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アーシュタワー 5

地底の主は、ドクターの目をまっすぐに見つめながら

噛んで含めるような口調で話し続けた。


「ある日、我らの始祖のもとに一人の子どもが地上から落ちてきた。

あの絶望の砂漠で、何かの感情にとらわれたのだろう。

さびしいとか苦しいとか。感情にとらわれたものは

砂に足をとられて、ずぶずぶとこの地へひきずりこまれる。


始祖たちは少年を遠巻きに眺めていた。

やがて意識を取り戻した少年は、あたりを見回し食料を探し始めた。

のども乾いていたのだろう。こんこんと湧き出る泉に顔をつけて

水を飲んだ。顔を上げた少年は、目前に獰猛なヒグマが自分を

じっと見ていることに気づいた。


少年は息をのんであとずさった。ゆっくり、ゆっくりとな。

だが、冬眠から目覚めて腹をすかしていたヒグマが格好の獲物を

逃すわけもない。

ヒグマはすさまじいスピードでとびかかり、少年をねじふせた。

少年は手足をジタバタさせて抵抗した。


「パパ、ママ」と泣き叫ぶ声が聞こえた。


だが、少年の頸動脈は無残に噛みちぎられ、少年は静かに絶命した。


ヒグマは舌なめずりしながら、獲物の身体をむさぼり食った

はらわたを引きずり出し、頬にかみつき、目もあてられぬ凄惨な光景だった。


だが、自然の摂理というのはそういうものだ。生命は常に消費され円環を描いて

繰り返されていく。


やがて腹を満たしたヒグマはその場をゆっくりと立ち去った。


我らの始祖は少年の死体のまわりにわらわらと群がった。

それはすさまじい数のカマキリだった。

通常、人の子など食わぬ始祖に、何が起こったのか、

本能が始祖の欲望を呼び起こしたのか?

理由はわからぬ。


やがてそのうちの一人が少年の目の裏にあった黄金色に輝く謎の臓器に

食らいついた。


この世のものとも思えぬ甘美な味。輝き。

始祖は思わずカマを高く振り上げ、身震いした。

その瞬間、群がっていた小さくか弱い始祖たちは、いっせいに

この光り輝く臓器めがけて突進し、ひとかけらも残さぬよう

食いつくした」



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