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さどうぶっ! ~転校生の茶道部部長は、初恋の女の子に瓜二つだった件~  作者: アブラゼミ
いっぱいめ「ふつつか者ですが、よろしくお願いします!」

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第三十六杯「会いたくない顔」

 放課後のチャイムが鳴ると同時に教室を出た。

そしてまっすぐ下駄箱へ向かう。

追ってくるはずもなければ、呼び止められるはずもないのに急ぎ足で。

少し前までは、火曜の放課後は旧校舎の3階に行っていた足で。


 部活に向かう生徒でごった返している下駄箱で靴に履き替え、かかとを踏んだまま自転車置き場へ向かう。

誰も追ってくるはずもなければ、呼び止めてくるはずもないのに。

自転車の鍵を開け、ブレーキ立てを蹴り上げる。

そして逃げるように、自転車を漕ぎ出した。




****************************




 春を通り過ぎて夏が来たように、熱い太陽の光が降り注いでいる。

風を感じて走る自転車でも暑いくらいだ。

このまま家に帰るのも味が悪い。

寂れた商店街を通り過ぎた先に、大きな通り同士の交差点がある。

ここを右に曲がれば、大きなショッピングモールがあったな。

僕は気の向くままに、信号を渡った後自転車で右折した。




 映画館やゲームセンター、カフェなどが入るどこにでもある複合施設。

1階のスーパーを通り過ぎて、上りのエスカレーターに乗る。

暑い外に比べて冷房が効いている。汗で冷え始める身体を、脱いでいた学ランの上着で隠す。


 放課後になったばかりだというのに、僕と同じように制服を着た姿がチラホラいる。

男子同士、女子同士、そして男女の組み合わせ。

見た事ない制服が多い。近くの高校の生徒達だろうか。

僕は彼らを横目に見ながら上の階へと進んだ。


 3階まで行くと、ちょうど本屋だった。

なんとなくラノベの棚へ行くも、全部カバーがかけられていて立ち読みできない。

『あそ○のかんけい』が目に入る。彼女はどんな感想を抱くのだろうか。

もう聞く機会はないだろうに、考えてしまう。


部活をサボるなんて初めてだ。

高校になってからはもちろん、中学の時にだって一度もなかったというのに。

瀬川さんは怒るだろうか。でももう僕には関係ない。退部の意思を示したんだから。


「あれ? 大鳥君?」

「え?」


 聞き覚えのある声に名前を呼ばれ、思わず振り返る。

いや、聞き覚えのある声じゃない。

鈴が鳴ったような、キレイな声。

僕が好きだった、あの声だ。


「やっぱり大鳥君です! お久しぶりです、中学卒業以来ですねっ」


 瀬川さんと、瓜二つの顔が目の前にあった。

髪色は少しだけ茶色がかった黒髪で、目の色も黒に近い茶色。髪型も肩にかかるくらいのストレートヘアーで瀬川さんとは違う。けれども顔は瓜二つだ。

背は瀬川さんより少し低く、体付きは瀬川さんより少し豊かだろうか。いや太ってるという意味じゃなくて適度に肉がついているという感じの身体をブレザーとチェック柄のスカートの制服に包んでいる。

僕の初恋の女の子、椎名莉心さんだ。


「椎名さん……、久しぶり。どうしてここに?」

「今日は部活が休みでしたので、参考書を購入しようかと思いまして。最近、数学が難しくてピンチなんです」


 制服をきっちり着こなしている姿も、品のある雰囲気も、丁寧なしゃべり方も。

彼女に似ている、いや彼女が似ているのか? とにかく瀬川さんを思い起こさせる。

少し前までは、瀬川さんと会う度椎名さんを思い起こしていたのに。



「そう言う大鳥君は? 本日は野球部の練習はお休みですか?」

「……いや椎名さん、僕は野球は辞めたんだ」

「えっ……?」


 椎名さんが、目を見開き口を小さく開ける。


「どうして、ですか? 大鳥君、あんなに頑張ってたのに……」

「……まあ、ちょっとね」

「……」


 椎名さんが、心配げな表情になる。


「どこか、お怪我でもされたんですか?」

「そういう訳じゃないけど……まあ、色々あるんだ」

「色々……そうですか、残念です。野球をしてる大鳥君、カッコよかったのに……」

「……」


 今まで知らなかった事を聞かされ、揺さぶられる。

でも、もう終わった事だ。


「椎名さんは? 新体操頑張ってる?」

「はい、全国大会に出場できるよう頑張ってますっ」


 椎名さんが、まぶしいくらいの笑顔を向けてくる。

僕が野球を辞めた事を知り落胆してるようなのに、それを心配させないための笑顔だ。

彼女のこういう所を、僕は好きになった。


 ……いや、性格だけじゃない。

彼女の見た目が、声が、話す言葉が、まとう空気が、全てが好きだった。

こうして言葉を交わす度に胸が、苦しくなるくらいに。


「……じゃあ、僕はもう帰らないと行けないから」

「そうなんですか……。では、また」

「……うん、また」


 少し迷った様子を見せた椎名さんが、笑顔で小さく手を振る。

手を振り返して、僕は彼女に背を向けその場を後にする。

中学卒業以来1年ぶりの再会。

心のどこかで、ずっと会いたいと思っていた人だった。

でも今は、会いたくない顔だった。

彼女と瓜二つの、彼女の顔が浮かぶから。


椎名莉心しいな・りこ


誕生日 5月30日

身長 157m

好きな食べ物 メロンパンなどの菓子パン

苦手な食べ物 ベチョっとした食べ物

得意科目 英語・体育

苦手科目 古文・日本史

趣味 ぬいぐるみをつくる事

特技 クレーンゲーム・友達をつくる事

最近の悩み ちょっと太ったりなんかしてない。絶対してない

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