第八十六話 ドナルド公爵を生放送で晒す カゲ視点
「ふむ、そろそろ始まりそうじゃの」
「他にも貴族が集まってきた」
異世界配信のコメント欄が騒がしくなっている。
「むっ、我の派閥の貴族もおるではないか」
「レオンハルト陛下の派閥の貴族もいますね。競りに参加をしている所を撮れれば大丈夫でしょう」
ダック侯爵とカンカール宰相のコメントがある。
すでに王国騎士団が動き始めているようじゃの。
「ブルド、そろそろ行くぞ」
「え、でも普通に行ったら見つかるぜ」
「わらわの魔法は隠密に特化しておる。『影結界』」
ブルドと二人の取材クルーが一瞬で黒い影に包まれると、景色と同化する。
これはユウキが『亡霊』のアングラの時に使った「太陽結界」から着想を得たものじゃ。「影結界」は移動しても全くバレない、隠密用の結界じゃ。
「声は大きい声以外ならバレんぞ。これで貴族たちの顔を撮りに行くぞ」
「分かった」
『はい』
わらわたちは「影結界」によってバレずに倉庫の中に潜入する。
「さあさあ、今日も生きのいい奴隷が入荷したよ! まずは一人目から!」
声を大きくする魔法のかかった司会が裸になった角が生えた一人の女性を連れてくる。
「ふむ、あれは亜人族じゃの。ミノタウロス族じゃ」
「趣味の悪い奴らばかり」
「ひでえことしやがる」
わらわとルル、ブルドが小さく声を交わす。
待っているのじゃ、すぐに助けてやるからの。
「ひっひっひ、中々体つきのいい女じゃないか!」
「わしの趣味には合わんが、痛めつけてじっくり鳴かせてから落とすのはいいかもしれんのう」
「フッ、お前たちの外道な趣味には付き合いきれんが、ハイエルフがいるからには競りには参加するぞ」
神経質そうな貴族とぶくぶく太った禿げたおっさん貴族と話しているのが今回のドナルド公爵じゃ。ドナルド公爵の隣にはダック侯爵とレオンハルト王の派閥の貴族が話しておるらしい。
ドナルド公爵は百八十センチで図体はでかいが、足を忙しなく動かし、感情が抑えきれておらんのう。豪華な貴族服が本当に派手好きなのを表しておる。
外道と言っておいて、ハイエルフは買おうとしておる。
言葉と行動が一致しておらんのう。
「ブルド、撮れておるか?」
「ばっちりだ」
競りは進んでいく。大体が女性だが、鍛え上げられた肉体を持った中々強そうな獣人族もおったぞ。
餓狼のメンバーにもアルクアラウンド帝国で奴隷狩りに遭いそうになったと言っておる者もいたのう。
「クソッ! てめえら絶対ぶっ殺す!」
「ひっひっひ。生きがいい奴隷だ!」
「どうやら、妹を助けるために本人も奴隷になったらしいのう。わしが妹だけ買ってやろうかの。はっはっは!」
「フン。下らん。ハイエルフはまだか」
ドナルド公爵は何故、こんなにハイエルフに執着しておるのじゃ?
「ハイエルフの皮を剥ぎ、肉を食べ、生き血をすする。そうすればわしも不老長寿の体を得られる」
うわ。最低の奴じゃの。しかもかなり昔にハイエルフが狙われるようになった出まかせの噂話ではないか。
「カゲ、ユウキから連絡が来た。生放送で証拠は配信にも映ったし、騎士団が踏み込むらしい」
「良し、ブルド達、ここを出るのじゃ」
『わかった』
じゃが、下が騒がしくなる。覗いてみると先ほど騒いでいた獣人族が牢屋を蹴り破り、大立ち回りをしている。
一緒にいる獣人族は……ルカか⁉
「お兄ちゃん……」
「ルカ、お兄ちゃんがこの外道どもを全員殺して救ってやる!」
この倉庫を見張っていた貴族の護衛達が獣人族のルカの兄と戦い始めたのう。
「ユウキに伝えるのじゃ! 騎士団に今から踏み込めと!」
「もう来てるって!」
「ならばわらわたちも加勢するのじゃ」
「俺たちはどうすればいい?」
「わらわの近くにおれ! これもいい配信になるのじゃ」
影結界を解く。
まず近くにいた貴族二人とドナルド公爵を足刀で意識を刈り取る。
ルルは、下に降りて、ルカの兄とルカの応援に行っていた。
「ルルもやる」
「え、何だ、この可愛い獣人族は! じゃなかった、応援感謝する」
「ルカも戦うよ」
ハイエルフのイルスは牢屋に居た奴隷たちを全員連れてくる。
貴族の護衛達がルカの兄と戦っている最中に外から騎士団が制圧に来た。
「王国騎士団である! 戦闘をやめろ! 奴隷売買に関わっている者や奴隷を買おうとしていた者たちは即刻拘束する!」
王国騎士団達は奴隷の保護を行いながら上から観戦していた貴族たちを捕まえていく。
昏倒していた貴族たちは目を覚まして狼狽える。
「私は何もしていない!」
「わしも無実じゃ!」
だが騎士団長のクラナがスマホを突き付ける。
「ひっひっひ、中々体つきのいい女じゃないか!」
「わしの趣味には合わんが、痛めつけてじっくり鳴かせてから落とすのはいいかもしれんのう」
二人の声が再生される。
「なっ! それは巷で聞く『配信』というやつではないか⁉」
「わしたちの近くには誰もおらんかったはずじゃあ!」
みっともなく、大声を上げているが、もう配信されておる。
「ドナルド公爵。貴方も拘束させていただきます」
「ちっ! 『配信者』のユウキとやら! 我の悲願が! どこまでも邪魔してくれる!」
「ハイエルフの生き血を飲めば、自分も不老長寿の体になるなんて……どこまでもおぞましい発想ですね」
コメント欄が最高潮に盛り上がっておるのう!
「ざまあああああああ!」
「悪は滅びた!」
「この瞬間を待ってたぜ!」
騎士団長のクラナは眉をしかめて、軽蔑した顔を見せる。
これで、シタラテレビの初「配信」は終わりかの。
奴隷たちも保護して、一件落着じゃの。
「お兄ちゃん、生きててよかった」
「ルカ……本当に心配してたんだ」
ルカと兄は抱き合っておるのう。良かったのじゃ。
はあ、今回は疲れたのう。ユウキに癒してもらいたいのじゃ。
わらわはそんなことを思いながら、ルル達と奴隷たちを連れて、ラーク男爵家に向かうのじゃった。
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