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さどうぶっ! ~転校生の茶道部部長が初恋の女の子に瓜二つだった件~  作者: アブラゼミ
第1章「ふつつか者ですが、よろしくお願いします!」

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第三杯「新しい朝」

 新しい朝が来た。

希望の朝かどうかは分からないが、朝だ。

 顔を洗い、制服に着替え、朝食を取り家を出る。

 朝7時半。

家から自転車で20分ほどの季日南高校、地元の人からは「きびこう」と呼ばれているごく普通の公立高校に到着し僕の朝は始まる。


吹奏楽部が演奏しているどこかで聴いた事のあるメロディーを聞きながら自転車を止め、昇降口へと向かう。

この時間が一番登校してくる生徒が少ない。

朝練に来るには遅く、登校するには早いからだ。


 5月に入り汗ばむ陽気になってきた。

どこにでもありそうな黒の学ランの上着を脱ぎ、白の長袖シャツになる。

昔は6月までダメだったそうだが、5月から上着を脱いでいいという事になっている。


 人もまばらな昇降口で上履きに履き替え、階段を上り、廊下を歩く。

去年建て替えられた新校舎は、入学した頃はピカピカだったが1年で青春にまみれ、汚れが目立つようになった。

リノリウムの床に、誰かの足跡が白く残っている。

2年1組の教室は昇降口から一番近い。その後ろの入り口から僕は教室に入る。


「……」


 教卓の前の席では、お下げの女子生徒が黙々と勉強をしている。いつも僕より早く来ている子だ。

前の入り口から入ると『お、おはよう』『おはようございます』と気まずい挨拶をしないといけないから、後ろから入るようになった。

今では向こうがチラッと見てくるだけの関係だ。

僕はその視線に気づかないフリをしながら、イヤホンを耳にはめて自分の席に着いた。




 学校生活で重要な事は目立たない事だ。


①キモい挙動・発言をしない

②身だしなみ・体臭に気をつける

③極力空気でいる


 これだけで女子からの陰口はかなり減る(ゼロにはならない)。


「お前マジかよー! マジありえんってー!」


 教室の真ん中で陽キャの男子達がデカい声で騒いでいる。

多少眉をしかめる女子達はいるものの、コソコソ言う子はいない。

これが陰キャだとコソコソ聞こえるように陰口を叩かれるのに、理不尽だ。


「あっ、悪ィ」

「……」


 机にぶつかってきた陽キャに『気にしなくていい』と手を振り読書に戻る。

わざとにせよわざとじゃないにせよ、ここでリアクションを取ってしまうと繰り返しの標的になってしまう。

リアクションを取らなければ向こうも白けて何もしてこなくなる。学校生活の処世術だ。


 騒がず、目立たず、空気でいる。

これが僕の高校生活だ。

昼休みは時間いっぱいまで外にいて、放課後はさっさと図書室に行くか帰宅する。

この生活を僕は卒業まで……




『2年1組 大鳥裕樹(おおとりゆうき)くん。2年1組 大鳥裕樹くん。放課後生徒会室に来て下さい。

 繰り返します。大鳥裕樹くん。放課後生徒会室に来て下さい』




 突然スピーカーから流れてきた生徒会長の声に、クラスメートの視線がこっちに集まる。

しかしすぐにまた談笑やバカ騒ぎに戻っていった。

素晴らしい。僕の目立たない学校生活の賜物だ。


 ……放課後生徒会室への呼び出し。

どうせまたあの件だろう。ここ半年、同じ話を繰り返され続けている。いい加減諦めてくれればいいのに。

よし、サラッと無視しよう。

僕は放課後、生徒会長の呼び出しを無視してさっさと帰った。

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