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アーシュタワー 4

「だが」ドクターはメガネの奥の目を細めた。「そうすることで私には

なんのメリットがあるというのです?」


地底の王はにたりと嗤うと従者に一冊の古文書を持ってくるように命じた。


「こちらでございます」


ものものしく桐の箱に入れられたそれは、色褪せていたものの保存状態はよく

破れ目などはなかった。


主は

「この古文書は、我らの始祖の起源について書かれたものだ。

我が国の問題不出の秘宝である。ただの小さな昆虫だった我らが

いかにして知性を持ち、地底に国を築きあげたのか。

食料も水もない過酷な環境の中でいかにして生き残ったのか」


「ほう」ドクターは両手を膝の上で組みなおした。


「古文書には一度死んだ我らの始祖が、アークの聖人によって

よみがえったと書かれている。それも、偉大なる進化をとげた

姿となってな」


ドクターは左の眉をぴくりと上げ


「ちくたく ちくたく 時計はすすむ

ちくたく ちくたく 時計はとまる

かすみがおりれば まことは消える

こわれた時計は うごかない」


と歌うと


「その古文書を読めば、この歌の意味がわかりますか?

かすみがおりれば まことは消える。ここは、真実の山を

指しているのかと思うのですが」

と問うた。


地底の王はゆっくりと首をふると


「ちがうな」と挑むようにアーシュの目を見た。


「かすみとは目のこと。アークの祝福されし者には、目の後ろに

ほかの人間にはない臓器がある。その臓器こそが、よみがえりの

秘密である」


              ※


「われらの始祖は、とても小さく、か弱い生き物であった」


「鋭いカマを持ち、あごの力もすさまじい。同じ昆虫同士なら

めったに負けることはなかった。だが、人間相手では?動物相手では?

人の手で握りつぶされてしまうような小さな身体だ。

おまけに寿命は短く、言葉も話せぬ。知性を持たぬ我らは

人の手によって作られた化学物質で無残に殺されることも

当たり前のことであった」


地底の王は胸の前でカマを合わすと、目を閉じて

ゆっくり語り始めた。




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