第四十一杯「役割分担」
中間試験で赤点を取った部員が2人いる事が発覚した茶道部は、毎日お昼休みに部室に集まって勉強をする事になった。
「なんで結衣菜が会長先輩とベンキョーしないといけないんですか~!!? 絶対ヤです~!!!」
部室にあった何かの紐でグルグル巻きに縛られた輝木さんが暴れるも、寧音姉にガッチリホールドされる。
「全科目赤点の子猫ちゃんが何ワガママ言ってるのかしら? 学年1位の私が教えてあげるのよ。安心なさい、『結衣菜、勉強だ~いすき♡』ってなるくらい勉強させてあげるわ」
「何か怖いんですけどー!? せんぱーい! 助けてくださーい!!!」
また組んずほぐれつし始めた2人を無視し、僕は瀬川さんに話しかけた。
「瀬川さん、瀬川さんのクラスの英語の先生って誰?」
「阿部先生と市川先生です」
「ミズ・アベと、イチカ=ワンか……」
髪を伸ばして背を低くした和田○キ子みたいなベテランの阿部先生と、スターウォーズ好きで有名な30代半ばくらいの市川先生。
どっちもいい先生だけど、生徒を置き去りにして授業を進めてしまう癖がある。
瀬川さんが授業に置いてけぼりにされている光景が目に浮かんだ。
「2人ともウチのクラスも担当してるからテストの傾向は把握してるし大丈夫だよ。大船に乗ったつもりで任せといて」
「よ、よろしくお願いします」
「それで板野さんの数学は、瀬川さんの勉強を見ながら教えるって事になるけど大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
マイペースにお弁当の一口ゼリーを食べながら答える板野さん。
正直彼女がいてくれる事になってよかった。
瀬川さんとマンツーマンだと、意識しちゃうから……。
しかし昨日『好き』と言った割に瀬川さんは普段通りだ。
やっぱり恋愛的な意味ではなかったのか?
「……とりあえずどこが苦手か把握しないとだね。瀬川さん、明日中間試験の答案って持ってこれる?」
「え? 中間試験の答案、ですか?」
「うん。まさか捨てちゃった?」
「い、いえ……ちゃんと取っていますが……」
「じゃあ持ってきて」
「うう……、どうしても見せないといけませんか……?」
「見せてもらわないとどこが分かってないか把握できないから」
「うう……、分かりました。でも赤点の答案を見せるなんて、下着姿を見せるくらい恥ずかしいです……」
「……」
瀬川さんの言葉に、つい想像が浮かびそうになる。
しかし心を無にして振り払った。
「ひとまず瀬川さんの英語は明日中間試験の答案を見てからって事にして、板野さんは数学どこが分からないの?」
「全体的に基本問題は解けるんですが応用問題が苦手です」
「基本ができてるなら応用もできるはずだよ。分からない問題のページとかノートとか持ってきて」
「分かりました」
いつも朝勉強してるし、本人の言葉通り基本問題が解けるなら問題ないだろう。
板野さんの方は大丈夫そうだ。
「さあ輝木さん、楽しい楽しいお勉強の時間よ。ペンをしっかり握りなさい」
「ウニャー!!? 勉強ヤですー!!!」
……あっちのコンビは違う意味で不安だけど。




