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さどうぶっ! ~転校生の茶道部部長は、初恋の女の子に瓜二つだった件~  作者: アブラゼミ
にはいめ「学園祭」

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第五十六杯「話題の彼女」

「見て下さい! この莉子先輩の勇姿! チョーカッコよくないですか?」




 新聞部が昼休みに出した校内新聞を広げながら、輝木さんが興奮気味に僕らに呼びかける。


月曜日の放課後は本来図書委員の日だが、学園祭こと季日南祭の1週間前から放課後の図書室は休みになっている。


そのため季日南祭の準備で茶道部の部室に集まってるんだけど……




「そんな勇姿だなんて……。いつの間にこんな写真を撮られていたんでしょう? 知りませんでした」




 チアガール姿でトランペットを吹く姿が新聞に載っている瀬川さんがクシクシと頭のお団子をいじる。




「1年の子達の間で話題でしたよ! もう莉子先輩の話題で持ちきりでした!」


「2年の間でも話題になってましたよね? 大鳥君」


「ああうん、そうだったね」




 板野さんに話を振られ頷く。


昼休みに新聞部が出した新聞は取り合いになり、ゲットした生徒達の間で話題になっていた。




「3年の間でも話題になってたわね。まあ、新聞部には注意が必要だけど」




 本人の許諾なしで写真を新聞に載せた事は問題らしく、寧音姉がスッと目を細める。




「4組の子達に久しぶりに話しかけてもらえました。前の学校でどんな練習をしてたのかとか、吹奏楽部に入らないかとかお誘いも受けましたし」


「莉子先輩、吹奏楽部入るんですか?」


「いえ、お断りしました。茶道部で手一杯ですし」




 輝木さんの問いかけを、瀬川さんが即否定する。




「もったいないですねー。莉子先輩あんなに上手なのにー」


「いえ、私は茶道部の部長ですので。そんな事より季日南祭のお話です。忘れてないと思いますが、茶道部では2日間野点を行います」




 瀬川さんが話題を変えるように、今日集まった本題へ入る。




「初日はお昼10時から夕方5時、2日目は昼10時から3時まで野点を行います。お客様にお茶とお茶菓子を楽しんで頂くのですが、まずは当日の役割分担をお話します」




 瀬川さんが、プリントを配る。


手書きのプリントだ。野点の座席の配置や、役割分担が瀬川さんのキレイな字で書かれている。


おまけに接客マニュアルも添えられていた。




「お茶を点てるのは私が行います。板野さんはその手伝いとお菓子の準備をお願いします。大鳥君は受付と、それから洗い物をお願いします。そして綾瀬先輩と輝木さんに接客をお願いしたいのですが……」


「前に話しておいたけど、私は1日目しか参加できないわ。2日目は生徒会の見回りがあるから」




 事前に話をしていたのか、寧音姉の言葉に瀬川さんが頷く。




「という事ですので2日目は板野さんにも接客をして頂きたいです。2日目のお菓子の準備などは私が何とかします」


「分かりました」


「大鳥君の仕事は、野点の会場から家庭科室まで洗い物に往復してもらうので結構大変ですが……」


「ああうん、体力には自信があるから大丈夫だけど……。瀬川さんの負担も重くない?」




 お茶を点てて、お菓子の準備もしてなんて大変じゃないだろうか。


しかし瀬川さんは首を振った。




「『たちばな』の杵太さんにお話して2日目のお菓子は崩れにくいものを作って頂くことになりました。紙皿に載せるだけなのでそう大変ではありません」


「え? もうお菓子の発注済ませちゃったの?」


「はい。お抹茶と紙皿などの準備も済んでいます。生徒会への申請もしておきました」




 茶道部の部室には、瀬川さんの言葉通り紙皿や色々な物が揃えてあった。


忙しかっただろうにいつの間に準備をしていたんだろう。




「明日和服を合わせたいと思うのですが、皆さんよろしいでしょうか?」


「え? 結衣菜達和服着れるんですか?」


「はい、ウチでご用意いたしてます」




 瀬川さんの家は茶道教室だし、和服がたくさんあるのだろうか。あのお母さんと顔を合わせるのは気まずいんだけど……




「瀬川さん、ちょっといいかしら?」


「はい、何でしょう綾瀬先輩」


「これだけの準備を1人で進めていたのは偉いと思うわ。でもちょっと、あなた1人で頑張りすぎじゃないかしら」


「いえ、私が部長ですので」


「確かにあなたは部長で私達は板野さん以外初心者だわ。でも頼れる所はもっと頼るべきじゃないかしら?」


「と、言われましても……」


「私達にも任せられる所はあったはずよ。買い出しとか生徒会への申請とか」


「……」




 寧音姉の言葉に、瀬川さんが押し黙る。


茶道部部室に、少しだけ不穏な空気が流れた。




「まあまあまあ! それはこれから任せてもらえばいいじゃないですかー。会長先輩、イジワル言っちゃダメですよー」


「……別にイジワル言った訳じゃないわよ、子猫ちゃん」


「結衣菜は子猫じゃないですー!」




 輝木さんが間に入り、気まずい空気が霧散する。


少しだけホッとしたが、問題の解決にはなってない。


確かに僕らは右も左も分からない茶道初心者だ。


けれどもそんな僕達でも任せられる所はあったんじゃないだろうか。




「瀬川さん、確かに寧音姉の言うとおりな所があると思うよ。頼れる所や任せられる所は僕達にも任せてくれないかな? まあ、僕なんかじゃ頼りないだろうけど」


「いえいえ! そんな事ありません……! 昨日も非常に助かりましたし……。分かりました。大鳥君達に任せられる所はお任せしますね」




 僕と瀬川さんが話している間に、寧音姉が輝木さんに何やら耳打ちしている。


輝木さんは不精不精と言った感じだけど頷いている。一体何を話してるんだろう?




「それでは次に当日までにやる事を説明しますね。会場の設営は……」




 そして瀬川さんは、そんな2人の事など目に入らなかったみたいに話を進め始めた。

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