第七十八話 ランドさんに詰められる
「ユウキさん、これで結婚できますね!」
「なんでランドさんと結婚しなきゃいけないんだ!」
俺は魂の叫びを言葉にしてしまう。
「ひどい! 私は乙女なのに! うわああああ!」
ランドさんは訓練場から駆け出してしまう。
俺の周りの空気がシンと凍り付く。
「あー! ランドを泣かせましたわね!」
「ユウキさん、最低」
「これはユウキが悪い」
「ランドさんは心は女の子なのです」
「わらわもユウキが悪いと思うのう」
何だよ! 皆寄ってたかっておれが悪いという。
ううう、流石に悪い気がしてきた。
「そういうな。我もランドとクラリアとアナリザ様は強引に距離を詰め過ぎだと思うぞ」
珍しく、ダック侯爵がまともなことを言う。
一回、ランドさん達と腹を割って話さないと駄目かな。
気まずい雰囲気になってから、晩餐の時間になる。
その時間になってもランドさんは来ない。
「ユウキ、お主が聞いてくるのじゃ」
「……わかったよ」
俺はカゲに言われて、渋々ランドさんの部屋に行く。
それにしても白を基調にした綺麗な館だな。
すれ違う、メイドさんたちの表情も明るく、良い職場であることがわかる。
だが目線は俺を見ると冷たくなる。
はあ、俺の味方はいないのか。
ランドさんの部屋に来た。
「ランドさん、俺だよ。ユウキだ」
「知りません」
「怒ってごめんな。でも突然の流れだったからランドさんと腹を割って話したかったんだ」
「……」
無言で暫く待っていると扉が開く。
ランドさんはぶすっとした顔で立っていた。
俺は手を掴まれて、部屋に連れられる。
「ランドさん、怒ってごめん。何でそんなに俺と結婚したがるんだ?」
「……はあ。謝られては仕方ありません。この部屋を見てください」
部屋の中は綿を詰め込んだぬいぐるみや刺繍や編み込みをした女性の部屋って感じだった。
「私は生まれてから、可愛いものが大好きでした。女性の服も好きだし、小さい頃は女の子に間違われるくらいの顔でした」
確かにランドさんは中性的な顔立ちで凛とした男の影と女のような可憐さがある。
「でも貴族社会では私は異端でした。男として振る舞い、嫡男として侯爵家の跡継ぎにならなければいけない」
「うん」
「実際に貴族の舞踏会でドナルド公爵派に陰口をたたかれました。ダック侯爵家の跡取りは男でも女でもない半端物だと」
なるほど、ここでもドナルド公爵たちが出てくるのか。
うーん、ちょっと同情しちゃうな。
「私は引きこもりがちになり、外に出たくありませんでした。そんな時にユウキさんの『配信』に出会ったのです。家の中に居ながら外の様子が見られる。最初はそのことばかりに目が行っていました」
「確かに俺がいた世界でも引きこもりが『配信』にはまるケースはよくあったな」
「ですが、途中から気づきました。これはユウキさんの『人生』そのものを見ているのだと」
「うん」
「ぽっぽこーんをバルクの街で始めて売った時の街の人の笑顔。ユウキさんの輝く瞳に目を奪われました。料理を楽しそうに振舞っている時の楽しそうな笑み。私はあの時から恋をしていたのだと思います」
ランドさんは少し頬を紅潮させていた。瞳は上目遣いで潤んでいる。
「ファンになって、バルクの街に向かっていた時に盗賊につかまり、私は終わったと思いました。でもユウキさんは猛々しい怒りを纏って助けに来てくれた」
「うん」
「そして、レッドドラゴンの魔力を得た後、私は心を打ちぬかれました。もうこの人と添い遂げるしかない。そう思ったのです」
俺はランドさんはオネエでギャグ要因だと思っていたけど、ずっと真摯に考えてくれていたんだな。
「そうか。それは嬉しい。でも、いきなり婚約は無理だ」
「何故ですか?」
「ルルやカゲ、クリス、カレイナ、アリア、エミリア。他にも俺を好いていてくれている人がいっぱいいる」
「確かにその人たちを差し置いて婚約は無理ですね」
「そうだろう? イリス第一王女も俺を待ってるだろう。フランシスさんやルルーシュさんもいる」
物事には順序がある。クラリアさんやアナリザ様にも申し訳ない。
「分かりました。ですが私が女になったら抱いて頂けませんか?」
「うーん。ダック侯爵がなんていうか」
「父上にはもう許可はもらっています。これが女体化薬です」
ランドさんは俺にピンク色の透き通ったポーションを見せる。
これを飲むと女になるのか。
「私の覚悟、見届けてください。では」
ランドさんはごくごくとピンク色のポーションを飲み始める。
すると中性的だった顔立ちが小顔になり、体の輪郭が丸みを帯びる。
徐々に胸が張っていき、どんどん膨らんでいく。
髪はショートボブくらいの長さまで伸びる。
そして、黒髪がつやつやとし始める。
「ふう」
「ゴクリ」
ランドさんが漏らした声は透き通るようなソプラノ声で色気があった。
「ユウキさん、これが私の覚悟よ」
「……」
黒髪のショートボブで大きな目はくりくりとした猫目になっていた。
男物の服を着ていたので、お胸がパンパンに張っている。
もう、完全に女の子だった。
ヤバイ、なんか艶と色気が凄いんだ。
俺はちょっと距離を取ろうとするが、狼狽えているのを見てニヤリと笑ったランドさんは俺をベッドの壁まで押し倒す。
「ら、ランドさん」
「フフフ、なんか私良い感じになったみたい。ユウキさんはここが苦しそうね?」
「ッ!」
ランドさんは俺の怒張している物をツーと触り、俺に近づいて……。
チュッ。
「フフフ、今はダメよ。皆が見ているし、ルル達には協力してもらったからね」
「え?」
ちらっと扉を見ると、ルル達が隙間からのぞき込んでいた。
『ランドさん、おめでとう!』
「お兄様、いやもうお姉さまですわね」
「とっても綺麗」
ルル達がランドさんを祝福し、クラリアさんとアナリザ様がランドさんを褒める。
「私、これからラニって名前にするわ」
「似合ってるわ、お姉さま」
そして、夜はいつもの大運動会に発展するのであった。
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