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叶いはしない願い事

七夕の何気ない日常です。

「叶いはしない願い事」楽しんでいただけると嬉しいです。

「そっかーもうそんな季節かぁ。」

「そうそう、恵麻ちゃんは何をお願いするの?」


教室の真ん中からそんな駄弁り声が聞こえてくる。

私はスマホを見ながら、何やら話している風香(ふうか)さんと恵麻(えま)さんをなんとなく見つめていた。


「なんの話してるんだろうね?」


板書を書き終えた美鈴(みすず)ちゃんが、振り向きながら声をかける。


「さぁね。美鈴ちゃん聞いてきてよ。」

「えぇ〜なんで私がー?」


そう言いながら美鈴ちゃんは2人へかけて行く。

満更でもなさそうに見える気がするんだよな…。修学旅行で2人と仲良くなったのかな。


しばらく3人で話した後に、こちらに向かって美鈴ちゃんが手招きしてくる。

私は早足で3人の元に向かった。


「聞こえてたなら来てくれたもよかったのにー。」

「ごめんごめん。で、なんの話してたの?」

「七夕の話。」


恵麻さん風香さんが悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「あぁそっか、今日七夕か。」


私は教室の隅にあるカレンダーを見つめる。

今日は七月七日火曜日だ。

そして人類滅亡まで、残り268日でもある。


「なんのお願いする?って話してたんだよ〜。」

「なるほどね。」


今日は晴れる予報だし、もしかしたら星が見えるかもしれない。

まぁ、願い事ができたとしても、地球の方が先になくなっちゃうんだろうけど。


私は何やら熱心に考え込む3人に言った。



「で、みんな何をお願いするの?」


答えは、これもまたばらばらだった。


「んー、『夏休みの宿題少なくなってほしい』かな。」

と、風香さんは言った。


「私は『今年の夏は涼しくなって欲しい』だなぁ。すでに暑いけど。」

恵麻さんが顔を仰ぐそぶりをしてみせる。


「『地球がまだなくならないでほしい』ってお願いしちゃった。まだやりたいことはたくさんあるから。」

美鈴ちゃんは、少し寂しい笑みを浮かべた。



『地球がまだなくならないでほしい』…か。


美鈴ちゃんにとっては、それが一番の願い事になるのかもしれない。

面倒なことが減るのだから、別にいいじゃんって私は思うんだけど。


最近思うのだが、美鈴ちゃんは「もっと生きたい」という欲が人一倍強いのだろう。


そんなことを考えてると、風香さんが私の制服の袖を引っ張った。



「なぁにぼんやりしてるの?結衣ちゃんのも教えてよ。」


急な問いかけに「へ?」と間抜けな声が出てしまう。

確かに他の人の願い事を聞いておいて、自分だけ答えないのはだめだろう。

私は即席で願い事を考える。


「うーんそうだなぁ…。『夏休みは遊びたい』かな。」


「なるほどー確かにね。」

「私のと似てる〜。」

「4人でどこか遊びに行こうよー。」


3人がそれぞれ相槌を打つ。



本当は『お母さんが少しでも眠れますように』を一番に思い浮かべた。


最近は不眠が慢性化し、抑うつ感情が出てきている母だ。

夏になったらさらに不安定になるだろう。

そしてその飛び火を喰らうのは、父ではなく私だ。


しかし、こんなことをお願いしてると言ったら、空気が氷点下まで下がりかねない。



「叶うかわかんないけどさ、叶うといいね。願い事。」


美鈴ちゃんがあどけない笑みを浮かべる。


「そうだね、叶うといいなー。」


他の2人も空に向かって、祈るように両手を組んだ。

私もそれに倣(なら)い両手を組む。

その時、ある考えが頭をよぎった。


「あっ、もう一個願い事思いついたかも。」

「なぁになぁに?」


3人の視線が私に集まる。


「えっと…『みんなの願い事が叶いますように』…?」


3人の口角が上がっていく。

その顔を見て、顔が熱(ほて)っていくのを感じた。

私は両手を顔の前で振りながら訂正する。


「あっ、いや違う、嘘!今のは嘘!」


その瞬間、3人がいきなり大声で笑い出した。


「ちょ、なんで笑うのー。」


困惑を浮かべつつ、笑い転げる3人を見ていたら、こちらもいつの間にか笑っていた。



『こんな日常が続いたらいいな。』


真空崩壊(しんくうほうかい)が地球を飲み込むまで、こんな馬鹿らしい感じが続きますようにと、

私は頭の中で祈った。


投稿が不定期で申し訳ないです。氷室八弥です。(読み方:ひむろやや)

出かける前にちょっとだけ書いたので投稿してみましたー。

皆さんは七夕にお願いとかしますか?

私が住んでる街は「七夕と花火大会は雨が降る」という伝統?があるので、あんまりお願いはできてません。

あと、わざわざ笹の葉になんて書かないですよね。

探してみたらネットとかにお願い事をかける掲示板があるかもですね。

ご意見・ご感想、お待ちしてますー。

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