第九十話 舞踏スキルの見せ所
「イリス第一王女のお成り~!」
さあ、イリスの登場だ。
おっ! ロイヤルブルーとシルバーのアシンメトリーのドレスだ。
格式高い王族の青色を基調としつつも、裾の長さや肩のデザインが左右で違う、少し遊び心のある個性的なドレスだな。実はお茶目なイリスの性格にぴったりだ。白銀のボブヘアには、王家の証である繊細な宝石の髪飾りがキラキラと輝いている。
「皆さま、今日はユウキ・シタラ伯爵の爵位の授与を祝う特別な舞踏会ですわ。そして四季の最後には重大発表もありますわ」
お、重大発表か。何だろうな。
イリス第一王女がこちらにウィンクしてくる。
「はっ! 私にウィンクしてくれたぞ!」
「違う、わしにしたのだ!」
丁度俺の近くにいたインテリ丸眼鏡の貴族が後ろで若い貴族と話していた。
ごめん。多分俺にしたんだよな。
そこからは様々な貴族とワインを飲みながら、話をすることになる。
「グラリア伯爵、本当にありがとう」
「うん? わしはユウキ伯爵の爵位に少しだけ意見をしただけだぞ?」
「その少しが重いんですよ……」
まずはグラリア伯爵だ。
気心が知れている方なので気さくに話せる。
「なるほど、貴族としての振る舞いも堂に入っているな」
「クソっ。あいつめ、良い気になりやがって」
後ろの声も聞こえているぞ。
絶対後で難癖付けてくるな。
ビルク伯爵やオーガス子爵、グングニル男爵とも話す。
「ドナルド公爵派を一掃してくれて感謝する」
「全く、お手柄なんだな」
「わしと後で模擬戦でもしようではないか!」
ドナルド公爵派は完全に息をしていない。
それを褒めてくれるのは嬉しいんだが、グングニル男爵は血の気が多いな。
「グングニル男爵、それは待ってもらいたい」
「何じゃ? ああ、カインズ子爵」
「ごきげんよう、成り上がり者の田舎伯爵」
何だあ? こいつかなり舐めた口をきいてやがる。
てかさっきのインテリ丸眼鏡の貴族か。
俺はレッドドラゴンのオーラとキングヒドラの魔力を纏って全力で威圧してやろうと思ったが……。
「ごきげんよう、どこの貴族かもわからないガリ勉子爵様」
「ぷっ」
「ぐふっ!」
「言い切ったんだなあ」
同席していたビルク伯爵とグングニル男爵は笑い、オーガス子爵は楽しそうな目でこちらを見ている。
「何だと! 貴様! 平民上がりで私を愚弄するか!」
「カインズ子爵でしたか? 私の方が爵位は上なのですが、それが貴族としての対応なのでしょうか?」
「クソっ、貴様!」
「いかん! ユウキ伯爵!」
カインズ子爵は魔力を練りあげて、俺にファイアボールを撃ってくる。
ったく、王宮の中で魔法を撃つなんて貴族の風上にも置けませんなあ。
俺はあえてレッドドラゴンのオーラを魔力を纏ったまま、何もしなかった。
ドォン!
会場に悲鳴と怒号が鳴り響く中、黒煙が立ち、皆の注目が集まる。
「あれ? 今何かしましたか?」
「な、何だと⁉」
俺は着ている貴族服にすら傷の付かない無傷で出てきた。
「それにしても、貴族というのはダンスホールで魔法を人に向けて撃ってもいい物なのですね」
「ち、違う! これは!」
「カインズ子爵! わしの前で衆人環視の中、魔法を人に向けて撃つとは。近衛兵! こ奴をひっ捕らえよ!」
あーあ、レオンハルト陛下が出てきちゃった。だけどなんかカインズ子爵の様子がおかしかったんだよな。感情に飲まれていたというか、普通、こんな所で魔法なんて撃たないだろう。
『ユウキ、わらわが奴に細工をしたのじゃ』
『カゲ?』
『わらわの影魔法で奴の感情を増幅させて、理性を失わせたのじゃ』
『なんでだ?』
『流石に無礼が過ぎたからのう。奴は貴族としても人間としても悪意だらけで失格じゃ』
なるほどな。カゲの影魔法ってすごいな。
レオンハルト陛下とイリス第一王女がこちらに来ていた。
「わしの見ている所でこのようなことがあって申し訳ない」
「私のむっ、いえ、ユウキ伯爵に何かあっては困ります」
「ああ、大丈夫ですよ。レッドドラゴンのオーラで防げば一発でしたから」
レッドドラゴンのオーラは火耐性も上げてくれるので、溶岩の中に入っても今は問題ない。でもイリス第一王女が何か言いかけたな。
「先ほどのカインズ子爵も元ドナルド公爵派だったのじゃ。というか純血主義で平民に対して当たりが強くてのう。手を焼いておったが、こんな所でぼろを出すとはな」
「ユウキ伯爵、後で踊りましょうね♡」
「承知いたしました」
「お、おい。イリス第一王女が男性にダンスを申し込んだぞ」
「幼少期の頃から、異性と誰とも踊らなかったお方がユウキ伯爵にダンスの申し込みをするとは……。これはもしかしてもしかするか?」
え? イリス第一王女って異性と踊ったことないの?
それの一番手が俺?
周りの女性陣の目が冷たい。
っていうか、さっきのカインズ子爵が連れていかれてから女性陣に話しかけようとするやつがいないな。
「ユウキ……」
「ルル、違うんだ」
「違わない」
本当はルルと一番初めに踊るつもりだったんだがな。
ごめんよ。
その後はマーマリア侯爵とも話す。
「ユウキ伯爵、私の婿に来ない?」
「ダメです!」
ルル達のガードが堅いなか、マーマリア侯爵は堂々と女の戦いをしていた。
いやー何でこんなことになってるんだろうな~。
俺が呆けていると、ダンスの時間になる。
「ユウキ伯爵、一曲踊っていただけますか?」
「喜んで」
ダンスは申し込まれたら断るのは体裁が悪すぎる。
その相手がお茶目なイリス第一王女だったらなおの事断れない。
ここが舞踏スキルの見せ所だ!
演奏隊によって穏かな曲が流れる中、イリス第一王女と手を取り合い、まずは体の流れを相手に合わせる。
イリス第一王女の深い青色の目を見つめながら、微笑も欠かさない。
そして曲がだんだんとアップテンポになっていくにつれて、大胆に、でも繊細にイリス第一王女を気遣いながら、ステップを踏む。
「私の初めての踊りを捧げたのがユウキ伯爵で良かったですわ」
「私も初めて舞踏会で踊る方がイリス第一王女で良かったです」
「もう、こういう時くらいイリスと言ってくださいまし」
「じゃあユウキって呼んでよ。イリス」
「はう♡」
数分のダンスが数時間、いや一生にも思えるほど、お互いに息の合った踊りだった。
レッドドラゴンのオーラを纏っていたせいかイリスの目がハートマークになっていた気がするのは内緒だ。
俺たちの踊りは、全員の貴族に強い印象を残し、ユウキ伯爵は傑物だと言われるようになったらしい。
その後はうちの女性陣とダンスを踊りまくる。
ふう、レベルを上げてなかったら途中でバテてたな。
それにしても、舞踏スキルを取っていたせいで、マーマリア侯爵や他の貴族令嬢の目がハートマークになっていた。
そして舞踏会も終わりに近づいたころ、イリス第一王女が俺を壇上に呼ぶ。
そして驚愕の一言を放つ。
「私、イリスはユウキ伯爵との婚約を発表します!」
「え?」
『はあ、やっぱりか』
俺はイリスの一言に驚愕し、うちの女性陣はやっぱりかという顔をする。
いや、神聖の森に居た頃に婚約って話は合ったけど、本当になるとは思わないじゃん!
レオンハルト陛下、助けて!
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