予期せぬ知らせの数日前・続(3)
「アリス、これ・・
受け取って下さるかしら?」
ティアナが緊張した面持ちで
ピンクのリボンでラッピングしたクッキーを差し出すと、
「えっ・・!
う、嬉し過ぎますっ!!」
アリスは嬉しそうにそれを両手で受け取ってくれた。
昨日 焼いたクッキーを持って来ていたティアナは、噴水の前で遭遇したアリスにピンクのリボンでラッピングしたクッキーを渡した。
昨日のテンションから一変して、いざ手作りのものを渡そうとすると緊張してなかなか声がかけられなかった。
意を決してアリスに渡すと、思いの外喜んでくれてティアナはホッと胸を撫で下ろした。
「アリス!ティアナ!おはよう!」
案の定、アリスと話していると豪快な声で遠くからアルフが駆け寄って来た。
「きた・・」
アリスは低い声でつぶやくと、ティアナにもらったクッキーを背中に隠した。
「ミシューレ様、おはようござ・・」
挨拶を交わそうとすると、
「ん?ティアナから
甘くて良いにおいがする!
アルフはその言葉を遮り、
くんくんとにおいを嗅ぎながらティアナに詰め寄って来た。
「えっ?やっ・・」
腕にかけた紙袋があるティアナの腰のあたりにまで頭を落とし、鼻がつくかつかないかくらいまで一気に近づいて来たアルフの頭に、
ガツンッ
「ゔっっ!」
アリスは容赦なく肘を落とした。
「やめろっ!この変質者っ!」
「う〜ん。
もう少しで分かりそうだったのだが…」
アリスに肘を落とされ、叱られても、
「お前はいつか捕まるぞ?」
「う〜ん。香ばしく甘いあの香・・」
「聞けよっ!野生児っ」
アルフは何の悪びれもなくマイペースだ。
「あの、ミシューレ様も宜しければ…」
ティアナが茶色のリボンでラッピングされたお菓子を差し出すと、アルフはパァッて顔を輝かせた。
「ありがとう!!」
アルフの笑顔に、
ティアナはまたホッと胸を撫で下ろした。
「ティアナ様…
こんな奴にあげなくても…」
アリスは何か言いたげだったが、
「中身はクッキーか?!」
アルフの大声に眉間に皺を寄せながら耳を押さえた。
「そうだよ。
ティアナ様の手作りだぞ。
大事に食べ・・」
アリスの言葉に瞳を見開いたアルフは、
「ティアナ!」
途中の言葉を遮り、
ずいっとティアナに近づいた。
そして、両肩をがしっと掴むと、
「大好きだっ!!」
大きな声でティアナへと言葉を発した。
アルフの声に、
辺りがしんっと静まりかえる。
(いや、クッキーって言葉を省略しないでっ!?)
アリスもティアナも
アルフの突拍子もない言動に
咄嗟に動くことができなかった。
「初めての経験だっ」
(手作りクッキーもらうのがだよね!?大事な部分、省略しないでっ!?)
ーーと、その時、
「なに、世界の中心で戯言を叫んでいるのだ?」
凍るような冷たい声で
その場を一掃させたのはレオンだった。
後ろからシリウスも続いてくる。
シリウスはにこりと穏やかな笑顔をアルフに向けると、
ティアナを掴んでいたアルフの両手を叩いた。
「ティアが魅力的なのは分かるけど…
このような場で
私の婚約者を口説くとは
穏やかではないね?」
(いや、違うから!この人はクッキーにテンション上がってるだけだから!)
(※)ムーンライトノベルズに載せている作品のR15指定バージョンです。
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