起きちゃったんだよ。」
「えぇー?大変だったね。あ、悪夢って誰かにハンスト正夢にならないっぽいよ。話して話して!」
美鈴ちゃんが私の肩をゆさゆさと揺らしてくる。
私は褪せてきた記憶を掘りおこしながら、今日の夢のことを話した。
「なんかね、あんまりよく覚えてないんだけど、幼稚園の頃の話…かな。
先生が『皆さんの将来の夢はなんですか?』って聞いて、みんな答えるんだけど私だけ答えられなくて、隣の男子に揶揄われた夢。」
「なにそれ」と美鈴ちゃんが笑う。
「将来の夢かー。私、小さい時はなにになりたかったっけ?
…あ、そうそう、魔法使いになりたかったんだ!」
思わず吹き出してしまった私に、美鈴ちゃんが「なにがおかしいのー?」と頬を膨らませる。
「ごめんごめん、あまりにも美鈴ちゃんっぽかったから。昔は魔法使いになりたくて、今はなにになりたいの?…あ、ごめんなりたかったの?」
「私ね、保育士になりたかったの。」
保育園の先生か…想像できる気がする。
「そういう結衣ちゃんは、将来何になりたかった?お医者さん?」
「いや、そこでなんで医師が出てくるのさ。」
「結衣ちゃん頭良いから、医学部行くのかなーって。医学部じゃないなら法学部で弁護士?」
(いや偏見ひど…。)
私はしばらく何もない空間を見つめ、思考を巡らせる。
「私は…ないな。考え中だった。ていうか、中3の時点で将来の夢決まってる方が珍しくない?」
結衣ちゃんは「そうかな?」というと、ヒーターの前から立ち上がり声を上げる。
「ねぇねぇ、みんな将来の夢ってなんだったー?」
行動力の塊かよ…。私は内心ツッコミを入れるが、正直クラスには半分くらいの生徒しかいない。
美鈴ちゃんにとっては緊張などしない人数なのだろう。
教室の端々から声が聞こえてくる。
「僕はゲームクリエーターかな。」
「私は公務員に…。」
「未定に決まってるじゃん、地球滅びるでしょ?」
まぁ地球は滅びるけど…。
おそらくそういう問題じゃないと思う。過去形で話してるわけだし。
「そっか、みんないろんな夢があったんだねー。叶うと良いねぇ。」
いや叶わないよ、と周囲から諦観混ざりの声が聞こえる。
みんな何か夢を持っていて、叶えようとしてたんだなぁ。
本来ならまだ生きられる生徒達の夢は、無惨にも真空崩壊に壊されるわけだが、たとえ叶わないものでも、夢を見るのは人によっては大事なのかもしれない。
教室から見える木の葉は、すでに黄色や赤に色付いている。
ぼーっと眺めていた私に、美鈴ちゃんが近寄って言った。
「でも、大事なのは最期の日まで悔いなく過ごすことだよ。ね、結衣ちゃん。」
「そうだね。」
あどけない笑みを浮かべる美鈴ちゃんに、私も微笑み返す。
最期の日まで悔いなくか…。
私も3月31日まで予定ちゃんと立てないと一瞬で終わりそうだな。
文字通り二度とないのだから、しっかりしなくては…。
(帰ったらエンディングノートに書き加えておこう。)
微風と戯れる紅葉を見ながら、そんなことを考えたのであった。
お話だと冬なのに、現実ではもうすぐ夏ですね。氷室八弥です。(読み方:ひむろやや)
私は結構夏バテしやすい体質でして、食欲とか落ち気味なんですけど、今年もゆっくり過ごそうかなーと思います。
ちなみに、私は中3の時看護師さんになりたかったです。みなさんが見た夢はなんでした?
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