アーシュタワー 6
「ほう」ドクター・アーシュは愉快そうに、口元をゆるめた。
眼鏡の奥で、好奇心に満ちた瞳孔がキラキラと輝いている。
「その臓器を食らったカマキリたちはどうなったのですか?」
背をそらし腕を組みながら、聡明な瞳で地底の主を見上げた。
地底の主は身を乗り出すと、声をひそめた。
「それを食らいつくした始祖たちは、意識を失ってバタバタとその場に
倒れていった。だが、半時が過ぎる頃、彼らは意識を失ったまま
ゆっくりと水辺に向かって歩き出した。
始祖たちの首はフラフラとたよりなく、カマはだらしなく垂れ下がっていた。
水辺にたどりくと始祖たちは、己の足やカマを水の中にひたし始めた。
やがて、満足したように目をつむり、静かに息をひきとっていった。
翌朝のことだ。
死んだカマキリの身体から、小さな芽が顔を出した。
一枚の小さな葉、細い茎。
だが、それは驚異的なスピードで天へと伸びていった。
砂の隙間からわずかに差し込む太陽の光をめざしてな。
三日もたつと、その植物たちは人の背の高さほどまで成長した。
そして、牡丹に似た大きな花を咲かせた。
この世のものとも思えぬ、妖しい色をした花だったそうだ。
すると、砂の隙間から誘われるように無数の蜂が入りこんできた。
蜂は花々のあいだを飛び回り、交配の手助けをした。
始祖が死んで五日目には、花に大きないくつもの種子が実っていた。
七日目にはそれらは地面に落ち、十日たった頃には、
数多くの種子がゆさゆさと揺れはじめた。
やがて、種子の表面にうっすらとヒビが入ると、
中から我らの「本当の始祖」
偉大なる大きな体躯と高い知能を持った始祖が
生まれてきたというわけだ」




